脳血管内治療
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5 巻 , 1 号
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特集 硬膜動静脈瘻の不思議
序文
総説
  • 清末 一路, 井手 里美, 内田 晋, 久保 毅
    2020 年 5 巻 1 号 p. 6-18
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/20
    [早期公開] 公開日: 2019/03/27
    ジャーナル オープンアクセス

    硬膜動静脈瘻は後天的な血管短絡性疾患であり,比較的遭遇する機会も多く,かつ血管内治療の適応となることも多いため,よく知られている疾患である.しかし,その一方で成因や病態など未だ明らかになっていない点も多い.本稿では血管解剖と血管構築の観点から硬膜動静脈瘻という疾患について考察した.脊髄と頭蓋内の血管構築から硬膜動静脈瘻・硬膜外動静脈瘻を対比すると脊髄における硬膜動静脈瘻は頭蓋内の硬膜動静脈瘻のうち静脈洞に直接還流しないnonsinusal type のものに相当し,脊髄における硬膜外動静脈瘻が頭蓋内では静脈洞に直接還流するsinusal type の硬膜動静脈瘻に相当する.前者は硬膜内にシャントを形成しbridging vein に還流するが,後者は硬膜のみならず骨内にもシャントを形成する頻度が高く静脈洞や硬膜外静脈叢に還流する.また,静脈のバリエーションは個々の症例の病態に関与するとともに,硬膜動静脈瘻の成因にも関係する可能性がある.

  • 田中 美千裕
    2020 年 5 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/20
    [早期公開] 公開日: 2019/01/28
    ジャーナル オープンアクセス

    硬膜動静脈瘻のシャントは頭蓋内や脊髄の硬膜に均等に発生するのではなく,ある特定の部位に好発する.嗅窩部,下矢状静脈洞,大脳鎌,小脳テント,脊髄硬膜は発生学的に神経堤由来であり, この群の硬膜は固有硬膜からのみ構成されており,シャント血流は橋静脈を介して軟膜や皮質へ逆流するので脳浮腫や脊髄浮腫も惹起されやすく,頭蓋内出血のリスクも高い.この群では中高年以降の男性患者が有意に多いことが知られている.一方,海綿静脈洞,舌下神経管,横静脈洞,S 状静脈洞は中胚葉由来の硬膜から構成され,硬膜は固有硬膜と骨膜硬膜の 2 層構造で構成され,主幹静脈洞近傍に発生するので,シャント血流は静脈洞内の血栓化などがなければ通常皮質静脈逆流は認めず,あっても軽微である.この群は女性に多い傾向がある.神経堤由来の固有硬膜に発生する硬膜動静脈瘻は神経学的な予後が不良であり,何らかの治療介入をしなければ出血の危険もあることが示された.神経堤由来の硬膜と中胚葉由来の硬膜の 2 つに分類し,疾患を解析し,治療することは,この疾患の理解とより良い治療成績に寄与するものと考えられる.

  • 田上 秀一, 安陪 等思, 廣畑 優
    2020 年 5 巻 1 号 p. 28-37
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/20
    [早期公開] 公開日: 2019/04/12
    ジャーナル オープンアクセス

    海綿静脈洞(cavernous sinus)は下垂体窩の両側に存在する硬膜静脈洞であり,動静脈シャント疾患や腫瘍性病変などの好発部位となる.海綿静脈洞は,眼窩や頭蓋内,髄膜などのさまざまな静脈還流を担う交通路であり,かつ周囲の静脈の還流形態および海綿静脈洞自体には解剖学的なバリエーションが存在し,本領域の開頭手術や動静脈シャント疾患に対する血管内治療の際にはその理解が必要である.海綿静脈洞に還流する主な脳静脈には側頭葉からの脳静脈還流を担う浅中大脳静脈や鈎静脈があり,動静脈シャント疾患の際に皮質静脈逆流をきたすルートとなりうる.両者とも海綿静脈洞には外側壁に直接,あるいは蝶形頭頂静脈洞を介して還流することが多いが,時にlaterocavernous sinus(LCS)を介して海綿静脈洞に還流する場合もある.LCS からの流出形態にもバリエーションが存在し,またLCS 自体にシャントが及ぶこともある.それらの静脈の還流形態とシャントとの関係の理解は,とくに動静脈シャント疾患に対する血管内治療において重要である.本項では,海綿静脈洞,とくにLCS の解剖と硬膜動静脈瘻について概説する.

  • 金丸 和也, 木内 博之
    2020 年 5 巻 1 号 p. 38-44
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/20
    [早期公開] 公開日: 2019/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    硬膜動静脈瘻では,シャント血が脳表静脈へ逆流すると,頭蓋内出血やうっ血性静脈還流障害により重篤な脳障害をきたすことが知られている.しかしながら,その発症機序については不明な点が多い.そこで本稿では,硬膜動静脈瘻の脳静脈還流障害についてこれまでに得られた知見を概説する.脳血管撮影では,脳表静脈逆流,流出静脈上の静脈瘤,脳表静脈への直接の逆行性流出,isolated sinus の関与,pseudophlebitic pattern などが重篤な発症と関連していると示唆されている.また,われわれの123I- iodoamphetamine single photon emission computed tomography を用いた検討では,脳血流量の低下はうっ血性静脈還流障害による脳障害の程度と相関し,脳血管反応性の消失は不可逆的脳障害を示しており,予後予測に有用な可能性が示唆されている.硬膜動静脈瘻の予後改善のためには,脳静脈還流障害の病態生理の解明を中心としたさらなる研究の発展が不可欠である.

原著
  • 高井 敬介
    2020 年 5 巻 1 号 p. 45-55
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/20
    [早期公開] 公開日: 2019/02/06
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】頭蓋頚椎移行部動静脈シャント(CCJ AVF)の診断と治療について最新アップデートをまとめた. 【方法】2009–2018 年の10 年間の関連文献をPubMed データベースからレビューした.【結果】血管解剖から硬膜・硬膜内・硬膜外の3 群に分け,臨床・画像的特徴,治療転帰を比較した.硬膜AVF では,脊髄・脳幹の静脈うっ血による脊髄症・脳幹障害が多かった.硬膜内AVF は,硬膜AVF よりも複雑な血管構造を呈し,出血発症が多かった.硬膜内AVF 34 例中25 例に動脈瘤・静脈瘤を伴っていた.瘤形成は血行力学的,血流依存的現象の可能性があった.大部分の硬膜・硬膜内AVF において,硬膜内の栄養動脈や導出静脈の外科的閉塞が有効であった.血管内治療は硬膜・硬膜内AVF よりも,硬膜外AVF で有効であった.外科治療群80 症例では,永続神経症状を認めなかったが,血管内治療群22 症例中2 例に脳梗塞を発症した.出血症例の方が,静脈うっ血症例よりも永続的神経症状が少なかったため,硬膜AVF 症例と比べて,硬膜内AVF と硬膜外AVF の方が,転帰良好例が多かった.【結論】臨床・画像的特徴,転帰が顕著に異なるため,3 群の鑑別診断は重要である.

総説
  • 水谷 克洋, 秋山 武紀, 吉田 一成
    2020 年 5 巻 1 号 p. 56-64
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/20
    [早期公開] 公開日: 2019/05/14
    ジャーナル オープンアクセス

    Anterior condylar arteriovenous fistula(AVF)は舌下神経管周囲に形成される比較的稀なdural arteriovenous fistula(DAVF)の一型であり,一般的には舌下神経管内のanterior condylar vein にAVF が形成されると考えられてきた.最近の研究で,舌下神経管の周囲にはanterior condylar vein 以外にも豊富な骨内静脈路が存在していることが明らかとなった.また,改めて詳細にAVF のshunted venous pouch の位置を検討すると,骨内にshunted venous pouch が存在しているような症例が一定数以上あることがわかり,anterior condylar AVF はanterior condylar vein やその付近の骨内静脈路に形成される一群のAVF であることが明らかとなった.このAVF は通常の硬膜に形成されるDAVF と同様に,骨内静脈路の血栓化などが原因となって二次的に形成されると考えられる.本稿で述べる骨内静脈路の解剖やanterior condylar AVF の病態はこの疾患を理解するうえで非常に重要である.

  • 久保 道也, 桑山 直也
    2020 年 5 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/20
    [早期公開] 公開日: 2019/05/22
    ジャーナル オープンアクセス

    静脈洞血栓症(CVST)に続発する硬膜動静脈瘻(DAVF)(DAVF after CVST)の存在はよく知られているが,その発症や進展のメカニズムや病態の特徴などについては,依然として不明の点が多い.ここでは,過去の報告と自験例を踏まえて,(1)先行するCVST にDAVF が続発する頻度,(2)CVST にDAVF が続発する条件,(3)DAVF after CVST の性差,(4)DAVF after CVSTの発症と進展パターンとそのメカニズム,の四つのポイントに絞って検討した.現時点でも未解明の部分が少なくないものの,以下のような一定の傾向を有していると考えられる.DAVF after CVST は,治療後も血栓が残存したCVST に続発し,多発性DAVF や上矢状静脈洞近傍の円蓋部DAVF を呈することが多い.また,早期には静脈洞血栓の残存部にAVF を形成して血栓内新生血管を流出路とし,流出部を中心に静脈性高血圧による二次性DAVF を形成する可能性が示唆された.残存血栓を有するCVST は3 年以上の注意深い画像追跡が必要である.

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