ペストロジー
Online ISSN : 2432-1540
Print ISSN : 1880-3415
23 巻, 1 号
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原著
  • 戸島 明子, 菅野 格朗, 片山 淳一郎, 辻 英明
    原稿種別: 本文
    2008 年 23 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2008/05/18
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー
    含水量の多いゴキブリ用ジェルベイト(マックスフォースジェルK)の乾燥や小麦粉による被覆によって,ゴキブリの反応がどのように変化するのか,長期間の放置でもベイトの殺虫性自体が保たれるのかを調べる実験を行った.ジェルベイトをプラスチックシート上に100mg乗せ25〜27℃に保っと,乾燥によって重量が1週間で約50%減少し,その後は大きな変化がなく,含水率が平衡状態となったと思われる.この乾燥ベイトを新鮮なベイトと並べて与えた場合,4,9および16週間後の放置ベイトは,チャバネゴキブリ成虫に対し新鮮なベイトの2/3〜3/4程度の誘引性があったが,32週間および1年間放置したベイトを選好するゴキブリは非常に少なかった.しかし,1年間放置したベイトだけを与えた場合,ゴキブリの死亡経過は新鮮なベイトだけを与えた場合と大差がなく,殺虫力は十分にあった.ベイトを50℃の高温乾燥機内に保った場合,重量の減少は57〜59%に達し,より高温のため乾燥が進むことが示唆された.この50℃高温乾燥の場合には25〜27℃放置と同様に,27日間乾燥させたベイトでも,その誘引性は低下せず,殺虫効果も良好に保たれた.ベイトに小麦粉をまぶす程度に付着させた場合にはゴキブリに対する誘引性は変わらなかった.しかし,ベイトが小麦粉に5mmの深さに埋められた場合には小麦粉のみの誘引性となり,その誘引性はむき出しの対照区ベイトよりはるかに劣った.
事例報告
  • 青山 修三, 青山 達哉, 間瀬 信継
    原稿種別: 本文
    2008 年 23 巻 1 号 p. 7-9
    発行日: 2008/05/18
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    2005年4月から2006年の9月までの期間,札幌市と周辺都市でトビイロケアリ防除を実施した72件の家屋調査をした結果,月別では6月が26件(35.1%),次いで7月が19件(26.4%)で多かった.建築後経過年数別では5年以内の新しい家屋で22件(30.6%)と最多で,次いで21年以上の比較的古い家屋が20件(27.8%)であった.建築5年以内ではサイディング壁に木造枠組壁構法と在来構法が混在し,断熱工法に外張り断熱と基礎断熱の割合が高く,劣化がないのに対し,21年以上では壁内充填断熱のモルタル壁の在来構法がほとんどで,劣化ありの割合が高かった.

    したがって,本種の家屋侵入要因は,建築後経過年数5年以内の家屋では断熱工法が,21年以上では家屋の劣化が関与している可能性が示唆された.

  • 青山 修三
    原稿種別: 本文
    2008 年 23 巻 1 号 p. 11-14
    発行日: 2008/05/18
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    市販シロアリ用土壌処理剤5種類のトビイロケアリとクロクサアリに対する影響をフェニトロチオンと比較した.供試薬剤の0.1%水希釈液へ浸漬処理をしたストローで35 mmフイルムケース2本を連結して通路区とし,一方を砂糖水を含んだ綿を置いた餌場区とし,他方のケースを入口区としてトビイロケアリまたはクロクサアリを投入した後, 経過時間ごとの仰転頭数および各区ごとの滞留頭数を記録した.仰転効果が最も速くあらわれたのはフェニトロチオンで,120分後に両供試虫に対してほぼ全頭仰転の結果を得た.それに対し,シロアリ用土壌処理剤では360分後にほぼ全頭仰転したのはビフェントリンとシラフルオフェンであったが,シラフルオフェンは24時間後に蘇生個体が観察された.したがって,いずれのシロアリ用土壌処理剤もフェニトロチオンより速効力,殺虫力ともに劣るものと考えられた.

    両供試虫ともに無処理通路区に滞留してコロニーを形成した.これと同様であったのはイミダクロプリドのみであった.反対にフェニトロチオン,ビフェントリンそしてシラフルオフェンは通路区にほとんど滞留しなかった.とくにビフェントリンは両供試虫の移動を大いにかく乱した.

  • 谷川 力, 邑井 良守, 春成 常仁
    原稿種別: 本文
    2008 年 23 巻 1 号 p. 15-16
    発行日: 2008/05/18
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    ネズミ生息の指標となると考えられている糞数を,クマネズミとドブネズミを供して観察したところ,1日に排泄する糞は,同じ餌でクマネズミのほうが多数排泄した.また,両種とも餌によって糞数に差が認められた.

    この研究は厚生科学研究費補助金(建築物におけるねずみ・害虫等の対策に関する研究:主任研究者 田中生男)の一部を利用して実施された.また,本報告は日本ペストロジー学会第20回大会にて報告した内容をまとめたものである.

  • 渡辺 護
    原稿種別: 本文
    2008 年 23 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2008/05/18
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    震災による家屋やライフラインの破壊,損壊が,衛生・不快害虫の発生を助長するのではないか,との懸念から2007年7月16日に起きた中越沖地震後に,衛生・不快害虫の発生状況を調査した.

    蚊は震災後11日目の調査で,4日目の調査時よりも発生箇所が増えた.しかし,震災後1カ月半を過ぎると,溜水環境は減少し蚊の発生箇所数も減少した.一方で,様々な物への覆いに使用されているブルーシートが,新たな溜水環境を提供し蚊の発生を助長することが確認された.

    ハエ類は既存公衆トイレの放置汚物や生ゴミに少数認められたが,比較的迅速な清掃により,大きな懸念材料にはならないと思われた.

    水田および水路にも地震による損壊がみられたが,今回のわずかな調査ではそれらが直接水田発生性の蚊に対する影響の度合いを明らかにすることはできなかった.

    本調査は厚生労働科学研究費補助金,新興・再興感染症研究事業「節足動物媒介感染症の効果的な防除等の対策研究」(H18-新興-一般-009)の助成を受けて行われた.

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