ペストロジー
Online ISSN : 2432-1540
Print ISSN : 1880-3415
35 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
総説
短報
  • 宮ノ下 明大, 今村 太郎, 古井 聡, 曲山 幸生
    2020 年 35 巻 2 号 p. 57-60
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル フリー
    唐辛子製品におけるノシメマダラメイガの発育について,28℃,相対湿度70%,日長:16L8Dの条件で調べた.供試試料として唐辛子は,ホール(無傷),横半分に切断,輪切りを用い,一味唐辛子はそれぞれ製造元の異なる5製品を用いた.試験は,孵化幼虫2個体を各唐辛子2.5 gに投入し,羽化までの発育日数,羽化率,成虫生体重を記録し,10~15回繰り返した.ホール唐辛子(無傷)では発育しなかった.横半分に切断したものでは,羽化率25%,平均発育日数(平均値±SE)は65.0±2.9日であった.輪切りでは,羽化率90%,平均発育日数は35.0±0.5日であった.平均成虫生体重は,横半分に切断したものに比べ,輪切りでは重くなった.これらの結果は,幼虫の発育に唐辛子の形状や硬さが影響を与えることを示している.一味唐辛子では,4製品では平均発育日数は42.5~48.3日の範囲に含まれ有意差がなかったが,1製品では81.0±10.2日で,他と比べ有意に長かった.乾燥唐辛子の揮発性成分には,昆虫に対する殺虫,忌避効作用が知られているものもある.これらの結果は,唐辛子の揮発性成分量は製品毎に異なり,幼虫の発育に影響を与える可能性を示している.
事例報告
  • 冨室 光司, 安達 義紀, 吉田 貴史, 高橋 晃弘
    2020 年 35 巻 2 号 p. 61-63
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル フリー
    2019年5月,京都府舞鶴市の食堂に置かれた蔓製品から昆虫が発生したとの相談を受け調査し,発生した昆虫を書籍の害虫として知られるフルホンシバンムシと同定したので,本種の蔓製品からの発生事例として報告した.
  • 元木 貢, 増田 智, 佐々木 健
    2020 年 35 巻 2 号 p. 65-67
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル フリー
    ドローンを使って屋根の上など高所におけるネズミなど小動物の侵入口の調査を試みた.離陸はスムーズで装着しているカメラは振動することもなくモニターで撮影箇所を確認することができた.庇の下部分,屋根と瓦の間については肉眼で確認しながら,屋根の上部部分はモニターにより操縦した.今回の調査では,庇の下部,1階屋根瓦と壁の接合部,2階屋根部分にはネズミの侵入口となる隙間は発見されなかった.
    屋根の上部など危険な箇所,立ち入り難い箇所での調査にはドローンは有用であると思われる.
  • ─関東地方11カ所における2018年の調査─
    宮ノ下 明大, 廣岡 裕吏, 佐野 俊夫
    2020 年 35 巻 2 号 p. 69-73
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル フリー
    2018年10,11月に,関東地方(東京都,埼玉県,神奈川県,茨城県)の一般住宅地11カ所において,家屋の内外に3種類の食品害虫(ノシメマダラメイガ,タバコシバンムシ,チャマダラメイガ)を捕獲可能なフェロモントラップ(セリコW+)を設置し,捕獲調査を行った.トラップは,戸建て住宅や集合住宅に,1カ所につき屋内と屋外に1個ずつの計2カ所設置した.ノシメマダラメイガとタバコシバンムシは同じトラップに捕獲されたが,チャマダラメイガは捕獲されなかった.また,今回の複数害虫が捕獲可能なトラップの捕獲性能は,従来の単独種用のトラップと大きな差はなかった.
    ノシメマダラメイガは,屋内の4カ所から合計19個体が捕獲されたが,発生源を確認できなかったことから,屋外からの侵入と考えられた.屋外では11カ所すべての地域で捕獲され,その総数は349個体であった.タバコシバンムシは,屋内の7カ所から34個体が捕獲されたが,発生源を確認できなかったことから,屋外からの侵入と考えられた.屋外では11カ所の内9カ所で捕獲され,その総数は67個体であった.
    一般住宅地において, 両種の屋内発生は非常に少ないと考えられた.家屋内の両種の捕獲数は,家屋の密封性と関連しており,密封性の低い戸建て住宅は,集合住宅よりもノシメマダラメイガの侵入頻度が高いと考えられた.また,タバコシバンムシはノシメマダラメイガよりも捕獲数は少なかったが,小型で家屋内に侵入しやすいと考えられた.
  • 乾 守裕, 廣江 猛, 王 振吉
    2020 年 35 巻 2 号 p. 75-78
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル フリー
    自然科学研究機構動物実験施設の昆虫誘引防止を目的とした,紫外線カットフィルムの効果を確認するために,粘着トラップを用いた昆虫捕獲試験を実施した.1枚の窓を中央で東西に区分けし,光源無し,光源あり,光源ありかつ西側紫外線カットフィルム有り,光源ありかつ東側紫外線カットフィルム有りの4つの条件で,区分ごとの捕獲状況を調べた.その結果,紫外線カットフィルムを張り付けた窓のほうが,有意に捕獲率が減少し,昆虫の誘引阻止効果が確認できた.そのため,昆虫誘引防止対策として紫外線カットフィルムを動物棟新館搬入口ガラスドアに施工した.
  • 中野 敬一
    2020 年 35 巻 2 号 p. 79-80
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル フリー
    2018年と2019年の8月~10月に,東京都港区の屋外に設置されている自動販売機の下にトラップを設置する方法で,誘引餌の有無によるゴキブリの捕獲の違いを調査した.有餌ではクロゴキブリ,ワモンゴキブリ,チャバネゴキブリの3種が捕獲されたが,無餌ではクロゴキブリ以外の種類はほとんど捕獲されなかった.クロゴキブリの捕獲数は有餌の方が無餌より明らかに多かった.クロゴキブリの齢構成は有餌と無餌で違いはみられなかった.
資料
  • ―特に相談件数の多い種類と急増している種類について―
    谷川 力, 真岩 智美, 吉川 新, 茂手木 眞司, 山口 健次郎
    2020 年 35 巻 2 号 p. 81-87
    発行日: 2020/09/25
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル フリー
    相談件数の総数の推移では2009年が31,178件であった件数が,2018年には42,266件と1.35倍になった.このうち,伸長率が高いものはハチ類,ハクビシン,アライグマ, トコジラミ,コウモリ類などがあげられる.ハチ類,トコジラミ,コウモリ類は季節的消長が明確で夏季に増加し,冬季に減少する傾向がみられた.ネズミ類では秋季に増加し,冬季にピークを迎え,春季に減少するパターンであった.ハクビシン,アライグマの季節的消長は,相談件数が多くないことから,今後累積された段階で検討すべきである.なお,蚊類の相談件数は2014年デング熱騒動で増加したが,2017年以降は減少した.感染症のアウトブレイク時だけでなく,平時からの媒介蚊類に対する啓発活動が重要と考える.
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