ペストロジー
Online ISSN : 2432-1540
Print ISSN : 1880-3415
36 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 岩本 啓秀, 髙橋 竜太, 今井 利宏
    2021 年 36 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2022/03/25
    ジャーナル フリー
    チャマダラメイガとノシメマダラメイガは近紫外線に誘引されることが報告されているものの,両種は既製のライトトラップではほとんど捕獲できない.両種が光に誘引される習性を有しながら,ライトトラップで捕獲できない要因を解明するために,光源の特性(放射照度,発光面の制限)が誘引性に及ぼす影響を調べた.BL蛍光管を光源とする既製のライトトラップと光源を紫外線LEDに換装したトラップを用いて捕虫試験を実施した結果,両種とも既製のライトトラップにほとんど捕獲されなかった一方,LEDでは捕獲された.LEDによる捕虫数は,放射照度10-2 W/m2(中心軸から15 cm地点の測定値)において最も多くなり,それ以上放射照度が強くなると減少した.また,BLは,発光面を制限することにより,チャマダラメイガに対して誘引性を示した.すなわち,両種は比較的弱い紫外線に誘引される一方,強い紫外線に誘引が阻害されることが示唆された.つまり既製のライトトラップに捕獲されない要因としてはBLが捕虫を妨げる強い紫外線を広範囲に照射することにあると考えられる.今回の試験から,光に反応した虫が捕獲部に至るまでの経路で強い紫外線に暴露されないように放射照度を最適化する,あるいは配光を制御することにより,チャマダラメイガとノシメマダラメイガをライトトラップで捕獲できることが明らかになった.
  • Ⅰ.立山山麓で越冬に飛来するカメムシの種類とその種構成
    渡辺 護
    2021 年 36 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2022/03/25
    ジャーナル フリー
    富山県の中部山岳国立公園「立山」の山麓の「風土記の丘」と「家族旅行村」において,越冬のために建物に飛来するカメムシと隙間トラップに潜むカメムシを調べた.前者では13種類,後者では19種類のカメムシが確認され,両地点を併せると21種類になった.いままで家屋に飛来・侵入するカメムシ類は65種類が確認されていたが,今回の調査で5種類が新たに加わり70種類になった.なお,「風土記の丘」ではクサギカメムシが97.3%と最も多く,「家族旅行村」ではスコットカメムシが76.9%と最も多く確認された.
  • Ⅱ.クサギカメムシとスコットカメムシの越冬飛来数の年変化
    渡辺 護
    2021 年 36 巻 1 号 p. 13-16
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2022/03/25
    ジャーナル フリー

    富山県の立山山麓でクサギとスコットの越冬飛来の観察を1995年から行っている.前報では,越冬に飛来するカメムシ類とそれらの種構成について報告したが,本報では,富山県において問題になるクサギとスコットの壁飛来数および潜み数の年変化,さらには補正壁飛来数と潜み数を用いた補正総合飛来数の年変化について報告した.

    「風土記の丘」の6棟におけるクサギ壁飛来数には明らかに年変化がみられ,飛来が多い年と少ない年がみられた.さらに,A棟における壁飛来数と潜み数には弱い相関が(r=0.48308),C棟では強い相関がみられ(0.75627),両棟共に年変化が確認された.補正壁飛来数と潜み数から求めた補正総合飛来数の年変化はA棟とC棟で良く一致した.また,これら両棟の補正総合飛来数の年変化は「風土記の丘」6棟の壁飛来数の年変化ともほぼ一致した.

    「家族旅行村」のG棟とH棟におけるスコットの壁飛来数と潜み数の相関は強くなかった(G棟;r=0.56342,H棟;r=0.33894).また,補正壁飛来数と潜み数から求めたG棟とH棟の補正総合飛来数も相関は弱い(r=0.56516).

    平均補正総合飛来数401頭以上を飛来の多数年,200頭以下を少数年にすると,「風土記丘」のクサギの多数年は1997,2000〜01,2002,2005,2011,2017〜19年になり,少数年は1999,2007〜09,2013〜14,2015〜16年になった.「家族旅行村」のスコットの多数年は1995〜96,2000〜01,2005年になり,少数年は1999,2002〜04,2007,2009〜10,2012〜13,2015〜19年になった.

  • Ⅲ.クサギカメムシとスコットカメムシの年変化と自然現象について
    渡辺 護
    2021 年 36 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2022/03/25
    ジャーナル フリー

    富山県の立山山麓で1995年からクサギカメムシとスコットカメムシの越冬飛来の観察してきた.今回,クサギカメムシおよびスコットカメムシ飛来数と降雪量の関係,クサギカメムシ飛来数とスギ花粉飛散量との関係,さらに両種の飛来数に影響を及ぼす気象要素との関係について検討を行った.

    クサギカメムシの飛来数と降雪量には関係はみられなかったが,スコットカメムシでは飛来数が多いと降雪量が多くなることが示唆された.また,クサギカメムシの飛来数を春のスギ花粉飛散量で予測することは出来なかった.

    クサギカメムシの飛来数が多い年は交尾産卵期(5月上旬〜6月下旬)と幼虫発育期(5月下旬〜8月上旬)の最高気温が高い傾向が示された.スコットカメムシの飛来数が多い年は羽化期(8月下旬〜9月中旬)の降水量が少ない傾向,飛来期(10月下旬〜11月中旬)の風速が弱い傾向が示された.

事例報告
資料
  • 今井 利宏
    2021 年 36 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2022/03/25
    ジャーナル フリー
    培養したカビを用いたオオメヒメマキムシの飼育法を確立した.1.5倍に希釈したオートミール寒天培地(寒天は規定濃度)でPenicillium rubensを培養し,胞子形成後に培地ごと乾燥して飼料とした.ろ紙を張った9 cmシャーレに飼料を置き,羽化1週間から2カ月後までの成虫50〜60個体(雌雄の区別なし)を接種し,1週間後に成虫を除去する.このような方法により,25〜30°Cでは成虫接種から3〜4週間で次世代の成虫が100〜200個体程度得られる.同様の方法で,ムナビロヒメマキムシとユウレイヒメマキムシの飼育が可能である.
feedback
Top