ペストロジー
Online ISSN : 2432-1540
Print ISSN : 1880-3415
37 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 渡辺 護
    2022 年 37 巻 2 号 p. 57-61
    発行日: 2022/09/09
    公開日: 2023/09/09
    ジャーナル フリー

    中部山岳国立公園の立山山麓の「立山風土記の丘」における2003年から2020年のクサギカメムシ飛来数の年変化と気象との相関を解析した.その結果,産卵孵化期の最大風速が弱いこと,梅雨が早くに明けること,幼虫発育期の気温が高く日照時間が長いことなどが,クサギカメムシの飛来数が多い年の特徴であることが示された.2021年の気象は産卵孵化期の最大風速が強かったが,梅雨が早くに明け,幼虫発育期の気温が高く,日照時間が長かったことから,2021年の飛来数は2020年よりも多くなると予測したが,実際には2020年の約半数に減少した.その原因としては産卵孵化期の最大風速が強かったことで,2齢幼虫に脱皮する個体数が少なくなったことが推察された.

  • 中川 りき
    2022 年 37 巻 2 号 p. 63-67
    発行日: 2022/09/09
    公開日: 2023/09/09
    ジャーナル フリー

    ガイマイツヅリガ幼虫の米における発育及び加害形態について調査するため,異なる精米工程の米穀粒(玄米,精白米,無洗米),ぬか,米粉を餌として本種幼虫を飼育した(25℃,55%RH,16L8D).発育期間は玄米で最も短く(51.2日),米粉で最も長くなり(171.5日),精白米,無洗米,ぬかの間に差はなかった.羽化率は,他の餌(80%以上)と比べて,米粉で特に低かった(53.3%).試験終了後の玄米を観察したところ,本種幼虫は米の胚芽・ぬか(特に胚芽)を選択的に加害していた.これらの結果から,米の胚芽・ぬか部分は,本種幼虫にとって比較的好適な餌となっている可能性が示唆された.

短報
  • 芝生 圭吾, 五十嵐 真人, 勝永 秀人, 竹中 永典, 五百部 達也, 劉 鴻軒, 岩田 稔, 益田 岳
    2022 年 37 巻 2 号 p. 69-71
    発行日: 2022/09/09
    公開日: 2023/09/09
    ジャーナル フリー

    屋外で,ケージに入れたヒトスジシマカ成虫に対する殺虫試験を実施した.殺虫剤噴霧は,ドローンに搭載したULV噴霧器で行った.地上5 mを飛行中のドローンから下方45°で噴霧された5%フェノトリン乳剤は,ヒトスジシマカに対して十分な殺虫効果を示した.広さ180 m2の試験場所の18か所で,ケージに入れて高さ80 cmに配置されたヒトスジシマカ成虫は,噴霧10分後にはほとんど死亡し,散布終了60分までに蘇生する個体はなかった.今回の試験結果から,試験区の前面部に沿って5 mの高さから中央部に向かって噴霧されたとき,微粒子は試験区全域に行き渡ったことが示唆された.ドローンによる殺虫剤散布は,人が近づけない場所の媒介蚊駆除に有望と考えられた.

事例報告
  • 梶山 知代, 牛頭 夕子, 川口 侑子, 谷 真央, 田辺 堅太郎, 佐々木 均
    2022 年 37 巻 2 号 p. 73-76
    発行日: 2022/09/09
    公開日: 2023/09/09
    ジャーナル フリー

    カベアナタカラダニの発育ステージ毎の消長を明らかにする目的で,2018年から2021年までの4年間,2月初めから成ダニが捕獲されなくなる6月末までの期間,川口市三ツ和で粘着トラップを設置して捕獲調査を行い,トラップごとの捕獲個体数を発育ステージ別に記録した.その結果,11,000~31,000個体のカベアナタカラダニが,毎年発生期間中に捕獲された.建屋南側で最も多くの個体が捕獲されたが,北側と東側では少なかった.幼ダニの捕獲は,2020年を除き2月下旬から3月中旬に始まり,5月中旬までの50~99日間続いた.若ダニは,幼ダニから約1か月遅れて捕獲され始め,約2か月間継続して捕獲された.成ダニは,若ダニの初捕獲2~3週間後に捕獲され始め,約2か月継続して捕獲された.建屋南側での捕獲消長を,近隣のさいたま市のアメダスデータの平均気温,期間最高・最低気温,積算日照時間の推移と比較したが,関連性は得られなかった.トラップ回収時に計測した地表温とも,関連性を認めることはできなかったが,降水量が多い期間での捕獲数が少ない傾向がうかがえられた.近隣の東京都と熊谷市のソメイヨシノ標本木の開花・満開日と,幼ダニの初捕獲日などとの関連性も認められなかった.

  • 宮ノ下 明大
    2022 年 37 巻 2 号 p. 77-81
    発行日: 2022/09/09
    公開日: 2023/09/09
    ジャーナル フリー

    精米工場において,コクゾウムシ用のフェロモントラップに偶然捕獲されるトゲムネキスイ属甲虫について,その捕獲数を2019年の4月から3年間記録した.精米工場の複数の部屋に合計14個のトラップを設置し,1カ月に1回交換した.2019,2020,2021年度の捕獲総数は,64,14,104個体であった.工場の荷受室や糠室は,他の部屋に比べて捕獲数が多数であった.捕獲数のピークは,2019年度は12月,2020年度は1月,2021年度は12月であった.

資料
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