カベアナタカラダニの発育ステージ毎の消長を明らかにする目的で,2018年から2021年までの4年間,2月初めから成ダニが捕獲されなくなる6月末までの期間,川口市三ツ和で粘着トラップを設置して捕獲調査を行い,トラップごとの捕獲個体数を発育ステージ別に記録した.その結果,11,000~31,000個体のカベアナタカラダニが,毎年発生期間中に捕獲された.建屋南側で最も多くの個体が捕獲されたが,北側と東側では少なかった.幼ダニの捕獲は,2020年を除き2月下旬から3月中旬に始まり,5月中旬までの50~99日間続いた.若ダニは,幼ダニから約1か月遅れて捕獲され始め,約2か月間継続して捕獲された.成ダニは,若ダニの初捕獲2~3週間後に捕獲され始め,約2か月継続して捕獲された.建屋南側での捕獲消長を,近隣のさいたま市のアメダスデータの平均気温,期間最高・最低気温,積算日照時間の推移と比較したが,関連性は得られなかった.トラップ回収時に計測した地表温とも,関連性を認めることはできなかったが,降水量が多い期間での捕獲数が少ない傾向がうかがえられた.近隣の東京都と熊谷市のソメイヨシノ標本木の開花・満開日と,幼ダニの初捕獲日などとの関連性も認められなかった.
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