日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
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ポスターセッション
  • 飯高 涼, 西村 和彦, 中川 博史
    セッションID: P-96
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】3価クロム(Cr)は脂肪細胞においてペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)を増加させることでインスリン抵抗性を改善することが報告されており、2型糖尿病に効果があると期待されている。しかし、2型糖尿病の発症に重要な肝臓に対するCrの作用の解明は進んでいない。PPARγはhypoxia-inducible factor(HIF)-1と相互作用することも報告されている。HIF-1には様々な作用があるが、肝細胞ではエリスロポエチン(EPO)産生の調節因子であり、EPOは細胞保護に関わっている。肝臓において、CrがPPARγやHIF-1にどのように作用し、さらにEPO産生に及ぼす影響については明らかではない。そこで本研究では、EPO産生能を持つヒト肝がん由来細胞HepG2細胞におけるCrのEPO産生への影響およびその作用メカニズムの解明を目的とした。

    【方法】培養HepG2細胞をCrを添加し、24時間後の細胞生存率をMTT assayで、mRNA発現量をリアルタイムPCR法で、タンパク発現量をウエスタン・ブロッティング法で測定した。

    【結果・考察】HepG2細胞にCr (100μM)を添加すると、細胞生存率に影響なく、EPO mRNA発現量が増加した。さらにCrの添加によって、HIF-1量を調節しているHIF-1αとPPARγのmRNA量およびタンパク発現量も増加した。PPARγ阻害剤であるSR202をCrと同時に処置すると、HIF-1αタンパク発現量およびEPO mRNA発現量の増加が消失した。これらの結果から、CrによるPPARγの発現量の増加により、HIF-1αタンパク発現量を増加させ、EPO産生を増加させたことが示唆された。肝臓においてCrはEPO産生を介した細胞保護作用が増強すると考えられ、さらにPPARγを介したインスリン抵抗性の改善が期待できる。

  • 田中 健一郎, 下田 実可子, 廣木 美果, 久保田 真帆, 池田 真由美, 異島 優, 川原 正博
    セッションID: P-97
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【背景】

    亜鉛(Zn)、銅(Cu)、鉄(Fe)などの微量金属の体内バランスが、何らかの原因で崩壊すると、脳神経系、消化器系、呼吸器系などにおける種々の疾患の発症原因となることが報告されている。これまでに、我々はZnによる神経毒性に注目して解析を行い、Znが小胞体ストレス応答を介して神経細胞死を誘導することを報告している。また、Cuが共存した場合、Zn依存の神経毒性が増強されることを見出している。そこで本研究では、CuがZnによる神経細胞死を増強する機構としてSAPK/JNKシグナル(代表的な細胞死誘導経路)に着目して解析した。

    【結果】

    マウス視床下部神経細胞(GT1-7細胞)にZn(30 µM)、Cu(10〜30µM)を処理すると、Cu用量依存的にリン酸化型SAPK/JNKの発現が上昇した(SAPK/JNKシグナルの活性化)。また、SAPK/JNK下流因子であるリン酸化型c-Jun、及びATF-2発現も上昇した。さらに、SAPK/JNK阻害剤(SP600125)の共処置により、Zn/Cu依存の神経細胞死が顕著に抑制された。一方、Zn/Cu依存のSAPK/JNKシグナル活性化は、抗酸化剤(チオレドキシン誘導体)の共処置により抑制された。

    【考察】

    以上の結果から我々は、Cu依存の酸化ストレスがZnによるSAPK/JNKシグナル活性化の引き金となることを見出した。また、Cu/Zn依存の神経細胞死誘導にSAPK/JNKシグナルの活性化が関与することを見出した。

  • 武田 志乃, 吉田 峻規, 沼子 千弥, 及川 将一, 上原 章寛, 佐藤 修彰, 寺田 靖子, 石原 弘
    セッションID: P-98
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【はじめに】

    ウランは腎毒性物質として知られている。これまで我々は微小ビームを用い腎臓内ウラン動態を調べ、S3近位尿細管が分布する腎臓皮質内辺部から髄質外辺部にかけての領域に限局的なウラン挙動を示してきた。ウランはα線核種であり、腎臓内でのウラン濃集部の残存は将来的な晩発影響の引き金となると考えられることから、ウラン局在量と周辺の組織変化を経時的にとらえていく必要がある。本研究では、ビームサイエンス等のin situ解析技術を組み合わせ、ウランを投与したラット腎臓におけるウラン濃集部動態およびその共存元素組成や化学形変化と組織影響を調べた。

    【実験】

    Wistar系雄性ラット(10週齢)に酢酸ウラニルを0.5 または2 mg/kgの割合で背部皮下に1回投与した。対照群には生理食塩水のみ投与した。経時的に解剖し腎臓を摘出した。一方の腎臓はホルマリン固定しパラフィン切片を作製、PAS染色を行い、バルク的な組織病理変化を把握した。もう片方の腎臓から凍結切片を作成し(10 µm厚)、放医研PASTA&SPICE分析システムによるμPIXE分析とSPring-8にてμSR-XRFによる分布解析とμXAFS測定による化学状態解析を行った。連続切片をPAS染色し、元素イメージングと対応させた。

    【結果・考察】

    腎臓横断面試料に対し皮質外辺部より皮質、髄質外辺部にかけての領域を250-500ミクロン四方の領域毎にPIXEイメージングを取得したところ、高容量においてウランを含有するリン・カリウム濃集部がウラン投与後初期から出現し、尿細管損傷回復期(15日目以降)も残存することがわかった。SR-XRFとXAFSによりさらに詳細に解析したところ、ウラン濃集部の共存元素組成やウラン化学形変化が明らかとなり、ウラン濃集部の形成機序が一様でないことがわかった。組織変化の残存性についても合わせて報告する。

  • 山田 茂, 諫田 泰成
    セッションID: P-99
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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     銀ナノ粒子(AgNPs)は抗菌作用を有し、化粧品や医療用器具などに用いられている。近年、AgNPsはゼブラフィッシュ脳の形成異常など中枢神経毒性を引き起こすことが報告されるようになってきたが、ヒトへの影響は不明な点が多い。そこで本研究では、ヒトiPS細胞を用いて神経系の形成におけるAgNPs曝露の影響を検討した。iPS細胞からの神経分化誘導にはTGFβ及びBMPシグナル阻害剤によるDual SMAD阻害法を用いた。

     まず濃度の異なるAgNPs曝露(0-0.3 µg/ml、24時間)後のiPS細胞を用いて神経分化誘導を行い、マーカー発現の検討を行った。その結果、0.1 µg/ml以上のAgNPs曝露により、神経誘導4日目までに神経外胚葉マーカーPAX6の発現が30%以上低下することを見出した。さらにAgNPs曝露により、神経誘導6、8日目までにそれぞれ神経外胚葉マーカーFOXG1、神経前駆マーカーNestinの発現が低下することも見出した。次に、AgNPs曝露によりiPS細胞内ATP量が減少したことからミトコンドリアに着目し、その機能維持に必須である形態に対する影響を調べた。その結果、AgNPs曝露により、ミトコンドリアの融合に重要なMfn1蛋白発現が減少し、分裂形態のミトコンドリアを有する細胞数の増加が認められた。さらにAgNPsの神経分化阻害とミトコンドリア毒性との関連を明らかにするために、Mfn1をノックダウンしたiPS細胞を用いて神経分化誘導を行った結果、AgNPs曝露と同様に、神経誘導に伴うPAX6、FOXG1、Nestinの発現低下が認められた。

     以上の結果から、ヒトiPS細胞において、AgNPs曝露によりMfn1蛋白質が減少し、ミトコンドリア機能が低下することによって、神経分化が抑制される可能性が示唆された。

  • 小林 恭子, 田中 昭代, 平田 美由紀, Chady STEPHAN
    セッションID: P-100
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【はじめに】 ナノ材料の粒子径は、材料の均一性を示す指標として重要な項目の一つである。また、ナノ粒子の様々な一般消費財への利用が増加しており、それに伴い、ナノ粒子が及ぼす環境影響や生体影響が懸念されている。インジウム化合物は、フラットパネルディスプレイや半導体化合物において重要な材料として知られており、厚生労働省は2013年に特定化学物質障害予防規則(OPHSCS)で規制されている物質のリストを改正し、インジウム化合物を追加した。ナノ粒子の粒子径を測定する手法としては、動的光散乱法、電子顕微鏡法やFFF(field flow fractionation)法が代表的であるが、それぞれに特徴と課題がある。シングルパーティクル(SP)-ICP-MS法は、ICP質量分析法の特長である高感度、高選択性、迅速測定、簡易なデータ処理などの特長を利用したナノ粒子の新たな分析手法で、粒子のサイズとサイズ分布、粒子濃度を測定できる手法として定着しつつある。

    本検討では、パーキンエルマー社製ICP-MS NexIONを用い、SP-ICP-MS法におけるナノ粒子径・粒子濃度の測定精度について検証した。また、生体試料中ナノ粒子測定への適応も試みた。

    【実験】 様々な濃度に調製した直径60nmの金ナノ粒子懸濁液を測定し、その結果からSP-ICP-MS法の粒子径および粒子濃度測定能力について議論する。また、ITO (インジウム-スズ酸化物 Indium-tin oxide )ターゲット研削作業者から得られた尿および血清試料について、SP-ICP-MS法を用い、試料の取り扱い方法の検討およびインジウムナノ粒子の測定を実施した。これらの結果についても報告する。

  • 井手 鉄哉, 山下 修司, 平田 岳史, 水田 保子, 赤木 純一, 豊田 武士, 曺 永晩, 小川 久美子
    セッションID: P-101
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【背景】第44回の学術年会において,粒径10 nmの銀ナノ粒子(Ag NP)のマウス腹腔内投与では,60及び100 nmの投与とは異なる急性毒性が誘発され,10 nm投与群では特に肝臓で顕著な毒性が認められた一方で,60及び100 nm群では明らかな毒性は認められなかったことを報告した。今回,Ag NPの粒径の違いによる肝毒性のメカニズムを検証する目的で,レーザーアブレーション試料導入法を組み合わせたプラズマ質量分析計(LA-ICPMS法)を用いて,肝臓凍結切片からAg NPの粒径分布,並びにAg NPと溶存イオン(Ionic Ag)の組織内分布を分析した(イメージング分析)。 【方法】7週齢の雌性 BALB/cマウスに粒径10,60及び100 nmのAg NPを0.2 mg/匹で腹腔内投与し,各群3例の投与6時間後の肝臓の凍結切片を用い,小葉周辺域及び中心域それぞれでLA-ICPMS装置による分析を行った。 【結果】10 nm群では,多数の10 nm前後のナノ粒子イベント及び溶存イオンシグナルが検出されたのに加え,凝集したAg NPと考えられるイベントも検出された。60 nm群では,少数の60 nm前後のナノ粒子イベントに加え,溶解したAg NPと考えられるイベントも検出された。100 nm群では,100 nm前後のナノ粒子イベントは検出されず,極少数の溶解したAg NPと考えられる80 nm以下のイベントが検出された。なお,10 nm群では全例で小葉中心域よりも周辺域で多くのナノ粒子イベント及び溶存イオンシグナルが認められたのに対し,60及び100 nm群では部位による明らかな差はみられなかった。 【考察】顕著な肝毒性が認められた10 nm群では,60及び100 nm群と比べて非常に多くのナノ粒子イベント及び溶存イオンシグナルが検出され,毒性発現との関連が示唆された。また,粒径が微小なものほど,腹腔内投与後に血流を介して肝臓へ到達した後,門脈域において速やかに組織中へ移行すると推察された。今後,さらに詳細なAg NPの細胞内での分布等の検討を進める予定である。

  • 安達 玲子, 為広 紀正, 木村 美恵, 曺 永晩, 水田 保子, 小川 久美子, 近藤 一成
    セッションID: P-102
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】ナノ酸化チタンやナノ酸化亜鉛は多くの日焼け止め製品に配合されておりヒト皮膚と接触する頻度が高い。我々はこれまでにナノ酸化チタンがマウスの抗原経皮感作系で免疫応答を増強し、粒子径が小さいほどその効果が大きいことを発表した。そこで今回はナノ酸化亜鉛に関して検討を行った。【方法】酸化亜鉛は平均一次粒子径25, 35, 80nmの3種(A、B、Cとする)を用いた。経皮感作では、BALB/cマウスの背部皮膚にモデル抗原である卵白アルブミン(OVA)と酸化亜鉛の混合懸濁液を貼付した(OVA:1-2μg /回、酸化亜鉛:12.5ng-1.25mg /回、3日間連続貼付/週×4週)。経時的に採血しOVA特異的抗体の産生を確認した。感作終了後にOVA1mgを腹腔内(i.p.)投与してアレルギー反応を惹起し直腸温測定等を行った。i.p.感作では、BALB/cマウスにOVA 20μgと酸化亜鉛(2, 10mg)の混合懸濁液を2週間間隔で2回i.p.投与した。感作後に採血しOVA特異的抗体の産生を確認した。急性毒性試験では、酸化亜鉛10mgをi.p.投与した。3, 6時間後に体温を測定し、血液生化学検査、病理組織学的検査を実施した。【結果及び考察】経皮感作では、Aを12.5ng-1.25μg添加した群のみにおいて免疫応答が増強される傾向が見られた。i.p.感作では、A, B, Cとも感作を増強したが、一部のマウスで急性毒性が見られ、粒子径が小さいほど毒性が強かった。そこでi.p.投与による急性毒性試験を行った。体温低下ではA, B, Cで顕著な差はなかったが、血液生化学検査では尿素窒素、ALT、グルコース、ナトリウムでA, B投与群での変動がC投与群よりも大きかった。これらの結果から、ナノ酸化亜鉛の生体影響はその粒子径に依存する可能性が示された。なお組織病理像に関しては現在解析中である。

  • 沼野 琢旬, 樋口 仁美, 杉山 大揮, 宇田 一成, 池田 和子, 小川 良二, 佐藤 敬, 伴野 富美子, 西岡 綾子, 萩原 雄二, ...
    セッションID: P-103
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【背景・目的】

     多層カーボンナノチューブ(MWCNT)は、優れた物理化学特性を持ち、リチウムイオン電池等、様々な製品に用いられている。しかし、針状・繊維状構造を有するため、肺に有害性を引き起こす可能性が懸念されている。MWCNTの1つであるMWNT-7については、ラットを用いた全身吸入暴露によるがん原性試験により肺腫瘍発生の増加が報告されている。気管内投与法は、全身吸入暴露と比較し簡便且つ安価に実施が可能であり、全身吸入暴露の代替法として肺を中心とする臓器の有害性評価に用いられている。本実験では気相法炭素繊維VGCF-Hの肺有害性の評価を目的として、気管内投与法による13週間毒性試験を実施した。

    【材料・方法】

     10週齢の雌雄F344/DuCrlCrlj系ラットを用い、被験物質としてKolliphor P188/saline系媒体に懸濁させたVGCF-Hを0.2, 0.4及び0.8 mg/kgの用量で、MWNT-7及びアスベスト(Crocidolite)を0.4及び0.8 mg/kgの用量で、週に1回、合計8回気管内投与した。また、無処置群及び媒体投与群を設けた。

     一般状態の観察、体重及び摂餌量の測定を行い、投与開始13週経過後に剖検して、肉眼的病理学的検査、臓器重量、肺胞洗浄液(BALF)の検査及び病理組織学的検査を行った。

    【結果・まとめ】

     肉眼的に肺、気管及び縦隔リンパ節に被験物質の色に起因する変化がみられた。器官重量、BALF検査並びに病理組織学的検査において、VGCF-H, MWNT-7及びCrocidolite投与群に炎症性変化がみられたが、その程度はMWNT-7投与群が顕著に大であった。以上のことからVGCF-Hの肺有害性の程度はMWNT-7と比較して軽度であることが明らかとなった。

  • 小林 健一, 久保田 久代, 柳場 由絵, 大谷 勝己, 鷹屋 光俊
    セッションID: P-104
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【背景・目的】職場環境で粒子状物質の曝露に起因するじん肺などの労働災害は、依然として多い。作業現場で使用された粒子状シリカのサイズや性質と呼吸器障害発生との詳細は不明であり、in vivo実験によりその発生機序や因果関係を解明し、改善・対策を講じることが急務となっている。本研究では産業現場で使用されている粒子状化学物質の例として結晶質シリカ(石英)を取り上げ、その曝露と呼吸器障害等の疾患発症との関係を解明するため、気管内投与に用いる分散液中の粒子の正確な性状把握と適正な調製法の検討を試みた。

    【方法】粉体試料は2種類の石英シリカであるMin-U-Sil 5(U.S. Silica Company)およびSiO2(高純度化学研究所)を、分散液は0.9%生理食塩水を選定し、各懸濁液(100 mg/ml)を超音波処理(0、10、30および60分)し、分散させた後、希釈系列(3.125~100 mg/ml)を作製し、各濃度においてそれぞれ動的光散乱法による散乱強度分布の測定を行った。Min-U-Sil 5については、透過型電子顕微鏡による形態観察とエネルギー分散形X線分析装置による元素分析を行った。

    【結果・考察】Min-U-Sil 5は処理時間依存的に小さな粒子径が得られ、サブミクロン付近にまでの粒子径になった。同条件下においてSiO2は、Min-U-Sil 5 と比べて粒子径はミクロンサイズであり、分散状態も安定していなかった。電顕による観察の結果、Min-U-Sil 5には多角形、棒状、針状、フレーク状といった多様な形態を呈するSiを確認した。さらなる液中分散粒子の性状の解析のため、超音波処理を行ったMin-U-Sil 5やSiO2の形態を比較観察し、超音波処理による結晶構造の変化の有無ついて、X線回折法を用いて測定しているところである。

  • 前野 愛, 坂本 義光, 北條 幹, 湯澤 勝廣, 長谷川 悠子, 長澤 明道, 久保 喜一, 安藤 弘, 海鉾 藤文, 田中 和良, 鈴木 ...
    セッションID: P-105
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【背景】ナノ物質の呼吸器毒性評価において、吸入ばく露の代替法として気管内投与が用いられている。投与には主に経口ゾンデあるいはスプレー式ゾンデが用いられるが、両者による生体影響の差異を比較した報告は少ない。本研究はその点に注目し、MWCNTを投与したラットについて病理組織学的に比較検討した。【材料・方法】動物は、F344雄性ラットを用い、経口ゾンデ(F群;10匹)あるいはスプレー式ゾンデ(S群;10匹)によりMWCNT(MWNT-7)を62.5 μg/ラット/回の用量で、1日おきに8回、気管内に投与した。最終投与翌日に解剖し、胸郭ごと胸腔内臓器を固定し、気管、肺及び全身のリンパ節を病理組織学的に検索した。また、125 μg/ラットの用量で両器具を使って単回投与した動物を、投与翌日、4、8、12、16週後にそれぞれ3匹ずつ剖検し、気管を肉眼的に観察した。【結果】MWCNTは肺門付近から臓側胸膜までび漫性に存在したが、壁側胸膜には認められなかった。リンパ組織への移行は縦隔リンパ節に多く、他ではほとんど認められなかった。肺ではMWCNTの沈着に関連した肉芽腫性炎症が認められ、炎症の程度は左葉と右後葉で強かった。以上について、F・S両群間には、明らかな差を認めなかった。一方、気管では顕著な差があり、MWCNTの沈着を反映した黒色斑が、肉眼的にS群でより強く認められた。組織学的には、粘膜下にMWCNTを内包する大型の肉芽腫が存在し、一部では粘膜上皮の扁平上皮化生が見られた。気管の黒色斑は単回投与実験において、F群では投与翌日にのみ、S群では16週間後まで観察された。【考察】S群では、投与時に呼吸器に強い圧力がかかったことが推察されるが、気管とその直近周囲を除けば、胸腔内の各部におけるMWCNTの沈着や炎症反応の程度に、F群と顕著な差異が見られなかった。従って、長期観察後に肺の増殖性病変を誘発し得る用量の投与実験において、投与器具の差異による肺への影響は少ないものと考えられる。

  • Sung-Hwan KIM, Doin JEON, Hyeon-Young KIM, In-Hyeon KIM, Sang-Hyub LEE ...
    セッションID: P-106
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    Electronic cigarettes are a recent development in tobacco harm reduction. The present study investigated the potential subchronic inhalation toxicity of menthol liquid for electronic cigarettes in Sprague–Dawley rats. Four groups of 10 rats of each gender were exposed to menthol liquid by nose-only inhalation at concentrations of 0, 0.4, 1.2, or 3.6 mg/L for 6 h per day, 5 days/week over a 13-week period. During the study period, clinical signs, mortality, body weight, food consumption, ophthalmoscopy, urinalysis, hematology, serum biochemistry, gross pathology, organ weights, and histopathology were examined. No toxicologically significant changes were observed in any of the inhalation exposure groups. In the present experimental conditions, the no-observed-adverse-effect level was considered to be greater than 3.6 mg/L/6h/day in the rats. Also, menthol liquid for electronic cigarettes showed no evidence of mutagenic activity in the mouse.

    Keywords: Electronic cigarettes, Menthol liquid, Subchronic toxicity, No-observed-adverse-effect level, Micronucleus assay

  • 高橋 一彰, 佐藤 順子, 山本 大, 比毛 則夫, 岡村 隆之, 大竹 誠司
    セッションID: P-107
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【背景・目的】カニクイザルを用いた毒性試験において,摂餌量低下を伴わない体重減少を示す動物が稀に認められ,評価の妨げになることがある.本研究ではこのような動物について発生率と血液生化学的検査等の各種検査結果の特徴を検討した.また,当試験施設で実施している試験前ストック動物の福祉向上のための種々の施策の動物への効果を調査した.

    【方法】毒性試験において対照群に配置された動物のうち,試験前にエンリッチメント用品の付与,集団飼育及びヒトとの接触機会増加の施策を実施した動物225例と,これらの施策を実施しなかった動物419例について試験期間中の体重変動を比較検討した.比較する際は雌雄間差及び産地間差を考慮した.試験期間中に10%以上の体重減少が認められた動物については,血液生化学的検査,病理学的検査等の結果の特徴の共通点を検討した.

    【結果・考察】試験期間中に10%以上の体重減少が認められた動物は,動物福祉向上の施策を実施しなかった動物419例のうち9例であった.体重減少の発生率に明確な雌雄間差及び産地間差は認められなかった.血液生化学的検査の結果,体重減少が認められた動物では摂餌量が減少していないにも関わらず血清グルコース濃度の低値が認められた.病理組織学的検査では,栄養不良の際に観察される全身脂肪の高度萎縮や肝細胞でのグリコーゲン減少,ストレス負荷時にみられる胸腺萎縮や副腎束状帯細胞の好酸性化が認められた.このことから,体重減少が認められた動物では栄養の吸収阻害あるいは代謝異常を生じていることが示唆された.また,動物福祉向上の施策を実施した動物では,試験期間中に10%以上の体重減少を示すカニクイザルは225例中0例であり,施策の有用性が確認された.

  • 山下 裕史, 竹之上 翔太, 冨山 小百合, 岩切 哲平, 奥村 真衣, 角崎 英志
    セッションID: P-108
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】欧米では動物福祉の観点から非臨床試験を複数飼育下で実施することが標準である.本邦でも複数飼育の導入が進んでいるが,マウスでは雄の闘争行動が複数飼育導入への障壁となっている.我々はおもちゃ及び巣材供与で飼育環境を改善し,マウスの一般毒性試験における複数飼育を可能とした.今回,一般毒性試験で標準的に評価されるパラメータを取得し,複数飼育による影響について考察した.

    【方法】6週齢の雌雄ICRマウスを用いて,単飼育群(SH群,1匹/ケージ,6匹)及び複数飼育群(GH群,3匹/ケージ,6ケージ,18匹)の2群構成とした.4週間の飼育期間に一般状態観察,体重測定,摂餌量測定,血液学的検査,血液生化学的検査,剖検,器官重量測定を実施した.雌雄C57BL/6Jマウスについても同様に検討した.

    【結果】ICRマウスでは,GH群の雄の体重がSH群より高値を示し,副腎重量は雌雄ともにGH群がSH群より低値であった.C57BL/6J マウスでは,GH群の体重は雌雄とも高値を認めたが,副腎重量は両群間に差はなかった.一般状態,摂餌量,血液学的検査,血液生化学的検査及び剖検では,SH群とGH群間に差はなかった.

    【考察】GH群ではSH群に比べて,両系統マウスの雄で体重の高値及びICRマウスの雌雄で副腎重量の低値がみられた.副腎重量変化は,複数飼育によってストレスが軽減し副腎肥大が抑制されたものと考えられた.その系統差は,闘争しやすいICRマウスが他系統よりもストレスを受けやすいと考えられていることから,複数飼育の効果がより顕著に認められたものと推測する.以上のように,本条件下の複数飼育は,マウスにおける毒性試験評価に悪影響を及ぼさず,動物福祉向上に寄与することが示された.

  • 石原 康宏, 本田 達也, 冨永 貴志, 伊藤 康一, 山﨑 岳
    セッションID: P-109
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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     バルプロ酸は、全般発作の第一選択薬として用いられる抗てんかん薬であり、γ-アミノ酪酸(GABA)トランスアミナーゼを阻害することにより、抑制性シナプスにおけるGABA量を増加させて過興奮を抑制する。一方、胎児期にバルプロ酸に曝露すると、認知機能障害や自閉症のリスクを増大させることが知られており、バルプロ酸は妊婦に対して原則禁忌である。しかし、バルプロ酸を服用中に妊娠した女性の20%がバルプロ酸を継続して使用しているとの報告もあり、バルプロ酸によって生じる発達神経毒性メカニズムの解明が待たれる。最近、脳内の免疫担当細胞であるミクログリアが発達期に不要なシナプスを刈り込むことにより神経回路の成熟に働くことが明らかとなり、また、ビスフェノールAなどの化学物質がミクログリアに作用することが示されて、発達神経毒性とミクログリアとの関連が示唆されている。そこで、本研究では、胎児期バルプロ酸曝露の発達期ミクログリアおよび神経回路機能への影響を調べた。ICRマウスを用い妊娠11.5日目に800mg/kgの用量でバルプロ酸ナトリウムを経口投与した。生後10日目にミクログリア活性をIba1/CD68染色により測定したところ、バルプロ酸を胎児期に曝露したマウスの海馬CA1領域で顕著な細胞体の肥大とCD68発現亢進が認められ、ミクログリアが活性化していることが明らかとなった。この時の神経回路機能を膜電位感受性色素Di-4-ANEPPSを用いた光計測により調べたところ、海馬CA1領域の興奮-抑制バランスが興奮側にシフトしていることが示された。ミクログリアの活性化抑制を目的として、生後1日目より200mg/kg/dayの用量でミノサイクリンを母体に飲水中投与したところ、生後10日目にバルプロ酸胎児期曝露マウスで認められるミクログリアの活性化が抑制され、さらに、興奮-抑制バランスはvehicle群と同程度にまで回復した。従って、胎児期のバルプロ酸曝露は発達期のミクログリアを活性化し、その結果として神経回路機能異常を引き起こすことが示唆された。

  • 白川 誉史, 鈴木 郁郎, 宮本 憲優, 近藤 卓也, 佐藤 薫, 森村 馨, 半戸 里江, 小田原 あおい, 小島 敦子
    セッションID: P-110
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    ヒトiPS細胞応用安全性評価コンソーシアム(CSAHi)の神経チームでは、安全性評価のニーズが高い痙攣及びてんかんに着目し、ヒトiPS細胞由来神経細胞を用いて新たな安全性評価法の開発を目指している。その評価方法の一つとして、微小電極アレイ(micro-electrode array: MEA)システムを用いて神経細胞の発火バーストに基づく評価手法の確立を試みている。昨年の本学会では、5つの施設でヒトiPS細胞由来神経細胞(XCell Neurons、XCell Science社)を用いてMED64システムで痙攣誘発陽性物質であるGabazine(GABA-A受容体遮断薬)、Picrotoxin(GABA-A受容体遮断薬)および4-aminopyridine(K+チャネル阻害薬)を検討し、検出されたスパイクおよび発火バーストの複数のパラメータを用いた多変量解析が薬物の痙攣誘発陰性薬剤と陽性薬剤の分離に有効であることを報告した。本年は、更に施設を増やし、薬剤応答から作用機序別の分離を試みたので報告する。加えて、陰性薬剤であるDMSOとGABA-A受容体遮断薬(PicrotoxinおよびGabazine)、K+チャネル阻害薬である4-aminopryridineの3つの作用機序別の応答を主成分解析およびクラスタリング分析を行ったところ、両解析法共に作用機序別に応答が分離された。本結果は、ヒトiPS細胞由来神経細胞のin vitro MEA計測法は、薬剤の作用機序分離を可能とする評価法であることを示唆している。ただし、施設毎に多変量解析に使用するパラメータセットは異なっていた。統一プロトコールで実験を実施したが、細かな実験手技などに起因する施設間データのバラツキが原因と考えられた。

  • 宮本 憲優, 小島 敦子, 吉岡 祥香, 北村 哲生, 長田 智治, 鈴木 郁郎, 小田原 あおい, 松田 直毅, 吉永 貴志
    セッションID: P-111
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【背景】薬剤誘発痙攣リスクを回避することは、新薬創出に向けた重要な課題のひとつである。そこで、臨床で痙攣を誘発すると知られている既知薬剤の分散培養神経細胞に与える痙攣誘発兆候を微小電極アレイ(MEA)システムで捉えることができれば、未知薬剤の痙攣誘発リスクを予測することが可能になると考え、多指標パラメータ解析を試みた。【方法】Wistarラット胎児から得た初代培養皮質神経細胞を48-well Classic MEA plates (Axion BioSystems, Inc.)及び24-well MED-Q2430M plates (Alpha MED Scientific, Inc.)に播種後19日目に、 Maestro Pro及びMED64 Prestoを用いて、12薬剤 (pentylenetetrazole, picrotoxin, 4-aminopyrdine, linopyridine, amoxapine, strychnine, pilocarpine, amoxicillin, chlorpromazine, enoxacin, phenytoin and acetaminophen)5用量(n = 6)の細胞外電位記録後、32種の多指標パラメータ解析及び深層学習法を用いた薬物による異常検知解析を行った。【結果】多指標パラメータ解析では、抑制性ニューロンを抑制するタイプの薬剤は、スパイク率など神経細胞個々の応答に関わる指標を上昇させるが、神経ネットワークに関わる指標を抑制した。Na+チャネル阻害薬など多指標全般的に抑制するタイプの薬剤が複数あった。深層学習法により、8種類の新規指標パラメータの数値化に成功した。【結論】分散培養神経細胞と MEA 技術と深層学習法を含めた多指標パラメータ解析により、痙攣誘発に関わる薬剤作用クラスタリングが可能と考える。

  • 根岸 隆之, 佐々木 翔斗, 若杉 周弥, 大石 悠稀, 柴田 朋香, 髙木 梓弓, 北別府 愛, 近藤 優帆, 髙野 真帆, 中嶋 真唯, ...
    セッションID: P-112
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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     ジフェニルアルシン酸(DPAA)は、茨城県神栖市で発生した井戸水ヒ素汚染事故の原因物質であり、井戸水を使用していた住民に小脳症状を主とする神経症状がみられた。我々はこれまでに、DPAAはラット小脳由来培養アストロサイト(NRA)において、濃度・時間依存的に細胞増殖亢進と続く細胞死、低濃度長時間曝露(10 µM、96時間)により酸化ストレス応答因子(Nrf2、HO-1、およびHsp70)の発現誘導、MAPキナーゼ(ERK1/2、p38MAPK、SAPK/JNK)の活性化、転写因子(CREB、c-Jun、およびc-Fos)の活性化を引き起こし、他にもMCP-1やIL-6などの脳内サイトカインの分泌誘導、グルタチオンの異常放出を引き起こすことなどを明らかにしてきた。本研究では、ヒト小脳由来アストロサイト(NHA)におけるDPAAの影響を評価し、NRAと比較した。DPAAは NRAおよびNHAともにDMEM/F-12にサプリメントを加えた無血清培養液中にて曝露した。細胞増殖亢進・細胞死についてはNRAおよびNHAともに濃度・時間依存的に細胞増殖亢進・細胞死を示したが、濃度についてNHAはNRAよりも抵抗性が高かった。また、NRAにおいてDPAAばく露(10 µM、96時間)は酸化ストレス応答因子発現誘導、MAPキナーゼ活性化、および転写因子活性化を示したが、NHAにおいてはばく露96時間では10 µMでは全く影響がみられず、より高濃度(50 µM)において10 µM DPAAばく露のNRAと同様の異常活性化がみられた。これらの結果は、DPAAはヒトおよびラット小脳由来アストロサイトに同様の影響を引き起こすが、感受性には大きな種差があることを意味し、感受性の高いラット由来の細胞で評価する事は有用であるもののヒトにおけるリスクを考える際には濃度について慎重に考慮する必要がある。

  • 菊地 聡美, 伊藤 優子, 中島 康太, 増渕 康哲, 中原 惇太, 吉田 敏則, 渋谷 淳
    セッションID: P-113
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【背景及び目的】我々は、神経障害物質の発達期曝露による成熟後に及ぶ海馬神経新生の不可逆影響を見出している。本研究では、その中で抗甲状腺剤のプロピルチオウラシル (PTU)、HDAC阻害剤のバルプロ酸 (VPA)、軸索末端傷害物質のグリシドール (GLY)のラット発達期曝露例で、不可逆影響の指標となりやすいDNA過メチル化に着目して、神経新生部位における過メチル化・下方制御遺伝子を網羅的に探索した。

    【方法】妊娠ラットにPTU、VPA、GLYを妊娠6日目から出産後21日目まで飲水投与し、生後21日目に児動物の海馬歯状回について、Methyl-Seq及びRNA-Seq解析を実施した。

    【結果及び考察】対照群と比較して、転写開始点から2 kb以内のCpGでメチル化率が20%以上増加し、mRNA発現が2倍以上減少した遺伝子を同定した。そのうち、PTU、VPA、GLYでそれぞれ247、81、181遺伝子、3物質に共通で24遺伝子が神経関連であり、多くは神経分化に関連するものであった。PTUではHes5, Ror2、VPAではTead3, Sox2、GLYではAfdn, Dll1などが神経幹・前駆細胞関連遺伝子として同定され、顆粒細胞系譜の永続的な分化障害が示唆された。PTUでは更に、神経前駆細胞の増殖に機能するIgf, Shh, Fgf2, Egfも同定され、既にPTUで報告してあるtype-2a前駆細胞の永続的な減少への関与が示唆された。VPAで同定されたAscl1はGABA性介在ニューロン前駆細胞に発現し、既にVPAで報告してあるGAD67+介在ニューロンの永続的な減少への関与が示唆された。GLYでは神経分化(Dll1, Dlx2)の他、軸索形成 (Baiap2, Amigo1)、樹状突起発達 (Kalrn, Gsk3b)に機能する遺伝子も同定され、既にGLYで報告してある一過性の未熟顆粒細胞の減少への関与が示唆された。3物質に共通してGABA性介在ニューロンに発現するPvalb、神経可塑性に関わるArc, Atp2b2の下方制御が見出されたが、多くの発達神経毒性物質に共通して生じる二次的なメチル化である可能性が示唆された。

  • 宮崎 育子, 菊岡 亮, 磯岡 奈未, 禅正 和真, 新居 麗, 園部 奏生, 船越 英丸, 中山 恵利香, 進 浩太郎, 山本 大地, K ...
    セッションID: P-114
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    我々はこれまでに,缶詰,飲料缶の内面コーティング剤として用いられるエポキシ樹脂Bisphenol A diglycidyl ether (BADGE)を妊娠・授乳期に投与した母体からの新生仔は頭頂皮質第2/3層細胞数が低下し,第5層Ctip2陽性錐体細胞が対照群と比べより第5層に限局することを見出し,高濃度のBADGEへの曝露は,早期の神経分化をもたらす可能性を示した.今回,母体へのBADGE曝露による新生仔マウスの行動評価を行うため,BADGE (0.15, 1.5 mg/kg/日)をマウスの妊娠全期から授乳期にわたり固形食餌に混ぜて投与し,生後5-8週にかけてオープンフィールドテスト,高架式十字迷路による行動実験を行った.生後5-8週齢の体重測定では,雄性マウスではBADGE曝露による影響はみられなかったが,BADGE (0.15 mg/kg/日)投与した雌性マウスでは有意な体重増加が認められた.オープンフィールドテストで5分間の移動距離は群間で差がなかったが,フィールドを中央,コーナー,壁面に区画し,各区画滞在時間を計測したところ,BADGE (1.5 mg/kg/日)投与した雄性マウスでは5週齢の早期にコーナーへの滞在時間が有意に延長した.一方,高架式十字迷路ではBADGE曝露による有意な変化はみられなかった.以上より,妊娠・授乳期における高濃度のBADGEへの曝露は,若年期に不安様行動を惹起させる可能性が示唆された.

  • 室田 尚哉, 佐々木 幹夫, 登内 哲央, 伊藤 愛里, 小田部 耕二, 佐藤 伸一
    セッションID: P-115
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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     聴覚性驚愕反応(acoustic startle response; ASR)とは,生体が突然大きな音を聞いたときに生じる反応である.しかし,ASRを引き起こすような音刺激(startle pulse; SP)の直前に比較的小さな音刺激(prepulse; PP)が提示されると,ASRは抑制される.この現象をプレパルス抑制(prepulse inhibition; PPI)と呼ぶ.この現象は中枢における感覚情報制御機能(i.e., sensorimotor gating)の指標であり,統合失調症などの精神疾患によってPPIが低下されることが知られている.ICH S11「小児用医薬品開発の非臨床安全性試験」のガイドライン案では中枢神経系の評価の行動検査項目としてPPIを取り上げることが検討されており,今後,ICH S11のガイドラインが発効されれば,幼若動物試験にPPI検査を組み込むことも必要であると考えられている.

     PPIの発現にはPPの音圧,PPとSPの刺激間間隔,試行間間隔,SPに対する馴化の有無など,多くの実験条件を適切に設定する必要があるが,これら実験条件は研究施設によって僅かに異なっている.また,PPIは(1)性差,(2)検査の時間帯,(3)動物の週齢,(4)雌動物の性周期などの影響を受けることが知られており,幼若動物試験にPPI検査を組み込むに際しては,これらの要因を考慮に入れた試験デザインを構築することが重要である.

     本発表では雌雄のSD系ラットを使用して,安定したPPIを発現させ得る自施設における実験条件を紹介し,上記(1)から(4)の要因がPPIに与える影響の有無について報告する.さらに,幼若動物試験で実施する他の検査(オープンフィールドテスト,水迷路など)がPPI検査に与える影響も検討し,より適切な試験デザインについて考察する.

  • 高橋 宏明, 新田 直人, 笛田 由紀子, 渡辺 正人
    セッションID: P-116
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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     農薬の分野では、作用メカニズムのみを強調する議論や、散布環境に生息する生物への作用を食物経由のヒト健康影響にそのまま当てはめた議論が見受けられる。特に、殺虫剤はヒトにも備わった神経メカニズムをターゲットとする剤が多いこと、歴史的に重篤な中毒例があったことから、議論されることが多い。一方、わが国では2000年以降の開発において脳神経系に対する影響は神経毒性試験で評価され、現在ではかなりの知見が蓄積されている。今回、殺虫剤の脳神経系への影響に着目して、一般毒性試験と神経毒性試験で得られた公開情報を比較調査し、神経毒性試験について考察する。

     公開された農薬抄録について、ラット経口投与の急性毒性試験、急性神経毒性試験、90日毒性試験、90日神経毒性試験を調べた。2019年1月の時点で、57剤の殺虫剤の情報が公開されていた。有機リン系、カーバメイト系、ピレスロイド系、ネオニコチノイド系、その他に大別された。必須である急性毒性試験、90日毒性試験は1剤を除いた全ての剤で実施されており、急性神経毒性試験は36剤で、90日神経毒性試験は41剤で実施されていた。公開された未実施の理由は急性もしくは90日毒性試験で神経系への影響が認められないためと述べられていた。急性並びに90日神経毒性試験共に全ての剤で必須検査(FOB、機能検査、感覚運動検査、神経病理)が実施され、追加要求の検査(慣れ、学習・記憶)を検査している例は1剤のみであった。

     全ての剤の急性並びに90日神経毒性試験で神経病理学的変化は認められなかった。急性神経毒性試験では急性毒性試験と類似した症状が観察された。90日神経毒性試験では高用量でのみFOBに所見が散見されたが、FOBを含んだ神経毒性の検査項目がLOAELの所見となる例は殆どなかった。90日神経毒性試験のLOAELよりも低用量で種々の変化が90日毒性試験で認められていた。これらに基づいて、神経毒性について考察する予定である。

  • Takeshi SAKATA, Joseph ZOLNERCIKS, Katalin JEMNITZ, Zsuzsanna VERES, E ...
    セッションID: P-117
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    Non-parenchymal cells of the liver have a significant impact on hepatocyte activity, including hepatotoxicity. Kupffer cells (KCs) are involved in response to many stresses of the liver, and activation of KCs results in the secretion of stress factors, which in turn modulate the expression and function of transporters involved in the elimination of toxic endogenous compounds and xenobiotics. Freshly prepared primary human and rat hepatocytes were cultured in mono- or co-cultures with KCs in sandwich configuration. KCs were applied at physiological (H/KC 10:1 - human; 6:1 - rat) or pathological (H/KC 3:1 - human; 2:1 - rat) ratios. Lipopolysaccharide (LPS) was used for KC activation. LPS increased TNFα and IL-6 secretion both in human and rat cultures. Activated KCs decreased albumin secretion more effectively in rat than in human, though urea secretion did not change significantly. In rat cultures, both influx and efflux of taurocholate (TC) increased in a KCs concentration dependent manner irrespective of KCs activation. In contrast, TC transport by human hepatocytes proved to be more sensitive to LPS treatment than to the number of KCs. KCs decreased biliary efflux of bilirubin in both human and rat cultures, which was further enhanced by LPS. In conclusion, the activity and expression of bile acid transporters were highly influenced by KCs. The direction and extent of alterations were markedly different in human versus rat hepatocytes, which calls to attention potential species differences in cases of liver injury.

  • 水野 克彦, 竹内 健二, 梅原 健, 中島 美紀
    セッションID: P-118
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】2型糖尿病治療薬であるビルダグリプチンは、副作用として低頻度ながら肝障害が報告されている。肝障害の発症に免疫応答の関与が示唆されており、近年、ビルダグリプチンがヒト肝細胞に対する共有結合能を有することが報告されたが、その反応機序は不明である。本研究では、ビルダグリプチン誘導性肝障害の発症メカニズムの解明に向けて、ビルダグリプチンがどのような機序で生体内の蛋白質に対して共有結合するか明らかにすることを目的とした。【方法】ビルダグリプチンと類似薬をヒト肝酵素源 (ミクロソーム、サイトゾル) および求核試薬 (還元型グルタチオン (GSH)、L-システイン) 等と37℃で反応させた後、被験薬の安定性をLC-MS/MSで評価した。また反応生成物の構造推定または同定を行った。ビルダグリプチンを雄性Sprague-Dawleyラットまたは胆管カニューレ処置ラットに30 mg/kgで単回経口投与後、ビルダグリプチンと代謝物の血漿中薬物動態ならびに尿、糞および胆汁排泄を評価した。また生体試料中の未知代謝物を検索した。【結果および考察】ビルダグリプチンとアナグリプチンは、in vitroにおいて非酵素的にL-システインと共有結合することを明らかにした。さらにビルダグリプチンとアナグリプチンのシステイン付加体であるM407とM487の構造を分析した結果、いずれもシアノピロリジン構造のニトリル基がシステインと不可逆的に反応してチアゾリンに変換されたものであることが明らかになった。ビルダグリプチンを経口投与したラットの血漿、尿、糞および胆汁中においてM407が検出され、M407の総排泄量は投与量の約2%に達した。さらに胆汁中にM407のグルクロン酸代謝物が検出され、尿、糞および胆汁中に含チアゾリンGSH付加体であるM464が検出された。以上、本検討により、ビルダグリプチンがヒトin vivoにおいて生体内の蛋白質に不可逆的に共有結合することが示唆され、ビルダグリプチン誘導性肝障害は不可逆的な共有結合により惹起される可能性があると考えられた。

  • 加藤 哲希, Julie A HARNEY, Jessica ROY, Michael D ALEO
    セッションID: P-119
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】特異体質性薬物性肝障害(iDILI)は医薬品の販売中止の主な原因の一つである。肝臓の非実質細胞(NPC)にはナチュラルキラーT細胞やクッパー細胞などの免疫細胞が含まれ,iDILIの発症機序にそれら細胞による免疫反応が関与する可能性が考えられている。そこで,肝細胞とNPCの三次元共培養系を用いることで,化合物によるiDILI誘発の検出可能性を検討することとした。【方法・結果】ヒト肝細胞とNPC(2ロット使用:NPC-1およびNPC-3)を三次元共培養し,Customized 3D InSight™ Liver Microtissue(hLiMT-NPC)を作製した(InSphero社)。免疫組織化学染色を実施したところ,microtissue中のT細胞(CD3+)およびクッパー細胞(CD68+)の存在が確認された。これらの免疫細胞数にはNPCロット間差(hLiMT-NPC-1>hLiMT-NPC-3)がみられ,それに伴い,LPS刺激による炎症性サイトカイン産生量も差が認められた。次に,LPS存在下または非存在下で,hLiMT-NPCをiDILIによる肝毒性が知られる薬剤(トロバフロキサシン,キシメラガトランまたはジクロフェナク)で7日間処理して細胞障害性を評価したところ,いずれの薬剤処理においてもLPS存在下でより顕著な細胞毒性が濃度依存的に認められた。特にLPS存在下において,hLiMT-NPC-3に比べhLiMT-NPC-1の細胞毒性が顕著であった(例:キシメラガトランIC50:それぞれ319.6 µMおよび69.0 µM)。一方,ヒト肝細胞とT細胞のみを共培養して作成したmicrotissue(hLiMT-T)を用いた細胞毒性試験では,LPSによる細胞毒性の増悪はほとんどみられず,キシメラガトランによる細胞毒性は最高濃度まで示されなかった(IC50 > 500 µM)。【結論】hLiMT-NPCを用いたことでiDILI誘発性化合物による細胞毒性が検出され,化合物のiDILI誘発性を検出するin vitro評価系として有用となる可能性があると考えられた。また,NPCロットの免疫細胞の特徴と本評価系の感度の関連性が示唆された。

  • 竹村 晃典, 関根 秀一, 伊藤 晃成
    セッションID: P-120
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【背景・目的】薬物誘発性の致死性肝障害は解決すべき重大な問題である。肝障害の予後の指標(Hy’s law)ではALTとビリルビン値が高値を示す場合、予後不良の可能性が高いことが報告されている。一方このような血漿マーカー変化がなぜ致死的毒性につながるかは不明である。我々はこれまでに胆汁排泄の起点となる毛細胆管構造に着目し、in vivoにおいて薬物がその構造の再形成抑制を示し肝障害からの回復遅延を引き起こすことを確認したが、上記の検討では肝障害による致死的な毒性は認められなかった。その原因として肝細胞の持続的な障害を受けた際に増殖する胆管上皮細胞(BEC)の胆汁排泄能の代償を想定した。これまでにBEC増殖に対する薬物の影響およびそれが肝障害に及ぼす影響を検討した例はない。そこで本研究では致死的な肝障害を臨床で引き起こしたベンズブロマロン(BBR)を代表薬としてin vivoでこの点を検証した。

    【方法】C57BL/6JマウスにBEC増殖を誘発させる0.1% 3,5-ジエトキシカルボニル-1,4-ジヒドロコリジン(DDC)含有餌投与群、0.3% BBR含有餌投与群、0.1%DDC及び0.3%BBR併用群を用意し4週間投与した。最終日に肝臓を単離し組織免疫染色(CK19; BEC marker)を行って増殖したBECの評価やH&E染色による組織学的な変化を検証した。また同時に採血も行い血漿中のALTとビリルビン値を測定した。

    【結果】BBR単独群ではCK19陽性細胞はcontrol群と同程度であり、DDC単独群ではCK19陽性細胞が著しく上昇した。一方併用群ではその上昇が抑制された。H&E染色による評価では併用群においてのみ肝細胞の壊死領域が認められた。ALT値はDDC単独群と併用群において差を認めなかったものの、ビリルビン値は併用群で他に比べて有意に高いことを確認した。

    【結論】薬物がBEC増殖抑制を介した胆汁排泄能の低下を引き起こすこと、またこの現象が肝障害の増悪につながる可能性をマウスin vivoで示すことができた。

  • 宮島 敦子, 干川 和枝, 宇佐見 誠, 満長 克祥, 入江 智彦, 大野 泰雄, 簾内 桃子
    セッションID: P-121
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】2-Mercaptobenzimidazole (MBI)及びそのメチル誘導体(MeMBI, 4-MeMBIと5-MeMBIの1:1混合物)は、ゴム酸化防止剤等として広く使用されている。MBI及びMeMBIは、ラットへの反復経口投与により、甲状腺毒性及び肝毒性を示し、肝ミクロソーム(MS)の薬物代謝活性を誘導又は阻害する。また、MeMBIの肝毒性には、4-MeMBI又は5-MeMBI単独投与に比べて弱くなる拮抗作用が認められる。本研究では、この拮抗作用における薬物代謝の関与について検討するため、ラット肝MSによるMBI、4-MeMBI及び5-MeMBIの代謝を調べた。

    【方法】被験物質を基質としてラット肝MSとインキュベートし、反応終了後、基質残存量をHPLCにより分析した。チトクロームP450 (CYP)の関与について検討するため、CYPの非選択的阻害剤であるSKF-525Aを用いて検討した。さらにCYP誘導剤(β-ナフトフラボン(β-NF)、フェノバルビタール(PB)、イソニアジド(Iso))処理ラットの肝MSを用い比較した。

    【結果と考察】肝MSによりMBI、4-MeMBI及び5-MeMBIは同程度代謝された。SKF-525Aによる代謝阻害作用の強さは、MBI>4-MeMBI>5-MeMBIの順で認められた。CYP誘導剤処理ラット肝MSを用いた場合、MBIでは、β-NF処理MSにおける代謝量が多かった。4-MeMBI及び5-MeMBIでは、PB処理MSにおける代謝量が多く、4-MeMBIの代謝量は5-MeMBIの約2倍であった。これらの結果からMBI及びMeMBIはCYPにより代謝されると考えられた。また、5-MeMBI及びPBはCYP2Bを誘導することから、4-MeMBIと5-MeMBIの拮抗作用には、5-MeMBIに誘導されたCYP2Bによる4-MeMBIの代謝が関与すると考えられた。

  • 福島 麻子, 関沢 舞, 石井 聡子, 浅田 聡
    セッションID: P-122
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)は、残留性有機汚染物質(POPs)として国際的な規制がすすんでいる。これらの化合物の代替物質として、近年、よりフッ化炭素鎖長が短いペルフルオロアルキル化合物(PFAS)の利用が広がっている一方、これらの有害性に関する懸念も高まっている。本研究では、PFOS、PFOAの反復投与毒性のうち、最も高感度で検出されることが知られている肝毒性に着目し、PFOS、PFOAと、よりフッ化炭素鎖長が短いPFAS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)、ペルフルオロヘキサン酸(PFHxA)、ペルフルオロブタンスルホン酸(PFBS)、ペルフルオロブタン酸(PFBA))を対象に既存情報調査を行い、これらの化合物の肝毒性とフッ化炭素鎖長の関係について考察を行った。この結果、調査対象PFASについて、肝毒性を引き起こす最小影響量(LOAEL)はフッ化炭素鎖長と相関があり、フッ化炭素鎖長が長くなるにつれ肝毒性が高くなる傾向がみられた。また、フッ化炭素鎖長が6以上のPFAS(PFOS、PFOA、PFHxS)と6未満のPFAS(PFHxA、PFBS、PFBA)では、LOAELに2オーダー以上の差があることが示された。さらに、PFASの生物蓄積性の指標として用いられる血中半減期との関係を考察した結果、調査対象PFASのヒト、サル、ブタにおける血中半減期は、フッ化炭素鎖長が6以上のPFASで極めて長く、フッ化炭素鎖長が6未満のPFASの血中半減期はこれらと比較して顕著に短くなっており、肝毒性と血中半減期に関連性があることが示唆された。

  • 熊谷 健, 星 利香, 長田 大輝, 渡邉 夢実, 進藤 佐和子, 永田 清
    セッションID: P-123
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】近年、セルフメディケーションへの意識の向上から健康食品の利用が進んでいるが、安全性や医薬品との相互作用に関する科学的根拠に基づく情報は乏しい。我々は現在までに複数の健康食品について薬物相互作用の有無に関する網羅的評価を行い、その中でプロポリス含有健康食品が薬物相互作用を引き起こす可能性を見出した。本研究ではプロポリス含有健康食品の薬物相互作用への影響について詳細な検討を行なった。

    【方法】プロポリス含有健康食品(14製品)の70%エタノール抽出物を試料として用い、CYP3A4とCYP1A1レポーター活性(3-1-10細胞、5-1 dual細胞)及びreal-time PCRで内因性のCYP3A4、CYP1A1/1A2 mRNA発現(HepG2細胞)を測定した。細胞毒性評価にはリアルタイム細胞アナライザー(xCELLigence)を用いた。薬物相互作用が起きるかを確かめる目的で、C57BL/6雄性マウスにプロポリス含有健康食品を1週間経口投与後、ペントバルビタールによる催眠時間を測定した。また、同時に肝臓でのCyp mRNA発現をreal-time PCRで測定した。

    【結果・考察】CYP3A4およびCYP1A1レポーター活性の上昇が認められたが、検討した製品間において大きな差が認められた。中でもレポーター活性上昇の強い4製品はCYP3A4、CYP1A1/1A2 mRNA発現の上昇を確認した。また、細胞数減少が観察された2製品について細胞毒性を測定したところ、既存の報告と同程度の細胞毒性が認められた。一方、マウスへのプロポリス含有健康食品投与群は、未処置群に比べて肝臓の主なCyp mRNA発現の上昇を認め、さらに、ペントバルビタール催眠時間の有意な減少も観察された。以上の結果から、プロポリス含有健康食品の服用は、CYP発現を誘導することで薬物相互作用を惹起する可能性が示唆された。

  • Shu-Hui JUAN, Tsui-Ling KO, Hsiu-Chu CHOU
    セッションID: P-124
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    Perfluorooctane sulfonate (PFOS) is a persistent organic pollutant widely distributed in the environment, human and wildlife, and raises great concerns in recent years because of its long elimination half-life. Increasing evidence indicates that the toxic effect of PFOS induces autophagic cell death, in which reactive oxygen species (ROS), endoplasmic reticulum stress (ER stress) and extracellular signal-regulated kinase (ERK) are involved, but remain to be clarified. In addition, there is little information on the mechanisms underlying the effects of PFOS in renal damage. Herein, we demonstrate that PFOS increased autophagic cell death in rat renal tubular epithelial cell (RTCs) through MTT assay and western blot analysis, which is correlated with increased ROS generation. Additionally, PFOS increased p62 protein level, which is suspected due to the increased lysosomal membrane permeabilization and impairment of autophagosome degradation through lysosomal staining. By contrast, 3-methyladenine, an autophagy inhibitor, increased cell viability and decreased the sub-G1 population. Thus, we aim to elucidate whether PFOS induces cell death via autophagy activation, and whether the induction of ROS, ERK and ER stress contributes to PFOS-mediated autophagy in RTCs. Cells pretreated with L-carnitine and n-acetyl cysteine (NAC) decreased RTC damage caused by PFOS. However, the mechanism underlying the protective effect of L-carnitine and NAC remains to be elucidated. This study does not only provide potential mechanisms of PFOS-mediated renal injury, but also sheds light on new strategies of using L-carnitine and NAC for the prevention and treatment of renal injury caused by PFOS.

  • 竹之内 明子, 金瀬 茜, 三浦 麻里安, 新家 由実子, 平山 由佳理, 平塚 未夢, 行光 由莉, 小山 千尋, 木下 勇一, 浜崎 景 ...
    セッションID: P-125
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【背景及び目的】アセトアミノフェン(APAP)による腎障害は、中間活性代謝産物N‒acetyl‒p‒benzoquinone imineを介して発症することが推察されている。我々はAPAP単回投与により腎障害モデルを作成し、日常摂取する不飽和脂肪酸であるミード酸(MA)の腎障害抑制効果について検証した。

    【方法】7週齢SD系雄ラットに500mg/kg APAPを単回腹腔内投与し、投与後24、48時間に血清及び腎臓を採取した。基礎食(0%MA)あるいは4.8%MA食をAPAP投与7日前から解剖時まで摂取させ、基礎食+溶媒(30%エタノール)投与群、4.8%MA食+溶媒投与群、基礎食+APAP投与群、4.8%MA食+APAP投与群を設定した。腎障害パラメータ (BUN・CRE)、腎臓の組織学的検査(HE)、薬物代謝酵素(CYP2E1)及び酸化ストレスマーカー(HO-1・TG)の免疫染色を実施した。血中酸化ストレス測定のためd-ROMsテスト、抗酸化力測定のためにBAPテストをFREE Carrio Duoで実施した。

    【結果】基礎食+APAP投与群ではBUN及びCRE値の顕著な増加がみられ、髄質外帯を中心に近位尿細管壊死及び拡張が観察された。尿細管壊死は免疫組織学的にCYP2E1が発現する部位に観察され、HO-1とTGの発現も認められた。MA摂取群では尿細管壊死の程度は減弱し、HO-1の発現が低下した。

    【結論】MA摂取群では、基礎食群に比べて腎障害パラメータの有意な減少や尿細管壊死、拡張の抑制が認められ、MAの腎障害抑制効果が確認された。その効果はMA摂取により腎臓での酸化ストレス発現の抑制が関与していることが示唆された。

  • 松下 幸平, 豊田 武士, 山田 貴宣, 森川 朋美, 小川 久美子
    セッションID: P-126
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】腎臓の尿細管は内在性に再生能力を有しており、尿細管壊死が生じた際には残存した細胞が脱分化して再生尿細管となり、遊走・増殖した後に再分化して組織は修復される。一方、この再生機構が破綻した場合には不可逆的な線維化に進展する。本研究は尿細管の再生機構に関わる因子の探索及び再生過程から逸脱した尿細管の特徴を明らかにすることを目的とした。

    【方法】正常な再生過程を辿る再生尿細管を誘発するため、10週齢雌性F344ラットに片側腎虚血再灌流(I/R)処置を施して3及び7日後に解剖し、切開のみのsham群は処置7日後に解剖した。凍結切片を用い、正常尿細管及び再生尿細管をマイクロダイセクションにて採取し、cDNAマイクロアレイを実施した。腎線維化病変を誘発するため、6週齢雄性SDラットに片側腎I/R処置を施し10日後に解剖した。全動物の腎臓について病理組織学的及び免疫組織化学的に解析した。

    【結果】処置3及び7日後にそれぞれ再生初期及び後期の尿細管が多数みられ、拡張した尿細管も観察された。線維化病変では拡張あるいは萎縮した尿細管が認められた。再生尿細管のマイクロアレイにおいてmRNA発現が上昇していた因子のうちSurvivin、SOX9及びCD44に着目し、各因子の免疫染色を実施した。結果、Survivin及びSOX9の発現は再生初期の尿細管に多く認められ、後期では減少した。線維化病変内の尿細管においてはSOX9の発現が多く認められたものの、Survivinの発現は正常尿細管と同程度であった。CD44は線維化病変内の尿細管並びに処置3及び7日後の拡張した尿細管に発現していた。

    【考察】Survivin及びSOX9は尿細管の再生機構に寄与しているが、SOX9の持続的かつ過剰な発現は線維化への進展に関与していると考えられた。CD44は再生過程から逸脱した尿細管に特徴的に発現していることが推察され、その発現は線維化に先立って確認されたことから、腎線維化の早期指標となる可能性が示唆された。

  • 樋口 耕介, 降幡 知巳, 竹下 暢重, 安藤 敬佑, 坂本 信一, 安西 尚彦, 市川 智彦
    セッションID: P-127
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【背景】アミノ酸トランスポーターLAT1(SLC7A5)は、必須アミノ酸を含む中性アミノ酸をNa+非依存的に輸送するトランスポーターであり、癌特異的に発現していることが知られており、様々な癌種において予後との関わりが報告されている。また、LAT1選択的阻害薬であるJPH203が種々の癌細胞の増殖を抑制するという報告がなされている。泌尿器科癌由来細胞株においてもLAT1の発現が亢進することが報告されているが、実際のヒト検体を用いた報告やJPH203の効果の報告は少ない。

    【方法】2007年1月から2012年12月に当科で根治的腎摘除もしくは腎部分切除を施行した患者で淡明細胞腎細胞癌 (ccRCC ) と診断された99例について、免疫染色のscoringを行い、組織学的にLA1の発現と予後について検討した。また、腎細胞癌由来細胞株2種を用いて、qPCRとWestern blotでLAT1の発現解析行い、LAT1選択的阻害薬JPH203の細胞毒性、14C leucineの取り込み阻害効果を検討した。

    【結果】ccRCC患者において、LAT1 染色scoreの高い群が全生存率、無増悪生存率共に有意に予後不良であった ( p=0.0427および p=0.0082 )。また、腎細胞癌細胞株においてLAT1が高発現しており、JPH203はleucineの取り込みを阻害し、in vitroで濃度依存的に細胞毒性を持つことが示された。

    【考察】これらの結果から淡明細胞腎細胞癌において、LAT1の発現が予後予測因子となり、また、新規治療標的としてJPH203が治療薬となる可能性が示された。

  • 檜杖 昌則, Shuyan LU, Tae SUNG, Manthena VARMA, Yvonne WILL
    セッションID: P-128
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】トランスポーター(TP)は様々な生理的に重要な役割を担うとともに,能動的取込みで細胞内への薬物の蓄積を促進することにより毒性発現にも関係する。腎臓の近位尿細管毒性を示す多くの薬物は親水性であるが,近位尿細管では側底膜および刷子縁膜上に複数の薬物TPが存在しこれらのTPを介した能動的取込みが膜透過性の低い薬物の細胞内蓄積を促進することにより毒性を発現すると考えられている。しかしながら,in vitroの毒性研究で一般的に用いられる細胞はTPの発現が十分ではなく,毒性評価において偽陰性の結果をもたらす可能性が考えられる。本研究では,HEK293細胞にOAT1,OAT3およびOCT2を過剰発現させ,腎毒性物質の予測性が改善されるかを検討した。

    【方法・結果】各TP発現細胞に,OAT1およびOAT3の基質としてCidofovirとテノホビルを,OCT2の基質としてシスプラチンを添加し,インピーダンス測定により細胞毒性を評価した。Cidofovirおよびテノホビル添加に対し,親細胞株では影響はみられなかった。一方,OAT1またはOAT3発現細胞では細胞毒性が認められ,みられた毒性はOAT1発現細胞でより強くこの結果は薬物取り込み活性と関連した(OAT1発現細胞の取込み活性はOAT3発現細胞より高かった)。また,シスプラチンを用いたOCT2発現細胞での検討でも同様の結果が示された。プロベネシドによるOAT1またはOAT3の阻害およびキニジンによるOCT1阻害が各発現細胞での毒性を減弱したことから,各薬剤の細胞内蓄積が毒性発現に関連することが示唆された。また,ハイコンテントスクリーニングでOAT1発現細胞におけるCidofovirおよびテノホビルの毒性をさらに検討した。

    【結論】TPを過剰発現させた細胞株は毒性機序検討およびスクリーニングツールとして有用である可能性が示唆された。

  • 田中 豊人, 鈴木 俊也, 猪又 明子, 守安 貴子
    セッションID: P-129
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】防かび剤のイマザリルとチアベンダゾールの混合曝露による妊娠期及び授乳期投与の行動発達毒性試験を行い、マウスの次世代の行動発達に及ぼす影響の有無について検討する。

    【方法】イマザリル/チアベンダゾールを混餌法により0%/0%(対照群)、0.0015%/0.006%(低濃度)、0.006%/0.018%(中濃度)、0.024%/0.054%(高濃度)となるように調製してCD1マウスのF0世代の雌に妊娠期及び授乳期に投与して、次世代マウスの行動発達に及ぼす影響について検討した。

    【結果】F1世代の授乳期における仔マウスの体重が雄は4~21日齢、雌は14~21日齢で投与群で増加した。また、授乳期間中の行動発達では雄仔マウスの7日齢の遊泳試験の頭角度が投与群で促進した。 F1世代の探査行動では水平移動回数が高濃度投与群で減少し、移動時間が用量依存的に短縮し、平均立ち上がり時間が高濃度投与群で延長した。また、雌成体マウスでは立ち上がり時間が用量依存的に延長し、平均立ち上がり時間が高濃度投与群で延長し、排糞数は用量依存的に減少した。F1世代の自発行動では雌成体マウスの総移動距離の平行性が有意に異なり、平均移動時間、立ち上がり回数及び立ち上がり時間の平行幅が有意に異なった。

    【まとめ】本実験においてイマザリルとチアベンダゾールの混合曝露について妊娠期及び授乳期投与により、投与終了後の次世代の雌雄の成体マウスの探査行動に用量依存的な影響が観察された。また、次世代の雌の自発行動の活動性に関する複数の項目の経時パターンに投与によると思われる影響が観察された。本実験で用いられたイマザリルとチアベンダゾールの用量はADI値を基に算出された(ADI値の100倍相当が約0.0015%/0.006%)ものであるが、イマザリルとチアベンダゾールの食品からの推定摂取量(0.072/0.045μg/kg/日)はADI値(0.03/0.1mg/kg/日)のそれぞれ1/400及び1/2000以下であるので、イマザリルとチアベンダゾールの食品からの摂取量では人の健康に対して影響を及ぼさないものと思われる。

  • 磯部 雄司, N R CATLIN, C J BOWMAN, S M ENGEL, A SACAAN, G D CAPPON
    セッションID: P-130
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】パルボシクリブはサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6を選択的に阻害する乳がん治療薬である。このような分子標的薬の生殖発生毒性全般に対する影響を評価するため,パルボシクリブの一連の生殖発生毒性試験を実施した。【方法・結果】受胎能及び初期胚発生試験では,雌雄ラットにそれぞれ300 又は100 mg/kg/日までの用量を経口投与した。雄には4サイクル(1サイクルは3週間投与及び1週間休薬)投与を行い,最終2週間に無処置雌と交配させた。雌には交配前15日から無処置雄との交配期間中及び妊娠7日を通して投与を行った。雄では授胎能に影響はみられなかったが,30 mg/kg以上で精巣に病理組織学的変化が認められ,精巣上体での二次的な変化を伴っていた。100 mg/kgでは精巣及び精巣上体の重量,精子数及び精子運動性の低下が認められた。雌ではいずれの用量でも投与の影響は認められなかった。胚・胎児発生試験では,ラット及びウサギにそれぞれ300又は20 mg/kg/日までの用量で,それぞれ妊娠6~17日又は妊娠7~19日に投与した。ラット300 mg/kg群の母体の摂餌量及び体重増加量の低下を伴う胎児体重の低下(対照群に対し5%低下)及びウサギ20 mg/kg群の胎児の数例で前肢に小さな指骨が認められたが,催奇形性を示す所見ではなかった。また,ラット胎児の頸肋の増加が100 mg/kg以上で,ウサギ胎児の第13肋骨(腰肋)の増加が10 mg/kg以上で認められたが,いずれの骨格変異もこれらの動物種で通常認められるものであり,生後発達に影響を及ぼすものではなかった。出生前及び出生後発生試験では,雌ラットに300 mg/kg/日までの用量で妊娠6日~授乳20日に投与したところ,F1出生児に毒性変化はみられず,発生毒性は認められなかった。【考察】パルボシクリブは雄性生殖毒性を示したものの,胎児発生に対する影響は軽微であり,他のCDK4/6阻害剤(リボシクリブ及びアベマシクリブ)と比較しても発生毒性の重篤度は低かった。

  • 坂 芳樹, 堀本 政夫
    セッションID: P-131
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【目的】アザチオプリンは免疫抑制剤として自己免疫疾患等の治療に用いられているが、過去の動物実験で催奇形作用が認められているため、現在でも妊婦や妊娠している可能性のある婦人に対する投与は禁忌とされている。近年、このアザチオプリンの禁忌について臨床データを含む最新の知見を基に見直しが進められている。本研究では、過去の動物実験で認められた催奇形作用をより詳細に検討するため、妊娠ラットの器官形成期を3分割してアザチオプリンを3日間経口投与し、母動物及び胎児に及ぼす影響を検討した。

    【方法】SD系雌ラットの妊娠7~9日、妊娠10~12日または妊娠13~15日にアザチオプリンの30 mg/kgを各々経口投与した。試験期間中は母動物の一般症状と体重測定を毎日実施した。妊娠21日に帝王切開を施し、着床数、死亡胚数及び生存胎児数を調べた。生存胎児は体重測定、雌雄判別、外表観察を行った後、骨・軟骨二重染色を施して骨格検査を実施した。

    【結果及び考察】母動物の一般状態には投与による影響はなかったが、母動物体重が投与期間中から投与翌日に一過性に減少した。帝王切開所見では、妊娠7~9日及び妊娠10~12日群の着床後胚死亡率が各々100%及び91%と有意に増加した。胎児体重は妊娠10~12日及び妊娠13~15日群で有意に減少した。生存胎児に外表異常、骨格異常は観察されず、骨格変異も有意な増加は認められなかった。一方、既知のデータでは着床後胚死亡率の増加、胎児の低体重、骨格異常(胸椎体の変形)及び変異(頸肋)が報告されている。しかし、今回の試験では胚死亡や胎児の低体重は認められたが、骨格異常・変異は確認することができなかった。

    【結論】アザチオプリン30 mg/kgを妊娠ラットの器官形成期に経口投与した結果、妊娠7~9日及び妊娠10~12日投与では胚致死作用、妊娠10~12日及び妊娠13~15日投与では胎児の発育遅延が認められたが、催奇形作用を示唆する所見は認められなかった。

  • 桑形 麻樹子, 柴藤 淳子, 瀬沼 美華, 等々力 舞, Randeep RAKWAL, 北嶋 聡, 小川 哲郎
    セッションID: P-132
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    我々は、胎児期の低栄養は生活習慣病の発症リスクを増加させ、生後の制限はリスクを減少させる、即ち、出生前後で低栄養に対する影響が逆転することに着目し、生活習慣病や精神疾患の発症リスクに関与する遺伝子候補群の選抜を試みている。マウスの妊娠期あるいは新生児期に母動物を低栄養環境にし、妊娠末期(妊娠18日)胎児と生後7日新生児の肝臓の網羅的遺伝子解析を実施して、胎児および新生児で発現が逆方向に変化する21個の遺伝子を見出した。これらの中には免疫系に関与する遺伝子が多かった。今回、21個の遺伝子の中で、成熟期のリポポリサッカライド(LPS:Toll様受容体4を刺激し炎症を起こす)投与に対する応答が新生児期の低栄養負荷により変化する遺伝子を見出したので報告する。

    C57BL/6母マウスに分娩後7日間、対照群の50%給餌制限した群(FR)と固形飼料CE-2を自由摂取させた対照群を設けた。生後11週に各群半数の出生児に250 µg/kgのLPSを3日間腹腔内投与した。最終投与翌日に全ての動物の肝臓をサンプリングし、21個の遺伝子についてLPS刺激に対する反応をRT-PCR解析により調べた。得られたデータは、栄養条件、LPS投与、性の三因子を加味して比較検討した。

    21個の遺伝子について実施した下位分析の結果、Slco2b1はFRの影響がみられた(増加)が、LPS投与によりこの影響は消失した。また、Lrtm1およびMrapは対照群でのみ(増加)、Il1bはFR群でのみ(減少)、LPS投与による影響が認められることが明らかになった。これらの遺伝子は肝臓の薬物代謝トランスポーター、細胞骨格系、肥満、炎症サイトカインなどに関連する遺伝子であった。

    以上の結果から、新生児期に低栄養曝露された児では成熟期において炎症刺激の一つであるLPSに対する反応が異なることが明らかになった。

  • 北岡 諭, 原田 翔平, 柏田 真友美, 落合 和
    セッションID: P-133
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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     妊娠中に癌と診断される女性は1000人に1人であり、その半数が乳癌である。妊娠中の乳癌は非妊娠時に比べて進行が早く、抗癌剤による治療が行われる場合が少なくない。したがって、妊娠中の化学療法では胎児に対する影響が最小限となる治療法の選択が重要である。しかしながら、抗癌剤の母体から胎児への移行性や胎児中の薬物分布に関する知見は乏しい。そのため、抗癌剤を母体に投与した場合、胎児への影響を予測することは困難である。本研究では、妊娠中の乳癌に対する第一選択薬doxorubicinの胎児への影響を薬物動態学及び発生学の観点から解析した。

     Doxorubicinはアントラサイクリン骨格を有していることから蛍光を用いた解析が可能となる利点がある。我々は、このdoxorubicinの利点を活かして、母体に投与したdoxorubicinの胎児中の薬物分布を解析した。その結果、doxorubicinは母体から胎児の脳へと移行し、特に、大脳皮質領域に蓄積していることを明らかにした。この時期の胎児の大脳皮質領域では、神経幹細胞からニューロンへの分化が活発であり、doxorubicinがこの過程に影響を及ぼすことが危惧される。そこで本研究では、胎児の神経発生に対するdoxorubicinの影響を解析するために、母体から胎児の脳に移行したdoxorubicin量の経時変化を検討した。その結果、母体にdoxorubicinを投与すると、胎児の脳へと速やかに移行すること及び、その脳内濃度は投与24時間後に最大となることが明らかとなった。最後に、これまでの結果を基に神経幹細胞の分化に対する影響を解析すると、doxorubicinが神経幹細胞からニューロンへの分化を促進していることが明らかとなった。今後、doxorubicinを投与したマウスから生まれた子供の知的機能への影響についても解析を進める予定である。

  • 寺山 隼人, 梅本 佳納榮, 曲 寧, 坂部 貢
    セッションID: P-134
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    ネオニコチノイド系農薬(NP)はニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)へのアゴニスト作用によって害虫に対しては強い毒性を発揮するが、哺乳類には安全であるとされ世界中で汎用されている。しかし、近年、実験動物でNPが神経系、免疫系、生殖器系など様々な器官に悪影響を及ぼす事が報告されている。精巣内環境は思春期を境に精子・精子細胞が出現するため劇的に変化する。成獣雄マウスにNPを投与すると、血清テストステロンの低下や造精障害が報告されているが、幼若雄マウスにNPを投与した報告はない。そこで本研究は、幼若雄マウス(3週齢)にNPであるアセタミプリド(ACE)を投与し、精巣に与える影響を検討した。ACEを水道水に溶かし自由飲水させる実験(ACE1およびACE2)群、ACEを溶解している界面活性剤(DMSO)のみを水道水に溶かし自由飲水させるDMSO群、水道水のみ自由飲水させるUntreated群の4群に分け、180日後に精巣を深麻酔下で摘出し、形態学的および分子生物学的に評価した。その結果、180日後の体重は実験群で有意に減少したが、精巣の重量や組織に有意な変化はなかった。ステロイド合成系、増殖細胞因子、nAChRサブユニットのmRNA発現は実験群で有意に低下していた。ACE曝露は形態学的変化を誘導しない投与量でも、精巣内に蓄積し、遺伝子発現に様々な変化を及ぼすことがわかった。さらに、過去の文献と比較すると種差、ネオニコチノイド系農薬種、週齢において、かなり感受性の違いがある事もわかった。

  • 石井 雄二, 高須 伸二, 中村 賢志, 木島 綾希, 小川 久美子, 梅村 隆志
    セッションID: P-135
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【背景・目的】我々はこれまでにレポーター遺伝子導入動物であるgpt deltaマウスに400 ppm(発がん用量の約8倍)のアクリルアミド(AA)を4週間投与すると、発がん標的臓器である肺において特異的DNA付加体N7-GA-Guaの形成に加え、G:C-T:A transversionおよび一塩基欠失を特徴とした突然変異頻度(MFs)が上昇することを明らかにしている。しかし、発がん用量近傍においてはMFsの変化が認められなかったことから、AAの発がん過程における突然変異の関与は不明のままである。そこで本研究では、AAの発がん条件下における変異原性の有無を投与期間を延長して検討した。【方法】雄性6週齢のF344系gpt deltaマウスに発がん用量である50 ppmのAAを4、8及び16週間飲水投与し、発がん標的臓器である肺と非発がん標的臓器である肝臓を採取した。凍結保存した肺及び肝臓の一部を用いてLC-MS/MSによるN7-GA-Guaの測定と、gpt assayおよびSpi- assay による変異原性の検索を行った。【結果】gpt assayの結果、肺では投与後16週目においてMFsが有意に上昇し、G:C-T:A transversion及び一塩基欠失の頻度が有意に増加した。一方、肝臓ではMFsの変化はみられなかった。Spi- assayの結果、肺および肝臓ともにMFsの変化は認められなかった。【考察】発がん標的臓器である肺では、投与後16週目においてgpt MFsが上昇し、その変異スペクトラムは高用量のAA投与時と一致した。また、MFsの上昇が発がん標的臓器のみで認められたことから、AAの肺発がん過程にこれらの突然変異が寄与することが強く示唆された。今後、各臓器におけるN7-GA-Gua量を測定し、付加体の蓄積量と変異誘発との関連についても報告する。

  • 北 加代子, 立川 純平, 福島 伊久美, 本間 太郎, 鈴木 俊英
    セッションID: P-136
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    これまで我々は、ヒ素のメチル化代謝物チオ-ジメチルアルシン酸(thio-DMA)が紡錘体チェックポイントを活性化して細胞を分裂前中期に蓄積させるとともに、分裂関連細胞死を引き起こすことを明らかにしてきた。その一方、紡錘体チェックポイントが活性化しにくい細胞では分裂期にあまり蓄積せず、次の細胞周期へ進行することも明らかにしている。分裂関連細胞死は、分裂不全に陥った細胞を細胞死させることで染色体数の不安定化を避けるための防御機構であるが、紡錘体チェックポイントが活性化しにくい細胞では染色体数にどのような影響があるのか不明である。本研究では、紡錘体チェックポイントが活性化しにくい細胞におけるthio-DMA処理後の染色体数の変化を検討した。【方法】チャイニーズハムスターの肺由来繊維芽細胞V79は、紡錘体チェックポイントに関わるBubR1の発現レベルが低く、thio-DMAによって分裂期に蓄積しにくい特徴を持つ。この細胞を0.625、1.25および2.5 µMのthio-DMAで40時間処理し、染色体数の変化を調べた。また40時間処理後に通常の培地に戻して24時間から2週間培養を続けた細胞の染色体数の変化を調べた。【結果・考察】1.25 µMのthio-DMAで40時間処理したところ、正常な染色体数(21~22本)のピークが顕著に低下し42本付近にピークが現れた。このピークは2.5 µM処理時ではさらに増加した。thio-DMAで40時間処理後に通常の培地に戻して24時間培養したところ、1.25および2.5 µM処理群では、42本のピークが減少し、代わりに78~81本付近に新たなピークが出現した。81本付近のピークは通常の培地に戻して2週間後には減少したが、42本付近のピークは依然として観察された。以上の結果から、thio-DMAで処理したV79は細胞質分裂に失敗し、倍数性を引き起こす可能性が示唆された。さらに、通常培地に置き換えることで細胞質分裂に失敗した細胞の生存を可能にし、特に42本前後の染色体数を持つ細胞は、比較的長く生存し続けることが判明した。

  • 豊岡 達士, 祁 永剛, 王 瑞生, 甲田 茂樹
    セッションID: P-137
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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     MOCA (3,3’-dichloro-4,4’-diamino-diphenylmethane)は、動物多臓器発がん性が確認されており、ヒトにおいては職業性ばく露による膀胱がん引き起こす可能性がある物質として知られている。我が国においても当該物質は特定化学物質に指定されているところであるが、昨年度、厚労省より改めてMOCAによる健康障害の防止対策の徹底について通知がなされた。

     DNA損傷の生成は発がんにおける重要なファーストステップとしてよく知られている。MOCAのDNA損傷性については、その代謝物がDNAに結合性損傷を誘導することが報告されている。一方で、MOCAのDNA損傷性がどの程度のものなのかをMOCAとその類似構造物質について、同一試験系において同時比較した研究は見当たらない。本研究では、MOCAのDNA損傷性をより正確に把握することを目的に、DNA損傷指標であるγ-H2AX (リン酸化ヒストンH2AX)用いて、MOCAおよびその類似構造物質3種 (MDT: 4,4’-diamino-3,3’-dimethyldiphenylmethane, MDA: 4,4’-diaminodiphenylmethane, MDP: 4,4’-dihydroxydiphenylmethane)のDNA損傷性を比較検討した。

     ヒト膀胱細胞モデル1T1細胞にこれら化学物質を作用し、一定時間後にγ-H2AX誘導を検出した。その結果、被験物質4種類全てでγ-H2AX誘導が確認されたが (作用濃度: 0.5 mM, 作用時間24h)、特にMOCAとMDPにおいては作用4h時点で濃度依存的 (0.1-1 mM)に非常に強いγ-H2AX誘導が観察された。MDTおよびMDAにおけるγ-H2AX誘導は、MOCAまたはMDPに比すると強いものではなかった。MOCAのγ-H2AX誘導が強いであろうことは予期できるものであったが、MDPはIARC発がん性評価では未だ評価されておらず、興味深い結果である。現在、γ-H2AXの誘導メカニズムおよび、その誘導強度と遺伝子変異原性の関連等、より詳細な検討を実施している。

  • 萩原 顕昭, 原 智美, 勝呂 繭子, 河部 真弓, 宮田 裕人, 米良 幸典, 玉野 静光
    セッションID: P-138
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】近年、経皮吸収型製剤の対象となる疾患領域が広がりつつあり、ライフサイクルマネジメントを目的とした経口剤から経皮剤への剤形変更が進んでいる。以前、肺発がん物質である1,2-ジクロロエタン(1,2-DE)をrasH2マウスの背部皮膚に26週間経皮投与した結果、肺における発がん性が検出できたことを報告した。今回は発がん性の再確認ならびに他の発がん物質を用いてrasH2マウスを用いた経皮剤の26週間での発がん性評価の可能性について検討した。

    【方法】雌雄のrasH2マウス(7週齢、各群10匹)の背部皮膚を剪毛し、1,2-DEを42及び126 mg/200 µLの用量で週3回、また、皮膚、前胃、肝臓及び肺での発がん性が報告されている2,3-ジブロモ-1-プロパノール(2,3-DP)の発がん用量である44及び88 mg/kg b.w.を週5回、経皮投与した。また、媒体対照群としてアセトン100 µLを週5回投与した。26週経過後に屠殺剖検し、塗布部位を含む全身諸器官の病理組織学的検査を実施した。

    【結果】肺重量では雄の1,2-DE高用量群及び雌の1,2-DE及び2,3-DP投与全群で用量に依存した絶対及び相対重量の有意な高値がみられた。肺の病理組織学的検査では、腺腫及び腺癌の発生率が雄の2,3-DP高用量群を除く全群で有意な高値を示し、腺腫の1匹当たりの発生個数は両被験物質において雄の投与全群及び雌の高用量群で有意な高値を示した。また、腺癌の1匹当たりの発生個数は雄の1,2-DE高用量群及び雌の両被験物質の高用量群で有意な高値を示した。

    【まとめ】rasH2マウスに既知の発がん物質を経皮投与した結果、26週間で発がん性が示され、用量依存性も確認できたことから、「rasH2マウスを用いた経皮投与による26週間短期発がん性試験」は経皮剤の発がん性評価に有用なモデルになり得ると考えられた。

  • 柳場 由絵, 小林 健一, 豊岡 達士, 祁 永剛, 須田 恵, 王 瑞生, 甲田 茂樹
    セッションID: P-139
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
    会議録・要旨集 フリー

    【背景・目的】化学染料工場において膀胱がんの発症が多数報告され、その現場ではo-トルイジン(OT)や2,4-ジメチルアニリン(DMA)を含む芳香族アミン類が使用されたが、作業環境中の濃度が低いが、尿中から高濃度の芳香族アミン類またはその代謝物が検出された。従って、これらの物質は経皮吸収され、がんを誘発したと疑われている。OTはすでにIARCの発がん物質分類でグループ1となっているが、DMAはグループ3と分類されている。本研究は、DMAの職業性膀胱がんの発生における役割を解明するため、その経皮吸収性、体内分布及びDNA損傷性について検討した。

    【方法】実験①: [14C]DMA液をリント布に滴下し、ラット背部皮膚に塗布した。8時間、24時間後にリント布を剥離し、全身オートラジオルミノグラムを作成後、各臓器における放射性を分析した。投与後は代謝ケージに収容し、3つの採尿区間に分けて尿を収集し、尿中における放射性を定量した。実験②:ヒト膀胱上皮由来の培養細胞(1T1細胞)を用いて、リン酸化ヒストンH2AX (γ-H2AX)を指標にDNA損傷性について検討した。

    【結果】実験①については現在解析中である。実験②では、DMAに対して、1T1細胞において強いγ-H2AX応答が観察され、その作用はOTよりも顕著であった。DMAのDNA損傷誘導メカニズムを検討したところ、活性酸素種が大きな役割を果たしていることが判明した。またこれはCYP2E1が媒介する代謝反応の過程で起こり、そのため、この酵素の抑制剤やROS除去剤によってDNA損傷は大幅に軽減されることが観察された。

    【考察】DMAの経皮吸収や体内分布は解析中であるが、インビトロ系を用いた検討では早い皮膚透過性が観察され、皮膚ばく露によるリスクを評価する必要性が示唆された。また、今までDMAの発がん性について不明な部分が多いが、本研究ではそのDNA損傷性はすでに知られているヒト発がん性物質であるOTよりも劣ることがなく、職業性膀胱がんの発生に関与している可能性が示唆された。

  • 成瀬 美衣, 落合 雅子, 谷口 浩和, 平岡 伸介, 今井 俊夫
    セッションID: P-140
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
    会議録・要旨集 フリー

    我々はマウスオルガノイドにin vitroで化学物質を暴露した後ヌードマウスへ皮下接種する系で、腫瘍性病変をエンドポイントとした化学発がんモデルを検討してきた。近年、ヒト腫瘍組織由来のPDXやオルガノイドを樹立し、抗がん剤の薬効評価系への応用を進めている。従来用いられてきたがん細胞株に比べ、これらは評価系として優れていると考えられるが、各評価系の特性の詳細な比較解析は行われていない。本研究では、大腸がん手術残余検体由来のPDX、オルガノイド、更に同じ組織から樹立した線維芽細胞とオルガノイドの共培養系について、元のがん組織との特性比較を行った。【方法】45症例の大腸がん手術残余検体を用い、分割した組織片から、NOGマウスへの皮下移植によりPDX、マトリゲルと各種増殖因子を用いた三次元培養法によりオルガノイド、FBS添加培地を用いて線維芽細胞を樹立した。元腫瘍、PDX、オルガノイドについて、NCCオンコパネルとSureprint G3 マイクロアレイを用い、DNA変異解析と遺伝子発現解析を行った。また、インサートを用いたオルガノイドと線維芽細胞の共培養系で同様の遺伝子発現解析を行った。【結果】変異遺伝子の比較では、PDXとオルガノイドの両者で元の腫瘍の変異を大部分維持していた。遺伝子発現解析からはPDX、オルガノイドともに各症例の特異的発現パターンを維持している一方、間質/免疫系遺伝子の発現を再現することができないことも確認された。共培養系では症例毎に特異的な遺伝子変動が生じ、中にはE-cadherinVimentin等のEMT関連遺伝子が含まれていた。【考察】PDXは、遺伝子発現解析結果から元腫瘍と類似性が高いことが示された。一方、上皮(がん)細胞が選択的に増殖したオルガノイドは、複数の試験条件を簡便に同時比較でき、がん細胞に対する薬効メカニズムを直接的に解析できる利点がある。また、オルガノイドと線維芽細胞との共培養系により、in vitroで元腫瘍により近い条件での解析ができる可能性がある。

  • James R. MUNDAY, Chris COOPER, Ray WILSON, Emma LUND, Victoria FRASER
    セッションID: P-141
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    Following the serious adverse events that resulted in severe cytokine storm responses in individuals dosed with TGN1412, it has been important to perform in-vitro toxicology tests on any compound that has the potential to modulate immune activation status to predict the potential for activation of a cytokine release mechanisms. Over the last 10 years many investigators have assessed a variety of in-vitro cellular assays for evaluation of this response but these do not always reflect the true biologic mechanisms taking place. This poster will review data generated for liquid phase, solid phase, and co-culture assay formats with positive controls (Anti-CD3 Monoclonal antibody, Anti-CD28 Monoclonal antibody, Anti-Her2 Monoclonal antibody and CD19&CD3 bi-specific T-cell engager) which are known to have different modes of action for induction of cytokine release. This data will be used to highlight the importance of choosing an appropriate assay format for characterisation of cytokine release. It will discuss how target biology considerations and test article structural considerations need to be considered for choosing the appropriate cytokine release assay format. Details of how the Fc region of a monoclonal antibody will govern the choice for a solid phase format and how co-culture systems with PBMCs and endothelial cells can be used for a greater physiological understanding will be presented. Utilising these data the poster will show how applying the appropriate assay format can be used to accurately predict the potential for cytokine storm for novel biologics.

  • 岩田 良香, 佐々木 正徳, 原田 麻子, 竹藤 順子, 赤井 翔, 坂本 昭久, 金子 晃久, 三島 雅之
    セッションID: P-142
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
    会議録・要旨集 フリー

    【背景・目的】CD3二重特異性抗体(CD3BiAb)はがんに対する高い治療効果が期待される一方、臨床での重篤なCytokine release syndrome (CRS)が問題となっている。現在、点滴による投与速度の低下やコルチコステロイド前投与などの対策がとられているが、十分な効果が得られていない。我々はカニクイザルにCD3BiAbを単回投与または漸増投与し、漸増投与のレジメによるCRS低減効果について検討した。

    【方法】抗GPC3 CD3BiAb(CE115)を、カニクイザルに10, 100, or 1000 μg/kgの用量で単回投与、または7日間にわたり1, 3, 10, 30, 100, 300 and 1,000 μg/kgの用量で連日漸増投与し、CRSに関連するパラメータを比較した。

    【結果・考察】CE115の 1,000 μg/kgを単回投与したサルでは、血中IL-6濃度が60,000 pg/mLを超え、IL-2は2,000 pg/mL、TNF-α及びIFN-γは100 pg/mLを超えて上昇し、CRS症状を示した。一方、CE115を1,000 μg/kgまで漸増投与したサルでは、単回投与に比べてCRS症状が改善した。漸増期間におけるサイトカインピーク値は、IL-6が1,221 pg/mLに低下し、IL-2、TNF-α、IFN-γはいずれも100 pg/mL未満となった。これらの結果から、今回用いたCE115の漸増投与レジメは、カニクイザルにおいてCRS低減に有用であることが示唆された。

  • 福山 朋季, 鈴木 もも香, 小形 佑理, 蔵田 圭吾
    セッションID: P-143
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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     無機ヒ素は、アルゼンチン、バングラデシュ、チリ、中国、インド、メキシコ、アメリカ合衆国等の国々で、地下水中に高濃度で存在しており、現在、50ヶ国の1億4000万人が世界保健機関の暫定ガイドライン値である10 μg/Lを超えるヒ素を含む飲料水を飲んでいることが明らかとなっている。また、近年の疫学的調査において、血中の無機ヒ素化合物濃度の増加が皮膚炎やアレルギー喘息の罹患率を増大させることが示唆されている (Hossainら、2018)。本研究では、不明点が多い無機ヒ素化合物曝露とアレルギー性皮膚炎発症の直接的な関連性を、培養細胞およびマウスモデルを用いて調査した。まず、ヒト好酸球性白血病細胞 (EOL-1) 、ヒト急性単球性白血病細胞 (THP-1) およびヒト表皮正常角化細胞 (PHK16-0b) に無機ヒ素を24時間曝露し、リポ多糖 (LPS) ないしダニ抗原抽出物 (ITEA株式会社) 刺激による炎症性サイトカイン産生量 (IL-1β, IL-8, TNFα) をELISA法により測定した。結果、好酸球様の反応を示すEOL-1細胞において、LPSないしダニ抗原刺激後のIL-8産生量が有意に増加した。LPSの刺激では、IL-1β産生量の有意な増加も確認された。樹状細胞様の反応を示すTHP-1細胞においても同様の傾向が観察され、ヒ素濃度依存的IL-1β、IL-8およびTNFα産生量が有意に亢進していた。ヒト表皮角化細胞においても、無機ヒ素曝露によってLPSないしダニ抗原刺激後のIL-8産生量が有意に増加していた。IL-8は感染や炎症における重要なメディエーターであり、TNFαはアレルギー反応や慢性炎症などに直接的に関連する炎症性サイトカインである。IL-1βは皮膚に好酸球を誘導することが知られている。本研究結果より、無機ヒ素の曝露が好酸球、樹状細胞および角化細胞のサイトカイン産生に直接影響を及ぼす事が証明された。現在、in vitroの結果を検証すべく、マウスモデルを用いた検討を実施中である。

  • 曺 永晩, 水田 保子, 赤木 純一, 井手 鉄哉, 安達 玲子, 為広 紀正, 木村 美恵, 近藤 一成, 小川 久美子
    セッションID: P-144
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
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    【背景・目的】小麦タンパク質加水分解物を含む洗顔石鹸による重篤な小麦アレルギーの発症事例が多数報告され、腸管感作により発症すると考えられてきた食物アレルギーについて、経皮感作の重要性が明らかになりつつある。当所では即時型アレルギー誘発経皮感作性試験法を開発し、タンパク質加水分解物を含む様々な化学物質による経皮感作について、解析を進めている。本研究では、既存の試験法に改良を加え、経皮感作及び経口惹起によるマウス食物アレルギーモデルの開発を試みた。

    【材料と方法】BALB/cマウス(8週齢雌)の背部を剃毛し、パッチテスターを用いて溶媒に500 µg オボアルブミン(OVA)を加えた懸濁液をマウス皮膚に貼付した(3日間連続貼付/週×4週)。その1週後、50 mg OVAを4回/1週 (OVA-pc-4群)又は7回/2週(OVA-pc-7群)強制経口投与し、血中のOVA特異的抗体価を測定した。その1週間後、100 mg OVA強制経口投与によるアナフィラキシー反応惹起、下痢スコア測定ならびに、皮膚、脾臓、リンパ節及び消化管の病理組織学的解析を行った。又、対照群として、皮膚感作の代わりに120 µg OVAを2回/2週腹腔内投与する群 (OVA-ip群)及び溶媒を貼付する群 (PBS-pc群)を設けた。

    【結果及び考察】OVA-pc-4群及びOVA-pc-7群では感作後のIgG1及びIgE抗体価上昇が、OVA-ip群ではIgG1抗体価上昇が認められた。OVA-ip群及びOVA-pc-7群ではOVAの強制経口投与による惹起30分後の直腸温度に低下傾向が見られ、下痢スコアがPBS-pc群に比べ有意に上昇した。これらの結果から、本モデルは経皮感作及び経口惹起による食物アレルゲンの探索に有用なモデルとなりうると考えられた。アジュバント作用を効果的に探索するためには、感作及び惹起時のOVA濃度並び強制経口回数などについて、更なる最適化の検討が必要と考えられた。病理組織学的解析結果を加えて報告する予定である。

  • 平澤 由貴, 藤原 淳, 田畑 一也, 吉田 賢二, 根釜 務, 佐藤 伸一
    セッションID: P-145
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/10
    会議録・要旨集 フリー

    敗血症は,感染症による全身性炎症反応症候群であり,炎症性サイトカインの過剰産生状態(サイトカインストーム)と考えられる.また,敗血症では高率にDICを合併すると言われ,DICによるサイトカインの変動を知ることは,動物モデルのヒトへの外挿性や治療薬による薬効を確認するために有用な情報が得られる.そこで本研究では,敗血症によるサイトカインストームのプロファイリングを目的とし,Lipopolysaccharide(LPS)誘発DICカニクイザルモデルにおけるサイトカイン類の変動を調べた.

    カニクイザルの尾静脈から,LPS(2.4 mg/kg)を2時間かけて静脈内持続投与し,投与前,投与後2,4及び6時間に血清を採取し,サイトカイン類23項目をLuminexで測定した.また,超高感度オートELISA Simoa HD-1の有用性を検証する為に,ヒト用測定キットで交差反応性を示したIL-6を測定しLuminexの測定値と比較した.

    その結果,DICでのサイトカインストームでは炎症性サイトカインのIL-6,IL-8,TNF-α,抗炎症性サイトカインのIL-10が顕著に上昇した.また,IL-1ra,IL-2,IL-5,IL-6,IL-15,IL-18及びIFN-γは持続的に上昇したが,IL-10,TNFα,IL-17A,MIP-1a及びMIP-1βは一過性に上昇した後,血中からの消失が早かった.SimoaによるIL-6の値は,Luminexより低値であったが同様の変動を示し,Luminexよりも100倍高希釈倍率での測定が可能であったことから,微量の試料で高感度に測定できることが検証された.

    以上の通り,LPS誘発DICカニクイザルモデルを用いてサイトカインストームのプロファイルを解明できた.今回実施したサルでのサイトカインストーム測定法は,一部の抗体医薬品やCAR-T細胞治療等で重篤な副作用として危惧されるサイトカインストーム発生のリスク評価にも有用であると示唆された.

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