農業経済研究
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90 巻, 3 号
90巻3号 (大会特集号)
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論文
  • 貸付が農業生産と小作料に及ぼした効果
    万木 孝雄, 櫻井 武司
    2018 年 90 巻 3 号 p. 177-193
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー

    本稿は戦前期の農村信用組合を対象として,その貸付による肥料購入額,農業生産額,農地小作料の水準などへの影響を検証したものである.期間を1915年より1930年とする47道府県のパネルデータを作成し,記述統計分析および回帰分析を行った.回帰分析の結果は,肥料購入や農業生産については,貸付が正で有意な効果を及ぼしており,農村信用組合の伸展,とりわけその貸付は農業の生産の増大に貢献したと結論できる.一方,小作料については,貸付はその水準に対して有意な影響を持たないことが示され,農村信用組合の貸付は地主─小作間の所得分配に中立であった,あるいは格差を緩和した可能性のあることが示唆された.しかし,所得分配については,ミクロデータを用いた更なる検証が今後の課題として残されている.

報告
  • 若林 剛志
    2018 年 90 巻 3 号 p. 207-219
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー

    中山間地域を題材に,農業経営体の経営規模の維持に資する地域と資源を次世代へ引き継ぐ農業経営体との関係性について,事例の検討と理論的検討を行った.事例の地域では,農業衰退への危機感から,集落機能の維持,農業を基軸とした文化継承,資源としての農地の保全等を目的に農業経営体を支援しており,地域によって集積された農地を利用する農業経営体は,経済効率性の追求だけでなく,地域の要望を慮りながら経営するという相互関係がみられた.理論的検討では,繰り返しゲームを用いて,農地集積への地権者の同意率が社会関係を考慮することで高まる可能性,集落の関与による農地の総合的保全への有効性を示した.

  • 野中 章久
    2018 年 90 巻 3 号 p. 220-233
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー

    本稿は,兼業滞留に関する現状の議論の整理と,営農集団と稲作法人の調査結果をもとに,東北の農地集積主体と兼業滞留構造の関係を明らかにすることを課題とする.東北の兼業滞留構造は,世帯の家計費を妻と概ね二等分する世帯主世代男子の「ワリカン賃金」が農業所得と結びつくことにより強固に形成される状態から,その「ワリカン」分を妻の農外所得で賄う離農可能な状態への緩慢な変化の途上にあると整理される.このため借地による農地集積は緩慢となり,かつ圃場が分散化する構造となる.このため,兼業滞留の対極にあるはずの稲作法人は,兼業滞留構造を積極的に再編するのではなく, これと相互依存的な関係にあることを明らかにした.

  • ジェンダー論からの分析
    靍 理恵子
    2018 年 90 巻 3 号 p. 234-248
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー

    本論では,ジェンダー論の視点から女性農業者の二極化,さまざまな農への関わり方,男性農業者・ムラや地域の変化を通して,個々の農家の存続と地域の存続が相互補完的であることを明らかにする.キーワードは,多様化する農の主体である.既存の社会構造が変容する中,女性たちが確かな主体として家やムラ,地域,そして現代社会において活動しつつあることを提示できればと思う.本論で扱う主な事例は,通常イメージされる大規模な企業的経営体ではなく,安定性や持続性を大切に考えてきた家族農業,小規模農家である.また,農林業センサスには載らないような農に関わる人々も取り上げた.

  • 次世代型先進的農業経営体との関係から
    小林 国之
    2018 年 90 巻 3 号 p. 249-258
    発行日: 2018/12/25
    公開日: 2020/03/25
    ジャーナル フリー

    本稿では「次世代型先進農業経営体」が地域との関係を結びながらその機能を発揮していく際に,農協はどのような役割を果たすのか,という点を明らかにすることにある.そのなかで,農協は,新たな農業の担い手を確保する取り組みを積極的に展開している.そうした地域農業維持における機能を果たすために農協は,①経済的利益という目標とともに,生活空間としての維持も目標とし,②地域内の維持のために積極的に地域外とのつながりも求めていくことが必要となろう.

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