日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
選択された号の論文の459件中401~450を表示しています
ポスターセッション
  • 黄 唯屹, 外山 喬士, 永沼 章, 黄 基旭
    セッションID: P-196
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】我々は、メチル水銀を投与したマウスの脳内で炎症性サイトカインの一種であるオンコスタチンM(OSM)の発現が誘導されることを見出した。また、種々の培養細胞においてもメチル水銀によるOSMの発現誘導が認められ、また、OSM発現抑制細胞が示すメチル水銀耐性獲得が培地にリコンビナントOSMを添加することによって認められなくなったことから、メチル水銀によって発現誘導されたOSMが細胞外に放出された後に細胞膜上に存在する受容体に結合することで細胞死を誘導する可能性が示唆されている。本研究では、遺伝子操作が容易なヒト胎児腎臓由来のHEK293細胞を用いてメチル水銀によるOSM発現誘導機構の解明を目指した。

    【結果・考察】HEK293細胞をメチル水銀で処理するとOSMの発現誘導が認められ、この発現誘導は転写阻害剤であるアクチノマイシンの前処理によって著しく低下した。このことは、メチル水銀はOSM遺伝子の転写促進を介してその発現を誘導していることを示している。OSM遺伝子の転写促進には転写因子としてAP-1、NF-κB、CREBおよびSTAT3が関与することが知られている。そこで、これらの転写因子の発現をそれぞれ異なる2種類のsiRNAにより抑制したところ、AP-1構成因子であるc-Junの発現抑制によってのみ、メチル水銀によるOSM発現誘導能が低下した。また、メチル水銀処理によってc-Junの活性化を示すリン酸化レベル、および、そのリン酸化に関わるc-Jun kinase (JNK)のリン酸化レベルがともに増加した。さらに、JNK阻害剤の前処理によってメチル水銀によるc-Junのリン酸化およびOSM発現誘導の程度がともに抑制された。以上のことから、メチル水銀はJNKによるc-Junの活性化を介してOSMの発現を誘導していることが示唆された。

  • 角 大悟, 亀田 理湖, 姫野 誠一郎
    セッションID: P-197
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】アジア諸地域での井戸水を介した、慢性ヒ素曝露により多臓器への発がんが問題となっているが、機序に関して不明な点が多い。一方、がん細胞の遊走および浸潤は、がんの転移過程において極めて重要である。そこで本研究では、細胞の遊走能や浸潤能に対するヒ素化合物の影響について検討することを目的とした。

    【方法】細胞:ヒト表皮角化HaCaT細胞。ヒ素化合物:メタ亜ヒ酸ナトリウム(As(III))。タンパク質発現量:ウエスタンブロット法で検出した。 長期曝露:3 or 4日ごとに継代を行い, 継代ごとにAs(III)を添加した。遊走能:スクラッチ法。浸潤能:マトリゲルを通過した細胞をギムザ染色し、顕微鏡で観察した。

    【結果】遊走能に対する実験: HB-EGFにより誘発されるHaCaT細胞の遊走能に対するAs(III)の影響を検討したところ、As(III)の曝露によりHB-EGF単独添加と比べ細胞の遊走能がより増強された。As(III)の遊走増強作用を明らかにするために、MAPKsやPI3Kの阻害剤を用いたところ、ERK, p38, JNKの阻害剤により、HB-EGFによる遊走活性が阻害された。次に、ERK, p38, JNKのリン酸化に対するAs(III)曝露の影響を検討したところ、HB-EGFによるERKのリン酸化が、As(III)の共存により増強された。以上の結果から、As(III)によるHaCaT細胞の遊走能増強作用において、ERKの関与が明らかとなった。

    浸潤能に対する実験:As(III)による細胞の浸潤能への影響を明らかにするために、HaCaT細胞を0.5, 1.0 µM のAs(III)に1〜3週間曝露した。As(III)に曝露されたHaCaT細胞をマトリゲル上に播種し、FBSに対する浸潤能を比較したところ、As(III)の曝露濃度および曝露時間により浸潤能の増強が検出された

    【考察】HaCaT細胞をAs(III)に曝露することにより細胞の遊走および浸潤能が増強されることを見出した。今後、As(III)によるERKのリン酸化の活性化経路ならびに、浸潤能の活性化に関わる因子を同定していきたいと考えている。

  • 高瀬 愛, 角 大悟, 姫野 誠一郎
    セッションID: P-198
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【背景】無機ヒ素は、ヒ素メチル基転移酵素(AS3MT)によってメチル化されることで排泄される。DNAから転写された未成熟なmRNAはスプライシングにより成熟したmRNAとなる。意図的な選択的スプライシングにより多様なmRNAが産生される一方で、非意図的な選択的スプライシングが誘発されてしまうと、不完全長なmRNA、タンパク質の産生を促してしまう。当研究室では、HepG2細胞を用いた検討により、AS3MT mRNAが選択的スプライシングを受けていることを見い出している。これらの背景から本研究では、(1)ヒ素の毒性にスプライシングが関与するか、(2)HepG2以外の細胞におけるAS3MT mRNAのスプライシングについて、の2点について検討した。

    【方法】細胞:HepG2、HaCaT、HL-60、NB4、K562細胞。スプライシングの検出:One-Step RT-PCR Kitを用いた。タンパク質量:western blot法で検出した。siRNA導入:リポフェクション法で導入した。細胞毒性:alamarBlue試薬を添加後、マイクロプレートリーダーで測定した。

    【結果】当研究室では、AS3MTのスプライシングにSRSF5の関与の可能性を見出している。そこで、SRSF5によるスプライシングの調節が、ヒ素の毒性に関わるかについて検討を進めた。siRNAを用いSRSF5を減少させたHaCaT細胞の亜ヒ酸に対する細胞毒性を測定したところ、SRSF5を減少させた細胞では亜ヒ酸に対する感受性が上昇していた。本結果から、SRSF5がヒ素の毒性を規定する因子であることが示唆された。次に、HepG2以外の細胞として白血病細胞由来のHL-60, NB4, K562細胞でのAS3MT mRNAを検討した。その結果、野生型のAS3MT mRNAはどの細胞においても存在するが、その量はHepG2細胞に比べて低いことがわかった。さらに、白血病由来の細胞では、野生型と同程度の発現量を持ったスプライシングバリアントが存在することが明らかとなった。

  • 外山 晴菜, 中山 将希, 角 大悟, 姫野 誠一郎
    セッションID: P-199
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】当研究室では、急性前骨髄球性白血病治療薬として認可されている亜ヒ酸製剤(As(III))と全トランスレチノイン酸(ATRA)との併用療法の有用性について基礎的な検討を進めている。その結果、ATRAとAs(III)の同時添加により、HL-60細胞の分化がより増強されること、その際に細胞内のヒ素濃度が顕著に上昇することを見出した。As(III)の細胞内への通過に、アクアポリン(AQP)ファミリーのなかでも、グリセロールを通過させるアクアグリセロポリンの関与が知られている。本研究では、(1)As(III)による分化増強作用におけるAQPの関与、(2)HL-60細胞の分化におけるグリセロールの役割、を明らかにすることを目的とした。

    【方法】細胞:HL-60細胞を使用した。分化:表面抗原CD11b発現量をFlow cytometryで検出した。mRNA量:realtime-qPCR法で測定した。siRNA導入:Electroporation法を用いた。

    【結果および考察】 (1)ATRAを添加したHL-60細胞からRNAを回収し、AQP3, 7, 9のmRNA量を検討した。その結果、AQP9 mRNA量はcontrol細胞と比較して、ATRAにより上昇した。そこで、AQP9 siRNAを導入したHL-60細胞にATRA、ATRA + As(III)を添加後の分化を比較した。その結果、control siRNA処理した細胞では、ATRA + As(III)の添加によりATRA単独添加に比して分化が約2倍に増強していたが、AQP9 siRNA処理した細胞では、ATRA + As(III)による分化増強作用はほとんど検出されなかった。(2)AQP9はヒ素だけではなく、グリセロールも通過させることが知られている。そこで、HL-60細胞に血中グリセロール濃度を考慮した0.1, 0.2, 0.5 mM、さらに毒性を示さない10, 50, 100 mMのグリセロールを添加し、48時間後の細胞の分化を測定した。その結果、0.1~0.5 mMではグリセロールによる作用を検出できなかったが、100 mMでグリセロール単独で細胞の分化誘導が検出された。さらに、0.1 µM ATRAとグリセロールの同時添加によりATRA単独と比較し、細胞の分化が増強されることが明らかとなった。

  • 西村 和彦, 尾川 和弥, 桐山 直毅, 中川 博史
    セッションID: P-200
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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     環境中に多く含まれる5価のヒ素化合物の毒性解析は、亜ヒ酸に代表される3価のヒ素化合物に比べて進んでおらず、詳細は明らかになっていない。我々は5価のヒ素化合物であるヒ酸がHepG2細胞において活性酸素種(ROS)の増加を介してエリスロポエチン(EPO)産生を促進させることを報告した。EPOが細胞保護に関与することは様々な細胞で報告されており、我々もHepG2細胞において産生されるEPOがHepG2細胞自身に保護作用があることを報告した。ヒ酸によるEPO産生促進もROS産生増加から細胞を保護する作用を持つと考えられる。ROS産生はオートファジーを誘導し、細胞を保護することも報告されているが、ヒ酸では明らかではない。そこでHepG2細胞を用いてヒ酸によるROS産生がオートファジーを誘導するのか、そして同時に起こるEPO産生促進との関連について解析した。mRNA発現量はリアルタイムRT-PCR法で、タンパク量はウエスタンブロッティング法で測定した。細胞内ROS量は蛍光染色により、オートファジー誘導は蛍光染色とLC3タンパク量で評価した。HepG2細胞においてROS産生は起きるが生存率には影響しない100 μMヒ酸、24時間処置において、EPO mRNA発現量は増加し、オートファジーが誘導された。この時、アポトーシス誘導は増加しなかった。ヒ酸と同時にROSスカベンジャーのtempolを添加すると、ヒ酸によるROS産生は抑制され、EPO mRNA発現、オートファジー誘導ともに増加しなかった。ヒ酸とオートファジー阻害剤の3メチルアデニンの添加はEPO mRNA発現に影響しなかったが、生存率を低下させた。Si-EPOを処置したHepG2細胞へのヒ酸添加も生存率を低下させた。Si-EPOと3メチルアデニンの同時処置はSi-EPO処置のみに比べて、ヒ酸添加により生存率が有意に低下した。これらの結果からヒ酸添加により産生されたROSはオートファジー誘導およびEPO産生を介した細胞保護作用を持つことが示唆された。

  • 高根沢 康一, 中村 亮介, 日下 智矢, 曽根 有香, 浦口 晋平, 清野 正子
    セッションID: P-201
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】ガドリニウム(Gadolinium;Gd)は、Magnetic resonance imaging(MRI)検査の造影剤として用いられる希土類元素であり、現行におけるほぼ全てのMRI検査にGdが用いられている。Gd造影剤は腎機能不全患者に禁忌とされているが、近年、脳においてGdが残存することが報告され、人体に対するGdの潜在毒性が懸念され始めた。本研究ではin vitroin vivoレベルでGdの生体に対する影響を検証することを目的とした。

    【方法】in vitro実験:Gd3(NO3)あるいはGdCl3をヒト胎児腎細胞であるHEK293細胞に処理し、オートファジーマーカーであるLC3-Ⅱの発現をウエスタンブロット法で評価した。オートファジー活性は、クロロキン(CQ)を用いたフラックスアッセイにて評価した。in vivo実験:BALB/c、雄性、5週齢マウスに、ガドリニウム造影剤のヒト投与等価容量(5 g/kg)のGd3(NO3)を基準とし、コントロール群、低容量(0.2倍容量)群、等価容量群、高容量(2倍容量)群の計4群(各群n=6)を設定しマウス尾静脈に単回投与した。ばく露2週間後、各組織のガドリニウム蓄積量を誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)により測定した。脳・肝臓・腎臓の各臓器の病理組織学的はHE染色により評価した。

    【結果・考察】in vitro実験:HEK293にGd3(NO3)あるいはGdCl3を処理したところ、いずれも、濃度依存的な細胞生存率の低下、LC3-Ⅱの増加がそれぞれ認められた。フラックスアッセイの結果、CQとGdの併用処理群において、CQ単独処理群と比べてLC3-Ⅱが有意に増加し、Gdによるオートファジーの活性化が示唆された。in vivo実験:Gd3(NO3)投与群のマウスの筋肉・歯・脳においては低濃度、肝臓・骨・皮・腎臓においては高濃度のGdが検出された。一方、マウスの行動および剖検における各臓器にほとんど異常は認められなかった。これらの結果から、オートファジーによるGd毒性軽減作用が示唆された。今後は、反復投与によるGdの慢性毒性影響とオートファジー応答の関係性について検証していく予定である。

  • 杉原 数美, 久波 沙矢香, 山光 翔也, 清水 良, 佐能 正剛, 古武 弥一郎, 北村 繁幸, 太田 茂
    セッションID: P-202
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】環境中から医薬品類や生活関連化学物質(PPCPs : pharmaceuticals and personal care products)が検出されるようになり、ヒトや生態系への影響が懸念されている。PPCPsは医療施設や各家庭が汚染源で、高濃度で含有する生活排水は主に下水に排出されるが、下水処理場で除去され切れずに環境中に流出するものも多く、水環境中での生態毒性などが懸念されている。下水処理場では、浄水処理の最終段階で消毒のため塩素の注入が行われていることより、下水処理で除去し切れなかったPPCPsが塩素消毒処理により構造変換を受け、新たな毒性を発現することが考えられる。これまでいくつかの医薬品で、塩素消毒処理により変異原性が発現することを明らかとしている。本研究では、変異原性以外に、生態系への毒性も検討した。

    【実験方法】下水処理場で行われている塩素消毒のモデル反応として、PPCPsに次亜塩素酸ナトリウム溶液を加え0.5〜24時間室温で撹拌反応させた後、チオ硫酸ナトリウムで中和後、固相抽出し試料とした。経時的な分解率及び分解物の生成をHPLCで検出し、変異原性をAmes試験で調べた。生態系への毒性として、藻類成長阻害試験および海洋発光微生物(Photobacterium phosphoreum)を用いた毒性試験を行った。

    【結果および考察】PPCPsとしてchlorpromazineを検討した。塩素消毒処理で、濃度依存的な未変化体の減少といくつかの分解物の生成が認められた。塩素処理後の抽出物を用い、Ames試験を行ったところ、chlorpromazine 自身では菌に対する毒性がみられたが、塩素処理後の試料ではTA98, TA100株ともに有意な変異原性の発現が濃度依存的にみられた。本活性はS9 mix処理で低下が観察され、代謝により変異原性が減少することが示唆された。藻類生長阻害試験およびP. phosphoreumを用いた毒性試験では、chlorpromazineによる毒性が高かったが、塩素処理により毒性の低下がみられた。低濃度の塩素処理でも分解が認められたことより、下水処理過程においてもモデル反応と同様の分解物が生成していることが考えられる。

  • 小林 憲弘, 土屋 裕子, 五十嵐 良明
    セッションID: P-203
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    ヒト用医薬品の河川水等の水環境中での存在実態を把握するために,LC/MS/MS一斉分析法の検討と,分析法の妥当性評価を行った。さらに,本研究で確立した分析法を用いて,2018年1月~2019年3月にかけて全国の河川水の医薬品モニタリング調査を行った。最初に,医薬品58種の前処理方法とLC/MS/MS一斉分析条件について検討し,各医薬品濃度が100 ng/Lおよび10 ng/Lとなるように精製水に添加した試料を用いて,各濃度につき5併行で試験して分析法の妥当性評価を行った。その結果,約40種類の医薬品は,いずれの添加濃度においても概ね良好な回収率(70~130%)と再現性(RSD<30%)が得られた。回収率が良好でなかった医薬品の多くは,LC/MS/MS測定中に濃度が減少したため,水中で分解しやすい医薬品と考えられた。河川水モニタリングは,2018年1月~3月にかけて17都道府県の合計72試料,5~9月にかけて全国21都道府県の合計109試料を分析した。その結果,1~3月の調査では44種,5~9月の調査では46種,合計48種の医薬品が検出された。いずれの調査でもクロタミトン,ディートは全ての試料で検出された。セフカペンピボキシル,セフジレントピポキシルは1~3月の調査のみで,ナテグリニドは5~9月の調査のみで検出された。1~3月の調査ではアジスロマイシン(中央値:114 ng/L,最大値:15500 ng/L)が,5~9月の調査ではスクラロース(中央値:116 ng/L,最大値:10400)が最も高濃度で検出され,いずれの調査でも高濃度で検出された医薬品はほぼ同じであった。今後は,国内において処方量が多い医薬品を調査対象に追加し,全国の河川水および下水処理場放流水の調査を実施する。

  • 小川 真弘, 原島 小夜子, 京谷 恭弘, 川西 優喜, 八木 孝司, 寺田 めぐみ
    セッションID: P-204
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】内分泌かく乱物質は、極微量で我々の体内に数種類存在するホルモン等の生理活性物質の働きを模倣あるいは阻害する。内分泌かく乱作用のin vitro 試験系として出芽酵母を用いたレポーター遺伝子アッセイが挙げられる。従来の出芽酵母は化学物質の細胞膜浸透性が低く、哺乳動物細胞を用いた評価系に比べ内分泌かく乱作用の検出力が低い問題点があったが、我々はこれまでに化合物の細胞膜透過性が高い出芽酵母を用いたレポーター遺伝子アッセイを確立し、内分泌かく乱物質を高感度に検出可能であることを報告している。そこで本試験では、エストロゲン受容体(ERα及びERβ)、アンドロゲン受容体(AR)、プロゲステロン受容体(PR)を評価する4つのレポーター遺伝子アッセイを用いてプラスチック含有物であるビスフェノールA及びビスフェノール関連化合物を評価した。

    【方法】ERα、ERβ、ARあるいはPRを高発現している高透過性出芽酵母を被験物質存在下で18時間培養した。その後、レポータータンパク質であるβ-ガラクトシダーゼを出芽酵母から溶出させ、酵素活性を測定した。また被験物質の出芽酵母に対する毒性影響をβ-ガラクトシダーゼを恒常的に発現している出芽酵母を用いて評価した。

    【結果】ビスフェノールAはERα及びERβの評価系においてレポーター活性を濃度依存的に増加させ、AR及びPRの評価系において濃度依存的に減少させた。コントロール出芽酵母株を用いた試験においてビスフェノールAはβ-ガラクトシダーゼ活性に影響を及ぼさなかったことから、レポーター活性の減少は出芽酵母に対する毒性影響によるものではないと判断した。またビスフェノール関連化合物にもPRの評価系においてレポーター活性を濃度依存的に減少させるものがいくつか認められたが、これまでに試験した被験物質の中では、ビスフェノールAが最も低い濃度でPRアンタゴニスト活性を示した。ビスフェノールA及びビスフェノール関連化合物は既知のERα/βアゴニスト活性及びARアンタゴニスト活性以外にPRアンタゴニスト活性を有することが判明した。現在、ビスフェノールAのPRアンタゴニスト活性が生体に及ぼす影響について検討している。

  • 久保田 彰, Jae Seung LEE, 若山 裕己, 中村 倫子, 芳之内 結加, 岩田 久人, 平野 将司, 中田 晴彦, 川合 佑典
    セッションID: P-205
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    ビスフェノールA(BPA)は、エストロゲン受容体(ER)を介した内分泌撹乱作用や中枢神経系に対する毒性を引き起こすことから、国内外でリスクの再評価や規制が実施されてきた。一方、BPAの代替物質としてBPS、BPF、BPAFなどの利用が近年増加しつつあるが、その安全性評価は立ち遅れている。そこで本研究では、ゼブラフィッシュを用いたin vivo in silico解析により多様な新世代ビスフェノール類のエストロゲン様作用を評価・比較した。まず、胚を用いてin vivo曝露試験を行い、ER標的遺伝子(CYP19A1b)のmRNA発現量に関する用量-応答曲線より、CYP19A1b誘導能を指標とした50%影響濃度(EC50)ならびに相対活性値(REP)を算出した。EC50およびEmaxによる比較では、BP C2およびBPAFは、最大効力は低いが相対的に高い用量効果を示した。一方、BPA、BPE、BPFは、用量効果は相対的に低いが、E2と同等の高い最大効力を示した。またBis-MPは、用量効果・最大効力ともに高値を示した。REPによる比較では、Bis-MPが他のBPAと比べ一桁高い値を示した。次いで、分子シミュレーションソフトを用いてERの3Dホモロジーモデルを構築し、新世代ビスフェノール類との相互作用をin silicoでシミュレーションした。その結果、各ERサブタイプ(Esr1, Esr2a, Esr2b)との相互作用エネルギーが低い物質ほど、in vivoにおけるCYP19A1b誘導のEC50値は有意に低値を示した。これに対し、REPと相互作用エネルギーの負の相関関係は、Esr2bのみで有意であった。本研究の結果から、新世代ビスフェノール類とERサブタイプの相互作用をin silico解析することで、in vivo曝露試験によるエストロゲン様作用の用量効果を予測できることが示唆された。

  • 長谷川 潤, 長田 理沙, 北條 寛典, 中川 公恵
    セッションID: P-206
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    Di(2-ethylhexyl)phthalate (DEHP) is a manufactured chemical widely used for plastics to make them flexible. It is present in many plastics, especially in vinyl materials. DEHP non-covalently binds to plastics, therefore is will leach out of the products. Exposure to DEHP during pregnancy has been known to cause developmental defect of embryos. Although this toxic effect of DEHP to embryos are believed to be a consequence of direct actions of DEHP in embryos, possible contribution of indirect mechanism through its toxic effect to the maternal body still remains and to be clarified. Therefore, we here examined the effect of DEHP to maternal uterus. ICR female mice were administered DEHP for 7 days from the day which a vaginal plug was found. The uterus was analyzed at gestational day 17, 2 days before in due date. Gene expression analyses by quantitative RT-PCR indicated the increase in expression of Fabp4, a multivalent secreted protein affecting inflammation and/or cell proliferation. The expression of Ki67 and Pcna mRNAs were lower in the DEHP-treated uterus, suggesting that the DEHP intake suppresses cell proliferation in the uterus of due date imminentness. Because Fabp4 has been implicated to inhibit the cell proliferation through the regulation of uncoupling protein 2 (Ucp2), we examined the expression of Ucp2 mRNA and found the decreased expression of Ucp2 in the DEHP-administered uterus. These results indicate that intake of DEHP in the early pregnant stages affects cell proliferation in the parturient uterus through the regulation of Ucp2.

  • 永山 愛美, 八木 竜太, 渕上 淳一, 秋江 靖樹
    セッションID: P-207
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】皮膚毒性の中でも皮膚障害の指標となる掻痒及び皮膚機能低下(水分含有量等)を検出し,定量化することは困難である.今回我々は,NC/Ngaマウスを用いて痒み及び乾燥を引き起こすアトピー性皮膚炎モデルを作製し,掻破回数,皮膚水分含量,経表皮水分蒸散量及び皮膚弾力性を測定し,痒み及び皮膚機能の評価方法を検討した.

    【方法】NC/Ngaマウスに,ダニ抗原(ビオスタAD®)を週2回,5週間塗布し,アトピー性皮膚炎に類似した症状を誘発した.誘発前及び誘発後,皮膚計測器(キュートメーター)を用いて経時的に皮膚機能(皮膚水分含量,水分蒸散量及び皮膚弾力性)を測定し,誘発後5週目に行動測定解析システム(ANIMA)を用いて掻破回数を測定した.また,皮膚炎症状のスコア評価,血中IgE濃度,皮膚の病理組織学的検査を実施し,掻痒及び皮膚機能評価との相関性を確認した.

    【結果】ダニ抗原誘発モデル群では,正常群と比較して皮膚水分含量及び皮膚弾力性の低下,経表皮水分蒸散量の増加が認められた.また,誘発後5週目の掻破回数も正常群と比較して増加した.さらに,皮膚炎症状のスコア評価,血中IgE濃度及び皮膚表皮の肥厚についても同様の推移を示した.以上から,掻破回数及び皮膚機能測定は,皮膚障害の指標として皮膚毒性を評価できる一手法として有用であることが示唆された.本学会では,タクロリムスの投与による皮膚障害低下の検出結果についても併せて報告する.

  • 樋口 仁美, 土井 悠子, 藤原 あかり, 森岡 舞, 今井 則夫, 米良 幸典, 玉野 静光
    セッションID: P-208
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】

    近年、市販医薬品(経口剤及び静注剤)の塗布剤や貼付剤への剤型変更、新製剤または効能追加などによるLCM戦略において、投与局所(皮膚)の発がん性評価が可能な中期皮膚発がん性試験の需要が高まっている。しかしながら、被験物質に刺激性がある場合、皮膚の発がん性(あるいはプロモーション)にどの程度影響するのかは明確にされていない。本発表では、皮膚発がん性評価における刺激性の影響について検討する初期段階として、既知の皮膚刺激性物質を中期皮膚発がん性試験で使用するマウスの皮膚に塗布した際の、皮膚反応について検討した。

    【方法】

    7週齢の雌のCrl:CD1(ICR)マウスの背部被毛を約2×4 cmの広さで剪毛した後、皮膚刺激性物質であるオレイン酸、α-ヘキシルシンナムアルデヒド(HCA)、ヘプタナール及びシクラメンアルデヒドを週7日、4週間連続投与した。投与用量は、肉眼的に潰瘍や痂疲形成が認められず、連続投与が可能な用量を選択した。媒体としてオレイン酸及びHCAはアセトンを、ヘプタナール及びシクラメンアルデヒドは99.5%エタノールを使用した。週1回、体重測定するとともに、塗布部位の状態を詳細に観察した。4週経過後に投与部位(背部皮膚)を摘出し、病理組織学的検査を実施した。

    【結果・まとめ】

    投与期間中、HCA及びシクラメンアルデヒドを投与した数例に投与部位の紅斑がみられた。病理組織学的検査では、いずれの物質も用量依存的に表皮の肥厚がみられ、紅斑が観察された個体ではその程度は強くみられた。肥厚の厚さは一定ではなく、同一個体でも厚い部位と薄い部位が混在していた。

  • 髙石 雅樹, 佐藤 加奈, 佐々木 恵, 平賀 建, 武田 利明, 浅野 哲
    セッションID: P-209
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】マイトマイシンC(MMC)はDNA架橋形成により抗がん活性を示すと共に、フリーラジカルを産生することが知られている抗がん剤である。MMCは起壊死性抗がん剤に分類され、血管外漏出した際に重篤な皮膚傷害を引き起こすことがある。そして、MMCの血管外漏出による皮膚傷害に対して冷罨法が推奨されているが、その有効性に関する科学的根拠は乏しい。

    そこで、MMCの医薬品製剤が血管外漏出した際に引き起こす皮膚傷害に対する冷罨法の効果を検討した。

    【方法】①正常ヒト皮膚線維芽細胞(SF-TY細胞)にMMCの臨床用薬液とその希釈溶液を23℃、37℃及び41℃で24時間曝露し、細胞生存率を測定した。②SF-TY細胞にMMCの臨床用薬液とその希釈溶液を23℃及び37℃で24時間曝露し、乳酸脱水素酵素(LDH)放出量を指標にした細胞傷害性を測定した。③SF-TY細胞にMMCの臨床用薬液とその希釈溶液を23℃及び37℃で96時間まで経時的に曝露し、細胞生存率を測定した。

    【結果・考察】①MMC曝露により細胞生存率の低下が認められ、37℃での曝露に比べて23℃での曝露では細胞生存率の低下が抑制されたが、41℃での曝露では細胞生存率の低下が増強された。②MMC曝露により細胞傷害性が認められ、37℃での曝露に比べて23℃での曝露では細胞傷害性が抑制された。③MMC曝露24時間後以後、37℃で曝露した細胞に比べて23℃で曝露した細胞の生存率は高く、この細胞生存率の差は曝露時間の延長に伴って大きくなった。

     従って、MMCが引き起こす皮膚傷害に対して冷罨法は抑制効果を示し、この効果は臨床用薬液の希釈溶液においても認められ、MMCが漏出部位で拡散・希釈した際にも有効であることが示唆された。また、冷罨法を継続して実施することでその有効性が増強される可能性が考えられた。

  • Hsiu Chu CHOU, Chung Ming CHEN, Tsui Ling KO, Shu Hui JUAN
    セッションID: P-210
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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     It is well documented that thio-containing antithyroid drug- propylthiouracil (PTU) and hypothyroidism disturb taste acuity in human and experimental animal. We investigated the histology and ultrastructure of vallate taste buds in adult gerbil after intraperitoneal injection of PTU and also in adult gerbil after thyroidectomy. All animals were killed and their vallate papillae were processed for light and electron microscopy as well as morphometric analysis. The results from PTU-treatment and thyroidectomized animals were similar, two types of degenerating cells, i.e. the light-vacuolated cells and the dark-condensed cells, were significantly increased in the gerbil taste buds. The vacuoles that observed in the light-vacuolated cells were identified as dilated endoplasmic reticulum cisternae filled with the flocculent material of low electron density. Dark-condensed cells were characterized by the pyknotic nucleus and their dense cytoplasm. Morphometric analysis revealed that the percentages of type I and type II cells were decreased, and those of light-vacuolated and the dark-condensed degenerating cells were increased corresponding to the decrease of type I and type II cells in the PTU-treatment and thyroidectomized animals. These observations suggest that in gerbil circumvallate taste buds, both PTU-treatment and thyroidectomy induce significant morphological alterations, which may due to the actions of thyroid hormone.

  • 梅屋 直久, 宮脇 出
    セッションID: P-211
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的・背景】網膜電図(ERG)は網膜の機能を評価する方法であり、その中でc波は網膜色素上皮の機能を反映している。c波は低い周波数帯域で検出される陽性波であり、通常の交流増幅器を用いるERG測定機器では検出されず、その測定には直流増幅器などの特殊な装置の増設が必要であった。しかし、直流増幅器を用いた場合、基線の揺れが大きくなるなど技術的に難しい側面もあった。そこで我々は既存のERG測定機器を用いてc波が測定可能な条件を検討した。また、条件検討後、測定された陽性波の特異性を検証するため、網膜色素上皮を傷害するヨウ素酸ナトリウムをラットに投与し、ERGの波形がどのように変化するかを記録した。

    【方法】Low cut filterを0.3~0.01 Hzに設定できるように改良した網膜電図装置を用いて、LE系ラットに様々な強度の光刺激を5秒間照射し、各フィルター周波数におけるc波の測定検討を行った。測定法検討後、ラットにヨウ素酸ナトリウムを50 mg/kgで単回尾静脈投与し、投与前、投与後 6, 24, 72 hにおいてERG測定を行った。また、同時に一般的なERG測定(Rod Response, Maximal Response等)における変化との比較も行った。

    【結果】Low cut filterが0.3 Hzの時、c波と考えられる陽性波は確認されず、フィルター周波数を低くするにつれて、陽性波がみられ、0.01 Hzの時、振幅は最大となった。この波形はヨウ素酸ナトリウム投与後6 hでa波、b波など他の波形に先んじてほぼ完全に消失した。

    【考察】ヨウ素酸ナトリウムを用いた検証からLow cut filter 0.01 Hz設定時にみられた陽性波はc波であることが確認された。本検討により交流増幅器によるERG測定でもc波の測定は可能であり、より簡便に安定した網膜色素上皮の機能的評価を行えることが示された。

  • Christopher M BANKS, Balazs TOTH, Babunilayam GANGADHARAN
    セッションID: P-212
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    The objective of this 90-day study was to obtain information on the toxicity of a smelting by-product when administered to Wistar (Han) rats via the inhalation route for at least 90 days (6 hours/day, 5 days/week), with the aim of evaluating any toxic effects, without death or suffering, and verification of clearance mechanisms.

    The animals were exposed to the test atmosphere at concentrations of 0.3, 0.1 and 0.03 mg/L (High, Mid and Low Dose), using a nose-only exposure system. Control animals were exposed to filtered air. The Mass Median Aerodynamic Diameter (MMAD) was 2.41±2.09 µm to 2.65±2.02 µm and considered respirable by rodents.

    The exposure to the test item resulted in increased lung weights in the test item exposed animals in a dose dependent manner, when compared with controls.

    Microscopically, test item-related changes were seen in the lung as diffuse pigmented macrophages or free pigments in the alveoli; pigment in the bronchus associated lymphoid tissue (BALT); and minimal to slight multifocal alveolar epithelial hyperplasia. Pigment was also seen in the mediastinal lymph nodes of animals exposed to the test item, with multifocal eosinophilic globules (droplets) observed in the respiratory and/or olfactory epithelium of the nasal cavity.

    In conclusion, changes seen in this study were considered to be non-adverse physiological responses or secondary responses to the inhaled test item. In the lung, macrophages loaded with a black pigment were considered to be a result of a normal physiological response to phagocytose and remove the inhaled test item.

  • 矢野 純司, 川本 研介, 下間 由佳子, 成田 光司, 宮田 かおり, 浅野 敬之, 内海 徹
    セッションID: P-213
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【背景】小動物用マイクロX線Computed Tomography(micro-CT)は、解像度が非常に高く、ラットやマウスなど実験用小動物の体内を非侵襲的かつ経時的に2次元あるいは3次元画像として観察することができるため、各種毒性試験への応用が期待される。本研究では既知の肺線維化誘導物質であるブレオマイシン(BLM)による肺の病態の進行と回復性についてmicro-CTを用いて解析した。

    【方法】8週齢RccHan:WIST 雄ラットにBLMを3.0 mg/kgの用量で単回気管内投与し、投与後5, 14および21日それぞれにおいてmicro-CT撮影後(CosmoScanGXⅡ、撮影条件:90 kV, 88 μA, 呼吸同期モード)、右肺は気管支肺胞洗浄液(BALF)の回収に、左肺は重量測定および病理学的検査に供した。BALFについては白血球分類および生化学的パラメーターを測定し、micro-CTについては呼吸同期モードで得られた最大吸気時および呼気時の肺体積の差から換気量を算出した。また別途プレチスモグラフによる呼吸機能解析も実施した。

    【結果】micro-CTによる解析では、2次元画像においてBLM投与によりX線吸収性の上昇が投与期間を通して認められた。また、投与後14日には終末呼気時体積の増加および1回換気量の減少が認められ、投与後21日ではこれらの変化が継続する個体と、回復性を示す個体が認められた。BALF中の白血球数は投与期間を通じて高値であった、投与後5日から14日にかけて増加し、投与後21日には回復傾向が認められた。これらのことからBLM投与により一過性の形態的および機能的変化が生じた可能性が示唆された。本ポスターでは、micro-CTによって解析された形態的および機能的変化について、既存の評価手法であるBALF、病理組織学的検査およびプレチスモグラフの結果と比較して報告する。

  • 小口 正夫, 巣山 晋, 井戸 大介, 望月 秀美, 雨宮 理恵, 渡辺 純, 井上 紗季, 武井 由弘, 畠山 洋文, 小池 秀二, 小田 ...
    セッションID: P-214
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【背景・目的】近年,薬剤性肺障害の発生が度々報告され,医薬品候補化合物の肺障害性リスクの有無並びに非臨床試験分野におけるその検出法の確立は重要性を増している.これまでの新薬開発における非臨床安全性試験では肺障害の診断は主に病理組織学的検査が担ってきた.また,安全性薬理試験ではWhole Body Plethysmography(WBP)法を用いた呼吸数・換気量計測により被験物質の呼吸器系への影響評価が行われてきた.一方,臨床では肺障害が疑われる事例に対して,コンピュータ断層撮影(CT)が診断に汎用されている.CT検査では通常取得した胸部CT画像について肉眼的に定量評価されているが,この方法では評価者間の差が生じる可能性があり客観性に欠けることから,より客観性が高く簡便な定量評価方法の確立が望まれている.本発表では,肺障害の客観的かつ簡便な評価が可能となるCT画像の定量化法の確立を目的として,ブレオマイシン(BLM)誘発性マウス肺障害モデルに対して,小中型実験動物用3DマイクロCT装置を用いた非侵襲検査を実施し,その新規バイオマーカーとしての有用性について検証した.

    【方法・結果】C57BL/6Jcl雌マウスにBLMの0.1,0.3及び1 mg/kg,対照として生理食塩液を口腔咽頭吸引法により単回気管支内投与し(Day 1),Day 2,4,6及び8にWBPを用いた呼吸器系検査,Day 8にCT撮影,剖検及び病理組織学的検査を実施した.WBPでは,呼吸数,一回換気量,分時換気量及び気道収縮指標(Enhanced pause,Penh)を算出した.胸部CT画像から医療用画像解析ソフトを用いて,半自動的に肺の定量値(CT値)を算出した.本発表ではCT値について,BLM投与群と対照群との比較及びWBP及び病理組織学的検査など既存検査法から得られた結果との相関性を検討し報告する.

  • Min-Seok KIM, Sung-Hwan KIM, Doin JEON, Hyeon-Young KIM, Seong-Jin CHO ...
    セッションID: P-215
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    Cigarette smoke (CS) has been causally associated with development of various lung diseases such as chronic obstructive pulmonary disease (COPD), pulmonary fibrosis and desquamative interstitial pneumonia. The aim of the present study was to evaluate the effects of repeated exposure to CS in polyhexamethylene guanidine (PHMG)-induced pulmonary fibrosis. Mice were exposed nose-only inhalation to CS (300 mg/m3) for 2 weeks (4 hours/day, 7 days/week). The following four experimental groups were evaluated: vehicle control (VC), PHMG, CS, and PHMG + CS. Mice in the PHMG group exhibited increased the numbers of total cells and inflammatory cells in the bronchoalveolar lavage fluid (BALF), lung hydroxyproline (HP) content, and histopathological changes, including macrophage infiltration and granulomatous inflammation/fibrosis in the lungs. These parameters were exacerbated in lungs of mice in the PHMG + CS group. In contrast, mice in the CS group alone displayed only minimal macrophage infiltration in pulmonary tissue. The expression of inflammatory cytokines was markedly increased in lungs of mice in the PHMG or CS groups compared to VC group. However, the expression of these cytokines in lungs of mice in the PHMG + CS group was not increased more than that of the PHMG or CS group. On the other hand, the expression of fibrogenic mediators was significantly elevated in lungs of mice in the PHMG group compared with that VC group, and the expression was further increased in lungs of mice in the PHMG + CS group. Although, an enhanced expression of inflammatory cytokines following CS exposure in lungs of PHMG-treated mice was not observed, and these results demonstrate that repeated exposure to CS may enhance the development of PHMG-induced pulmonary fibrosis.

  • 石森 かな江, 森 さくら, 石川 晋吉
    セッションID: P-216
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    近年、加熱によりエアロゾルを発生させる新しいたばこ製品が開発されている。従来のたばこ製品と異なり、これらの製品では燃焼を伴わず、化学物質の生成が抑制されることが報告されている。本研究では、加熱式たばこの一種であるNovel tobacco vapor product (NTV) から発生するたばこベイパーについて、その生物影響を試験用燃焼性たばこ3R4Fの主流煙と比較した。NTVについては3種類のフレーバータイプを試験に用いた。ヒト気道上皮細胞株 (BEAS-2B) にたばこ煙並びにたばこベイパー抽出液を曝露し、細胞生存率、酸化ストレス応答 (GSH/GSSG比、AREレポーター遺伝子活性)、DNA損傷 (γ-H2AX発現) に与える影響を評価した。試験用燃焼性たばこ3R4Fの曝露ではすべての測定項目について0-200 puffs/Lの曝露濃度で明確な用量反応を検出することができた。一方で加熱式たばこNTVの曝露では、試験に用いた最高用量である16667 puffs/Lの曝露でも、3種類すべてのタイプにおいて50%以上の細胞生存率低下、GSH/GSSG比減少は見られなかった。またγ-H2AX発現についても3種類すべてのタイプで曝露影響は検出されなかった。一方で、AREレポーター遺伝子活性については3種類すべてのタイプにおいて明確な用量反応性が検出されたため、更に、その影響を直線領域でのSlopeを用いて3R4Fと比較した。比較の結果から、NTVの反応性は3R4Fの約0.2%と算出された。またAREレポーター遺伝子活性に与えるNTVの影響についてはタイプ間での明確な差は検出されなかった。これらの結果よりNTVの生物影響は3R4Fと大きく異なることが示唆されるとともに、今回試験に用いた3種類すべてのフレーバータイプにおいてその傾向が共通であることが示唆された。

  • 市原 佐保子, 北村 祐貴, 三瀬 名丹, 森 有利絵, 鴇巣 正樹, 宗 才, 及川 伸二
    セッションID: P-217
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】タバコの煙は、心疾患のリスク増大と関係している。本研究では、タバコの煙を投与したラットの左心室において、発現量が変化したタンパク質を分析することにより、タバコの煙により引き起こされる心肥大に関連する分子を同定することを目的とする。

    【方法】Wistar Kyoto rat及び自然発症高血圧ラット(Spontaneously hypertensive rat: SHR)にタバコの煙を鼻部曝露し、その後それぞれのラットの左心室からタンパク質を抽出した。2D-DIGEによる二次元電気泳動にて、タンパク質発現変化の定量を行い、MOLDI-TOF/TOF-MS解析により、発現量の変化が見られたタンパク質を同定した。この中で、非投与時と比較して高投与時で発現量が増加したタンパク質に関して、ウエスタンブロットを行った。

    【結果】タバコの煙の投与により、両ラットの体重に対する左心室の重量が、非投与ラットと比較して有意に増大した。二次元電気泳動にて、SHRにおいて非投与ラットと高投与ラットの左心室のタンパク質発現量を比較したところ、34のタンパク質の発現量変化が確認され、このうち17のタンパク質の発現量が増大し、17のタンパク質の発現量が減少した。また、SHRにおいて、タバコの煙の投与により、Heat Shock Protein 70kDaとHeat Shock Protein beta-6の発現量が有意に増大した。

    【結論・考察】上記の結果より、Heat Shock Proteinが、タバコの煙が引き起こす左心室肥大に関連していることが示唆された。また、タバコの煙を投与されたラットの心臓において、発現量が減少したタンパク質の多くがミトコンドリアに存在することから、タバコの毒性として、心筋のミトコンドリアがターゲットとなり、機能不全を引き起こしている可能性が示唆された。

  • 髙石 雅樹, 田村 雄志, 山室 愛子, 花田 彩香, 佐川 匠, 武田 利明, 浅野 哲
    セッションID: P-218
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】微小管機能阻害薬のパクリタキセル(PTX), ドセタキセル(DOC)及びビノレルビン(VNR)は起壊死性抗がん剤に分類され、投与ミス等により薬剤が血管外漏出すると、重篤な皮膚傷害を引き起こすことが知られている。一方で、明確な投与ミスが無い場合でも、投与部位周辺に炎症が認められることがある。我々はこれまでに微小管機能阻害薬が強い細胞傷害性を示し、この傷害性にはこれら医薬品に含まれる主薬と共に添加剤も関与することを見出し、本学会にて報告している。そこで、PTX, DOC及びVNRの血管外漏出誘発及び皮膚傷害メカニズムを、ヒト由来培養細胞株を用いて検討した。

    【方法】①ヒト血管内皮細胞(HUV-EC-C細胞)にPTX, DOC及びVNRの臨床用薬液とその希釈溶液を2時間曝露し、細胞生存率を測定した。②正常ヒト皮膚線維芽細胞(SF-TY細胞)にPTX, DOC及びVNRの臨床用薬液の希釈溶液を24時間曝露し、培養上清を回収してELISA法にてIL-6濃度を定量した。③SF-TY細胞にPTX, DOC及びVNRの臨床用薬液の希釈溶液を24, 48時間曝露し、培養上清を回収してELISA法にてIL-8濃度を定量した。

    【結果及び考察】①いずれの微小管機能阻害薬の曝露においても、有意に細胞生存率が低下した。②いずれの微小管機能阻害薬の曝露においても、IL-6濃度が有意に上昇した。そしてこのIL-6濃度の上昇は、VNRおいて顕著であった。③VNRを48時間曝露した細胞のみIL-8が検出された。

     従って、微小管機能阻害薬の血管外漏出による皮膚傷害において、IL-6が炎症進行の上で重要なメディエーターとなる可能性が示唆された。また、微小管機能阻害薬は血管内皮細胞に対して傷害性を示すことが明らかとなり、血管内に投与された微小管機能阻害薬が血管内皮を傷害することにより、微小管機能阻害薬の血管外漏出を誘発して皮膚傷害を引き起こすことが示唆された。

  • 中根 史行, 高橋 真樹, 橘田 久美子, 市川 敦子, 秋江 靖樹
    セッションID: P-219
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    従来の心臓超音波検査は、心臓の形態・機能及び血流情報を非侵襲的かつリアルタイムに取得が可能であり、臨床では日常的に利用されている。心腔内では血流の乱れや渦といった複雑な血流が発生し、心筋壁や全身の循環動態に影響を与えていると予測されるが、従来の装置では複雑な心筋壁運動及び循環動態を計測することはできなかった。Vector Flow Mapping(VFM)は、カラーBモード画像から血流の速度ベクトルを表示し、血流動態を可視化する新しい評価方法である。本法ではVFMは初期段階の血流動態の変化をEnergy lossや相対的圧較差等により捉えることができるため、拡張性の心不全であっても心臓に過負荷を与えていることを予測できると報告されているが、非臨床ではこれまでほとんど研究されていない。我々はこれまで超音波診断装置を用いたマウス及びラットの心機能解析結果を報告してきたが、今回新たにVFMによる評価を行ったので報告する。

    心毒性、特に左室機能障害をきたすドキソルビシン(DOX)を雄性SDラットに0、1.25、2.5、5 mg/kg/weekの投与量で週1回、計3回腹腔内投与を行い、心筋障害の程度を経時的に評価した。各投与日にイソフルラン吸入麻酔下で超音波検査による心機能測定を行った。測定はVFM及び従来からの左室拡張能の指標であるE/e’及びE/A並びにTeichholz法による左室収縮能を測定した。最後に心臓を摘出し、病理組織学的検査を行った。また、マルチプレックスアッセイkitを用いたTroponin T/I assayで心筋トロポニン濃度を測定し、DOXによる心筋障害を確認した。本学会ではVFMが左室拡張機能不全の有用な判断指標となり得ることを報告する。

  • 瀧 憲二, Shuyan LU, David RAMIREZ, Bart JESSEN
    セッションID: P-220
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】医薬品開発において筋肉毒性は安全性上の懸念であり,抗ウイルス療法,リウマチ薬,およびスタチンコレステロール低下薬を含む種々の薬物療法が,薬剤誘発性の筋肉毒性に関連している。また,筋肉毒性の可能性を有する薬剤開発プログラムにおいて,薬剤による筋原性疾患の可能性を評価しリスクを軽減することが非常に重要である。リスク評価項目としては,骨格筋における標的の発現や,特異的な標的阻害による機能を推定することである。

    【方法・結果】本研究ではツール化合物が存在しなかったため,あるターゲットに対するsiRNAをCYTOOマイクロパターン筋分化プラットフォーム(MyoScreen™)で用いることにより筋肉毒性リスクを評価した。陽性対照としてTNF-αとMyoDのsiRNAを用いた。細胞播種後にsiRNAとTNF-αを加え,分化過程を通して9日間にわたって複数の評価項目について評価した。トロポニンTとアセチルコリン受容体(AChR)を含む分化マーカーをハイコンテンツ解析により評価した。また,アセチルコリン刺激によるカルシウム放出として筋機能評価を行った。選択したsiRNAでターゲット遺伝子の80%以上の抑制が得られた。TNF-αとMyoD siRNAは筋管細胞の分化とサイズを減少させた。さらに,MyoDのノックダウンによりAChRクラスタの抑制がみられ,アセチルコリン誘導カルシウム流入の減少が認められた。一方,ターゲットのノックダウンではカルシウム流入に影響を与えずに,筋管細胞分化のわずかな増加を誘発した。

    【考察】これらの評価結果はこの特異的標的阻害に関連する骨格筋毒性に対する信頼性を提供すると考えた。CYTOO MyoScreen™プラットフォームは,低分子化合物やsiRNAを用いて筋肉の役割を評価するのに有用な手段であると考えた。

  • 上総 勝之, 高橋 美和, 渡辺 雄大, 坪田 健次郎, 栗原 博司, 野田 昭宏, 圓見 純一郎, 吉岡 芳親
    セッションID: P-221
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】骨格筋における障害を検出する一般的な方法としては,血中バイオマーカー(CK,LDH,ALDなど)や病理検査が用いられる。これらの検査は骨格筋毒性のリスク検出には有用であるものの,全身の病変の局在を知ることはできない。超高磁場磁気共鳴イメージング(MRI)を用いた全身イメージングは,非侵襲的に軟部組織/臓器の断面観察が可能であり,全身性に起こりうる病変の分布の確認や,継時的な観察が可能であることから,従来の検査を補完する評価系として期待される。そこで本研究では、薬剤によって誘発される骨格筋病変のMRIによる検出可否を検証した。

    【方法】雌性ICRマウス(各群2例)に媒体(0.5%メチルセルロース水溶液)あるいは化合物Aを単回経口投与し,翌日あるいは翌々日に各群1例ずつ麻酔下にてT2強調条件での11.7テスラ MR画像を取得した。撮像は頸~胸部,腰~大腿部,下腿部の3部位に分けて,それぞれ軸位断,冠状断,矢状断の3断面で実施した。撮像終了後,動物は直ちに剖検し,病理組織学検査に供した。

    【結果】MR画像から,化合物A投与群の2例で大腿骨,座骨,上腕骨近傍の筋肉および下腿部(ヒラメ筋)にそれぞれ高信号領域が認められた。病理組織学的検査では,高信号領域に一致して骨格筋の変性/壊死が認められた。

    【結論】MRIにおける高信号領域と病理組織学的検査による変性/壊死領域の一致性は高く,MRIが病変部位の検出および全身での病変分布の把握に有用であると考えられた。

  • 芦野 隆, 山本 雅之, 沼澤 聡
    セッションID: P-222
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    酸化ストレスは、様々な疾患の引き金となるため、生体内では多くの抗酸化システムが機能している。その中でも細胞内レドックス変化に鋭敏に応答し、各種抗酸化酵素の遺伝子発現を統合的に制御する転写因子Nrf2/Keap1システムは、酸化ストレス防御の中心的な役割を担っている。虚血性心疾患の原因となる動脈硬化は、その発症と進展の様々な段階において酸化ストレスの影響が示唆されている。動脈硬化は、血管傷害部位への単球/マクロファージの接着/浸潤に引き続く、血管平滑筋細胞(VSMC)の遊走/増殖により進行すると考えられている。本研究では、血管傷害後の新生内膜肥厚およびマクロファージ、VSMCの接着/浸潤/遊走におけるNrf2の役割について検討を行った。マウス大腿動脈へのガイドワイヤー挿入により血管傷害モデルを作製したところ、傷害血管においてNrf2の強発現と標的遺伝子ヘムオキシゲナーゼ-1の増加が見られた。そこで、Nrf2遺伝子欠損(KO)マウスに血管傷害を施し、Wild-typeと比較したところ、傷害初期(7日後)にマクロファージの接着/浸潤の増加、傷害中期(14日後)に新生内膜部のVSMCの異常増加が認められた。次に、マクロファージおよびVSMCの接着/浸潤/遊走におけるNrf2の関与について、Modified Boyden Chamber Assayにより測定した。Nrf2-KOマクロファージにおいて、走化性に関与するMonocyte chemoattractant protein-1の処置による抗酸化タンパク質発現の有意な低下と遊走能の亢進が認められた。またNrf2ノックダウンVSMCにおいても同様に、Platelet-derived growth factor処置による抗酸化タンパク質の発現低下および遊走能の亢進が認められた。以上の結果から、Nrf2システムは、血管傷害後のマクロファージおよびVSMCの接着/浸潤や遊走に関与することで血管内膜肥厚を調節し、動脈硬化への進展を抑制していることが示唆された。

  • 奥野 智史, 勝田 那帆, 荻野 泰史, 荒川 友博, 上野 仁
    セッションID: P-223
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】脳内でアストロサイトはアミロイドβのクリアランスに関与するといわれている。その一方で、アミロイドβを取り込んだ細胞では活性酸素種(ROS)の産生が認められることから、アストロサイトの酸化ストレスに対する毒性軽減機構は他の細胞に比べて亢進している可能性がある。そこで本研究では、酸化ストレス負荷条件下のアストロサイトにおける細胞応答を解明する一環として、tert-ブチルヒドロペルオキシド(tBHP)を曝露した細胞における抗酸化機構について検討した。

    【方法】マウス胎児(妊娠14日齢)の脳からアストロサイトを単離、培養した。アストロサイトの培養培地を除去し、パルミチン酸ナトリウム(PA)を前処理によってセレノプロテインP(SelP)発現量が増加したマウス肝癌由来Hepa1-6細胞の培養培地(PA(+)/Hepa1-6細胞培養培地)を加えて24時間培養した。新しい培養培地に交換した後、直ちにtBHPを曝露して一定時間培養し、細胞生存率、細胞内ROS産生量、各種抗酸化酵素の遺伝子発現量を測定した。

    【結果・考察】アストロサイトにtBHPを1時間曝露したところ、細胞内のROS産生量、抗酸化酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)などの遺伝子発現量が増加する傾向が認められた。また、tBHP曝露細胞内のROS産生量は時間の経過に伴って減少したことから、抗酸化酵素の賦活化を介してレドックス状態が維持されることが示唆された。さらに、PA(+)/Hepa1-6細胞培養培地を24時間処理したアストロサイトではtBHPによる細胞内ROS産生量が減少したにもかかわらず、GPx遺伝子発現量の増加はほとんど認められなかった。これらのことから、PA(+)/Hepa1-6培養培地に含まれていたSelPがアストロサイトに取り込まれ、それ自体が細胞内での抗酸化作用に寄与する可能性が考えられた。

  • 角 大悟, 長居 実香, 姫野 誠一郎
    セッションID: P-224
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】ビピリジニウム系除草剤のパラコート(PQ)は活性酸素種を生体内で産生することで強力な毒性を示す。PQを使用している農業従事者においてパーキンソン病発症率が高いことが疫学研究より知られている。一方、当研究室ではDNAマイクロアレイの結果から、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞のPQへの曝露により、growth differentiation factor 15 (GDF15) mRNA量が顕著に増加していることを明らかにした。近年、パーキンソン病患者の血清中および脳脊髄液中のGDF15量が病態の進行状況と関連性が高いことが報告されている。本研究では、PQによるGDF15の発現量上昇の機序とその役割について明らかにすることを目的とした。

    【方法】細胞:SH-SY5Y細胞を使用した。 mRNA量:各濃度のPQに曝露したSH-SY5Y細胞からtotal RNAを回収し、Realtime-PCR法で測定した。タンパク質量:Western blot法で検出した。遺伝子導入:Lipofection法で導入した。細胞毒性:alamarBlue試薬を用い測定した。

    【結果および考察】GDF15発現量に対するPQの影響について検討するためにSH-SY5Y細胞をPQに曝露し、GDF15のmRNA、タンパク質量を測定した。その結果、GDF15 mRNA、タンパク質量がPQにより増加していることが明らかとなった。近年、GDF15が細胞死に対し、防御的な機能を有すことが報告されている。そこで、PQによるGDF15発現上昇がSH-SY5Y細胞の細胞死に対して抑制作用を示すのではないかと考えた。siRNAを使用したところ、control siRNAと比較してGDF15 siRNAを導入した細胞ではPQに対する感受性が高くなっていた。さらに、GDF15 siRNAで処理した細胞の培地にリコンビナントGDF15を添加してもPQに対する感受性に変化はなかった。これらの結果からGDF15はPQの細胞毒性に対して、細胞内で防御的に働いていることが示唆された。今後、PQによるパーキンソン病発症機序におけるGDF15の役割について検討していきたい。

  • 高橋 勉, 藤本 亮太, 佐久間 竣介, 松村 実生, 安池 修之, 藤原 泰之
    セッションID: P-225
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】化学物質は一般的に有機化合物および無機化合物に大別され、その両方の性質を併せ持つ化合物は有機-無機ハイブリッド分子(以下、ハイブリッド分子)と呼ばれている。有機化合物と無機金属からなるハイブリッド分子は、従来の純粋な有機化合物とは異なる構造や電子状態を持つことから、従来の有機化合物や無機金属では起き得ない生理活性を示す可能性が示唆されており、創薬への応用が期待されている。本研究では、セレンを含有する有機化合物の中から抗がん剤のシードとなるハイブリッド分子を探索することを目的とし、がん細胞に対する有機セレン化合物群の毒性評価を試みた。

    【方法】がん細胞としてヒト子宮頸癌由来HeLa細胞をコンフルエントまで培養した後、各種有機セレン化合物(ジセレニド化合物12種およびセレン含有トリアゾール化合物14種)で24時間処理し、細胞生存率をMTTアッセイにより測定した。

    【結果および考察】はじめに、有機セレン化合物群から、HeLa細胞に対して殺細胞効果(抗腫瘍効果)を示す化合物を探索し、HeLa細胞に対する50%細胞毒性濃度(CC50)が100 µM以下の有機セレン化合物として6種の有機セレン化合物が見出された。この中でもベンジル基を2つ有するジセレニド化合物(ジベンジルジセレニド)がHeLa細胞に対するCC50が17.8 µMと最も高い殺細胞効果を示した。また、ジベンジルジセレニドはヒト悪性神経膠腫細胞株であるU251細胞およびT98G細胞に対しても高い殺細胞効果を示した。さらに、ジベンジルジセレニドは無機セレン化合物である亜セレン酸に比べても高い殺細胞効果を示した。一方、ベンジル基を2つ有するモノセレニド化合物はほとんど殺細胞効果を示さなかった。以上のことから、今回検討した有機セレン化合物群の中では、ジベンジルジセレニドが最も有用なシードとなることが示唆され、その構造中のベンジル基およびジセレニド結合が抗腫瘍効果に重要であると考えられた。

  • 中川 博史, 小森 雅之, 西村 和彦
    セッションID: P-226
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】四塩化炭素による肝障害は、代謝物であるラジカルが細胞の膜脂質に障害を起こし、膜構造を不安定化することにより起こるとされている。肝細胞の特徴的変化として細胞内での脂肪滴滞留が見られるが、これは細胞内での脂質の輸送が破綻していることを示す。細胞において小胞体内で生成された脂質は脂質結合タンパクとの複合体の形をとり、小胞体(ER)からGolgi装置さらに細胞膜を経て分泌される。これらは全てタンパク小胞輸送経路を利用して行われるため、四塩化炭素の毒性を分子的に明らかにする上で、細胞内タンパク小胞輸送への影響を評価する必要がある。本研究ではERからGolgi装置へのタンパク小胞輸送経路であるCOPII小胞輸送への四塩化炭素の影響を調べた。【方法】ラット肝由来株化細胞であるRLC-16細胞、対照としてラット腎由来株化細胞のNRK細胞を用いた。四塩化炭素は0.3, 1.0, 3.0 mMで24時間処置した。COPII小胞輸送の評価には、Brefeldin A処置により断片化しERと癒合したGolgi装置が、COPII小胞輸送依存に再構築される際の回復程度を指標とした。Golgi装置は抗Golgi58K抗体による免疫染色により観察した。ERストレスの評価にはGRP78タンパクウエスタンブロットを用いた。アポトーシス発現はHoechst33342染色により評価した。【結果と考察】使用した濃度の四塩化炭素はNRK細胞の生存率に影響しなかったが、RLC-16細胞では3.0 mMで生存率を低下させた。四塩化炭素はRLC-16細胞においてGolgi装置の再構築を抑制していた。一方でNRK細胞ではすべての濃度の四塩化炭素はGolgi装置の再構築に影響を与えなかった。COPII小胞輸送の抑制はERストレスを惹起する。NRK細胞において見られなかったストレスマーカータンパクGRP78の発現誘導がRLC-16細胞で認められた。加えてRLC-16細胞ではアポトーシス発現細胞の増加が認められた。肝細胞において、四塩化炭素から産生されたラジカルが細胞内膜系に作用した結果、ER-Golgi間タンパク小胞輸送を抑制し、ERストレスを起こしアポトーシス発現を誘導すると考えられた。

  • 原田 拓真, Payal RANA, Michael D ALEO, Mark GOSINK, Yvonne WILL
    セッションID: P-227
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    ミトコンドリア毒性が,肝臓,心臓,腎臓などの様々な臓器毒性に関与することは周知のとおりである。これまで,ミトコンドリア毒性評価系としてはラットの肝臓から単離したミトコンドリアあるいはヒト肝がん由来HepG2細胞を用いた毒性評価がハイスループットスクリーニング法として用いられてきており,作用機序の検討等に有用であるとの報告が多数ある。しかしながら,これらのスクリーニング結果がヒトにおける薬物誘発性肝障害の予測因子となるとの実証報告は限られている。本研究では,肝毒性のある73薬物,心毒性のある46薬物,腎毒性のある49薬物および臓器毒性のない60薬物を上記のアッセイ系で評価して,ミトコンドリア機能への影響を検討した。また,アッセイの感度および特異度から特定の臓器毒性の予測性を評価した。その結果,予測感度はどの臓器毒性の薬物においても治療用量でのヒト血漿中Cmaxの100倍の濃度で最高となり(肝毒性薬物,心毒性薬物および腎毒性薬物で,それぞれ63%,33%および28%),その際の特異性度はどの臓器毒性の薬物においても93%であった。また,他の予測分析(ミトコンドリア膜透過性遷移孔への影響,ミトコンドリアの膨化/脱分極あるいは脂肪酸酸化への影響)と組み合わせるとその感度がより上昇することが分かった。さらに,ミトコンドリアアッセイで陽性となった薬物は、陰性となった薬物に比べてCLogPの値が高く,tPSA(位相幾何学的極性表面積)の値が低い傾向を示した。

  • 加藤 隆児, 井尻 好雄, 林 哲也, Jack UETRECHT
    セッションID: P-228
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】Acetaminophen(APAP)はCYP2E1で代謝され、その反応性代謝物であるNAPQIが直接肝障害を起こすと考えられている。近年、NAPQIが肝細胞からdamage-associated molecular patterns(DAMPs)を放出させ、抗原提示細胞のinflammasome反応を活性化させる免疫反応の関与が報告されているが、不明な点が多い。また、DAMPsには核内タンパク質であるhigh mobility group box 1(HMGB1)、heat shock protein、尿酸や核酸などがあるが、どの物質が関与しているかも不明である。今回、ヒト肝がん細胞(FLC-4細胞)3次元培養およびヒト単球性白血病細胞(THP-1細胞)を用い、APAPの反応性代謝物がinflammasome反応を活性化させるかの検討およびDAMPsの探索を行った。

    【方法】FLC-4細胞にAPAPを添加して3次元培養を行った。その後、THP-1細胞に培養上清を添加し、IL-1β産生量およびcaspase-1活性を測定した。また、FLC-4細胞培養上清中に含まれるHMGB1およびheat shock proteinをwestern blotを用いて測定し、核酸濃度については吸光度により測定を行った。

    【結果・まとめ】APAP添加群において、FLC-4細胞の培養上清をTHP-1細胞に添加するとIL-1β産生量およびcaspase-1活性の有意な上昇が認められた。また、APAP添加群において細胞培養上清中に含まれる核酸濃度の有意な上昇が認められた。

    【結論】APAPの反応性代謝物であるNAPQIがinflammasome反応を活性化することが示唆された。また、肝細胞から放出される核酸がその活性化に関与すると考えられた。

  • 秋山 雅博, 鵜木 隆光, 新開 泰弘, 石井 功, 赤池 孝章, 山本 雅之, 熊谷 嘉人
    セッションID: P-229
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【背景と目的】環境中親電子物質は、タンパク質の求核基に共有結合することで親電子ストレスを惹起する。これら親電子ストレスに対する生体防御として、転写因子NF-E2-related factor 2 (Nrf2)が重要な役割を担っている。一方、我々は活性イオウ分子(Reactive Sulfur Species, RSS)が環境中親電子物質と反応することで、イオウ付加体を形成し、不活性化する新たな仕組みを見出した。さらに、生体内RSS産生酵素であるcystathionine gamma-lyase (CSE)が欠損するとイオウ付加体は殆ど生成されないことから、イオウ付加体形成にCSEが重要な役割を演じていることも報告した。つまり、親電子ストレスに対する生体防御にはNrf2のみならず、CSEが鍵分子であることを示唆している。本研究ではCSE/Nrf2両欠損マウスを作製し、親電子ストレスにおけるNrf2とCSEの役割を評価した。

    【結果と考察】CSE/Nrf2の両欠損はそれぞれの単独欠損に比べ、親電子ストレスに対する脆弱性が高くなることが明らかとなった。このことは、従来のGSHによる抱合反応を介した解毒・排出機構とは別に、RSSによるイオウ付加体形成を介した不活性化機構が親電子物質毒性の抑制に重要であることを示している。興味深いことに、Nrf2の発現量およびGSH量は胎児期から成人期にかけて有意な変化は認められなかったのに対し、CSEの発現量およびRSS量は成人期と比べ胎児期で有意に低かった。本研究成果は、胎児期でのCSEの低発現とそれに起因するRSS量の低さが、胎児がメチル水銀のような胎盤通過性の高い親電子物質に対する虚弱性との関連性を示唆している。

  • 鈴木 武博, Khaled HOSSAIN, 姫野 誠一郎, 野原 恵子
    セッションID: P-230
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【背景・目的】バングラデシュをはじめ世界各国で、天然由来の無機ヒ素の慢性曝露により、様々な健康被害が報告されている。世界での主要な死亡原因である心疾患の重要なリスク要因に、高血圧症があげられ、慢性ヒ素曝露と血圧上昇との関連も報告されている。我々は、ヒ素曝露と関連する疾患に関与するDNAメチル化変化部位の同定を目指しており、バングラデシュ住民の血液を用いてDNAメチル化解析を行なっている。これまで、グローバルなDNA低メチル化のマーカーであるLINE-1メチル化が、ヒ素曝露及び血圧上昇と相関することを見出している。本研究では、ヒ素曝露及び血圧上昇に関連する新規DNAメチル化変化を検討した。

    【実験】バングラデシュのヒ素汚染地域と非ヒ素汚染地域の男女数名分の血液ゲノムDNAをプールし、MethylationEPIC BeadChipによりゲノムワイドなCpGサイトのメチル化解析を行った。ヒ素汚染地域と非ヒ素汚染地域で比較して変化がみられたCpGサイトについて、パイロシークエンスにより約250名の血液ゲノムのDNAメチル化を測定した。

    【結果・考察】ゲノムワイドなメチル化解析により、ヒ素汚染地域でメチル化率が変化するCpG部位を複数見出した。そのうちの1つはNup35遺伝子転写開始点付近に存在するCpGであった。このCpGについて、dsSNPにより変異を検索したところ、これらの部位にはアジアでは変異頻度が低く、ヒ素汚染地域のみ変異が集中することは考えにくいことがわかった。次にパイロシークエンスでメチル化率を測定したところ、ゲノムワイドメチル化測定に対応してヒ素汚染地域でメチル化が有意に減少した。また、回帰分析により、そのCpGと血圧との間に有意な負の相関があることがわかった。これらの結果から、Nup35メチル化は、LINE-1メチル化と同様にヒ素汚染による血圧上昇に関連するマーカーとなる可能性が示唆された。今後、残りのメチル化が変化したCpGサイトについて、パイロシークエンサーによりメチル化率を測定する予定である。

  • 小串 祥子, 木村 朋紀
    セッションID: P-231
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】金属結合性タンパク質メタロチオネイン(MT)は、ZnやCdなどの過剰曝露により誘導され、その発現制御機構については、金属応答性転写因子MTF1を介した経路がよく知られている。MT発現の低下とDNAメチル化との関連が報告されており、エピジェネティックな遺伝子発現制御機構もMT発現に関与すると考えられる。また、MTは、発がんやがんの進行への関与が指摘されており、MT遺伝子領域のDNAメチル化解析が予後マーカーとして利用できるのではないかと期待されている。しかしながら、どの領域のメチル化が、MT発現に関わるのかについての解析は未だなされていない。当研究室では、MT発現が恒常的に抑制されているP1798細胞において、脱メチル化剤5-azacytidine処理後にCd処理すると、MT1発現が認められない細胞と高発現細胞とに分かれ、MT1プロモーターに存在する5つのMTF1結合配列、MREa~MREeのうち、MREdおよびe付近の特定のCpG配列がMT1発現細胞では必ず脱メチル化されていることを見出しているので、この知見を手がかりに、MT発現制御に関わるCpG領域の特定を目指した。

    【方法】CpG部位を含まないレポーターベクターであるpCpGfree-LuciaにMT1プロモーター領域を連結し、CpG methyltransferseによるメチル化処理の影響を解析した。また、特定のCpG部位がメチル化されないように変異導入したベクターも構築し、同様の解析を行った。

    【結果・考察】MT1プロモーター領域を連結したベクターではメチル化による有意なレポーター活性の減少が見られたが、MREdおよびe付近のCpG部位に変異導入するとメチル化による活性減少が見られなくなった。このことから、MREdおよびe付近の特定のCpG 配列がメチル化によるMT1発現抑制に影響を与えるのではないかと考えられる。

  • 福田 幸祐, 馬越 泰, 中野 洋介, 渡辺 健一, 中川 徹也, 福崎 英一郎, 宮脇 出
    セッションID: P-232
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【背景】生体内のアミノ酸はL体及びD体の光学異性体が存在する。近年、生体内のD-/L-アミノ酸比と腎障害の関連性は注目されてきているが、現在までに報告されているのは、急性腎障害を反映する虚血再灌流モデルマウスにおける血液及び尿中セリン比の変動のみで、慢性腎障害モデル及び網羅的なD-/L-アミノ酸比の変動については検討されていない。そこで本研究では慢性腎障害を反映する5/6腎臓摘出ラットを用いて、尿中D-/L-アミノ酸比を網羅的に測定し、これらの腎毒性マーカーとしての有用性について検討した。

    【方法】雄のSDラットを用いて5/6腎臓摘出モデルを作成し、施術1週間後から4週間後まで、1週間に1回尿中及び血液中の腎障害マーカー(尿中クレアチニン、血中BUN等)、並びに尿中D-/L-アミノ酸比をLC/MS/MSを用いて網羅的に測定した。施術4週間後に全群のラットから腎臓を摘出し、病理組織学的検査を行った。

    【結果】5/6腎障害モデル群では施術1週間後から、セリンを含む複数のD-/L-アミノ酸比が高値を示し、施術4週間後までに10種類のD-/L-アミノ酸比が高値を示した。特にD-/L-アスパラギン比は施術1週間後から4週間後まで継続して高値を示し、施術後4週間の血中BUNと相関傾向が認められた(r2=0.58)。また、同群では、腎障害に関連した所見として尿細管拡張やメサンギウム細胞過形成などが認められた。これらの変化は無処置及びsham群では認められなかった。

    【結論】網羅的なD-/L-アミノ酸比の測定により、これらの変動が腎障害及び既存の腎障害マーカーと相関していることが明らかとなり、D-/L-アミノ酸比の変動が新たな腎障害マーカーになり得る可能性が示唆された。

  • 香川 匠, Tomáš ZÁRYBNICKÝ, 大見 貴尚, 白井 勇司, 豊國 伸哉, 織田 進吾, 横井 毅
    セッションID: P-233
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    [Introduction] Drug-induced acute kidney injury (AKI) is a frequent cause of adverse drug reaction. Serum creatinine (CRE) and blood urea nitrogen (BUN) are widely used as standard biomarkers for kidney injury; however, the sensitivity and specificity are considered to be low. In recent years, circulating microRNA (miRNAs) have been attracting considerable attention as novel biomarkers for organ injury, but there are currently no established miRNA biomarkers for drug-induced AKI. The present study aimed to identify plasma miRNAs that may enable early and specific detection of drug-induced tubular and glomerular injury through next-generation sequencing analysis. [Methods] Six-week old male Sprague-Dawley rats were administered cisplatin and gentamicin to induce tubular injury. To create glomerular injury models, puromycin and doxorubicin were administered, and these models were always accompanied by tubular damage. Small RNA-sequencing was performed to analyze time-dependent changes in the plasma miRNA profiles. [Results and Discussion] In the differential analysis, miR-3473 was specifically up-regulated in the glomerular injury models. miR-143-3p and miR-122-5p were commonly down-regulated in all models, and the changes were earlier than the traditional biomarkers, such as plasma CRE and BUN. These data indicated that changes in the specific miRNAs in plasma may enable the early and sensitive detection of tubular and glomerular injuries. The present study suggests the potential utility of plasma miRNAs in the early and type-specific detection of drug-induced AKI.

  • 三宅 真波, 藤田 卓也, 大野 祐子, 舘岡 孝, 佐藤 寛子, 桜田 博, 内田 景子, 清水 俊敦, 浅山 真秀子
    セッションID: P-234
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【背景・目的】薬剤性腎障害は,製薬企業の非臨床安全性試験でしばしば認められる毒性の一つである.腎障害を検出するバイオマーカー(BM)として,血中クレアチニン(CRE)および血中尿素窒素(BUN)があるが,これら従来のBMは腎機能が7割以上低下した際にのみ反応し,検出感度が悪いことが知られる.これに対し,近位尿細管障害の早期検出にKIM-1等複数の尿中BMが有用であることが報告されているが,糸球体機能を反映するBMに関しては報告が少ない.Symmetric dimethylarginine (SDMA)は,糸球体濾過量と相関し,慢性腎臓病の際にCREよりも早期に血中濃度が上昇することから,糸球体機能を反映するBMとして期待される.犬猫においては,既にSDMAの有用性が確立されており,腎臓ステージングガイドラインに掲載されている.しかしながら,げっ歯類における有用性については報告が少ない.そこで我々は,ラット腎前性腎障害モデルを作製し,ラットにおけるSDMAの有用性を評価した.

    【方法】6週齢のSD雄ラットに媒体(Corn oil)もしくは50 mg/kg/dayの用量でシクロスポリンAを単回もしくは3および7日間反復経口投与し,最終投与翌日に剖検し,血液生化学検査,腎臓の病理組織学的検査および血清中SDMA濃度測定を実施した.

    【結果】シクロスポリンA投与群では,単回および3日間投与後の,血液生化学検査および病理組織学的検査に異常は認められず,7日間投与後にBUNの高値,尿細管上皮の空胞化および再生像が認められた.血清中SDMAは,単回および3日間投与後に対照群と比較して高値の個体が散見され,7日間投与後には全例で高値であった.これらの結果からSDMAは,ラット腎前性腎障害モデルにおいて,CREおよびBUNよりも早期に変動するBMである可能性が示唆された.

  • 鈴木 慶幸, 市川 敦子, 高尾 みゆき, 久保田 貴之, 池田 元太, 橘田 久美子, 小松 弘幸, 菅谷 健, 秋江 靖樹, 武田 正之
    セッションID: P-235
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】我々は,尿中L-FABPが,げっ歯類及び非げっ歯類の急性腎障害モデルにおいて,初期の腎組織障害の検出に有用なバイオマーカー(BM)であることを報告してきた.今回,ラットのアデニン誘発慢性腎障害モデルを用いて,慢性腎障害における尿中L-FABP及び新規腎障害BMの変化を経時的に比較検討したので報告する.

    【方法】6週齢の雄性SDラットにアデニン(25,100,250 mg/kg)を4週間反復経口投与して腎障害を誘発させた.アデニン投与開始後は週1回採尿し,尿中BMをELISA法(L-FABP)及びマルチプレックス法(Calbindin,Clusterin,KIM-1,Osteopontin,B2M,Cystatin C及びNGAL)で測定した.また,血中腎障害BM(尿素窒素「BUN」及びクレアチニン「sCRE」)を尿中BMと同時期に測定し,投与2及び4週に腎臓の病理組織学的検査を行った.

    【結果】100及び250 mg/kg群では,尿中BMは投与1週からCalbindin,Clusterin,KIM-1,Osteopontin及びNGALが高値を示し,投与2週からL-FABP及びCystatin Cが高値を示した.血中BMは投与1週から高値を示し,腎臓の組織学的検査では投与2週から皮質及び髄質にアデニンの沈着及び組織障害がみられた.25 mg/kg群では,尿中BMは投与3週にL-FABP,Calbindin,Clusterin,KIM-1及びOsteopontinが高値傾向を示した.血中BMは投与3週に高値傾向を示し,腎臓の組織学的検査では投与2週に皮質及び髄質に変化は無く,投与4週に軽微なアデニン沈着及び組織障害がみられた.以上の結果から,尿中L-FABP及び新規腎障害BMは,アデニン誘発慢性腎障害モデルにおいても腎障害の検出に有用なBMであると示唆された.

  • 荒木 徹朗, 一ツ町 裕子, 真鍋 安博, 森村 馨, 森 勇介, 坂本 栄, 石田 誠一, ヒトiPS細胞応用安全性評価コンソーシアム 培 ...
    セッションID: P-236
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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     ヒトiPS細胞由来肝細胞は同一ロットの安定した供給や遺伝子多型を考慮した評価パネルの構築が可能であることから、創薬研究応用に向けた期待度は高いが、機能面で未成熟である点が大きな課題である。その課題の克服の一つに、肝臓の微小環境を再現することが挙げられる。ヒトiPS細胞応用安全性評価コンソーシアム培養系検討チーム(CSAHi-3D)ではこれまで、ヒトiPS細胞由来肝細胞の機能向上を目指し、新規培養系を模索する活動を行ってきた。2017年には細胞積層法を用いた予備的な検討試験を実施し、その結果を本学会において発表した(第44回日本毒性学会学術年会)。今回我々は、予備検討結果から3次元培養モデル器材としてCell-able(東洋合成工業株式会社)を選択し、市販のヒトiPS細胞由来肝細胞を用いた、DILI化合物の毒性評価を実施した。また、施設間差による影響も検討した。

     iCell-Hepatocytes 2.0(富士フイルム和光純薬株式会社)を解凍・播種し数日間前培養した後、一旦剥離・回収し、Cell-ableに播種した。1週間の前培養の後、既知のDILI化合物(Amiodarone, Fialuridine, Flutamide, Troglitazone)およびNon-DILI化合物(Aspirin, Rosiglitazone)を1週間曝露した。2~3日間に1回培地交換し、回収した培地を用いて上清中に漏出したLDHを測定した。また、曝露後に細胞内ATPの測定を行った。同時に、2次元培養細胞との比較も実施した。

     本発表では上記評価結果から、培養系の変更による、ヒトiPS細胞由来肝細胞の毒性感受性への影響について考察する。また、多施設評価を行う中で顕在化した3次元培養系特有の課題についても議論したい。

  • 山尾 美香留, 小川 裕子, 稲松 睦, 山崎 ちひろ, 石田 雄二, 立野 知世
    セッションID: P-237
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】薬剤性リン脂質症は、リソソームにリン脂質が過剰に蓄積する病態で、塩基性両親媒性薬物によって引き起こされることが知られており、医薬品開発の初期段階に薬剤性リン脂質症を予測することは重要である。我々はこれまでに、cDNA-uPA/SCIDマウスをホストとして作製したヒト肝細胞キメラマウス(PXBマウス®)から分離した新鮮ヒト肝細胞(PXB-cells®)が、in vitroにおいてプレートへの高い接着性を示すとともに、高いアルブミン産生能、多くのヒト薬物代謝酵素やトランスポーター発現および機能を長期間維持していることを確認している。今回我々は、PXB-cellsを用いたin vitro毒性試験により、薬剤性リン脂質症リスク予測への有用性を検討した。

    【方法】PXB-cellsをプレートに播種し、播種7日後からヒトで薬剤性リン脂質症が報告されているアミオダロン(1.75-110 µM)の曝露を開始した。2、3日おきに薬剤を含む培地と交換し、21日間の長期連続曝露試験を行った。曝露7、14、21日目にリン脂質蓄積量を測定し、細胞内ATP量およびアルブミン分泌量を指標として毒性評価を行った。

    【結果、考察】曝露開始7日後には、13.8 µM以上の群で非曝露群に比べリン脂質量が1.5倍以上となり、蓄積が確認された。また、13.8 µM以上でアルブミン分泌量が、55 µM以上で細胞内ATP量が減少し、細胞毒性も確認された。さらに曝露21日後には、より低濃度の6.9 µM以上の群でリン脂質蓄積量が1.5倍以上となり、長期連続曝露の影響も確認された。以上の結果から、PXB-cellsの薬剤性リン脂質症リスク予測への有用性が示唆された。現在、他の薬剤についても検討中である。

  • 稲松 睦, 山尾 美香留, 小川 裕子, 山崎 ちひろ, 篠原 満利恵, 酒井 康行, 石田 雄二, 立野 知世
    セッションID: P-238
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    我々は、肝臓がヒト肝細胞で高度に置換されたキメラマウス(PXBマウス®)を安定的に大量生産する技術を確立している。このPXBマウス®から採取したヒト新鮮肝細胞(PXB-cells®)は、同一ドナーのヒト新鮮肝細胞を即応的に大量に入手できるという利点を持つ。本研究では、PXB-cells®を用いて、肝毒性の中心的な役割を担っているミトコンドリア毒性をin vitroで簡便に評価する系の開発を進めている。

    ミトコンドリア毒性をin vitroで評価する上で問題となるのが、生理的条件よりも、酸素供給量が低く培地中のグルコース濃度が高いことから、ミトコンドリア毒性の感度が低くなっていることである。そこで、PXB-cells®を用いて、酸素供給量を高めた条件で、かつ通常使用している低グルコース基本培地のグルコースをガラクトースに置換した培地で培養することにより、ミトコンドリア毒性の感度が上昇するかの検討を行った。

    酸素供給量を増やすため、酸素透過膜プレート(ベセル株式会社)とマルチガスインキュベーターを使用し、ミトコンドリア電子伝達系複合体Ⅰ阻害剤であるRotenoneの細胞毒性に対する感受性を細胞内ATP濃度と上清中のLDH活性を指標に検討した。

    その結果、酸素供給量が多い方が、より低濃度でRotenoneによる毒性が見られた。LDH活性では、ガラクトース置換培地の方がより低濃度で毒性を示したが、、細胞内ATP濃度では、培地による差は顕著ではなかった。各酸素供給量における、細胞周囲の酸素濃度をモニタリングしたところ、ガラクトース置換培地に比べ、グルコース培地で細胞の酸素消費量が高く、PXB-cells®は、グルコース培地で十分にミトコンドリアの活性が高いことが推察された。

    今後は、高酸素供給量・低グルコース基本培地条件下で、肝毒性を示す種々の化合物を用いた検証を行い、評価系の確立を目指す。

  • 宮本 一政, 小原 洋志, 篠澤 忠紘
    セッションID: P-239
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    薬剤性肝障害(Drug induced liver injury, DILI)の評価系として、従来の単層培養系に比べ生体肝臓を模倣し長期評価が可能である3次元(3D)スフェロイドを用いたアッセイ系が近年注目されている。3Dスフェロイドの作製にはヒト初代凍結肝細胞を用いることが多いが、安定した品質の細胞を継続的に入手することは難しい。そこで本研究では化合物の早期の安全性プロファイリングに使用することを目的とし、マウスキメラヒト肝細胞(PXB細胞)を用いた3Dスフェロイドアッセイ系(LT-DILI系)の構築を試みた。同スフェロイドにはヒト凍結非実質肝細胞(NPC)が混合されている。ヒト初代凍結肝細胞を用いて構築された3Dスフェロイド(Proctor et. al., 2017. 以下InSphero法)と比較するため、109個の化合物セットにおける反応性を調べた。3Dスフェロイドに化合物を2週間暴露しATP活性を測定したところ、IC50値100μM以下を基準としたLT-DILI系の特異度は77.8%であり、感度は57.4%であった。InSphero法の同基準での特異度・感度はそれぞれ85.4%および60.9%であったため、両アッセイの特異度・感度はほぼ同等と考えられた。一方、ヒトへの暴露量(Cmax)を考慮したIC50/Cmax値50倍以下を基準としたLT-DILI系の特異度・感度はそれぞれ82.9%および58.8%であり、InSphero論文の同基準での感度(52.2%)に比べ高い感度を示した。さらに、NPCを含まない3Dスフェロイドの有用性を評価したところ、IC50値での特異度・感度は77.8%および54.4%であり、PXB細胞を用いた場合、NPCを混合することの効果が減弱されることが示唆された。本評価系の感度の向上を目指し、High content analysis (HCA)評価への応用性を検討したところ、Amiodaroneなど5つのDILI化合物処理によりLysosome染色強度の有意な変化が認められた。以上、LT-DILI系は早期の肝毒性評価において十分な予測性を示すことができる評価系と考えられ、必ずしもNPCの混合が必要ではないことが示された。今後、感度の向上のためにHCA評価を組み合わせることが有用であることが示唆された。

  • 溝井 健太, 細野 麻友, 松本 映子, 矢野 健太郎, 下井 昭仁, 小島 肇, 荻原 琢男
    セッションID: P-240
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】薬物の経口急性毒性試験(AOSTT)は,実験動物によるLD50値を指標としている.しかしヒトと代謝経路が根本的に異なる実験動物を用いた毒性試験には限界があり,それに代わる評価系(実験動物代替法)の構築が求められている.我々は以前,3次元培養したヒト肝細胞(肝スフェロイド)を用いた薬物の毒性試験において,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)漏出量とアルブミン分泌阻害が肝毒性(薬物誘発性肝障害)のマーカーとして有用であることを報告した.本研究では,それらのマーカーの値とAOSTTのLD50値との相関性を評価し,in vitroにおけるこれらのマーカーの値でLD50値を表すことができるか否かを検討した.

    【方法】肝毒性を示すことが知られている薬物を肝スフェロイドに曝露し,曝露後7,14および21日目にAST漏出量およびアルブミン分泌量を測定し,ASTのF1.2値(正常値に比して1.2倍のASTの漏出が認められる薬物濃度)ならびにアルブミン分泌IC50値を算出した.また安全データシート(SDS)からラットあるいはマウスのLD50値を調査し,得られたAST漏出F1.2値およびアルブミン分泌IC50値とLD50値の相関性を評価した.

    【結果・考察】数種の薬物において,肝スフェロイドのAST漏出F1.2値はラットLD50値と良好な相関性を示した.一方で,ジクロフェナクは相関からの乖離が認められたが,この薬物は代謝物が毒性を示すことが知られており,ヒトとラットではその代謝物の量が異なるため相関から乖離したものと考えられた.これらのことから,肝スフェロイドによる薬物のAST漏出F1.2値は従来のAOSTTにおけるLD50と相関性を示し,さらに,実験動物では再現することのできないヒトにおける代謝物毒性も評価できるため,AOSTTの実験動物代替法になり得る可能性が示唆された.

  • 廣田 衞彦, 久木 友花, 山城 朋子, 額賀 巧, 吉田 光輝, 大竹 利幸, スッチノント チャワパン, 柴田 康子, 関根 秀一, 上 ...
    セッションID: P-241
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【背景、目的】これまでの香粧品開発における安全性評価は主に動物実験を主体としたものであった。しかし、EU化粧品指令などを考慮し、動物を用いない安全性評価の必要性が高まっている。これまで、眼刺激性、皮膚刺激性、感作性などにおいて、いくつかの代替法やその組み合わせ評価などが報告され、その一部についてはOECDガイドライン化も進んでいるが、すべての毒性エンドポイントに対応する代替法がガイドライン化されているわけではない。そのような環境の中でも、お客さまに安全な製品を提供することが責務である。本報告では、香料品に使用される原料を題材に挙げ、どのよう評価できるかについて、感作性などの局所毒性を中心とした評価事例(ケーススタディ)を検討した。

    【方法】ECHA REACHデータベースなどに記載されている香粧品の既存安全性情報を参考に、香料や化粧品素材数品を選択して、感作性または光安全性評価をin vitroまたはin silicoによる安全性評価を実施した。感作性では既報のin vitro試験データまたはin silicoパラメーターを用いたニューラルネットワーク解析による予測モデルを用い、光安全性はUV吸収またはROSアッセイを用いて評価した。得られた結果を既存の安全性情報と比較した。

    【結果、考察】今回、評価に用いた香粧品素材の評価では、既存の安全性評価と比較して、概ね過小評価(安全性上、懸念となる評価結果)はならなかった。

     以上の結果より、今回用いた評価は香粧品の評価に有用な可能性が示唆された。

  • 松本 博士, 小沢 智, 郭 子進, 友塚 育美, 加藤 英里子, 馬場 敦, 澤田 光平
    セッションID: P-242
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【背景及び目的】 より快適かつ安全な社会を実現するため、日々新しい化合物が開発されているが、それら上市するには動物を用いた毒性試験で安全性を確認しなければならない。世界的に動物実験は減少傾向となっており、これまでOECDでは皮膚感作性試験や眼刺激性試験等様々な試験が代替法として採用されているものの、ガス状物質を対象としたものは無い。我々はガス状物質に関する反復吸入毒性試験の代替法として、培養細胞を用いたin vitro試験法の開発に着手し、今回はヒト培養肝細胞への曝露方法と曝露後の毒性影響の検出方法について検討した。

    【実験方法】 本検討ではCell-ableプレート(東洋合成工業株式会社)を用いて、三次元培養したHepaRG細胞(株式会社ケー・エー・シー)を用いた。曝露に用いた物質としては、90日間反復吸入毒性試験において肝臓への毒性影響が既知のものを選定した。ガス状物質は予め培養液に溶解させ、その培養液をプレートの各Wellに添加した後、プレートシールで密閉することで細胞へ曝露した。培地交換ならびに曝露は2日に1回の頻度で行った。曝露後の細胞中の機能の変化は、共焦点イメージングシステムCQ1(横河電機株式会社)を用いて観察した。

    【結果】 動物で肝臓への影響が報告されているガス状物質を本試験に供したところ、3週間の曝露でHepaRG細胞中の還元型グルタチオン(GSH)に基づく指標に変化がみられ、その変化量は曝露濃度が増加するに従い大きくなった。これらの結果から、本手法を用いることで肝細胞に対するガス状物質の毒性影響を検出できることが示された。今後、毒性が既知の物質を用いて試験数を増加させ、本手法が適用できる肝毒性の範囲を明確にし、更に動物を用いた吸入毒性試験で設定される毒性指標(NOAELもしくはLOAEL)に相当する閾値の設定も検討する。詳細は当日ポスターにて報告する。

  • 渡邊 ゆかり, 加藤 正巳, 狩野 真由美, 藤田 優
    セッションID: P-243
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    腸溶剤は、時間依存的またはpH依存的に溶解するようにフィルムコーティングを施すことで大腸部位で薬物が放出されるように設計された製剤である。PK評価ではイヌを用いて評価することが多いが、イヌの胃内pHはヒトよりも高く、腸溶剤のPK評価には適していない。今回、潰瘍性大腸炎及びクローン病治療薬であるメサラジン錠について、ミニブタの潰瘍性大腸炎モデルを用いた薬理評価及びPK評価を行った。また、イヌ、ミニブタ、ヒトの種差がメサラジン腸溶錠の吸収性に与える影響についてもPKを比較することで検証した。

    マウスまたはラットを用いた潰瘍性大腸炎モデルは、同一動物での観察ができないこと、錠剤の投与ができないこと、炎症部位にばらつきがあることなどの問題点から、大型の動物を用いることとした。しかし、イヌの消化管の長さがヒトより短いこと、胃内pHがヒトより高いことから、今回ミニブタを用いた。

    TNBSにより潰瘍性大腸炎を誘発し、アサコール錠400mg 2錠、3回/日、10日間投与し、下痢スコア、出血スコア、大腸の所見及び病理評価によって潰瘍性大腸炎に対する効果を評価した。PK評価では、ミニブタ及びイヌにアサコール錠またはペンタサ錠を投与し、経時的に採血した。

    その結果、ヒトと類似した臨床所見が認められ、アサコール錠による治療効果も確認でき、ミニブタを用いた薬効薬理評価は有用と考える。さらに、PK評価では、ミニブタのメサラジンの小腸から大腸にかけての吸収性はヒトと近い挙動を示しており、腸溶剤の評価モデルとして、ミニブタはヒトに近いと推測される。一方、イヌでは、顕著に高いメサラジン血中濃度が認められ、吸収性及び代謝においてヒトとの種差があることが確認された。

    以上のことから、腸溶剤に評価には、ミニブタが有用であり、ヒトに外挿できるものと考える。

  • Roy FORSTER, Jonas Boje NIELSEN, Carine BANSARD, Joachim DECORDE, Clau ...
    セッションID: P-244
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    In the present study, male Göttingen minipigs received 15 mg/kg phenobarbital (PB) daily by the oral route for 6 days, followed by investigation of phase I and II liver enzymes (mRNA expression and enzyme activities), circulating thyroid hormone levels and differential gene expression in the liver. PB-treated minipigs had increased absolute (by 46%) and relative (by 42%) liver weights with mild, diffuse hepatocellular hypertrophy when compared to untreated control animals. PB-treated minipigs had reduced plasma concentrations of T3 (by 27% and 47%) and T4 (by 15% and 20%) at 24 hours and after 6 days administration, respectively as compared to predose values. PB-induced increases in hepatic CYP activities compared to control animals included: 5.0-fold increase in CYP1A2, 13.9-fold in CYP2B22, 2.4-fold in CYP3A29 and 1.6-fold in CYP4A24 activity, with corresponding increases in mRNA expression of these genes. A 1.6-fold increase in T4-UGT phase II activity was observed in PB-treated minipigs, which together with the liver weight increases lead to a treatment-related 4.9-fold increase in liver T4-glucuronidation capacity. In the PB-treated group CYP2A19, CYP2B22, CYP2C42, CYP3A39 and CYP3A46 were among the top 20 upregulated genes. These findings suggest that several of the early biochemical key events in the PB-induced rodent MOA are present in minipigs among biochemical and tissue-level changes observed. It is concluded that the minipig is a useful model for the study of effects on metabolism and the consequences of xenobiotics on the liver-thyroid axis.

  • 冨樫 裕子, 青木 豊彦, 江島 智子, 斎藤 友希, 山浦 唯, 小田切 泰輝, 松谷 尚美, 安藤 綾俊, 児玉 晃孝
    セッションID: P-245
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】

    発現機序の異なる2種の非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)モデルマウス(STHD-01およびCDAHFD供与マウス)の経時的な病態変化について、病理組織学的に比較検討した。

    【方法】

    雄性C57BL/6Jマウスに当社が開発した高脂肪・高コレステロール食(STHD-01)および市販のコリン欠乏メチオニン減量・高脂肪飼料(CDAHFD)を6~12週間自由摂取させ、その後安楽殺、剖検し、生化学検査および病理組織学的検査(免疫組織染色を含む)を実施した。

    【結果・考察】

    過栄養のみでNASHを誘発するSTHD-01供与マウスの肝臓では、組織学的に肝細胞の脂肪化は経時的に小滴性から大滴性に移行し、肝細胞核空胞化や過剰な脂肪蓄積により細胞死に陥った肝細胞をマクロファージが取り囲んで貪食する像(hepatic crown-like structures: hCLS)が特徴的で、9週以降より軽度の線維化も観察された。一方、VLDL分泌阻害と過栄養でNASHを誘発するCDAHFD供与マウスでは、肝細胞の脂肪化は供与初期より大滴性を主体とし、hCLSに加え脂肪肉芽腫が特徴的であり、線維化は6週以降から経時的に進行した。血漿中ALT濃度および肝中トリグリセリドは、両NASHモデルマウスで増加した。以上より、STHD-01供与マウスでは、過栄養のみで早期よりNASH病態に類似の病理組織変化を呈することが示された。また、両NASHモデルマウスでは肝細胞の脂肪化、すなわち蓄積する脂肪滴サイズや線維化の進展に違いがあることが明らかとなり、それぞれのモデルの特性の違いを利用した新規メカニズムのNASH創薬への応用が期待できると考えられる。なお、NASHモデルマウスの肝臓以外の全身臓器の病理組織学的検査結果についても、併せて報告する。

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