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土田 芽衣, 平田 祐介, 野口 拓也, 松沢 厚
セッションID: P-46E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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セリン・スレオニンキナーゼSTK11/LKB1は、消化管における過誤腫を特徴とするポイツ・ジェガース症候群の原因遺伝子である。STK11は下流キナーゼの制御を介して細胞内エネルギーレベルの調節や細胞増殖の抑制を行い、癌抑制遺伝子として機能することが知られているが、実際に腫瘍を抑制する分子メカニズムについては、これまでよく分かっていない。我々は、キナーゼ関連分子を網羅したsiRNAライブラリーを用いたスクリーニングにより、細胞死を惹起するデスレセプターの一つであるFasが誘導するアポトーシスを促進する因子としてSTK11を同定し、その腫瘍抑制の分子メカニズムについて解析した。
STK11の欠損細胞は、Fas依存的なカスパーゼ-8の活性化が減弱し、アポトーシスに耐性を示した。またSTK11欠損細胞に、レトロウイルスを用いてSTK11を安定発現させて再構築すると、実際にFas依存的なカスパーゼ-8の活性化およびアポトーシスが促進された。カスパーゼ-8は、Cullin3ユビキチンリガーゼ複合体によるポリユビキチン化とそれに伴う多機能タンパク質p62を介した凝集体形成によって活性化が増強される。興味深いことに、このFas刺激で誘導されるカスパーゼ-8の凝集体形成がSTK11依存的であることが新たに判明し、STK11はカスパーゼ-8の凝集体形成を促進することでカスパーゼ-8の活性化を増強していることが示唆された。さらに我々は、癌組織で見出されているSTK11 D176N変異体がFas誘導性アポトーシスを促進できないことを確認し、実際にこのSTK11変異体ではFas誘導性のカスパーゼ-8凝集体形成機構が破綻していることを見出した。本研究結果からSTK11は、カスパーゼ-8凝集体の形成促進を介してカスパーゼ-8活性化を増強し、Fas誘導性アポトーシスを亢進させることで抗癌作用を発揮することが判明し、STK11が癌抑制遺伝子として働く分子メカニズムについて初めて明らかとなった。現在、STK11依存的なFas誘導性アポトーシス促進機構の生理的意義を詳細に解析すると共に、実際の癌病態との関連についても検討を行っている。
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柏田 真友美, 原田 翔平, 北岡 諭, 落合 和
セッションID: P-47S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【目的】黒ショウガは、タイやラオスにおいて、お茶やリキュールとして日常的に取り入れられている伝統生薬である。また、黒ショウガには様々な薬理効果が期待されていることから、近年、我が国においても、健康食品として市販されている。黒ショウガの抽出物には12種類のフラボノイドが含まれており、その一つ、5,7-dimethoxyflavone(5,7-DMF)には抗炎症作用や抗肥満作用を有することが報告されている。その一方で、5,7-DMFはin vitroにおいて、薬物代謝酵素cytochrome P450(CYP)3Aの酵素活性に対して阻害作用を有することが報告されていることから、様々な医薬品との相互作用につながることが危惧される。そこで、本研究では、5,7-DMFを健康食品などとして摂取することを想定し、CYP3Aに及ぼす影響をin vivoにおいて、薬物動態学的観点から評価した。
【方法】5,7-DMFを10日間にわたって摂取させたマウスにCYP3Aの基質であるmidazolamを経口投与し、その薬物動態がどのように変化するかについて検討した。
【結果・考察】5,7-DMFを投与した群では、コントロール群に比べて、AUCが約130%に増加し、生物学的半減期が約100分も延長していた。この原因を解析したところ、5,7-DMFを投与するとコントロール群に比べて、肝臓のCYP3Aの発現量が著しく減少していることをはじめて見出した。また、5,7-DMFを摂取した群の血中midazolam濃度はコントロール群よりも高くなっていた。本研究の結果は、5,7-DMFを摂取し続けると、肝臓のCYP3Aの発現量が減少し、CYP3Aの基質薬物の血中濃度が高くなることを示唆している。今後、5,7-DMF摂取によるCYP3Aの発現低下が、どの程度の期間続くのかについても明らかにする予定である。
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富永 サラ, 金枝 夏紀, 市丸 嘉, 酒々井 眞澄, 前田 徹, 中尾 誠, 藤井 広久, 吉岡 弘毅
セッションID: P-48S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【目的】クマザサ抽出液は健康食品や医薬品等で販売されており、近年関心が高まっている。また、抗炎症作用など様々な作用を有し、特に最近は乳がんに対する抗がん作用が注目されている。しかし、抗がん作用の機序や、その活性成分の存在などは明らかにされていない。そこで本研究では、クマザサ抽出液を用い、ヒト乳がん細胞株MCF-7細胞およびヒト肝がん細胞株HepG2に対する抗がん作用の検討と、クマザサの主要成分の1つとされる銅クロロフィリンナトリウム (SCC:0.25%含有)との関連を検討した。
【実験方法】本実験ではクマザサ抽出液として株式会社サンクロンのサンクロン (SE) を使用した。(1) MCF-7細胞およびHepG2細胞に対して、SE (0.01-1000 µg/mL) またはSCC (0.25-2500 µg/mL) 処理24時間後の細胞増殖能を3H-チミジン取り込み法によって評価した。(2) SE (10-1000 µg/mL) 処理24時間後のMCF-7細胞を用い、蛍光染色によってアポトーシスを観察し、壊死関連タンパク (RIP1) および細胞周期関連タンパク (GSK-3α/β, Cyclin D1, Cdk1/2, Cdk6) 発現をウエスタンブロット法で測定した。
【結果及び考察】(1) MCF-7細胞およびHepG2細胞に対して、SEには濃度依存的な増殖能の低下が認められたが、各SE濃度で含有されている量のSCCはがん細胞の増殖能を低下させなかった。以上のことより、SCC以外の成分が抗がん作用を示すと考えられた。(2) SE濃度依存的にアポトーシス細胞が増加したが、1000 µg/mLでは、RIP1の増加が認められた。また、Cdk1/2に変化は認められなかったが、GSK-3α/β, Cyclin D1, Cdk6はSE濃度依存的に減少した。このことから、中低濃度 (SE≤100 µg/mL) ではアポトーシスの誘導、高濃度 (SE≥1000 mg/mL) ではネクロトーシスの誘導による細胞死が引き起こされることが示唆された。今回はSEのみでの検討であるが、今後は活性成分の探索を行う。
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山口 彩音, 美谷島 克宏, 張 舜恵, 龍 完次朗, 水元 駿, 榊 健太郎, 佐藤 有希, 中村 優佳, 日高 佳穂, 煙山 紀子, 中 ...
セッションID: P-49S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【目的】本研究では、肥満を伴う2型糖尿病モデルであるKK-Ayマウスを用いて、腎病変を増悪させるる片腎摘出を施した状態で、ウエスタン食(WD)および食塩負荷が腎臓に及ぼす影響を探索した。【方法】5週齢雄性KK-Ayマウスまたは対照として同C57BL/6Jマウスを用い、それぞれに片腎非摘出(Ut)・片腎摘出(Nx)・Nx+WD・Nx+WD+食塩負荷群を設定した(4ないし5匹/群)。WDはQuick Fat(日本クレア株)にコレステロールを2%添加・調製し、食塩負荷は1.2%濃度で純水に溶解し、いずれも6週齢から19週齢時まで自由摂取させた。飼育期間中には、体重ならびに血糖値を測定した。飼育期間終了後に剖検および臓器重量測定を行い、血液生化学検査、腎臓の病理組織学的解析を実施した。【結果】体重および血糖値は、飼育期間を通して、KK-Ayマウスが対照動物より高値で推移した。いずれの系統においてもNx、WDあるいは食塩負荷の大きな影響は見られなかったが、KK-AyマウスのNx+WD+食塩負荷群では同群の他処置に比べ、血糖値が低値で推移する傾向を示した。腎臓では、対照動物の各処置群に変化が認められなかった。KK-AyマウスのUt群では糸球体の線維化、尿細管間質の線維化および糸球体のメサンギウム増生が軽度に認められ、Nx、Nx+WDあるいはNx+WD+食塩負荷群では、当該所見が増強する傾向を示したが、各処置群間に顕著な差は見られなかった。両系統において、血漿中クレアチニンならびに尿素窒素濃度は、 Nxによって増加する傾向が見られたが、各処置群間に明らかな差が見られなかった。【考察】Nx、WDあるいは食塩負荷は、 KK-Ayマウスの腎病態を増悪させる傾向を示したが、対照 の SDマウスでそのような効果がなかった。したがって、糖尿病病態は、正常と比較して、食餌因子の影響を受けやすいものと示唆された。
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小山 千尋, 竹之内 明子, 榎本 理沙, 國弘 明歩, 辰田 ひかり, 平岡 るい, 福原 由実子, 藤田 菜穂, 堀川 結香, 義澤 克 ...
セッションID: P-50S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【背景及び目的】
網膜色素変性症(RP)は最終的に失明を来す代表的な眼科疾患で、病態の理解と治療法の確立が必要である。RPにおける視細胞のアポトーシスは酸化ストレスに起因すると報告されている。我々は抗酸化物質のビタミンCを主成分とするアセロラ(アセロラパウダーVC30)を用いて、N-メチル-N-ニトロソ尿素(MNU)誘発ラット網膜変性症の病態抑制効果を検証した。
【方法】
①7週齢雌SDラットに50mg/kg MNUを単回腹腔内投与した。蒸留水、4%、8%アセロラ水(2ml/匹)をMNU投与の3日前から解剖日まで1日1回強制経口投与した。MNU投与後7日に眼球の病理評価を実施し、網膜視細胞比率及び網膜障害率を算出した。②アセロラ水の抗酸化力を検証するためにOXY吸着テストを用いて1%、2%、4%、8%アセロラ水の抗酸化力を測定した。
【結果】
①MNU単独群では視細胞の減少が顕著であったのに対し、8%アセロラ水併用群では視細胞の残存が認められた。さらに、8%アセロラ水併用群では辺縁部網膜視細胞比率の有意な減少抑制、及び網膜外層の広範囲にわたる残存が認められた。②OXY吸着テストの結果から、アセロラ水の用量依存的な抗酸化力の増加が認められた。
【考察】
アセロラ水はMNU誘発網膜変性を軽減した。MNU誘発網膜変性における視細胞障害は酸化ストレスによるアポトーシスが起因することが報告されている。現在、酸化ストレス発現に着目してアセロラ水による病態抑制の経時的変化を検討中である。
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なし
セッションID: P-51S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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宇野 絹子, 美谷島 克宏, 名倉 かれん, 高 臨風, 龍 完次朗, 山口 彩音, 小川 秀治, 渡邊 厚, 煙山 紀子, 中江 大
セッションID: P-52S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【目的】近年、臓器間相互作用の重要性が注目され、この破綻が多くの疾患の発症や進行に関与するとされている。本研究は、デキストラン硫酸ナトリウム (DSS) 誘発性大腸炎モデルのマウスにおいて、コリン欠乏メチオニン低減アミノ酸 (CDAA) 食給餌が、それらの腸管及び肝臓に及ぼす影響について検索した。
【材料及び方法】実験は、各群6または7匹の6週齢雄性C57BL/6Jマウスに、DSS (DEXTRAN SULFATE SODIUM SALT COLITIS GRADE、MP Bio) 1.25% (w/v) を1週間毎の間歇飲水投与で与え、CDAA食(A06071309、RESEARCH DIETS)を給餌した。対照群として、蒸留水及び、通常食 (CE-2、日本クレア株式会社) を与えた。3週間の給餌後に解剖し、腸管、脾臓、肝臓及び血液を採取し、臓器重量測定し、大腸の長さの測定、血液生化学検査、遺伝子発現解析を実施した。
【結果】DSS群において、脾臓重量の増加、大腸の短縮、腸管における炎症関連遺伝子発現の上昇が見られた。CDAA群においては、肝臓重量の増加、肝臓における炎症関連遺伝子発現の上昇が見られた。DSS+CDAA群では、腸管におけるIL-6 発現の上昇がより顕著となり、肝臓中のα SMA発現は増強傾向を示し、血液のフローサイトメーターによる解析では、CD3陽性であるリンパ球の明かな増加を示した。
【結論】DSS誘発性大腸炎モデルマウスにおいて、CDAA食の給餌により、DSS投与によって誘発された腸管における炎症は、さらに増強され、肝臓における線維化の進行に影響を及ぼす可能性が示唆された。現在、炎症並びに線維化関連因子に着目し、詳細な遺伝子発現検査及び、病理組織学的検査を進めている。
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中永 裕香, 岡本 誉士典, 青木 明, 植田 康次, 鈴木 智子, 井藤 千裕, 神野 透人
セッションID: P-53S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【目的】リゾホスファチジン酸(LPA)は新しい脂質メディエーターであり,乳腺腫瘍形成に関与することが示唆されている.したがって,LPAによる乳がん細胞増殖を抑制する化合物は,新しい乳がん治療・予防薬の候補になり得るものと推察される.本研究では,LPA応答性ヒト乳がん細胞株MDA-MB-231細胞を用いて,ブラジル産プロポリス含有成分が示す増殖抑制効果について検討した.
【方法】被験物質としては,ブラジル産プロポリスから単離された天然化合物11種およびプロポリスに含まれることが知られている既知化合物(ケルセチンおよびケンフェロール,ナリンゲニン)を用いた.細胞増殖試験には,ヒト乳がんMDA-MB-231細胞を用いた.MDA-MB-231細胞は5000細胞/ウェルとなるようにイメージング用96ウェルプレートに播種した.翌日,培養液を血清不含培地に交換して,さらに24時間培養した.被験物質を30分間処理したのち,LPA(18:1)を2日間曝露して細胞増殖を誘発した.培養終了後,Hoechst33342で核染色し,ハイコンテントイメージングシステム(ImageXpress Micro)を用いて細胞数を計測した.
【結果および考察】細胞増殖試験において,MDA-MB-231細胞は無血清条件下でのLPA刺激に応答して増殖亢進を示した.このLPAによる細胞増殖に対する被験物質の抑制効果を検討した結果,プロポリス由来成分11種のうち,9種の化合物が増殖抑制効果を示した.そのうち,3種はフラボノイド,6種はアルテピリンCに代表されるモノフェニルプロパノイドであった.既知化合物のうち,ケルセチンおよびケンフェロールは顕著に細胞増殖を抑制し,ケルセチンが最も高い効果を示した.今後,この増殖抑制メカニズムについて詳しく解析する予定である.
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奥田 朱那, 稲垣 僚, 市川 顕哉, 島村 裕子, 本田 大士, 増田 修一
セッションID: P-54S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【目的】遺伝毒性物質の中には、生体内でDNA付加体を形成することにより、毒性を発現するものがあり、これらは、血液中のヘモグロビン (Hb) と付加体を形成することが多い。また、糖尿病患者では、血中糖濃度が増加していることから、HbのN末端バリンに糖が結合した糖化Hb (HbA1C) が多く形成している。したがって、糖尿病発症状態においては、糖化Hbの存在等により、遺伝毒性物質のHb付加体形成能が変化することで遊離の遺伝毒性物質が増加し、その毒性発現が変動することが考えられる。そこで本研究では、遺伝毒性物質であるグリシドールのHb付加体形成能および遺伝毒性の変動について検討した。
【方法】In vitro試験として、ヒトヘモグロビンとグリシドールを37°Cで反応させる際に、グリシドール濃度、反応時間、pH (糖尿病性ケトアシドーシスを考慮した酸性条件) および糖化Hb量を変化させ、グリシドール-Hb付加体量が変動するか検討した。また、In vivo試験として、ストレプトゾトシン誘導性I型糖尿病モデルマウス (DMマウス) と正常マウスにグリシドールを経口投与した後、血中のグリシドール-Hb付加体量を測定した。さらに、肝臓および腎臓におけるDNA損傷性をコメットアッセイによって解析した。
【結果・考察】グリシドール-Hb付加体形成量は、グリシドール濃度および反応時間の増加に伴い増大した。また、酸性条件下および糖化Hbの存在下においては、その形成量は減少した。グリシドールを投与したDMマウスでは、正常マウスと比較してHb付加体量が減少した。さらに、DMマウスの肝臓および腎臓においてDNA損傷が有意に増強した。以上の結果より、糖尿病発症状態時では、Hb等の生体分子への付加体形成能の減弱等によって、遊離のグリシドール量が増加し、それに伴いグリシドールの遺伝毒性が増強する可能性が示唆された。
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樋口 友里, 清水 英喜, 橋本 知子, 遠藤 治, 稲葉 一穂, 松野 研司, 関本 征史
セッションID: P-55S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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変異原性物質の作用を抑制する。いわゆる抗変異原性物質の探索は、発がんの化学予防を考える上で重要である。これまでに、天然由来の様々な抗変異原物質が単離・同定されてきたが、これらを大量合成することは困難であった。そこで我々は、合成抗変異原物質の探索研究に取り組み、PDGF受容体阻害を有するキナゾリン化合物AK-01(4-[4-(N-クロロフェニル)-1-ピぺラジニル]-6,7-ジメチルキナゾリン)が抗変異原性を示すことをAmes試験により明らかとしてきた。本研究では、AK-01の抗変異原作用における構造的要因を解析した。はじめに、AK-01の抗変異原性の発現に必要な基本骨格を明らかにするため、AK-01の部分構造類似体である4-アミノ-2-クロロ-6,7-ジメチルキナゾリン(ACDMQ)と3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア(CDML)を用いて、その抗変異原性をAmes試験により検討した。ACDMQとCDMLはいずれも変異原物質の1-ニトロピレン(1-NP)と2-ニトロフルオレン(2-NF)に対して抗変異原性を示さなかったことから、AK-01の抗変異原性は全体構造による作用であることが示唆された。そこで、AK-01の類縁体(AK-02〜AK-08)を合成し、その抗変異原性をAK-01と比較をした。その結果、AK-01を含む、N-クロロフェニル基を有する3化合物はいずれも1-NPに対して抗変異原性を示す一方、N-クロロフェニル基がN-シアンフェニル基に置換された3化合物、及びこれら置換基を持たない2化合物はいずれも1-NPに対して抗変異原性を示さなかった。このことより、AK-01の抗変異原性発現にはN-クロロフェニル基の重要性が明らかになった。さらに、AK-01の抗変異原性発現に薬理作用(PDGF受容体阻害)は必須ではないことも明らかになった。以上の結果より、AK-01は様々な変異原物質によるイニシエーションを抑制し、かつ、PDGF受容体阻害によりがん組織の成長・進展を抑制することで、複数の機構によって発がん予防効果を示すことが期待される。現在、他の遺伝毒性試験系を用いてAK-01の有効性を評価している。
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なし
セッションID: P-56S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
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原田 翔平, 柏田 真友美, 北岡 諭, 落合 和
セッションID: P-57S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【目的】Diazepamは、妊婦が妊娠高血圧症候群の重篤な症状の一つである急激な血圧の上昇に伴うけいれん発作(子癇)を起こした際に限定的に使用されることがある。妊婦に対してdiazepamを投与しても胎児への移行性が低いことから、胎児に対する毒性が低い薬物であると考えられている。しかしながら、diazepamは肝臓で代謝を受けても完全には不活性化されず、活性代謝物(nordazepam及びoxazepam)に変換されることが報告されており、これらの代謝物の胎児に対する安全性は、十分に担保されていないのが現状である。そこで本研究では、diazepam及びその代謝物の胎児への移行性と蓄積性を評価することで胎児に対する影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】妊娠14.5日のマウスに、diazepamを尾静脈内に投与した。Diazepam投与後、経時的に、母体の血液、胎児を採取し、LC-MSでdiazepam及びその代謝物を定量分析した。
【結果・考察】母体の血漿において、diazepamは投与2時間後、nordazepamは6時間後にほぼ完全に消失した。一方、oxazepamは投与24時間後においても検出され、そのAUCはdiazepamの約37倍も高くなっていた。また、胎児においても同様に解析した結果、diazepamは投与2時間後、nordazepamは6時間後にほぼ完全に消失した。一方、oxazepamは投与24時間後においても検出され、そのAUCはdiazepamの約22倍も高くなっていた。
以上の結果より、母体に投与したdiazepamは、母体の肝臓でoxazepamに代謝され、胎児へと大量に移行することが明らかとなった。また、胎児に移行したoxazepamは、胎児中に蓄積することから胎児の発生に何らかの影響を及ぼすことが危惧される。
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倉上 悟, 佐藤 秀亮, 隅田 健太, 関本 征史
セッションID: P-58S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【目的】免疫細胞や皮膚には、シトクロムP450(CYP)などの異物代謝酵素が発現している。これらは解毒分解などの重要な役割を担っている一方、ある種の化学物質を活性化することで、皮膚感作性発現に関与している可能性がある。皮膚感作性を持つ化学物質の多くは親電子物質であることから、モデル細胞でのNF-E2-related factor 2(Nrf2)の活性化を指標とした試験系を確立し、細胞内異物代謝酵素の阻害の影響を評価した。
【方法】ヒト表皮角化細胞株HaCaT細胞にNrf2活性化検出用レポータープラスミド(pGL4.37)をトランスフェクションし、Nrf2の活性化を検出可能なHaCaT-Nrf2-Luc細胞を樹立した。これを用いて、種々の接触性皮膚炎惹起物質を添加し、6及び24時間後におけるNrf2活性化をルシフェラーゼアッセイにより評価した。
さらにP450酵素の非特異的阻害剤であるSKF525Aを前処理した場合の影響についても評価した。また、ヒト皮膚組織をHAB研究機構から入手し、主なCYP mRNAの発現をHaCaT細胞と比較した。
【結果】陽性物質として知られるジニトロクロロベンゼン(DNCB)は6時間処理でNrf2を活性化し、この活性化はSKF525Aで阻害されなかった。一方、オイゲノール、イソオイゲノール、シナミルアルコールなどの化合物では、6時間処理に比べ24時間処理でより強いNrf2 が確認され、また、これらによるNrf2活性化はSKF525Aの前処理により有意に低下した。そこでCYP mRNAの発現量を検討したところ、HaCaT細胞では皮膚組織に比べてCYP1A1やCYP2E1の発現が相対的に多いことが確認された。
【考察】これらの結果から、ある種の皮膚感作性物質はHaCaT細胞内に発現しているP450酵素(CYP1A1やCYP2E1など)により活性化され、その皮膚感作性が増強する事が示唆された。現在、それぞれの酵素の特異的阻害剤などを用いて、皮膚感作性発現における細胞内異物代謝酵素の役割を検討している。
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中野 毅, 加藤 剛, 高橋 勉, 篠田 陽, 山本 千夏, 鍜冶 利幸, 藤原 泰之
セッションID: P-59S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【目的】血管内皮細胞は血管の内腔を一層で覆う細胞種であり,血液凝固・線溶系をはじめとする様々な血管機能の恒常性維持に深く関与している。線溶系は,内皮細胞が産生・放出する組織型プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)とその阻害因子であるプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1型(PAI-1)のバランスによって制御されている。我々はこれまでに,亜ヒ酸がNF-E2 related factor 2(NRF2)の活性化を介してt-PAの合成を選択的に阻害する結果,内皮細胞の線溶活性を低下させることを見出している。しかしながら,内皮細胞におけるt-PAの発現調節メカニズムは,まだ十分には解明されていない。そこで本研究では, 内皮細胞の線溶関連タンパク質の発現におけるNRF2の役割を解明することを目的とした。【方法】ヒト血管内皮細胞株EA.hy926細胞をNRF2活性化剤であるSulforaphane(SFN)で処理し,NRF2活性化内皮細胞を作成した。別に,Lipofection法でsiRNAを導入し,NRF2ノックダウン(NRF2-KD)内皮細胞を作成し実験に供した。各細胞の線溶活性はFibrin zymography法で,t-PAの培地中への分泌量はELISA法で,t-PAおよびPAI-1のmRNAの発現量は定量的RT-PCR法で,NRF2タンパク質量はWestern blot法でそれぞれ測定した。【結果・考察】内皮細胞をSFNで処理したところ,細胞生存率の変化を伴わずに,NRF2タンパク質の発現増加とその下流遺伝子(NQO1など)の発現上昇が確認された。この時,t-PAのmRNA量および分泌タンパク質量の有意な減少並びに線溶活性の低下が確認された。一方,NRF2-KD内皮細胞では対照細胞と比較して,t-PAのmRNA量および分泌タンパク質量の有意な増加と線溶活性の上昇が認められた。また,PAI-1のmRNA量は,NRF2活性化内皮細胞並びにNRF2-KD内皮細胞の両方において,有意な変化は認められなかった。以上の結果より,ヒト血管内皮細胞株EA.hy926細胞において,NRF2は線溶活性促進因子であるt-PAの発現を選択的に抑制することによって線溶活性を負に制御する転写因子であることが明らかとなった。
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山田 真佑花, 関口 雄斗, 土田 芽衣, 平田 祐介, 野口 拓也, 松沢 厚
セッションID: P-60S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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ゲフィチニブは上皮成長因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼ活性を選択的に阻害することで抗腫瘍作用を示す分子標的薬であるが、その標的がEGFRだけではないことが最近報告されている。実際、ゲフィチニブの副作用としての間質性肺炎も、EGFR非依存的な原因である可能性が高い。従って、ゲフィチニブの抗腫瘍作用にはEGFR以外の因子の寄与が考えられる。そこで本研究では、ゲフィチニブの新たな標的因子およびそのメカニズム解明を目的としてゲフィチニブが誘導する細胞応答を詳細に解析した。
我々は、非小細胞肺がん細胞株であるA549細胞にゲフィチニブを前処置すると、細胞死を惹起するデスレセプターの一つであるFasで誘導されるアポトーシスが著しく亢進することを見出した。このゲフィチニブによるアポトーシス亢進作用は、EGFRをノックアウトしたA549細胞や、ゲフィチニブ依存的にFasの発現誘導を促進することが報告された転写因子p53をノックアウトしたA549細胞においても確認され、EGFRやp53に依存しないことが判明した。さらに我々は、ゲフィチニブがアポトーシス抑制因子Heat shock protein(HSP)70の不安定化を引き起こすことを確認し、この作用はゲフィチニブのアポトーシス亢進作用と同様に、EGFRおよびp53非依存的であることも検証した。これらの結果から、ゲフィチニブはHSP70の不安定化を介してFas誘導性アポトーシスを亢進するという、新たな抗腫瘍機構が明らかとなった。
Fas誘導性アポトーシスは、癌細胞を含む不要な細胞を効率的に除去する機構であり、癌治療への応用が期待されている。しかし、多くの癌細胞がFas誘導性アポトーシスに耐性を示すため、Fasを利用した癌治療法は確立されていない。本研究では、ゲフィチニブがFas誘導性アポトーシスの感受性を亢進することを見出し、Fas誘導性アポトーシスに耐性を示す癌に対してゲフィチニブを適用する新たな癌治療戦略の可能性を示した。このゲフィチニブによるFas誘導性アポトーシスの感受性亢進機構の詳細な解析を現在進めている。
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矢吹 綺華, 宮良 政嗣, 梅田 香苗, 西尾 隆史, 岡田 奈都海, 山田 茂, 諫田 泰成, 太田 茂, 古武 弥一郎
セッションID: P-61S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【目的】パーキンソン病(PD)は、ドパミン神経の選択的脱落により引き起こされる神経変性疾患であり、その詳細な原因は未だ不明である。1-Benzyl-1,2,3,4-tetrahydroisoquinoline(1BnTIQ)は、PD患者の脳脊髄液中において通常よりも高い濃度で検出され、マウスおよびサルに投与するとPD様症状を誘発する脳内在性の神経毒性物質であるが、その毒性発現メカニズムは明らかにされていない。近年、リソソームを介した細胞内タンパク質分解機構であるオートファジーの機能低下とPD発症との関係が指摘されている。本研究では、1BnTIQがオートファジーに及ぼす影響を検討した。
【方法】ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞とヒトiPS細胞由来神経前駆細胞(NPC)に150および 300 µM 1BnTIQを12,24,36,48時間曝露した。細胞生存率はWST-1法にて測定した。オートファゴソームマーカータンパク質LC3-II、オートファジー選択的基質p62、リソソーム内加水分解酵素カテプシンDの発現量はウエスタンブロッティングにより評価した。
【結果及び考察】SH-SY5Y細胞において、300 µM 1BnTIQは曝露後24時間から有意な細胞死を引き起こした。このとき、1BnTIQはLC3-IIおよび p62の発現量増加と同時に成熟型カテプシンDの発現量低下を引き起こしたことから、リソソーム機能異常を介してオートファジーを阻害することが示された。以上の結果はNPCにおいても認められた。一方、成熟型カテプシンDの発現量低下は、リソソーム膜損傷を引き起こすL-leucyl-L-leucine methyl ester(LLOMe)の曝露によっても認められた。以上より、1BnTIQもLLOMeと同様にリソソーム膜損傷を介してオートファジーを阻害する可能性が考えられる。今後、1BnTIQによるリソソーム膜損傷やリソソーム内加水分解酵素発現量低下のメカニズムを調べることで、PD発症に関わる根本的原因の解明につながることが期待される。
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安藤 さえこ, 吉本 恵里, 松本 晴年, 深町 勝巳, 酒々井 眞澄
セッションID: P-62S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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私たちは天然中鎖脂肪酸をリードとして、新規抗がん物質palmitoyl piperidinopiperidine(PPI)を創製した(特許第5597427, 2014)。PPIは転写因子STAT3を介してヒト大腸がん細胞へのcytotoxicityを発揮する(日本毒性学会, 2018)。PPIは腫瘍選択性に優れ、アポトーシス誘導能、血管新生抑制効果をもつ。QSAR解析にてPPI構造内のピペリジンに存在するN(窒素)原子の求核性が抗がん効果の発揮に重要であることがわかったため、N原子の求核性を向上させた化合物1121/1112を設計・合成した(特許審査請求中)。本研究では1121/1112のcytotoxicityおよび作用機序について解析した。ヒト大腸がん細胞株に対するIC50値は1121<1112<PPI<STAT3阻害剤(CTS)<5FUであった。1121/1112ばく露ではヒト大腸がん細胞株HT29を90%死滅させる濃度で、ヒト大腸正常上皮細胞FHCが80%生存した。FACS解析にて1121/1112はsubG1 フラクションを増加させ、ウェスタンブロット解析にてBcl-2およびcaspase9の発現を用量依存性に減少させた。両化合物はin silico解析にてSTAT3に結合することが予測された(DS 2017R2)。STAT3とのdocking scoreは1121>1112>PPI>STAT3阻害剤であった。化合物1112 はSW837細胞株に対しSTAT3の転写活性を用量依存性に抑制し、pSTAT3の発現を減少させた。以上の結果から、化合物1121/1112はSTAT3を介してヒト大腸がん細胞株に対してのcytotoxicityを発揮し、ひとつの機序としてアポトーシスの誘導が考えられる。また、N原子の求核性は腫瘍選択性に関与する。
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冨田 俊維, 遠藤 治, 稲葉 一穂, 関本 征史
セッションID: P-63S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【背景】AhRアゴニストには、直接的アゴニストと間接的アゴニストが存在し、この2種類のアゴニストはAhRを活性化するまでの細胞内シグナルが異なることが示唆されている。我々は、細胞内シグナル阻害剤ライブラリーを用いてAhRの活性化に関わる細胞内シグナルの網羅的な探索を進めてきた。その結果から、IGF-IRを起点とする細胞内シグナルが同定されたことから、本研究では、これらの細胞内シグナルの活性化によるAhR活性化への影響を検討した。
【方法】ヒト肝がん由来AhRレポーター細胞株HepG2-XL24に対して、IGF-IR阻害剤、 AKT阻害剤、JAK/STAT3阻害剤をそれぞれ30分前処理した。前処理した細胞に直接的AhRアゴニストである3-Methylechoranthrene(MC)、Indirubin(INB)、6-Formyl indolo[3,2-b]carbazole(FICZ)または、間接的AhRアゴニストであるOmeprazole(OME)、Thiabendazole(TBZ)を24時間処理した、AhR活性化をLuciferase assayにより評価した。さらに、必要に応じてAhR標的分子であるCYP1A酵素の発現への影響をウェスタンブロッティング法により解析した。
【結果及び考察】IGF-IRまたはJAK/STAT3の阻害によって、各アゴニストによるAhR活性化が抑制された。一方、AKTの阻害ではその他のアゴニストによるAhR活性化は抑制されたものの、TBZによるAhRの活性化は抑制されなかった。さらに、IGF-IRを阻害することでAhRアゴニストによるCYP1A酵素の誘導が抑制された。これらの結果から、IGF-1R及びその下流域に存在するJAK/STAT3などの細胞内シグナルの活性化が、AhRの活性化及び標的タンパク質であるCYP1A酵素の発現に重要であると考えられた。また、AKT経路はアゴニストによってその影響を受けるものと受けないものが存在することが考えられる。現在、これらシグナル伝達の阻害がAhR活性化及びCYP1A酵素に及ぼす影響について、より詳細な検討を進めている。
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杉﨑 航太, 藤野 智史, 加藤 玲, 別府 匡貴, 村上 聡, 早川 磨紀男
セッションID: P-64S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【目的】我々は腎癌細胞において、オキシステロールをリガンドとする核内受容体 Liver x receptor (LXR) の活性を逆作動薬SR9243によって抑制すると、細胞未分化マーカー Oct3/4 の発現が顕著に、ただし一時的に、低下することを報告している。LXR 逆作動薬によるOct3/4 の発現低下は腎癌細胞を分化させ、結果的に悪性度を低下させることが期待され、有用な臨床ツールとなり得る。そこで今回、Oct3/4 の発現低下を持続させる方法を構築するべく、一過性に終わるメカニズムの解明を試みた。
【方法・結果・考察】Oct3/4 の発現は、上流因子 ELAVL2 によって負に制御されることが知られている。実際、腎癌細胞株ACHNにおいてELAVL2 をノックダウンしたところ、Oct3/4 mRNA が増大した。一方、Oct3/4 をノックダウンし、ELAVL2 mRNA レベルを測定したところ低下しており、ELAVL2 と Oct3/4 は相互に発現を制御していることが示された。腎癌細胞のLXR 活性を抑制すると Oct3/4 レベルは一時的に低下するが、それにより生じる ELAVL2 低下がOct3/4 レベルの再上昇をおこし、Oct3/4 レベルは一定に保たれると考えられる。正常腎細胞株HK-2においてOct3/4をノックダウンしたところ、腎癌細胞と同様に ELAVL2 レベルが低下するものの、ELAVL2 のノックダウンは腎癌細胞とは逆にOct3/4レベルの低下をもたらした。したがって、Oct3/4 レベルを維持するシステムは腎癌細胞特有のものであると考えられる。
今回見出した腎癌細胞の Oct3/4 レベル維持システムを解除したうえでLXR 活性を抑制することで腎癌細胞を分化癌細胞へと変化させ、悪性度を低下させることが可能と考えられる。
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吉田 真衣, 原 崇人, 鍜冶 利幸, 山本 千夏
セッションID: P-65S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
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【背景・目的】プロテオグリカンは細胞外マトリックスの主要構成成分であり,コアタンパク質にグリコサミノグリカン糖鎖が結合した複合糖質である。血管内皮細胞が合成・分泌するプロテオグリカンは細胞の増殖や内皮細胞機能の維持に寄与するため,その調節機構の解明は重要である。我々は,内皮細胞が合成する細胞膜貫通型プロテオグリカンであるシンデカン-4の発現がTGF-β1によって抑制されるのに対し,FGF-2では誘導されることを明らかにしている。また,TGF-β1は分泌型プロテオグリカンであるビグリカンの発現を誘導することも報告しているが,FGF-2がビグリカンの発現に及ぼす影響はよく分かっていない。本研究では,FGF-2が内皮細胞のビグリカン合成に及ぼす影響を解析した。【方法】コンフルエント(Dense culture)および1×104 cells/cm2に播種し24時間後(Sparse culture)のウシ大動脈内皮細胞にFGF-2(0, 10, 20, 50, および100 ng/mL)を4, 8, 12, および24時間処理した。タンパク質発現はWestern blot法,mRNA発現は定量的RT-PCR法にて解析した。【結果・考察】Dense cultureおよびSparse cultureの内皮細胞において,FGF-2は濃度依存的にビグリカンmRNA発現を抑制した。時間依存性の検討により,Dense cultureではFGF-2処理後12時間,Sparse cultureでは処理後4時間から持続したビグリカンmRNA発現の抑制が認められた。また,培養上清に蓄積したビグリカンコアタンパク質もDense cultureでは100 ng/mL,Sparse cultureでは20 ng/mLのFGF-2処理から発現低下することが示された。一方,ビグリカンの発現抑制と類似した様式で,FGF-2の濃度依存的にDense cultureよりもSparse cultureにおいて顕著なp38 MAPKのリン酸化の減弱が認められた。ビグリカンの発現抑制へのp38 MAPKの関与は現在検討中であるが,本研究の結果より,内皮細胞ではシンデカン-4だけでなくビグリカンもFGF-2とTGF-β1で相反する調節を受けることが明らかとなった。
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畠中 悠紀子, 原 貴史, 増尾 優人, 國武 孝紀, 中井 靖乃, 吉開 会美, 高岸 照久, 深田 俊幸
セッションID: P-66S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
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【背景・目的】亜鉛トランスポーターは、細胞内外の亜鉛を調節し、様々な生理機能を制御する膜タンパク質である。亜鉛トランスポーターSLC39A14(ZIP14)は、亜鉛に加えて、鉄やマンガンを輸送することから、生物学的な観点のみならず、金属毒性との観点から、生体内における役割が注目されている。ヒトZIP14については、機能欠失型遺伝子変異が同定されており、鉄過剰蓄積に起因する神経変性症や、高マンガン血症に起因するパーキンソニズムとの関連が報告されている。ZIP14と疾患との密接な関連から、ZIP14は有用な治療標的と考えられるが、これまでにZIP14の機能を調節する特異的化合物は報告されていない。そこで本研究では、ZIP14の特異的化合物を同定するために、化合物スクリーニング系の構築を試みた。
【方法】ZIP14を過剰発現する細胞株を適用して、次の検討を行った。i) ZIP14タンパク質の発現と、亜鉛蛍光指示薬であるFluoZin-3AMを用いた、細胞内亜鉛の取り込みについて検討を行なった。ii) 細胞増殖を指標として、ZIP14の発現と細胞増殖との関連について評価を行った。
【結果】i) 構築したZIP14過剰細胞株では、ZIP14依存的な細胞内亜鉛の取り込みが認められた。ii) 構築したZIP14過剰細胞株では、ZIP14依存的な細胞増殖の抑制が確認された。
本検討により確立した評価系を化合物スクリーニングに適用することで、ZIP14特異的な化合物の探索研究が可能になると考えられる。
【今後の方針】今後は、本評価系を化合物スクリーニングに応用し、天然物化合物や既存薬を用いたドラッグリポジショニングを視野に入れたスクリーニングを実施する予定である。
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金澤 希, 大橋 和幸, 尾前 悠斤, 大河原 晋, 森 葉子, 礒部 隆史, 越智 定幸, 埴岡 伸光, 神野 透人, 香川(田中) 聡子
セッションID: P-67S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
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【目的】室内環境中の化学物質はシックハウス症候群や喘息等の主要な原因、あるいは増悪因子となることが指摘されているが、そのメカニズムについては不明な点が多く残されている。本研究では、多様な生理機能を有し、多くの生体反応や病態に関わることが指摘されている侵害刺激受容体Transient Receptor Potential (TRP) Channelsについて、ヒト気道および肺組織における発現量の個体差について評価した。
【方法】正常ヒト気道組織由来Total RNAおよび正常ヒト肺組織由来Total RNA(それぞれ10 Donors)をBioChain社より購入した。MultiScribe Reverse Transcriptase (Applied Biosystems) を用いてTotal RNAからcDNAを合成し、TRPイオンチャネル遺伝子(TRPA, TRPV, TRPC, TRPM)について、その発現量をTaqMan MGB Probeを用いたReal-time PCRにより定量した。なお、リアルタイムPCRによる定量値は内在性コントロール遺伝子GAPDHおよびβ-アクチンを用いて標準化した。
【結果および考察】入手したTotal RNAの提供者の情報として、気道組織については21歳から 44 歳の男性(平均年齢:36.9±11.2歳)、肺組織については20歳から 72 歳の男性(平均年齢:40.8±19.1歳)であった。Real-time PCRによる定量解析により、気道過敏性の亢進や喘息の増悪等に関与するTRPA1の正常ヒト気道におけるmRNA発現レベルには100倍以上の個体差が認められることが明らかになった。我々はこれまでに、気道刺激性のin vitro評価系としてヒトTRPA1を安定的に発現する細胞株を樹立し、細胞内へのカルシウムの流入を指標としてその活性化を評価した結果、様々な室内環境化学物質がTRPA1の活性化を引き起こすことを明らかにしてきた。シックハウス症候群の特徴の一つとして、症状の有無やその程度には個人差が大きいことが指摘されているが、本研究結果より、化学物質に対する感受性の個体差を説明する要因の一つとして、気道組織におけるTRPA1が重要な役割を担っている可能性が考えられる。
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森 葉子, 永井 萌子, 河合 美樹, 大河原 晋, 礒部 隆史, 青木 明, 植田 康次, 岡本 誉士典, 埴岡 伸光, 香川(田中) 聡 ...
セッションID: P-68S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
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【目的】Transient Receptor Potential (TRP) イオンチャネルは6回膜貫通型の構造をもつ非選択的なカチオンチャネルであり、温度刺激や機械刺激の他に、さまざまな化学物質によっても活性化する一群の侵害受容体である。近年、生活環境中の多種、多様な化学物質による気道刺激にTRPA1あるいはTRPV1などのTRPイオンチャネルが関与することが明らかにされつつある。そこで、本研究では、バニラ香料として繁用されているVanillinやEthyl Vanillin、およびその類縁化合物によるヒトおよびマウスTRPA1活性化の種差について検討した。
【方法】ヒトTRPA1 (hTRPA1) およびマウスTRPA1 (mTRPA1) を安定的に発現するFlp-In 293細胞をPoly-D-Lysineコート96-wellプレートに播種して一晩培養した。翌日、細胞内カルシウム蛍光指示薬 (Calcium 6) を添加してさらに2時間培養したのちに、被験物質の曝露による蛍光強度 (励起波長485 nm、蛍光波長525 nm) の変化をマイクロプレートリーダー (FlexStation 3) で測定した。
【結果と考察】VanillinおよびEthyl Vanillinを含む19化合物についてTRPA1活性化能を検討した結果、hTRPA1では14化合物、mTRPA1では12化合物に陽性対照 (Cinnamaldehyde, 500 µM) の50%を超えるTRPA1活性化能が認められた。これらの化合物の中で、Ethyl VanillinおよびVeratraldehydeではヒトとマウスのEC50値の間に約3倍,Methyl 3-(4-Hydroxy-3-methoxy)cinnamateでは約5倍の差異が認められた。また、ある種のエステル類は加水分解によってTRPA1活性化能が低下することも明らかとなった。これらの結果は、化学物質のTRPA1依存的な気道刺激性をげっ歯類からヒトに外挿する際には種差を十分に考慮する必要があること、気道に発現するカルボキシルエステラーゼなどの異物代謝酵素が気道刺激性の種差に寄与する可能性があることを示している。
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吉岡 忠夫, 馬場 暁子
セッションID: P-69
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
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【目的】アシルグルクロニド(GA)はカルボン酸医薬品の主要代謝物であるが、求電子活性を有するために薬物有害作用への関与が推察されている。血中を移行するGAとエステラーゼ様活性を有するヒト血清アルブミン(pHSA)との相互作用に関する研究の一環として、アリール酢酸系NSAIDsであるFelbinac(FB)由来GA(FBGA)に対する遺伝子組換え体HSA(rHSA)とpHSAのエステラーゼ様活性を比較検討した。
【方法】FBGAとHSA(終濃度5.0 mg/mL)をリン酸緩衝液(pH7.4, 37℃)中でインキュベートし、FB遊離量をエステラーゼ様活性の指標とした。活性炭による各HSAの脱脂処理の影響やエステラーゼ様活性に対する阻害剤(phenylglyoxal, neostigmine, 4-chloromercuribenzoate, p-APMSF)の影響も調べた。
【結果・考察】①rHSAとpHSAのカタログ物性値はほぼ一致しているが、pHSA存在下のFBGA消失は速い相に続く遅い相の二相性を示すのに対してrHSAは一相性であった。FB遊離活性はpHSA>rHSAであった。②活性炭処理はpHSAとrHSAのFBGA消失速度定数及びFB遊離初速度を増大させ、ほぼ同等の活性となった。活性炭処理による活性の増大率はrHSAの方が高かった。活性炭を用いずに脱脂操作のpH調整を行う操作のみでは活性に影響を与えなかった。これらの結果は両HSA(特にrHSA)が活性炭処理で除去され得る何らかのリガンドを保有しており、そのリガンド結合部位はFBGA消失及びFB遊離に関与していることを示唆している。③4種の阻害剤のうち、Phenylglyoxalのみは添加濃度に依存してエステラーゼ様活性を阻害した。蛍光プローブを用いたHSAのFB遊離活性部位の探索結果も併せて報告する。
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土屋 卓磨, 日堂 佑哉, 高橋 則彦, 阿部 香織
セッションID: P-70
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
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【目的】代表的な精巣毒性物質であるEthylene glycol monomethyl ether(EGME)及び1,3-Dinitrobenzene(1,3-DNB)はそれぞれ精母細胞及びセルトリ細胞を主要な毒性標的細胞とし,反復投与時の精巣組織或いはホルモン等における経時的推移は異なる。また,Liquid chromatography-tandem mass spectrometry(LC-MS/MS)を用いた網羅的タンパク発現解析は,当該組織内における生体反応を理解する上で有用であり,近年その活用例は増加している。そこで本研究では,このような毒性標的の異なる2つの精巣毒性物質について,反復投与時のタンパク発現変動を経時的網羅的に解析することで,それぞれの毒性発現機序並びに関連する生体反応を推定し,その差異を明らかにすることを試みた。
【材料と方法】8週齢の雄性SDラットに対して,EGME及び1,3-DNBをそれぞれ200 mg/kg/day及び5 mg/kg/dayの用量で最長14日間反復経口投与した。1,3,5,7,14回投与後のそれぞれ翌日に経時的に解剖し,採取した精巣について臓器重量測定,病理組織学的検査及びLC-MS/MSによる網羅的タンパク発現解析を実施した。
【結果】病理組織学的検査の結果,EGME投与により,投与初期のステージXII~XIV精細管における精母細胞の変性を特徴とする変化がみられ,1,3-DNB投与群では,投与初期からセルトリ細胞傷害を示唆する精細管内空胞が精細管ステージ非特異的に認められ,いずれの変化も最終的には精細管萎縮に至った。網羅的タンパク発現解析の結果,薬物代謝酵素誘導や酸化還元反応,解糖系などに関連する因子群の発現変動が確認された。集会では,2剤に共通した或いは2剤で異なった変動を示す因子に着目した解析結果について詳細に報告する。
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井上 泰彰, 天野 雄斗, 山根 雅之, 池田 直弘, 本多 泰揮, 森田 修
セッションID: P-71
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
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アミドアミンはヘアリンスや衣料用柔軟剤などに使用される陽イオン界面活性剤である。なかでも、アルキル鎖長C18のアミドアミンは、物化性状や環境排出量の情報が乏しく、環境モニタリングデータもないことから化審法優先評価化学物質に指定され、精度の高いリスク評価が課題となっている。そこで、環境排出量の推定値や弊社の環境モニタリングデータを駆使し、消費者製品に配合されるアルキル鎖長C16、C18およびC22のアミドアミンについてヒト健康と環境影響に対する詳細なリスク評価を行った。
アミドアミンの香粧品用途(ヘアリンス)のヒト暴露量は0.0016 mg/kg/day、家庭品用途(衣料用柔軟剤使用による経皮暴露に環境経由の暴露を考慮)のヒト暴露量は0.0027 mg/kg/dayと推定された。毒性の質や強度にアルキル鎖長の影響は認められず、香粧品用途および家庭品用途でのヒト暴露量はいずれも導出無毒性量(DNEL;香粧品:0.083 mg/kg/day、家庭品:0.042 mg/kg/day)以下の暴露と推定された。
環境排出量は、化審法登録情報、香粧品の市場規模と販売実績、及び弊社の使用量を考慮して推定した。また、環境中に排出されたアミドアミンはlogKowの値から河川表層水のみならず河川底質にも分布すると考えられたため、水生生物に加えて底生生物の予測無影響濃度を推定した。産総研-水系暴露解析モデル(AIST-SHANEL)を用いて推定した全国河川の予測環境中濃度(PEC;河川水:0.021 µg/L、河川底質;0.096 mg/kg-dry)は、独自に実施した環境モニタリングと同程度であり、水生生物と底生生物の毒性値から算出した予測無影響濃度(PNEC;河川水:0.64 µg/L、河川底質:1.30 mg/kg-dry)以下であった。
したがって、消費者製品に配合されるアミドアミンは現在の使用状況において、ヒト健康と環境に対して有害影響を及ぼす可能性は低いと考えられた。
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天野 雄斗, 本田 大士, 澤田 隆介, 額田 祐子, 山根 雅之, 池田 直弘, 森田 修, 山西 芳裕
セッションID: P-72
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
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医薬品の開発コスト高騰や食品成分の薬理作用の報告を受け、in silico予測モデルによる副作用の早期同定はホットトピックスとなっている。既存の予測モデルには副作用誘発物質との構造(分子記述子)の類似性に基づく手法や、Chemical-protein interaction(CPI)に基づく手法があるが、前者はメカニズム面の考察の難しさが、後者は予測対象となるタンパク質の網羅性の低さが課題である。そこで本研究では、潜在的なCPIを網羅的に予測する過程を副作用予測モデルに組み入れることで、メカニズムが考察可能で汎用性の高い予測モデルの構築を目指した。
まず、3350タンパク質に関する既知CPI情報(約118万件)を用いて、分子記述子から潜在的なCPIを予測するモデルを構築した。次に、この予測モデルを用いて化学物質のCPI情報の欠損値を補完し、SIDERに情報のある心血管系/中枢神経系の41副作用に対してCPIから副作用を予測するモデルを構築した。なお、いずれのモデル構築においても、各説明変数の目的変数への寄与を解析可能なスパース分類器を用いた。その結果、副作用モデルの予測精度を示す5回交差検証におけるAUC(心血管系:0.66、中枢神経系:0.70)は、分子記述子を用いたAUC(心血管系:0.63、中枢神経系:0.66)と比較して同等以上であった。更に、副作用への寄与が示唆されたタンパク質のエンリッチメント解析を実施したところ、心血管系では心伝導系等、中枢神経系では神経活動電位等の予測対象に深く関わるパスウェイ/Gene Ontologyに有意差が認められた。また、心血管系では、心血管系疾患との関係性が議論されている発がん関連(前立腺癌、PI3K-Aktシグナル経路等)にも有意差が認められた。以上より、本予測モデルは、既存手法以上の精度での汎用性の高い副作用予測が可能なだけでなく、メカニズム解明のツールとしても活用できると考えられた。
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近澤 清貴, 小野 敦
セッションID: P-73S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
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【背景と目的】我が国では、化学物質の安全性評価の一環として28日間反復投与毒性試験が実施されている。通常、反復投与毒性試験では本試験に先立って投与量設定のため予備試験が実施される。すなわち一つの化学物質に対して二回の反復投与毒性試験を行っている。よって予備試験から本試験と同等の反復投与毒性が評価可能であれば、使用動物数はもとより、試験実施期間やコストの削減が期待できる。本研究の目的は、14日間反復投与毒性試験(14日試験)から28日間反復投与毒性試験(28日試験)への外挿性を評価することである。
【方法】Japan Existing Chemical Database (JECDB)収載で予備試験として14日試験が実施された28日試験のNOEL(14日試験) / NOEL(28日試験)比を算出した。さらにOpen TG-GATEs収載の14日及び28日試験結果を、一般的な毒性評価基準で求めたNOELだけでなく、化学物質の毒性評価代替値として開発されたベンチマークドーズ法により求めたBMDL1SDの二つの評価項目を用い評価した。したがって、NOEL(14日試験) / NOEL(28日試験)比と、BMDL(14日試験) / BMDL(28日試験)比を算出した。また、化学構造との関係を評価するためCramer毒性分類を行い、毒性クラスごとの評価を行った。
【結果】JECDBより132物質、Open TG-GATEsより134物質が本研究の対象となった。いずれのデータセット及び、NOEL比とBMDL比は、ほぼ同様の傾向を示し、各々の比の幾何平均(GM) = 1~2付近、95 %tile = 3~10付近であった。Cramer分類を行うとClass Ⅲで95%tile = 3~15、Class Ⅰで95%tile = 3~4.5となった。14日試験と28日試験でNOEL(もしくはBMDL)が大きく異なる物質の多くがClass Ⅲに分類された。Class Ⅱは、該当物質数が少数であったため評価対象外とした。
【結論】本研究の結果、14日試験から28日試験への外挿の可能性が示された。さらにCramer分類を用いて化学物質を群分けすることで、外挿の精度の高められることが示された。
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なし
セッションID: P-74S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
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大矢 和幸, 安部 賀央里, 頭金 正博
セッションID: P-75S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
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特異体質性副作用は発症頻度が低く、発症機序が不明であることが多い。そのため、医薬品開発の段階において副作用との関連性を予測することは困難である。一方で、市販後の副作用データベースを用いることで、医薬品と様々な副作用の関連性を把握することが可能になる。そこで我々は、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN)などの重症皮膚副作用に注目して大規模な副作用自発報告データベースを利用し、医薬品の構造情報から機械学習法の一つであるDeep Learning(DL)によるin silico副作用予測モデルを構築することを目的とした。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)が運用している医薬品副作用データベース(JADER)の2004年第一四半期から2017年第二四半期までに登録された有害事象報告データを用いた。対象副作用としては、MedDRA ver20.1の標準検索式(SMQ)における重症皮膚副作用(SCAR)のうち、狭義検索用語に含まれるものを対象とした。血中へ移行する可能性が低い投与経路の医薬品は除外し、シグナル検出法と報告件数を用いてSCAR陽性・SCAR陰性を定義し該当する医薬品を抽出した。SCAR陽性医薬品の抽出時には併用薬の影響を考慮した。抽出された医薬品の構造情報については、Dragon 7を用いて分子記述子計算を行った。得られた記述子を変数とし、DLを用いてSCARの有無を判別する副作用予測モデルを構築した。予測モデルの評価は予測精度等の指標を用いた。
構造情報のみを変数とした予測モデルでは、70%以上の予測精度が得られた。今回の研究ではJADERを活用し、機械学習法によるSCAR予測モデルを構築することができ、副作用データベースの新たな活用方法を示すことができた。
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出口 清香, 山下 智起, 井貝 圭佑, 高山 和雄, 水口 裕之
セッションID: P-76E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【背景・目的】現行の創薬研究過程の肝毒性予測試験には初代培養ヒト肝細胞(PHH)が汎用されている。PHHの薬物代謝酵素活性には大きな個人差があるが、特定の分子種の薬物代謝酵素活性が消失した個人(poor metabolizer)由来のPHHは入手困難である。そのため、poor metabolizerにおける肝毒性予測試験を行うためのモデル細胞の開発が急務である。そこで本研究では、種々の薬物代謝酵素欠損ヒトiPS細胞由来肝細胞を作製し、poor metabolizerのための肝毒性予測試験法の開発を目指す。【方法】我々が独自開発した高効率ゲノム編集技術と高効率肝細胞分化誘導法を用いて、薬物代謝酵素CYPを欠損(KO)したヒトiPS細胞由来肝細胞を作製し、毒性試験への応用を行った。本研究では、標的とする薬物代謝酵素として、CYP2C19とCYP3A4に着目した。【結果・考察】作製したCYP2C19-KO iPS細胞とCYP3A4-KO iPS細胞を用いて遺伝子発現解析と免疫染色を行い、CYP2C19またはCYP3A4の欠損はヒトiPS細胞の未分化能と肝分化能に影響を及ぼさないことを確認した。また、S-mephenytoinを用いてCYP2C19活性をLC-MSにより調べたところ、CYP2C19-KO iPS細胞由来肝細胞(CYP2C19-KO肝細胞)のCYP2C19活性が消失していることを確認できた。同様に、Midazolamを用いてCYP3A4活性を調べたところ、CYP3A4-KO iPS細胞由来肝細胞のCYP3A4活性が消失していることを確認できた。さらに、CYP2C19の基質であり、肝障害を起こした報告のあるclopidogrelを野生型肝細胞およびCYP2C19-KO肝細胞に作用させたところ、CYP3A4阻害剤ketoconazole併用下では、CYP2C19-KO 肝細胞においてのみclopidogrelによる肝障害が生じないことを見出した。以上より、薬物代謝酵素欠損iPS細胞由来肝細胞がpoor metabolizerの肝毒性予測試験のためのモデル細胞になりうることが示唆された。今後、多様な薬物代謝酵素を欠損したヒトiPS細胞由来肝細胞を作製することにより、あらゆる遺伝型を有する個人にも対応できるpoor metabolizerの肝毒性予測試験ためのパネルを構築したい。
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宮内 優, 永田 清, 山添 康, Peter MACKENZIE, 田中 嘉孝, 石井 祐次
セッションID: P-77E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【背景】我々はシトクロム P450 (CYP) 3A4がUDP-グルクロン酸転移酵素 (UGT) 2B7と相互作用することにより、CYP3A4の酵素活性をはじめとする触媒サイクル全体が低下することを報告した (Miyauchi et al, Mol Pharmacol, 2015)。本研究では別のUGT分子種であるUGT1A9がCYP3A4活性に与える影響に加え、ラット肝臓中におけるCYP3A-UGT1A相互作用の解析を行った。
【方法】バキュロウイルス-昆虫細胞発現系を用いてCYP3A4、NADPH-CYP reductase、UGT1A9の共発現系を構築した。組換えウイルスを感染させた細胞からホモジネートおよびミクロゾームを調製し、UGT1A9の共発現の有無でCYP3A4活性を比較した。In vivoにおけるCYP3A-UGT1A相互作用の解析では、5週齢のWistar雄性ラットにグルココルチコイドの一種であるdexamethasoneを投与し、肝臓におけるCYPおよびUGTを誘導させた。摘出した肝臓からミクロゾームを調製し、CYP3AおよびUGT1Aをイムノブロットで定量したのち、CYP3A活性を測定した。
【結果・考察】UGT2B7の場合と同様、UGT1A9の共発現は、CYP3A4活性を有意に抑制した。また、酵素反応速度論的解析の結果、UGTによるCYP3A4活性の抑制機構はUGTの分子種依存的であることが明らかとなった。さらに、dexamethasoneを投与することによりラット肝臓中のCYP3Aは10倍、UGT1Aは4倍誘導された。単位CYPあたりのCYP3A活性がdexamethasone処理により2倍程度上昇したことから、薬物を用いた誘導によりラット肝臓内のCYP3A-UGT1A相互作用が部分的に解除されることが示唆された。
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市川 諒, 中原 惇太, 増田 湊介, 中村 和樹, 伊藤 優子, 渋谷 淳, 吉田 敏則
セッションID: P-78E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【背景及び目的】非アルコール性脂肪性肝疾患の患者の一部は非アルコール性脂肪性肝炎、線維化を経て肝細胞癌へと進行するが、肝細胞の脂肪肝からがん化に至る分子機構は十分には解明されていない。糖尿病は非アルコール性脂肪肝の発生に関連していると言われている。本研究では、肝前がん病変形成に対するオートファジーの関与を明らかにするために、糖尿病・脂肪肝関連初期発がんモデルを用いて検討した。【方法】5週齢の雄F344ラットを、基礎飼料(BD)群、streptozotocin (STZ) 誘発糖尿病BD群 (BD+STZ)、高脂肪飼料(HFD)群、STZ誘発糖尿病HFD群 (HFD+STZ)の4群構成とし、それぞれ9, 9, 9, 12匹の計39匹を使用した。順化後に発がんイニシエーターdiethylnitrosamine (DEN)を単回腹腔内投与し、2週間後にSTZを30 mg/kgで単回腹腔内投与、3週間後に2/3部分肝切除、7週間後に糖負荷試験を実施し、8週間後に解剖した。【結果】糖負荷試験の結果、BD群、HFD群と比較してBD+STZ群、HFD+STZ群において血糖値の高値が認められた。体重はHFD群と比較してHFD+STZ群で低値を示し、腹腔内脂肪重量はSTZ投与群において低値傾向を示した。肝臓の脂肪化および風船様変性のスコアがSTZ投与により増加した。肝臓の免疫組織化学染色では、肝前がん病変指標GST-P 陽性巣はBD群、BD+STZ群と比較してHFD+STZ群で高値を示した。GST-P陽性細胞巣におけるオートファジーの活性指標であるLC3の発現はCD+STZ群と比較してHFD+STZ群で陽性細胞数の高値を示した。real time RT-PCR解析の結果、肝臓のオートファジー関連因子の遺伝子発現に差は認められなかった。【考察】HFDおよびSTZにより誘発した糖尿病・脂肪肝関連初期発がんモデルにおける、肝前がん病変の形成にはオートファジーが関与することが示唆された。
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豊田 優, 高田 龍平, 梅澤 雅和, 戸村 文哉, 山梨 義英, 武田 健, 鈴木 洋史
セッションID: P-79E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【背景と目的】コレステロール輸送体として知られるNiemann-Pick C1-Like 1(NPC1L1)は、マウスではほぼ小腸特異的に発現し、コレステロールの吸収を担うことが示されている。一方、マウスの場合とは異なり、ヒトにおけるNPC1L1は小腸のみならず肝臓においても高発現している。ところが、肝臓のNPC1L1が胆汁に排泄されたコレステロールを肝臓に再吸収することが見出されているものの、その生理的重要性については不明な点が多い。そこで本研究では、肝臓に発現するNPC1L1が肝臓への脂質蓄積に与える影響を検討した。
【方法・結果】野生型マウスおよびヒトNPC1L1を肝臓に発現する遺伝子改変マウス(L1-Tgマウス)に対して高コレステロールを特徴とする高脂肪食を与え、肝臓への脂肪蓄積に与える影響を調べた。その結果、高脂肪食を2週間与えたL1-Tgマウスにおいて、顕著な脂肪肝が誘導された。この表現型は、野生型マウスおよび通常食を与えたL1-Tgマウスでは認められなかった。なお、アデノウイルスベクターを用いてヒトNPC1L1を肝臓に一過的に導入したマウスについても同様の検討を行ったところ、肝臓への中性脂肪蓄積が確認された。また、NPC1L1の特異的阻害剤であるエゼチミブを含む高脂肪食を与えたところ、脂肪肝は誘導されなかった。さらに、各遺伝子型マウスの肝組織を用いたマイクロアレイ解析、およびその結果を踏まえたin vivo阻害剤投与実験の結果から、肝臓のNPC1L1依存的な脂肪肝誘導におけるTLR4シグナルの関与が認められた。
【考察】肝臓のNPC1L1が脂肪肝増悪因子であることが示唆された。NPC1L1を発現しているという点でよりヒトに近い肝臓を持つL1-Tgマウスにおいて、高脂肪食誘導性の脂肪肝が早期に認められたことは興味深く、当該マウスが新たなNAFLDモデルマウスとして有用である可能性を踏まえ、さらなる解析を進めている。
【参考文献】Toyoda et al., FASEB BioAdvances, in press.
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臼井 達哉
セッションID: P-80E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【背景】近年、飲酒や高脂肪食の摂取などに起因する肥満によって肝臓に脂肪が蓄積し、その後、脂肪肝炎を経て肝硬変へと進行する人が増加している。また、飲酒歴のない人にも非アルコール性脂肪肝(NASH)と呼ばれる脂肪肝が起き、将来的に肝硬変・肝がんに進行することが明らかになってきており、国内で約1千万人の罹患者がいると考えられている。NASHは確立した治療法が存在せず、肝臓が線維化した病態では致死的になる可能性があることから、新規治療法の開発が求められており、これまでとは違う病態へのアプローチ方法が必要とされている。
【目的】そこで本研究では、NASH病態モデルマウスの肝臓組織由来オルガノイドがNASH研究の有用なツールになることを示すとともに、NASH肝臓オルガノイドを用いた発症メカニズムの解明および新規治療法開発につなげることを目的とする。
【方法】6週齢のB57BLマウスにコリン欠乏およびメチオニン減量高脂肪食を4, 8, 12週間給餌し、進行度の違うNASH病態モデルマウス群を作製した後に肝臓を摘出し、病理組織学構造を解析するとともに、三次元オルガノイド培養を行い肝臓オルガノイドの作製を行った。
【結果・考察】培養開始後2週間で、コントロール飼料を給餌したマウス、高脂肪食を給餌したマウスの肝臓組織由来のオルガノイドの形成がみられた。各オルガノイドにおいて、肝細胞マーカーであるアルブミンの発現が認められた。4つのグループのなかでは、高脂肪食4週間給餌のマウス由来の肝臓オルガノイドが最も高いオルガノイド形成能を示した。また、高脂肪食12週間給餌のマウス由来の肝臓オルガノイドは、他のグループとは異なるアメーバ状の形態が見られた。以上の結果から、NASH病態モデルマウスの肝臓組織由来オルガノイドが新たな研究ツールとなる可能性が示唆された。
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伊藤 優子, 中島 康太, 増渕 康哲, 菊地 聡美, 齋藤 文代, 赤堀 有美, 吉田 敏則, 渋谷 淳
セッションID: P-81E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【背景及び目的】がん細胞では細胞増殖に必要なエネルギー産生のために代謝リプログラミングが生じる。これまで我々は、遺伝毒性の有無による発がん機序の違いを明らかにする目的で、肝臓を例として代表的な遺伝毒性肝発がん物質 (GHC) と非遺伝毒性肝発がん物質 (NGHC) の各1剤を用いて、ラットに対する反復投与により、肝臓における解糖系及びグルタミン代謝関連分子の発現反応性が異なることを見出している。本研究では、他の複数のGHCないしNGHCを用いて、これら代謝分子の反応性を比較・検討した。
【方法】ラットにGHC 3剤(アフラトキシンB1、N-ニトロソピロリジン、カルバドックス)、NGHC 2剤(チオアセトアミド及びメタピリレン)の発がん用量を28日間ないし90日間反復投与し、代謝関連分子の肝臓におけるmRNA発現とGST-P陽性前がん病変における免疫組織学的分布を検討した。
【結果及び考察】酸化的リン酸化(OXPHOS)関連遺伝子は、28日目からGHC群及びNGHC群ともに発現減少したが、ミトコンドリアATP合成酵素ATP synthase subunit beta (ATPB) 陰性巣数はNGHC群で増加した。NGHC群では解糖系の抑制を介してOXPHOSを下方制御するTigarの発現が増加し、OXPHOSの抑制に関与する可能性を示した。非腫瘍細胞で発現する解糖系酵素遺伝子Pklrは28日目からNGHC群で発現減少し、PKLR陰性巣数はNGHC群で増加した。一方、NGHC群では、発がんに伴い発現増加する解糖系酵素Pkmの発現は90日目で増加しており、PklrからPkmへのシフトが生じていた。GHC群では28日目からPkmの発現は増加し、PKM2及びglucose-6-phosphate 1-dehydrogenase (G6PD) 陽性巣数は増加した。PKM2及びG6PDは核酸を合成するペントースリン酸回路の活性化に関与している。グルタミン代謝関連遺伝子は28日目からGHC群及びNGHC群ともに増加した。以上より、肝発がん物質の遺伝毒性の有無により、解糖系の分子機序は異なる可能性が示唆された。
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龍 完次朗, 美谷島 克宏, 張 舜恵, 山口 彩音, 日高 佳穂, 大畑 敬一, 宇野 絹子, 煙山 紀子, 小川 秀治, 渡邊 厚, 中 ...
セッションID: P-82S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【目的】NASHの診断に関しては、非侵襲性で定量的なバイオマーカーの実用化が期待されている。一方、血液中の肝臓型脂肪酸結合タンパク質(L-FABP)は、ヒトの薬剤性肝障害やNAFLD/NASHの疾患マーカーとなり得ると報告され、注目されている。本研究では、雄性ヒトL-FABP染色体遺伝子導入マウス(hL-FABP transgenic(Tg)マウス)を用いて食餌誘発性NASH様病態の解析を行った。
【材料及び方法】実験は、7週齢雄性のhL-FABP Tgマウスと対照のC57BL/6マウスに、基礎飼料(CE-2)とコリン欠乏メチオニン低減高脂肪アミノ酸(CDAA-HF)食を自由摂取させた。給餌期間は2及び13週間とし、両期間終了時には解剖し、血液及び肝臓を採取し、血清生化学的及び病理組織学的解析を実施した。
【結果】CDAA-HF食群においては、両系統とも血清中ALT活性が2週間で上昇し、13週間でやや低下した。この変化は、Tgマウスより、対照動物で顕著であった。血清中AST活性も同様に2週間で上昇したが、対照動物のみ13週間で低下傾向を示した。一方、CDAA-HF食群の肝においては、2週間から顕著な脂肪化、軽度の肝細胞肥大、炎症及び線維化を観察し、13週間でその程度が増悪した。このうち、線維化は、Tgマウスがより顕著であった。
【結論】ヒトL-FABPの遺伝子を導入したTgマウスにおいては、対照動物と同様にCDAA-HF食によってNASH様病態が誘発されたが、対照動物に比べて肝細胞傷害が減弱し、線維化が増悪した。以上の結果より、L-FABPは、バイオマーカーにとどまらず、マウスの食餌性NASH様病態の背景メカニズムになんらかの役割を果たすものと示唆された。
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高 臨風, 煙山 紀子, 斎藤 奈津美, 渡邊 聖栄子, 龍 完次朗, 宇野 絹子, 張 舜恵, 小川 秀治, 美谷島 克宏, 中江 大
セッションID: P-83S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【目的】Sterol regulatory element-binding proteins(SREBPs)は、脂質合成を司る転写因子で、過剰な活性化により肥満や脂質代謝異常を促進する。本研究は、SREBPsが代謝調節だけでなく、小胞体ストレスや慢性炎症にも関与することを明らかにする目的で行った。
【方法】In vitro実験は、HepG2細胞またはHEP293細胞を用い、thapsigarginにより誘導される小胞体ストレスや、SREBPs遺伝子の発現制御が及ぼす影響を、real time-PCRや、RNA-Seq.により解析した。In vivo実験は、改変コリン欠乏メチオニン低減アミノ酸(mCDAA)食によりC57BL6系雄性マウスに非アルコール性脂肪肝炎(NASH)様病態を誘発し、RNA-Seq.により抽出された遺伝子とその産物の肝での発現を解析した。
【結果】HepG2細胞において、SREBP-1ノックダウンは、小胞体ストレスメディエータであるCHOPの発現を減弱し、小胞体ストレス誘導後に行ったRNA-Seq.でIL-21Rの発現減弱を抽出した。IL-21Rは、小胞体ストレス時に誘導され、SREBP-1ノックダウンにおいて誘導が抑えられた。HEK293細胞において、SREBP-1a・SREBP-2を過剰発現は、IL-21Rの発現を増強した。また、改変CDAA食によりNASH様病態を誘発したマウスにおいては、肝のIL-21R遺伝子の発現が増強し、産物蛋白が肝細胞に発現した。
【考察】SREBP-1は、脂質代謝と別に、小胞体ストレスや慢性炎症に関与することが判明した。また、本研究によってSREBP-1またはSREBP-2によって制御される新規小胞体ストレス関連因子候補として同定されたIL-21Rは、NASH様病態に何らかの役割を果たしているものと示唆された。
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阿部 有加里, 煙山 紀子, 鈴木 紀宏, 松島 亮太, 宇野 絹子, 小川 秀治, 渡邊 厚, 小栁 美穂子, 林 新茂, 美谷島 克宏, ...
セッションID: P-84S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
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【目的】本研究は、改変コリン欠乏メチオニン低減アミノ酸(mCDAA)食をマウスに7カ月間負荷することにより誘発された非アルコール性脂肪肝炎(NASH)様病態に対する、ラカンカ抽出物の影響について検討した。
【方法】実験は、6週齢の雄性C57BL/6J系マウス(1群6匹)に、mCDAA食(A16032902、Research Diets)または基礎食(CE-2、日本クレア(株))を7カ月間給餌し、同時期にラカンカ抽出物(三栄源エフ・エフ・アイ(株))を0・0.2・0.6・2.0%の濃度で純水に溶解し混水投与した。飼育期間中、一般状態観察ならびに体重・摂餌量・摂水量の測定を行った。解剖時には、麻酔下で腹大動脈より採血した後に放血殺し、速やかに肝臓を採取して重量を測定後、一部を凍結保存し、残りを10%中性緩衝ホルマリン液にて固定して、病理組織学的ならびに分子生物学的解析を行った。
【結果】体重においては、基礎食群とmCDAA食+純水群で差がなかったが、mCDAA+2%ラカンカ群で体重の増加傾向がみられた。血漿中ALT・AST活性は、基礎食と比較しmCDAA食群で上昇したが、ラカンカ抽出物による影響がなかった。病理組織学的検査において、mCDAA食群では、脂肪化、線維化およびα–SMA陽性を示す星細胞の活性化がみられた。肝脂肪化については、mCDAA食群において0.2%および2%のラカンカで増強がみられた。肝線維化および星細胞活性化については、mCDAA食群において、ラカンカの投与濃度に依存した程度の減弱がみられた。現在、肝線維化関連の遺伝子発現解析を進めている。
【結論】以上の結果より、ラカンカ抽出物は、mCDAA食によってマウスに引き起こされる肝線維化に対し、抑制作用を有する可能性が示唆された。
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米川 恵理, 山崎 弘量, 清水 佑記, 佐々木 崇光, 渡邉 美智子, 志津 怜太, 保坂 卓臣, 竹下 潤一, 吉成 浩一
セッションID: P-85S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
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【目的】薬剤性肝障害(Drug-Induced Liver Injury: DILI)は、医薬品の開発及び販売中止の主要な要因の一つである。DILI誘発性を有する薬物(DILI薬物)は、一日投与量や脂溶性が高く、胆汁トランスポーター阻害活性やシトクロムP450(P450)反応性を有することが報告されている。しかし、これらの特徴について、DILI誘発性のない薬物(no-DILI薬物)との明確な違いは明らかにされていない。そこで本研究では、DILI薬物及びno-DILI薬物間のP450反応性を評価し、その差異の解明を試みた。
【方法】221種のDILI薬物及び78種のno-DILI薬物を文献情報より選択し、市販薬物を購入して使用した。ヒト肝ミクロソーム又は組換えヒトP450を酵素源として、P450-Glo Assay System(Promega)を用いて8分子種のヒトP450に対する被験物質の阻害活性を評価し、阻害率が20%以上の時、被験薬物がそのP450分子種に対して反応性を有すると判定した。統計学的解析にはJMP Pro 12を使用した。
【結果】299薬物のヒトP450阻害活性を評価した結果、DILI薬物のCYP1A1及びCYP1B1に対する反応性(阻害陽性薬物の割合)は、no-DILI薬物に比べて有意に高かった。特に、CYP1B1では全299薬物中92種が反応性を示し、そのうち81種はDILI薬物(全DILI薬物中37%)、11種がno-DILI薬物(全no-DILI薬物中14%)と顕著な差が認められた。一方、CYP1A2、CYP2B6、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6及びCYP3A4に対する反応性では、DILI薬物とno-DILI薬物の間に有意差は認められなかった。
【考察】以上本研究では、DILI薬物は、医薬品代謝への寄与が大きいP450分子種にくらべて、寄与が小さいCYP1B1に高い反応性を示すという興味深い知見が得られ、薬物のCYP1B1反応性はDILI薬物とno-DILI薬物の判別指標として利用できる可能性を示した。今後CYP1B1反応性を有する薬物の化学的及び構造的特徴を解析することで、DILI薬物に共通な特徴を同定することが可能となると考えられた。
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池山 佑豪, 関根 秀一, 石田 雄二, 立野 知世, 劉 聡, 伊藤 晃成
セッションID: P-86S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
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【目的】ミトコンドリア毒性は薬物性肝障害の要因の一つとして注目されている。我々は、ラット初代培養肝細胞において培養糖源をグルコースからガラクトースに置換(糖源置換)することに加え、酸素供給量を増加させることで、ミトコンドリア毒性に伴う細胞死を検出できることを報告している。ヒトでの毒性予測を行う上ではゴールデンスタンダードとされる凍結ヒト肝細胞に本手法を適用することが望ましいと考えられるが、ロット間差や凍結によるミトコンドリアダメージが懸念される。ヒト肝キメラマウスより単離した新鮮初代培養肝細胞(PXB-cells)ではこれら問題を回避できると期待されたため、本研究では凍結ヒト肝細胞とPXB-cellsを用い、両細胞について糖源置換に基づくミトコンドリア毒性評価手法の適用が可能か検討した。【方法】凍結ヒト肝細胞とPXB-cellsをサンドイッチ培養し、培養糖源をグルコースからガラクトースへと置換した。凍結ヒト肝細胞では糖源置換による細胞死が顕著で、その後の培養困難であった。一方、PXB-cellsでは糖源置換後も培養維持が可能であった。そこで、PXB-cellsについてのみ酸素消費と乳酸産生量を測定し、糖源置換に応じたミトコンドリア機能の変化を評価した。同様に、PXB-cellsに呼吸鎖複合体阻害が知られる薬物(トログリタゾン・フルタミド・ロテノン)を曝露した時の細胞死を、乳酸脱水素酵素(LDH)漏出およびATP量の変化で評価した。【結果】PXB-cellsでは糖源置換により乳酸産生量の低下、酸素消費量の増加が確認され、エネルギー産生における酸化的リン酸化の寄与の増大が確認された。一連の呼吸鎖複合体阻害薬物の曝露時に見られたLDH漏出およびATP量の減少は、共に糖源置換した条件でより顕著に認められた。これら毒性は陰性対象薬物では確認されなかった。【結論】PXB-cellsは糖源置換培養が可能であり、これによりミトコンドリア機能が亢進し、呼吸鎖複合体阻害機序に基づく薬物毒性を鋭敏に検出できると考えられた。
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藤山 知之, 船戸 弘正, 恒岡 洋右, 金丸 和正, 柿﨑 美代, 管野 里美, 石川 由紀子, 宮下 聡, 山下 真理子, 大輪 智雄, ...
セッションID: P-87E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
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男性と女性では脳の構造や機能に生まれつき差異があり、その差異を出発点とし、成長を通じてものの考え方や立ち居振る舞い、嗜好などに違いが現れる。ヒトを含む哺乳類の脳は「臨界期」と呼ばれる時期にテストステロン刺激を受けると男性化し、その刺激を受けないと女性化することが知られている。しかし「臨界期」以前の脳の性分化機構についてはよくわかっていなかった。われわれは、膵臓や小脳の発達に関わるPtf1a遺伝子が「臨界期」より遥かに前の胎児期において視床下部と呼ばれる脳領域の神経前駆細胞で発現することを見出した。その領域でPtf1a遺伝子を破壊したノックアウトマウスを作製したところ、その脳は「臨界期」にテストステロン刺激を受けても男性化できず、その一方でテストステロン刺激を受けない場合でも女性化できないことが観察された。このことから、(1)脳の性分化(男性化または女性化)のためには、「臨界期」以前に「性分化準備状態」になる必要があること、そして(2)胎児期の視床下部Ptf1aが脳を「性分化準備状態」へと導き、その後の「臨界期」でのテストステロン刺激・非刺激によって男性脳・女性脳へと性分化させるということが明らかになった。これまでにも脳の性分化に関わる遺伝子はいくつか報告されているが、Ptf1aはそれらの中で最も早く働く最上流遺伝子であり、脳の性分化の最初期段階を明らかにしたとも考えられる。
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平野 哲史, 皆川 沙月, 古澤 之裕, 柚木 達也, 池中 良徳, 横山 俊史, 星 信彦, 田渕 圭章
セッションID: P-88E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
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【背景・目的】1990年代以降に農薬登録されたネオニコチノイドは昆虫のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChRs)に対するアゴニスト作用を示す新規農薬であるが、動物実験により哺乳類nAChRsを介して不測の影響を及ぼす例が報告されている。また、国内外における本農薬使用量の増加に伴い、ヒト尿からの検出率および検出量が急増している一方で、ヒトnAChRsに対する作用については十分に検証されていない。本研究では、ネオニコチノイド系農薬の1種クロチアニジン(CTD)がヒト神経芽細胞腫に及ぼすシグナル毒性的影響および作用機序を解明し、ヒト神経系に及ぼす未知のリスクを明らかにすることを目的とした。
【方法】ヒト神経芽細胞腫(SH-SY5Y)に1–100 µMのCTDを曝露し、細胞数の変化を計測するとともに、細胞内シグナル状態の変化から機能的影響を評価し、各種nAChRsアンタゴニストの作用を検討した。加えて、マイクロアレイを用いてCTD曝露による遺伝子発現プロファイルの変化を解析した。
【結果・考察】CTD曝露群においては、培養24時間後以降に濃度依存的な細胞数の増加がみられ、その作用は広域アンタゴニストである mecamylamineおよびα3β4特異的アンタゴニストであるSR16584により消失した。また、CTD曝露直後においては一過性の細胞内カルシウム濃度の上昇、ならびにERKリン酸化レベルの上昇がみられた。Gene Ontology解析およびパスウェイ解析の結果、検出された発現低下遺伝子群は「カルシウムイオン流入」や「糸状仮足形成」等の細胞機能に関与しており、「軸索誘導」や「細胞骨格」に関するパスウェイが変動していることが示唆された。以上の結果から、ヒト神経芽細胞腫においてネオニコチノイド系農薬が機能的影響を及ぼすリスクが初めて明らかとなり、そのメカニズムとしてヒトnAChRs α3β4を介した細胞内カルシウムシグナルのかく乱が関連することが示唆された。
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中原 惇太, 増渕 康哲, 中島 康太, 伊藤 優子, 菊地 聡美, 市川 諒, 中尾 友洋, 小栁 美穂子, 林 新茂, 吉田 敏則, 渋 ...
セッションID: P-89E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【背景と目的】食品中には抗酸化物質が多数含まれており、それらの曝露による様々な疾患予防効果が知られている。本研究では、腸管吸収性を改善した食品由来ポリフェノール系抗酸化物質製剤をラットに発達期から成熟期まで継続投与し、神経行動学的作用を検討した。【方法】妊娠Long-Evansラットに対して妊娠6日から児動物出生後21日(PND 21;離乳時)までの間、抗酸化物質製剤を0.1%ないし0.5%濃度で混餌投与し、その後児動物に対して生後21日から成熟後まで混餌投与した。PND 62からPND 74まで行動試験を実施し、行動試験実施及び非実施の雄児動物の脳を摘出し、前頭前野皮質、海馬及び扁桃体組織について分子発現解析を行った。【結果】オープンフィールド試験 (OFT)では、0.1%群で中心部滞在時間が高値を示した。恐怖条件付け試験 (FC)では、製剤は恐怖記憶の獲得に影響しなかったが、恐怖記憶の消去については0.1%群のみで学習促進を示した。物体認識試験と位置認識試験では変化を認めなかった。免疫組織化学的解析により、行動試験を実施した0.1%群の海馬歯状回(DG)でFOS陽性(+)細胞数及びARC+細胞数、下辺縁皮質 (IL)でFOS+細胞数が、それぞれ高値と高値傾向を示した。【考察】0.1%群でOFTの中心部滞在時間が延長したことから、この用量で抗不安作用が示唆された。0.1%群では更に、FCにおける消去学習の促進、消去学習後のDG及びILにおいてシナプス可塑性に関わる最初期遺伝子産物の発現細胞数の増数を認めた。以上より、本製剤の0.1%曝露により海馬における抗不安作用に関わる神経回路の増強、及び海馬からILを経由して扁桃体へ出力する消去学習回路の活性化が生じた可能性が示唆された。0.5%群では被毛の汚れ及び軽微な体重増加抑制を示し、高用量曝露によるストレスにより本抗酸化物質製剤で期待される効果がマスクされた可能性が考えられた。
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中島 康太, 伊藤 優子, 増渕 康哲, 菊地 聡美, 中原 惇太, 吉田 敏則, 小西 良子, 渋谷 淳
セッションID: P-90E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【方法】無処置対照群を含む4群を設定して、各群10~13匹の妊娠マウスに対してT-2 toxin (T2)、シトレオビリジン(CIT)、ジアセトキシスシルペノール(DAS)を、妊娠ラットに対してアフラトキシンB1 (AFB1)、オクラトキシンA (OTA)、ステリグマトシスチン(STC)を妊娠6日目から分娩後21日目まで混餌投与し、児動物を生後21日目(PND 21; 離乳時)と生後77日目(PND 77; 成熟時)に解剖し、DGの顆粒細胞系譜神経新生と歯状回門でのGABA性介在ニューロンの数を免疫染色により検討した。
【結果】顆粒細胞系譜の新生障害は全てPND 21で認められ、T2ではtype-1神経幹細胞~type-2b神経前駆細胞、T2に化学構造が類似するDASではtype-1~3細胞、AFB1と共に化学構造が類似したSTCではtype-3前駆細胞が減少した。一方、OTAではtype-2前駆細胞のみが減少し、CITでは軽微にtype-1細胞が減少し、type-2~3細胞が増加して、他のかび毒とは異なる挙動を示した。介在ニューロン数も全てのかび毒で主にPND 21で変動したが、かび毒毎に異なる細胞の反応や反応パターンを示した。DASではPND 77でRELN+細胞が新たに増数した。また、T2, DAS, OTAで神経新生部位でのmalondialdehyde (MDA) +細胞が増加した。
【考察】本研究より、かび毒の化学構造に依存した顆粒細胞系譜の標的性が明らかとなった。一方、かび毒毎に異なった介在ニューロンの変化は、類似した顆粒細胞系譜標的性を示したかび毒同士でも認められたため、多くは二次的な反応であることが示唆された。MDA+細胞が増数したかび毒の顆粒細胞系譜標的細胞の比較により、増殖の盛んな前駆細胞がかび毒に起因する酸化性ストレスの主な標的になることが示唆された。
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Higor Alves IHA, Naofumi KUNISAWA, Masaki KATO, Saki SHIMIZU, Misaki O ...
セッションID: P-91E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
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Organophosphates (OPs) including parathion and malathion are widely used as pesticides. Intoxication by high-dose or long-term exposure to OPs is a global health concern. OPs irreversibly inhibit cholinesterase, elevate the acetylcholine level and cause various cholinergic symptoms (e.g., cardiovascular hypofunction, motor excitements, and convulsions). However, the mechanism of OPs intoxication, especially its effects on motor functions, still not fully understood. Here, using paraoxon, an active metabolite of parathion, we performed behavioral and immunohistochemistry studies to clarify the mechanisms for paraoxon-induced tremor. Paraoxon (0.15-0.6 mg/kg, i.p.) induced a dose-dependent kinetic tremor. Expression analysis of Fos protein, a biomarker of neural excitation, in 48 brain different regions revealed that a tremorgenic dose (0.6 mg/kg, i.p.) of paraoxon region-specifically activates 6 brain regions (sensory cortex, hippocampus, dorsolateral striatum, globus pallidus, medial habenula and inferior olive). In addition, paraoxon-induced tremor and Fos expression in the inferior olive were inhibited by mecamylamine (nicotinic receptor antagonist), but not by trihexyphenidyl (muscarinic receptor antagonist). Finally, electrical lesion of the inferior olive suppressed paraoxon-induced tremor. Our results show that paraoxon provokes kinetic tremor at least partly by activating the inferior olive neurons via nicotinic acetylcholine receptors.
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郷 すずな, 畑野 愛, 松本 夏南, 栗田 尚佳, 位田 雅俊, 保住 功
セッションID: P-92E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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メチル水銀 (MeHg) は知覚障害や運動失調などの様々な神経系障害を引き起こす神経毒である。近年、生物濃縮によってMeHgが蓄積した魚介類を妊婦が摂取することによる胎児への曝露が懸念されている。胎児は発達段階であり、発達中の神経系は化学物質に対して特に脆弱である。また、胎生期は大規模なエピゲノム変化が起こる時期であり、感受性が高いため化学物質によるエピジェネティクス攪乱が起こりやすい。しかし、これまでに神経分化期のMeHg曝露影響とエピジェネティクスとの関連を示す報告はほとんどない。そこで本研究は妊娠マウスを用いたin vivo 実験系とヒト胎児中脳由来不死化細胞 (LUHMES細胞) を用いたin vitro 実験系によって体系的に神経分化期MeHg曝露による神経機能への影響とエピゲノム変化との関連性を検討した。まずC57BL/6J系統の妊娠マウスに胎生12~14日目の期間MeHg (3 mg/kg/day) を経口投与し、胎生19日目で胎仔の脳を摘出し解析を行った。胎仔の体重や脳重量に変化はなかったが、大脳皮質における神経突起伸長の抑制が確認された。さらにエピゲノム変化を確認したところ、ヒストンH3のアセチル化の減少が認められた。ヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC) についても解析したところHDAC3およびHDAC6の発現増加が認められた。またLUHMES細胞を神経分化誘導し、分化2日目から8日目まで6日間MeHg (1 nM) を曝露した。神経突起伸長やヒストン修飾について解析したところ、in vivo 実験系と同様に神経突起伸長の抑制およびヒストンH3のアセチル化減少、HDAC3およびHDAC6の発現増加が認められた。さらに、HDAC阻害剤を用いてヒストン修飾変化と神経突起伸長の関連を確認したところ、MeHg曝露による神経突起伸長の抑制に改善が認められた。以上の結果から、胎生期の低濃度MeHg曝露がHDACの発現増加を介したヒストンH3のアセチル化の減少により、神経突起伸長の抑制を引き起こし神経機能に影響を与えることが示唆された。
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横井 れみ, 松田 直毅, 辛島 彰洋, 鈴木 郁郎
セッションID: P-93S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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我々は、ヒトiPS細胞由来神経ネットワークを用いたin vitro薬効評価系の構築を行ってきたが、in vitroの評価系は、細胞レベルの応答であり、生体の現象を再現しているとは言えない。in vitroヒトiPS細胞由来神経ネットワークに生体でみられる現象を一部模倣することができれば、より精度の高い薬効評価系が構築できると考えられる。本研究では、生体でみられる睡眠・覚醒リズム(概日リズム)に着目した。中枢神経系の概日リズムは、脳幹や視床下部、中脳の腹側被蓋野などのアミン・コリンニューロンにより制御されている。また、ノンレム睡眠時には、徐波と呼ばれる約1 Hzの特徴的な脳波が見られる。そこで本研究では、睡眠・覚醒の調整に関与する神経伝達物質の投与による覚醒状態の惹起と、ノンレム睡眠時の脳波でみられる徐波を模倣した1 Hzの電気刺激を入力による睡眠状態の惹起を試みた。平面微小電極アレイ上に培養したヒトiPS 細胞由来神経ネットワークに睡眠・覚醒リズムの制御に関与する神経伝達物質であるSerotonin、Acetylcholine、Histamine、Orexin、Noradrenaline投与したところ、用量依存的に神経ネットワークの同期活動の上昇が認められた。最も応答が顕著であったSerotonin 100 nMの24時間周期投与では、同期バースト発火の増加が24時間周期で繰り返し見られた。次に、神経ネットワークに1 Hzの電気刺激を15分間90分周期で与えたところ、電気刺激後の発火数、同期バースト発火の減少が繰り返し認められた。ニューロン間の結合強度の変化を調べたところ、電気刺激後に有意に結合強度の減衰が見られた。本結果は、1 Hzの電気刺激によりLTDが誘発されている可能性が示しており、徐波を模倣した1Hzの神経ネットワーク活動は、覚醒期に興奮した神経ネットワークをリセットするシナプスホメオタシス機構と関連していることが示唆された。ヒトiPS細胞由来神経ネットワークに概日リズムを惹起させる方法として、神経伝達物質の投与及び1 Hzの電気刺激が有効であることが示唆された。
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石橋 勇人, 小田原 あおい, 木下 健一, 岡村 愛, 白川 誉史, 鈴木 郁郎
セッションID: P-94S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
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ヒトiPS細胞由来ニューロンを用いた毒性評価は実験動物とヒトにおける種差の壁を越える可能性があることから,評価系の構築が期待されている.我々は神経ネットワークの機能(電気活動)を評価できる微小電極アレイ(MEA)を用いた細胞外記録法によって,重篤な神経毒性の指標となり得る痙攣様発火を指標として,医薬品に含まれる化合物の毒性評価系の構築を行っている.これまで,作用機序の異なる既知の痙攣誘発陽性化合物を用いて,痙攣様発火の検出に成功してきたが,化合物の作用機序により毒性検出に有効な解析パラメータは異なっていた.本研究では既知の痙攣誘発陽性化合物を用いて,化合物の作用機序に依存せずに毒性検出が可能な解析パラメータの導出を目的とした.また,従来は主に同期バースト発火の頻度を痙攣毒性の指標としていたが,この解析パラメータでは毒性を検出することができない既知の陽性化合物も存在する.そこで,本研究では始めに,同期バースト発火の周期性に着目した解析パラメータを構築した.次に,これまで構築してきた複数の解析パラメータの組み合わせによるパラメータセットを主成分分析することで,陽性化合物の毒性検出に有効なパラメータセットを導出した.また,導出されたパラメータセットの主成分負荷量を用いて化合物の特徴付けを行った.さらに,false positiveの可能性を検証するために,既知の陰性化合物を用いて同様の解析を行った結果,陰性化合物では毒性が検出されないことを確認できた.本研究で構築した解析パラメータ,および,導出したパラメータセットの主成分分析が化合物の毒性評価指標として有効である可能性が示唆されると共に,未知薬剤への応用が期待される.
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緒方 文彦, 中村 武浩, 中島 誠隆, 川﨑 直人
セッションID: P-95
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
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【目的】これまでに各種金属を基材とした金属複合水酸化物の創製に成功し,その物理化学的特性および水環境中に存在する毒性化合物との相互作用に関する知見を得ることに成功している。しかしながら,実用化を指向した検討は十分ではなく,さらなる検討が必要不可欠である。本研究では,ニッケルおよびコバルトを基材とした金属複合水酸化物に着目し,リン酸イオンとの相互作用に関する基礎的検討を実施した。一方,環境水へ適用した際の健康障害を予測しておくことは重要であるが,金属複合水酸化物が生体へ与える影響については評価系が十分に確立されていない。そこで,金属毒性に高感度な細胞を用いて,基礎的な細胞毒性を評価した。
【方法】水質浄化剤にはニッケルおよびコバルトを基材とした金属複合水酸化物(NC91, ニッケルおよびコバルトの含有モル比が9:1)を,吸着質にはリン酸二水素ナトリウムを使用した。また,NC91は280℃で熱処理を行った(NC91-280)。リン酸イオンとの相互作用は,吸着等温線などにより評価した。また,NC91およびNC91-280の細胞毒性は,ウシ大動脈血管内皮細胞(BAOEC)を用いて評価した。
【結果・考察】NC91およびNC91-280は,リン酸イオンを選択的に吸着できることが明らかとなり,その吸着量はNC91<NC91-280となった。また,リン酸イオンの吸着量は温度依存的であることがわかった。また,NC91およびNC91-280は0.1mg/mL未満の濃度領域で,BAOECに対して細胞傷害性を示さないことが分かった。以上のことより,本研究ではNC91およびNC91-280とリン酸イオンとの相互作用を明らかとした。また,他の細胞を用いた評価が必要であるが,血管内皮細胞への毒性は示さなかった。以上の結果から,金属複合水酸化物は実用化可能な水処理剤となりうることが示唆された。
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