本研究では,栽培時の光強度および同一個体内における葉位の違いが,バジル葉の香りに及ぼす影響を評価した.なお,葉柄で切断したin situの葉身(Whole leaf)の香りと“ちぎる,切る,咀嚼する”といったバジルの一般的な調理を再現した細断葉(Shredded leaf)の香りを解析することで,バジル葉の食材としての香りを詳細に解析した.栽培時の光強度の違いはバジル葉のVOC放出に影響を与え,また,空間的に上位にある葉の被覆によって生じる葉面に入射する光強度の違いも同様の影響を与えることが確認された.さらに,このVOC放出特性の違いは,葉を破壊しないin situの葉身(Whole leaf)を対象とした場合には明確ではなく,細断処理(Shredded leaf)を施して初めて明確になることも確認された.他方,葉面に入射する光強度が特定の値以下となる場合には,光強度の違いがVOC放出特性に及ぼす影響が小さくなることも示唆された.これらの結果は,商業的人工光型植物工場において栽培時の光強度を変化させることで香りの異なるバジルを生産できる可能性を示唆しつつも,個体内でのバラツキも考慮した商品化戦略が必要であることも示していた.
生産現場への普及を念頭に置き,市販の機器を用いて,イチゴ果実の成熟度別(花,未熟果実,半熟果実,完熟果実)検出AIを構築した.この結果,信頼度閾値6割における判定精度は,1度目の構築で花57 %,未熟果実95 %,半熟果実97 %,完熟果実94 %,総項目90 %となった.花の教師データを追加した2度目の構築で,花の精度は29 %向上し,果実の精度は未熟および半熟で3 %,完熟で1 %の下降となった.果実の精度が低下した原因として,花の教師データの追加により果実と花における形態の共通点が増加し,AIによる果実と花の判別が難化したことが考えられた.