-
宗 才, 岩間 聖, 山村 征寛, 漆谷 真, 櫻井 敏博, 市原 佐保子, 大迫 誠一郎, 市原 学
セッションID: P-1E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
[Background] Acrylamide exhibits neurotoxicity in humans and experimental animals. Our previous study revealed that exposure to acrylamide induced specific decrease in norepinephrine level and density of noradrenergic axons in rat brain, although the underling mechanism remains obscure. This study aims to investigate role of microglia and autophagy pathway in neurotoxicity of acrylamide. [Methods] In vivo: Six groups (n=3) of C57BL/6J mice were exposed to single dose of acrylamide by oral gavage at 20 mg/kg BW or vehicle, and were perfused through ascending aorta 1, 3, or 6 h after exposure. Induction of autophagy was investigated by immunostaining of LC3B. In vitro: CATH.a catecholaminergic neuronal cells or BV-2 microglial cells were mono-cultured or co-cultured through directly mixing or using insert, and then exposed to acrylamide (0, 0.1, 0.5, 1, 2 mM; 24 h). Cell viability, cytotoxicity, ATP production, caspase-3/7 activity, apoptosis, and expression of autophagy marker LC3B were measured. [Results] LC3B positive neuronal cell bodies were observed in the cerebellum of mice brain, at 1 or 3 hrs after acrylamide exposure. Exposure to acrylamide at 2mM significantly decreased cell viability and ATP production in CATH.a neuronal cells, although LDH release was not changed. Exposure to acrylamide at 1 or 2 mM significantly decreased caspase-3/7 activity in CATH.a cells. Caspase-3/7 activity was dose-dependently increased in CATH.a cells by autophagy inhibitor chloroquine. However, the ratio of LC3-II/LC3-I showed no change in CATH.a cells after acrylamide exposure. Exposure to acrylamide at 2 mM also decreased cell viability, and increased LDH release and caspase-3/7 activity, in BV-2 microglial cells. Moreover, acrylamide exposure at 1 mM, significantly decreased cell viability, and increased LDH release. [Conclusion] Compared to mono-culture, co-culture of CATH.a neuronal cells with BV-2 microglial cells may exacerbate the cytotoxicity of acrylamide. The in vivo results also suggested involvement of autophagy in neurotoxicity of acrylamide, but further studies are needed to reveal it.
抄録全体を表示
-
平尾 雅代, 竹田 修三, 奥田 勝博, 瀧口 益史, 吉原 新一
セッションID: P-2E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【目的】ポリカーボネートやエポキシ樹脂の原料として汎用されてきたビスフェノールA(BPA)であるが、内分泌かく乱物質としてその負の生体影響が懸念されている。BPAはエストロゲン作用を示すが、in vitroでは環境レベルを超える高濃度のBPAが必要とされることから、in vivoでみられるBPAによるエストロゲン作用が説明できないという問題があった。ごく最近、我々はBPAの代謝物であるMBP (4-methyl-2,4-bis(4-hydroxyphenyl)pent-1-ene)がBPAよりも極めて低濃度でエストロゲン受容体(ER)陽性の乳がん細胞の増殖を促進することを見出した (Hirao-Suzuki et al., Mol. Pharmacol., 95: 260-268, 2019)。本研究では、MBPの親化合物のBPAと比較することにより、MBP によるER陽性乳がん細胞の増殖促進機構を明らかにすることを目的とした。
【方法】ヒトのER陽性乳がん細胞であるMCF-7細胞を用いて、MTSアッセイ、ルシフェラーゼアッセイ、リアルタイムPCRおよびウエスタンブロッティングを行った。
【結果および考察】BPA およびMBPは細胞増殖およびエストロゲン応答配列(ERE)の活性化を指標とした転写を促進し、その強さはMBP > BPAであった。1nMのMBPはEREに作用する主なサブタイプであるERαのmRNA/タンパク質発現を有意に抑制した。一方、1nMのBPAはERαの発現に影響を与えなかった。MBPはERαの発現を抑制したにもかかわらず、ER/EREを介した転写を活性化していたことから、MBPはERαではなくERβを介して転写を活性化することが示唆された。そこで、MBPとERβの選択的アンタゴニスト(PHTPP)を共処理し、転写活性および細胞増殖を解析した。その結果、MBP誘導性の転写活性および細胞増殖はPHTPPにより抑制された。本研究により、MBPによるER陽性乳がん細胞の増殖促進機構は、親化合物であるBPAとは異なり、ERαの発現を抑制し、顕在化したERβの活性化を介することが明らかとなった。
抄録全体を表示
-
山城 海渡, 緒方 文彦, 中村 武浩, 川﨑 直人
セッションID: P-3S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【目的】日本における水道水中の鉛イオンは,水道管が主原因である。水道局の調査では,配管・給水管のすべてに鉛管が用いられている場合,鉛イオン濃度は24時間後に1.65mg/Lになったと報告している。鉛イオンは,脳炎や腎障害を起こし,特に子供の知能低下を引き起こす。これまでに,種々の吸着剤による鉛イオンの除去に関する報告を行ってきたが,本研究では,廃棄物の有効利用と開発途上国での適用を目指し,コーヒー豆かすによる鉛イオンの除去性能を明らかにするため,起源や産地の異なるコーヒー豆かすを用いて検討した。
【方法】鉛イオンの吸着実験は,異なる濃度の鉛イオン溶液中に,吸着剤0.01g添加し,24時間後の鉛イオン濃度を測定し,初濃度と平衡濃度との差から吸着量を算出した。コーヒー豆かすは産地や起源の異なる5種類を用いた。なお,コーヒー豆かすを脱脂処理,煮沸処理,除タンパク質処理,1もしくは5%過塩素酸処理したコーヒー豆かすによる鉛イオン除去率を測定した。なお,鉛イオン濃度は,走査型鉛測定器(HACH社製)を用いて測定した。
【結果・考察】鉛イオンの吸着量は,産地や起源により違いが認められなかった。コーヒー豆かすの成分中で,鉛イオンの除去に寄与している成分を明らかにするため,コーヒー豆かすを脱脂処理,煮沸処理,除タンパク質処理,1または5%過塩素酸処理した吸着剤による鉛イオン除去率を測定した。その結果,除タンパク質処理により除去率がほぼゼロとなり,また過塩素酸の濃度を高くすることで,鉛イオンの除去率が低くなったことから,コーヒー豆かす中のタンパク質が鉛イオンの除去に関与していることがわかった。以上の結果より,食品廃棄物としてのコーヒー豆かすは,水道水中の鉛イオンを高効率除去でき,循環型社会の構築ならびに安全な飲料水の供給に寄与できる素材となりうることが明らかになった。
抄録全体を表示
-
黒澤 航軌, 山川 寛人, 安孫子 ユミ, 熊谷 嘉人
セッションID: P-4S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【目的】環境曝露の総体を対象とするエクスポソーム研究は,環境要因と疾患の関係を明らかにするために重要とされ,近年注目されている。我々は,環境中化学物質の中でも反応性が高く,システイン残基のような生体内の求核置換基に共有結合する性質を有する親電子物質に着目し,当該物質の複合曝露による影響を明らかにすることを目指している (親電子物質エクスポソーム)。先行研究において,1,2-ナフトキノン (1,2-NQ) がタンパク質チロシン脱リン酸化酵素 PTP1Bのシステイン残基を修飾し,本酵素活性を阻害することで上皮成長因子受容体 (EGFR) が活性化することを報告した。本研究では,A431細胞を用いて1,2-NQの異性体である1,4-NQ曝露による1)PTP1B-EGFRシグナルおよびその下流キナーゼであるERK1/2の活性化,2)1,2-NQとの複合曝露による当該シグナルの相加/相乗的な活性化の有無を調べた。
【方法】環境中親電子物質:1,2-NQおよび1,4-NQを用いた。細胞:ヒト上皮癌細胞株A431を用いた。シグナル伝達の活性化:ウエスタンブロット法によって検出した。PTP活性:pNPP法で測定した。
【結果および考察】A431細胞を1,4-NQに個別曝露すると,25 µMからEGFRのリン酸化およびERK1/2のリン酸化亢進がそれぞれ認められた。EGFRのリン酸化が認められなかった10 µMの1,4-NQと1,2-NQとを複合曝露すると,1,2-NQによるEGFR-ERK1/2シグナルが,1,2-NQの個別曝露よりも低い濃度域から活性化した。本結果と一致して,細胞内PTPs活性も複合曝露では相加的に低下した。以上より,1,4-NQもPTP1B-EGFRシグナルを活性化することが明らかとなった。さらに,1,4-NQ曝露による当該シグナルの活性化は,1,2-NQとの複合曝露により亢進した。個別曝露で影響が見られない濃度域においても複合曝露で影響が生じることは,環境中親電子物質エクスポソーム研究の必要性を示唆している。本発表では,1,4-NQ曝露で観察されるPTP1B-EGFRシグナルおよびERK1/2シグナル活性化に対する,メチル水銀,カドミウムあるいはクロトンアルデヒドのような環境中親電子物質との複合曝露効果についても報告する。
抄録全体を表示
-
片倉 明日香, 吉川 綾乃, 伊是名 皆人, 石坂 真知子, 中野 和彦, 伊藤 彰英, 松井 久実, 関本 征史
セッションID: P-5S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【背景】近年、都市部の河川において MRI 造影剤に使用されている希土類元素ガドリニウム(Gd)の濃度が増加している。しかし、Gd および Gd 含有医薬品の水生生物に対する毒性は明らかとなっていない。我々は先行研究において、Gd や Gd 含有医薬品がアフリカツメガエル肝由来 A8 細胞で特徴的な遺伝子発現変動パターンを示すことを見いだした。特に芳香族炭化水素受容体(AhR)標的遺伝子である CYP1A7 と男性ホルモン受容体の発現増加が観察されたことから、内分泌攪乱作用を持つ可能性が示唆された。本研究では、これら機構を明らかとするために、種々転写因子のモニタリング細胞を作成し、Gd 含有医薬品が及ぼす影響を評価した。【方法】アフリカツメガエル肝由来 A8 細胞に対して、転写因子である NF-κB、p53、AP-1 および AhR の結合配列を含むルシフェラーゼレポータープラスミドをそれぞれ安定導入した細胞を作製した。これら細胞に対して、GdCl₂および Gd 含有医薬品(Gd-DOTA、Gd-DTPA および Gd-DTPA-BMA)を最高濃度 100 µM で 6 時間処理した。処理後、各転写因子の活性化をルシフェラーゼアッセイにより評価した。
【結果および考察】GdCl₂、Gd 含有医薬品はいずれも調べた転写因子を活性化しなかった。既知の AhR 活性化物質である 3-methylcholanthrene(MC)による顕著な AhR 活性化が認められたことから、GdCl₂及び Gd 含有医薬品は AhR を活性化せずに CYP1A7 遺伝子を誘導している可能性が示唆された。現在、アンドロゲンやエストロゲン、甲状腺ホルモンなどのモニタリング細胞の作成を進めている。また、サンプリングした環境水がこれら転写因子の活性化に及ぼす影響についても評価している。学会では、これらの結果と合わせて紹介したい。
抄録全体を表示
-
堀池 隼雄, 油井 拓哉, 島村 裕子, 増田 修一
セッションID: P-6S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【背景・目的】食環境中には、病原性細菌等の生物学的リスク因子および有害化学物質等の化学的リスク因子が共存していることから、両者が共存した際のリスクを評価する必要がある。しかし、両リスク因子の複合暴露による各毒性発現の変動については明らかになっていない。そこで、本研究では、病原性細菌および化学物質の複合暴露による生物学的毒性の変動・影響について解析した。
【方法】エタノール、グリシドール等の7種類の化学物質を添加したBHI培地でStaphylococcus aureus No.29 (No.29株) を培養し、毒素 (SEA) 産生に及ぼす影響についてWestern blotを用いて解析した。また、リアルタイムRT-PCRを用いて、SEA遺伝子 (sea) および病原因子であるRNAIII、icaAおよびhlb の発現量を調べた。さらに、これら病原因子が化学物質の変異原性に与える影響を明らかにするために、アジ化ナトリウム等の変異原物質にS. aureusの培養上清を加え、Salmonella typhimurium TA98株およびTA100株 (±S9mix) によるエームス試験を行った。
【結果と考察】化学物質暴露後のNo.29株におけるSEA産生量およびその遺伝子発現量を調べたところ、エタノール (1.0% (v/v)) およびグリシドール (100 mM) の暴露により、SEA産生およびSEA遺伝子の発現量が有意に増加した。また、これら化学物質の暴露により、S. aureusの病原因子であるRNAIII、icaAおよびhlbの発現量が増加した。エームス試験の結果、TA100株 (-S9mix) において、アジ化ナトリウムにNo.29株の培養上清の3kDa以上の画分を添加したところ、復帰突然変異コロニー数が増加する傾向が認められた。これらの結果より、化学物質と病原性細菌の複合暴露により、生物学的毒性が変動することが示唆された。
抄録全体を表示
-
武田 和己, 石田 慶士, 竹原 有希, 太田 茂, 古武 弥一郎
セッションID: P-7E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【目的】メチル水銀 (MeHg) は慢性的に曝露されることにより中枢神経系に選択的な毒性を示すことが知られている。しかしながら、そのメカニズムとしてグルタミン酸受容体の関与が報告されているものの、詳細な機構は明らかになっていない。そこで我々は、グルタミン酸受容体の一つであるAMPA受容体に着目し、メチル水銀曝露によるAMPA受容体サブユニット発現への影響を検討した。
【方法】実験には胎生18日齢のラット (Slc : Wistar/ST) より調製した初代大脳皮質神経細胞を用いた。細胞は培養1日目にAra-Cを曝露しグリア細胞を死滅させ、MeHgを0–300 nMの濃度で7日間曝露し、7日目における細胞生存率およびGluA1-4タンパク質の発現変動を評価した。さらに、MeHg 100 nMを1-7日間曝露し、GluA2タンパク質の経時的な変化を評価した。また、6週齢の生体ラットに対してMeHgを0、1、5 mg/kgの濃度で10日間反復投与し、大脳皮質、小脳、海馬、線条体におけるGluA2タンパク質の発現量を評価した。
【結果・考察】100 nM以上のMeHg曝露によりGluA2タンパク質の有意な発現減少が認められた。さらに、その発現減少に伴い、細胞生存率の低下が認められた。また、MeHg曝露はGluA2以外のサブユニットの発現量には影響を及ぼさなかった。また、実際のAMPA受容体の機能に影響を与える細胞膜上のGluA2タンパク質の発現を検討したところ、MeHg曝露により発現量の低下が認められた。また、in vivoにおいても同様の結果が認められるかを評価したところ、1 mg/kg MeHg経口投与により大脳皮質および小脳においてGluA2タンパク質の発現減少が認められた。定常状態におけるAMPA 受容体へのCa²+流入をブロックしているGluA2の発現が減少することで、神経細胞へのCa²+流入が増大し神経細胞死が惹起されると考えられる。以上の結果より、in vitro、in vivoの両方において、長期的なMeHg曝露によりGluA2発現量が減少し、神経毒性を引き起こす可能性が明らかとなった。
抄録全体を表示
-
石田 慶士, 中西 剛, 太田 茂, 古武 弥一郎
セッションID: P-8E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【目的】船底塗料として使用されてきたトリブチルスズ (TBT) は海洋生物に対する内分泌かく乱作用が報告されて以降使用が制限されているが、未だに魚介類や海底堆積物から検出される。我々はこれまでにTBT が AMPA 型グルタミン酸受容体 GluA2 サブユニットの発現を減少させ、神経細胞を脆弱化することを明らかにしている。本研究ではGluA2 の発現を制御する転写因子NRF-1に着目し、TBTのNRF-1活性に対する影響ならびにNRF-1活性低下に伴う毒性影響を評価した。
【方法】胎生18日齢Wistarラットより調製した大脳皮質初代神経細胞に 20 nM TBTを曝露し、NRF-1に対する影響を評価した。また、Doxycycline (Dox) 添加により NRF-1がknockdown (KD)されるshNRF-1/293T細胞を作製しNRF-1活性低下に伴う毒性影響を評価した。mRNAおよびタンパク質発現量はリアルタイムPCRおよびウエスタンブロットにより測定した。NRF-1 転写活性はChIPアッセイとゲルシフトアッセイにより評価した。リソソーム活性は[14C]-Valineでラベルした長寿命タンパク質の分解率をもとに算出した。
【結果および考察】TBT 曝露により初代神経細胞におけるNRF-1 mRNA およびタンパク質発現量の減少とNRF-1転写活性の低下が認められた。また、リソソーム膜タンパク質であるLAMP1抗体を用いた免疫染色を行ったところ、TBT曝露により神経細胞のLAMP1発現量の増加が観察された。また、NRF-1 をKDしたshNRF-1/293T細胞においても同様にLAMP1発現量およびリソソーム数の増加が認められ、同時にリソソーム関連遺伝子のmRNA発現上昇が認められた。一方で、NRF-1 KD によりリソソーム活性の低下が認められた。NRF-1 発現低下によりリソソーム機能が低下したことで代償的にリソソーム関連遺伝子の発現誘導が引き起こされたと考えられる。以上の結果よりTBTはNRF-1活性を阻害し、その活性低下はリソソーム機能異常を引き起こすことが示唆された。
抄録全体を表示
-
柏木 裕呂樹, 豊岡 達士, 王 瑞生, 甲田 茂樹
セッションID: P-9E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
現在、幅広い産業で様々な金属および金属化合物(金属類)が利用されているが、その中にはIARC発がん性評価においてヒトに対して発がん性が認められる金属類もあり、それら金属類の取扱労働者への健康影響が懸念されている。一方、金属類の発がん機構は不明な点が多い。発がん初期ステップとしてDNA損傷生成は重要であるが、金属類のDNA損傷性に関する報告は限定的である。そこで本研究ではまず、ヒト肺細胞モデルA549にCr、Ni、Be、Cd等、11種類の金属類(金属塩化物等)を細胞生存率に影響しない濃度で作用し、リン酸化ヒストンH2AX (γH2AX)を指標にこれらのDNA損傷性を検証した。その結果、金属類のγH2AX 誘導は3パターンに大別出来ることが判明した。この結果で注目すべきは、γH2AXを明確に誘導したCr及びCdは、IARC発がん性分類においてGroup 1であり、DNA損傷性が強いのも頷ける結果であったが、未処理細胞でも代謝・呼吸等により誘導されるγH2AXを顕著に減少させた金属類には、同じくGroup 1であるBe及びNiが含まれていた点である。我々は、このγH2AX誘導の抑制作用が当該金属類の発がん機構の一部として重要ではないかと考え、本研究では、Beを中心にさらなる検討を行った。
Etoposide等のDNA損傷剤とBeを共作用したところ、損傷剤によって誘導されるγH2AXもBeにより顕著に抑制された。なお、損傷剤により生成されるDNA損傷量は、Beの存在下でも減少しないことは確認している。この結果は、Beが細胞の正常なDNA損傷応答を阻害していることを示唆している。次に、Beの遺伝子変異誘発能を確認したところ、既存報告通り、Beは変異原性を示した。一方、驚くことに、DNA損傷剤とBeの共作用では、BeがDNA損傷剤による遺伝子変異を増強した。
以上の結果より、BeをはじめγH2AX誘導を抑制する金属類は、正常なDNA損傷応答を阻害することで遺伝子変異リスクを上昇させているのではないかと推測される。本研究で得られた知見は、特定金属類の発がん機構の部分的解明になりうるのではないかと考えている。
抄録全体を表示
-
小野田 淳人, 武田 健, 梅澤 雅和
セッションID: P-11E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【背景・目的】大気中に浮遊するPM2.5の超微小画分であるナノ粒子の胎仔期曝露は、自閉症などの神経発達障害の発症率を増加させることが、疫学研究によって明らかになっている。本研究はナノ粒子の低用量胎仔期曝露によって脳内に生じる病変の検出とその病変が誘導される機序の解明を目的として行った。
【方法】大気中ナノ粒子のモデルとして用いられるカーボンブラックナノ粒子 (CB-NP) を妊娠5, 9日目のICRマウスに経気道投与 (3 ~ 95 µg/kg) し、6, 12週齢仔から脳を摘出した。組織学的解析により脳全域を網羅的に観察し、検出された異常部をin situ 赤外スペクトル法やタンパク質発現解析を用いて評価した。
【結果】脳内の異常タンパク質除去を担う脳血管周囲マクロファージ (PVM) の消化顆粒の肥大化と正常細胞数のびまん的な減少が、CB-NP胎仔期曝露によって引き起こされた。その変性したPVMに接するアストロサイトにおいて、GFAPとAQP4の曝露量依存的な亢進が認められ、CB-NP胎仔期曝露は脳血管周辺に存在するアストロサイトの過剰活性 (アストログリオーシス) を誘導することが示された。in situ 赤外スペクトル分析により脳血管周辺を比較解析した結果、アストログリオーシスやPVMの変性が誘導された脳血管周辺においてのみ、タンパク質の変性を示すスペクトルシフトが認められた。更に、そのシフトの生じた脳血管周辺に存在するアストロサイトとPVMにおいて、変性タンパク質の蓄積に応答し、アストログリオーシスや細胞死の原因となる小胞体ストレスマーカーATF6とCHOPの亢進が確認された。
【考察・結論】低用量のCB-NP胎仔期曝露により、正常形態PVMの減少と脳血管周囲におけるアストログリオーシスが誘導された。この脳血管周囲病変部では、タンパク質の変性を示すスペクトルシフトと小胞体ストレスの亢進が認められた。以上の結果から、CB-NP胎仔期曝露により鋭敏かつ持続的に起こる脳血管周囲病変は、変性タンパク質の脳血管周辺への集積に起因する可能性が示された。
抄録全体を表示
-
遠藤 広貴, 藤江 智也, 山本 千夏, 鍜冶 利幸
セッションID: P-12S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【背景・目的】メタロチオネイン(MT)は,重金属の毒性軽減などに寄与する生体防御タンパク質であり,その誘導にはMT遺伝子のプロモーター領域に存在する金属応答配列に,亜鉛イオンによって活性化された転写因子MTF-1が結合することが不可欠である。血管内腔を一層に覆う内皮細胞はMT誘導能を有するが,無機亜鉛による誘導が起こらない。ところで,活性イオウ分子(RSS)は生体内に高いレベルで存在しており,特性が亜鉛プールの条件と一致することから,その機能の解明は内皮細胞における亜鉛代謝の理解に重要である。本研究の目的は,内皮細胞MTを誘導するジチオカルバメート銅錯体Cu10を活用し,内皮細胞MT誘導へのRSS産生酵素の関与を明らかにすることである。【方法】ウシ大動脈内皮細胞へのRSS産生酵素(CBS,CSE,3MSTおよびCARS2)siRNAの導入はリポフェクション法,MTタンパク質はウエスタンブロット法,MTサブアイソフォーム(MT-1A,MT-1EおよびMT-2A)遺伝子発現は定量的PCR法にて解析した。プロモーター活性はluciferase assayにて評価した。【結果・考察】内皮細胞において,Cu10によるMTタンパク質の発現上昇はRSS産生酵素を発現抑制することでいずれも減弱した。一方,Cu10によるMT mRNAの発現上昇はCARS2の発現抑制の影響を受けず,CBS,CSEおよび3MSTの発現抑制により増強し,なかでもCBSの発現抑制で顕著な増強が観察された。また,Cu10によるMT誘導に関与するARE経路の活性化はCBSを発現抑制することで増強したが,このとき,Nrf2の活性化は減弱した。以上より,CBSはRSSの産生誘導による亜鉛イオンの捕捉やNrf2以外の転写因子によるARE活性化の抑制によってMT mRNA発現を抑制することが示唆される。
抄録全体を表示
-
佐伯 文聡, 原 崇人, 根岸 雄一, 山本 千夏, 鍜冶 利幸
セッションID: P-13S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【背景・目的】グルタチオン保護金クラスターAu18(SG)25(AuSG)は分子内の極性が小さく,無機金属とは異なる特性を有する。プロテオグリカン(PGs)はコアタンパク質にグリコサミノグリカン糖鎖が結合した複合糖質であり,血管内皮細胞層の修復や抗血栓特性に重要に寄与する。当研究室は,カドミウムや鉛などの求電子性物質が内皮細胞のPG合成に細胞密度依存的に影響することを報告しているが,求電子性を持たない金属化合物によるPG合成については未だ明らかとなっていない。本研究では,AuSGが細胞密度の異なる内皮細胞のPG合成に及ぼす影響を検討した。【方法】コンフルエント(Dense culture)および1×104 cells/cm2に播種し24時間後(Sparse culture)のウシ大動脈内皮細胞にAuSGを処理した。[35S]硫酸標識PGs量はCPC沈殿法,タンパク質発現はWestern blot法,mRNA発現は定量的RT-PCR法にて解析した。細胞内における金の蓄積量はICP-MSを用いて測定した。【結果・考察】AuSGは内皮細胞に対して細胞傷害性を示さず,細胞密度が低いほど細胞内における金の蓄積量が増加することが示された。各細胞密度の内皮細胞にAuSGを処理し,細胞層および培地中における[35S]硫酸標識PG量を測定したところ,Sparse cultureにおいてのみPG蓄積量の減少が認められた。このとき,内皮細胞が合成する主要PG分子種パールカンおよびビグリカンの発現がAuSGの処理濃度および時間依存的に共に抑制された。そこで,細胞密度により発現量が変動することが知られる多機能分子Arf6を抑制した内皮細胞にAuSGを処理したところ,細胞内への金蓄積量の顕著な変動は認められなかったが,パールカンとビグリカンの発現抑制の回復が認められた。以上より,AuSGは細胞密度によって細胞内へ取り込まれる量が異なり,細胞密度の低い内皮細胞においてはArf6が関与してパールカンとビグリカンの発現が抑制されることが示唆された。
抄録全体を表示
-
信清 拓海, 森 光弘, 藤江 智也, 原 崇人, 鍜冶 利幸, 山本 千夏
セッションID: P-14S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【背景】内皮細胞は血液と直接接している唯一のcell typeであり,血液の凝固・線溶活性など多岐にわたって血管機能を調節している。血管平滑筋細胞は,その増殖・遊走活性の亢進が血管病変進展の主要因とされている。血管病変の進展には,それぞれの細胞の増殖が大きく影響しているが,そのメカニズムは未解明な点が多く存在する。最近,内皮細胞増殖を促進する亜鉛錯体zinc(Ⅱ)(2,9-dimethyl-1,10-phenanthroline)(Zn-DMP)を見出した。本研究では,Zn-DMPの内皮細胞増殖に対するcell type選択性および構造活性相関を解析した。【方法】ウシ大動脈内皮細胞および血管平滑筋細胞を10,000 cells/cm2で播種し24時間培養して(sparse culture),Zn-DMPおよび金属置換体で24時間処理した。処理終了3時間前に[3H]thymidineで標識し,酸不溶性画分への放射活性によって増殖活性を評価した。【結果および考察】Zn-DMP処理によって,sparse cultureの内皮細胞の増殖促進が認められた。無機亜鉛による増殖促進作用はZn-DMPに比べ弱かったが,配位子DMPでは消失していた。Zn-DMPのFe置換体Fe-DMPの処理では,同様の増殖促進作用が認められたが,Co, Ni, Mn, HgおよびPb置換体では消失した。CuおよびCd置換体では細胞傷害が認められた。一方,血管平滑筋細胞ではZn-DMPの増殖促進作用は認められなかった。無機亜鉛,配位子DMPおよびZn-DMPの金属置換体においても血管平滑筋細胞の増殖促進活性は認められなかった。以上より,Zn-DMPは内皮細胞選択的に増殖を促進する亜鉛錯体であり,その増殖活性には亜鉛と配位子DMPが錯体を形成することおよび中心金属として亜鉛あるいは鉄を要求することが示唆される。
抄録全体を表示
-
市川 貴之, 長谷川 貴, 外山 喬士, 永沼 章, 黄 基旭
セッションID: P-15S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【目的】最近我々は、メチル水銀投与マウスの脳内で炎症性サイトカインの1種であるoncostatin M(OSM)が発現誘導されることを見出した。また培養細胞での検討により、細胞外に放出されたOSMが細胞膜上の受容体に結合することでメチル水銀毒性発現に関与することが示唆されている。そこで本研究では、ヒト胎児腎由来のHEK293細胞を用いて、メチル水銀毒性増強作用を示すOSMの増加に関わる分子機構の解明を目指した。
【結果・考察】HEK293細胞をメチル水銀で処理することでOSM mRNAおよび細胞外OSM蛋白質のレベルがそれぞれ増加した。そこで、転写阻害剤であるアクチノマイシンD で細胞を前処理したところ、メチル水銀によるOSM mRNAレベルの増加は完全に抑制されたが、細胞外OSM蛋白質レベルの増加は約50%程度までしか低下しなかった。このことから、メチル水銀によるOSMレベルの増加には、OSM遺伝子の転写促進に加えて、同程度の割合で別の機構が関与する可能性が示唆された。以前我々は、メチル水銀がOSMの105番システイン残基と結合することを見出した。メチル水銀が結合したシステインはメチオニンと類似した化学構造となる。そこで、105番システイン残基をメチオニンに置換(OSM-C105M)した変異OSMを作製したところ、ベースでの蛋白質レベルが野生型OSMと比較し約2.5倍高く、翻訳阻害剤存在下での経時的なレベルの低下も著しく遅延された。またリソソーム阻害剤またはプロテアソーム阻害剤の処理によって野生型OSMレベルは増加したのに対し、変異OSM-C105Mはプロテアソーム阻害剤で処理してもそのレベルはほとんど変動しなかった。以上から、メチル水銀はOSM遺伝子の転写促進と、OSM蛋白質への直接結合によるプロテアソームでの分解抑制を介してOSMレベルを増加させることで自身の細胞毒性を増強していることが示唆された。
抄録全体を表示
-
角田 洋平, 外山 喬士, 星 尚志, 永沼 章, 黄 基旭
セッションID: P-16S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【目的】我々は、メチル水銀毒性発現に関わる受容体としてTNFR3(TNF受容体3)を見出した。TNFR3は、メチル水銀が多く蓄積される肝臓や腎臓よりもマウス脳内の神経細胞で高く発現していた。また、TNFR3アンタゴニストのマウス脳内投与によってメチル水銀による神経細胞死が抑制されたことから、TNFR3はメチル水銀が惹起する神経細胞死に関与することが個体レベルでも示唆されている。本研究では、マウス神経幹細胞 (C17.2細胞) を用いて、メチル水銀によるTNFR3を介した細胞死誘導機構の解明を目指した。
【結果・考察】TNFR3ノックダウンがC17.2細胞にメチル水銀耐性を与えたことから、本細胞においてTNFR3がメチル水銀毒性発現に関わることが認められた。TNFR3がリガンドによって活性化されると、その下流でc-jun N-terminal kinase(JNK)や転写因子RelBの活性化、または、ミトコンドリア障害が惹起される。そこで、メチル水銀がTNFR3の下流に与える影響を検討した結果、メチル水銀処理によって認められたRelBの活性化はTNFR3をノックダウンしても依然として認められた。なお、同条件下においてJNKの活性化は認められなかった。一方、メチル水銀処理によってミトコンドリア膜電位の低下が認められ(ミトコンドリア障害の惹起)、この低下はTNFR3ノックダウンによって抑制された。また、ミトコンドリアから産生された活性酸素種を特異的に消去するMito-TEMPOの前処理によって、メチル水銀が惹起したミトコンドリア膜電位の低下及び細胞死がともに抑制された。さらに、Mito-TEMPOのメチル水銀毒性軽減作用はTNFR3ノックダウン細胞ではほとんど認められなかった。以上のことから、メチル水銀はTNFR3を介してミトコンドリア障害を惹起することで細胞死を誘導していることが示唆された。
抄録全体を表示
-
山本 勝也, 椿原 伊織, 青木 明, 井戸 章子, 永瀬 久光, 中西 剛
セッションID: P-17S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【目的】α1-酸性糖タンパク質に代表されるリポカリン分子は、レチノイド類をはじめとする生体内外の化学物質と結合し、その体内動態・作用発現に影響を与えることが知られている。リポカリン分子であるComplement Component 8 gamma (C8γ)は、肝臓で高発現するという特徴を有する一方で、補体構成成分であるにも関わらず補体免疫には直接的に関与しないなど、生理学的意義は全く不明である。そこで本検討では、C8γのリポカリン構造に着目し、C8γと結合する物質の探索及び、その毒性発現に与える影響について検討を行った。
【方法】C8γタンパク質と化学物質の結合性評価は、過去に結合性が報告されている9-cisレチノイン酸(9cRA)および、9cRAの受容体であるレチノイドX受容体に対してリガンド作用をもつトリフェニルスズ(TPT)の各放射標識体を用いて検討を行った。TPTの毒性試験は、8週齢オスの野生型マウス(WT)および、C8γノックアウトマウス(KO)に対し、10mg/kg/dayの用量で14日間の反復経口投与を行った。14日目の投与後に24時間の絶食を行い、その後剖検を行った。各臓器のmRNA発現量はReal-time RT-PCR法により定量した。
【結果】C8γタンパク質は既報に反し、9cRAとは結合性を示さなかった一方、TPTとは良好な結合性を示した。そこでC8γがTPTの毒性発現に何らかの影響を与えるのではないかと考え、TPTをWTおよびKOに反復投与した。剖検の結果、TPTは脂肪蓄積を伴う肝臓の肥大化を誘導するが、この影響がWTよりもKOにおいてより強く表れる傾向が認められた。またこの結果を反映して、TPT投与時の肝臓における脂肪分化関連遺伝子(CD36およびaP2)の発現が、WTよりもKOにおいて高い傾向が認められた。以上のことからC8γの欠損は、TPTによって誘導される肝臟の肥大・脂肪化を増強する可能性が示された。
【結論】C8γはTPTと強い結合性を有することから、TPTを肝臓でトラップすることで、肝臓の脂肪化を抑制する可能性が示された。またC8γは結合性を有する化学物質の肝毒性に対し、防御的に働くのかもしれない。
抄録全体を表示
-
木戸口 直弘, 石田 慶士, 花岡 早紀, 斎木 崇史, 太田 茂, 古武 弥一郎
セッションID: P-18S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【目的】有機スズ化合物は生体への影響から使用が規制されているが、現在も海底質から検出されており、その毒性メカニズムの解明は重要である。当研究室では、有機スズ曝露により引き起こされる神経毒性に核呼吸因子(nuclear respiratory factor;NRF)-1が重要な役割を果たすことを明らかにしてきた。NRFは種々の生体必須遺伝子の発現に関与する転写因子群であり、そのファミリーとしてNRF-1とNRF-2(GA-binding protein;GABP)が知られている。GABPに関しては、化学物質の毒性への寄与や詳細な機能は明らかではない。しかし、NRF-1と同様に細胞生存に重要な役割を果たす可能性は十分に考えられるため、本研究では有機スズのGABPに対する影響評価およびGABPの機能解析を行った。【方法】ヒト胎児由来腎臓上皮細胞(HEK293T)にトリフェニルスズ(TPT)を曝露後、細胞質画分と核画分におけるGABPαタンパク質発現量を評価した。ドキシサイクリン(Dox)依存的にGABPαを標的としたshRNAが発現するDNAコンストラクトをHEK293T細胞に導入し、GABPαノックダウン細胞を作製した。GABPαの発現低下が認められるDox添加48時間後の遺伝子発現量をDNAマイクロアレイにより網羅的に解析した。タンパク質発現量はウエスタンブロット法、mRNA発現量はリアルタイムPCR法により評価した。【結果・考察】100 nM TPT 6時間曝露後、核画分においてのみGABPαタンパク質は有意に減少した。これよりTPTはGABPαの核移行を阻害することが示唆された。GABP機能低下時の遺伝子発現変動を探るため行ったマイクロアレイの結果、種々の膜タンパク質関連遺伝子などの発現変動が多く認められたことから、細胞機能に影響を及ぼすGABPの新たな機能の存在が示唆された。また、GABPはROSの産生により核移行が阻害される報告があり、今回の毒性メカニズムもTPTによるROSの産生が関与している可能性が考えられる。今後、本研究により見出した下流遺伝子と推定される遺伝子群を解析していくことで、TPTの毒性メカニズムおよびGABPの新規機能解明の一助となることが期待される。
抄録全体を表示
-
Randy NOVIRSA, Quang Phan DINH, Jeong HUIHO, Satoshi FUKUSHIMA, Yasuhi ...
セッションID: P-19S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
Mercury has become global concern due to its toxicity and capability to bioaccumulate in the food chain mainly in the organic form. Current research has suggested that rice plant also plays significant role in mercury exposure to humans. Accumulation of mercury in rice will be high risk for the people who consume the rice. Ingestion of mercury in a long term may accumulate in the body organs and lead to nervous system damage, developmental disorders, immunological, and endocrine disruption effects. Mercury in environmental media and typical symptoms of mercury intoxication among residents were collected to evaluate rice ingestion exposure and manifestation of toxic effects among inhabitants. Soil and rice paddy (Oryza sativa) samples were collected from rice field around ASGM area in Lebaksitu village, Indonesia. The total mercury (THg) was determined with thermal combustion method by atomic absorption spectrometry. Demographic and toxicity symptoms data were conducted using questionnaires with the assistance of public health officer. Our results showed elevated concentration of mercury in soil and rice around 500 meters from ASGM. Meanwhile, the concentration became sharply decreasing along with increase in distance (>1000 meters from mining site). About 30% of respondents were reported to have mercury toxicity symptoms ranging from mild to severe. There was statistically significant between reported symptoms and living area to the mercury hotspot. Meanwhile, age and length of stay also contribute to the manifestation of symptoms. Respondents with severe symptoms were reported having tremors, salivation, sleep disturbance, and poor appetite. In this study, we also found that daily mercury intake through rice consumption approaching the reference dose, but no significant differences between daily intake and symptoms among respondents. This results suggested that rice is a potential source of mercury exposure to people living around ASGM area who consume the rice as staple food. Ingesting of mercury-contaminated rice has led to severe impact on human health.
抄録全体を表示
-
田村 幸彦, Masud KHAN, 青木 和広
セッションID: P-20
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【目的】メタロチオネイン(MT)は分子量がおよそ6500前後の重金属結合蛋白質のひとつで、哺乳動物では60から70アミノ酸残基で構成される。そのおよそ1/3にあたる20残基がcysteineで、MTは肝臓、腎臓および脳など多くの臓器で発現し、口腔領域でも歯肉や舌で認められている。我々は重金属投与によりin vivoで歯髄においてMTが合成誘導されることをすでに報告したが、本研究では炎症性サイトカインであるInterleukin-6(IL-6)およびTNFα処理後の歯髄細胞におけるMTの生理的意義について検討した。
【方法】ラット歯髄から樹立されたRPC-C2A cellを通法により培養した。コンフルエント後に亜鉛(Zn)およびIL-6、TNFαを添加し、1、3、6、24時間後に細胞形態を観察後、全RNAを抽出した。qRT-PCRによりHprtの遺伝子発現を基準としてdelta-delta Ct法でMT遺伝子発現の経時的変化を観察した。
【結果】ZnおよびIL-6、TNFα添加による歯髄細胞の形態的変化は観察されなかった。qRT-PCRの結果からZnによるMTの遺伝子発現の増加が認められた。カドミウム添加により用量依存的に歯髄細胞の細胞毒性を生じたが、Zn前処理によるMTの誘導によりカドミウム毒性の軽減が示された。一方IL-6処理群はZn処理によるMT遺伝子発現の増加とは経時的に異なる特徴を示した。
【考察】すでに我々は、軟骨細胞においてZnによりMTが誘導され、軟骨細胞における重金属毒性の軽減作用について明らかにした。MTはSH基を多く含むため、活性酸素を含むラジカル消去作用を示すが、本研究ではZnやIL-6により歯髄細胞にMT誘導が確認されたことから、歯髄のMTは重金属に対する解毒作用だけでなく、急性炎症時に誘導されるフリーラジカルの除去作用のあることが示唆された。
抄録全体を表示
-
山田 貴宣, 豊田 武士, 松下 幸平, 森川 朋美, 小川 久美子
セッションID: P-21E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【背景】我々はDNA損傷マーカーであるγ-H2AXが,膀胱発がん性の早期検出に有用であることを報告してきた。一方,γ-H2AX陽性細胞の経時的変化及び発がんへの関与はいまだ明らかでない。また,膀胱腫瘍の増殖及び転移に関与するがん幹細胞マーカー(CSM)としてALDH1A1等が知られているが,膀胱発がん過程における意義に関する情報は乏しい。本研究では,BBN誘発ラット膀胱がんモデルを用いて,膀胱粘膜におけるγ-H2AX及びCSMの発現動態を経時的に解析した。【方法】各群5又は10匹の6週齢,雄性F344ラットに,500 ppm BBNを4週間経口投与した。投与終了時及び2,4,8,16,32週の経過観察後に解剖し,膀胱粘膜上皮の病理組織学的検査及びγ-H2AX,CSM(KRT14・ALDH1A1・CD44),細胞増殖マーカー(Ki67)の免疫組織化学的解析を行った。【結果】病理組織学的検査の結果,投与終了時全例に認められたび漫性単純過形成は休薬後次第に消失するが,休薬後4週以降に限局性単純過形成又は乳頭状/結節状過形成が出現した後,乳頭腫の発生に至る経時的進展を示した。免疫染色では,投与終了時点で膀胱粘膜におけるγ-H2AX形成,各CSM及びKi67発現は有意に増加した。休薬後,正常様粘膜でのγ-H2AX形成及び各CSM発現は減少傾向を示したが,KRT14以外は一貫して対照群より高値を保ち,時折局所的な陽性細胞巣の形成が認められた。増殖性病変では,KRT14,CD44及びKi67発現は単純過形成から乳頭腫への進展に伴い増加した一方,γ-H2AX形成及びALDH1A1発現は周囲の正常様粘膜と同じレベルであった。【結論】BBN休薬後にもγ-H2AX形成及びCSM発現は一貫して高値を示し,発がんリスクの高い膀胱粘膜上皮を検出し得ることが示された。また,増殖性病変の進展に伴う発現動態の差異から,各CSMは膀胱発がん過程において異なる役割を果たす可能性が示唆された。今後,多重免疫蛍光染色により,γ-H2AX形成及び各CSMの関連性を解析する予定である。
抄録全体を表示
-
榎本 初音, 立木 秀尚, 北原 隆志
セッションID: P-22E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【目的】薬物性肝障害(Drug-Induced Liver Injury: DILI)は患者、臨床医及び製薬メーカーにとって関心の高い有害薬物反応であり、予測が困難とされている。臨床上では、アミノトランスフェラーゼ(ALT)上昇をDILIの一つの指標としているが、肝障害の重症度はALT上昇だけでは判断できない。よって、重篤な DILI を引き起こす薬剤とそうでない薬剤を見分けるアプローチが必要と考えられる。我々は、臨床上、比較的高い割合で肝障害を引き起こす薬物8種類(hTOX)と殆ど肝障害が報告されない(non-hTOX)をヒト肝細胞キメラマウスに投与し、重篤なDILI を引き起こす薬剤のみで変動がみられるバイオマーカーの探索を試みた。
【方法】LD50の1/10量のhTOX(テルビナフィン塩酸塩、チクロピジン塩酸塩、アセトアミノフェン、アミオダロン塩酸塩、ベンズブロマロン、バルプロ酸ナトリウム、メトトレキサート、ジクロフェナクナトリウム製剤)及びnon-hTOX(セファレキシン、ソタロール塩酸塩、フルシトシン)をそれぞれ、ヒト肝細胞キメラマウス(PXBマウス®:フェニックスバイオ)に1日1回3日間、経口投与した(各n=3)。最終投与の24時間後にヒト肝臓からtotal RNAを抽出し、マイクロアレイにより、mRNA及びmiRNAについて遺伝子発現解析した。hTOXでのみ遺伝子発現量の比(Fold-Change)が1.5以上増加もしくは0.67以下に減少した遺伝子を抽出し、重篤なDILI を引き起こす薬物バイオマーカーとした。
【結果・結論】8種類のhTOXのうち4種類以上の薬物で変動が確認され、かつnon-hTOXでは変動が見られなかったmiRNAは22種類であり、中でも霊長類得的に発現し、血液中に分泌が確認されるmiRNAはmiR-4306及びmiR-3149であった。この2種類のmiRNAは臨床において、重篤なDILI を引き起こす薬剤のみで変動するバイオマーカーとなる可能性が示唆された。
抄録全体を表示
-
吉野 有香, 藤井 雄太, 吉沢 佑基, 上松 泰明, 中江 文, 圓見 純一郎, 吉岡 芳親, 宮脇 出
セッションID: P-23E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
毒性試験で比較的高頻度に認められる薬剤性脂肪肝は、ヒトでの安全性担保や開発成功確度の見積もりが困難なことから、開発中止の原因となり得る。臨床において脂肪肝の確定診断は長らく病理組織評価に限られてきたが、近年、超音波やComputed Tomographyなど様々なイメージングモダリティを用いた脂肪肝のモニター及び診断が進んでいる。中でも感度・特異度ともに最も高いのはMagnetic Resonance Imaging (MRI)と報告されている。特にMRIの手法の1つである1H-Magnetic Resonance Spectroscopy(1H-MRS)は病理組織評価との相関があり、肝臓中脂肪蓄積量を定量できることから病理組織評価に代替するgolden standardと称されている。毒性分野でのMRIを用いた脂肪肝検出はまだ報告が少ないが、非臨床用高磁場MRIの開発が進み、げっ歯類などの小動物からでもヒトと同等もしくはそれ以上に詳細なデータが得られるようになってきていることから、毒性分野のトランスレーショナル・リサーチへの応用が期待される。
今回、毒性試験で一般的に用いられるラットを用いてメチオニン・コリン欠乏食(MCDD)による脂肪肝モデルを作製し、11.7T 1H-MRSによって肝臓に蓄積した脂肪を経時的に分析した。その結果、病理組織評価で認められた脂肪蓄積の程度と1H-MRSで定量した脂肪蓄積量は相関した。また、MCDD摂取期間の延長に伴って脂肪鎖飽和部分の (−CH2−)nのピークに加えて、不飽和部分の複数のピーク(−CH=CH−や多価不飽和脂肪酸特有の=C−CH2−C=)やカルボニル基に隣接する−CH2CH2CO−のピークを検出した。これらの結果から、高解像度1H-MRSによって従来の毒性試験では特徴づけが困難であった詳細な脂質分析が非侵襲的に可能であることが示唆された。
抄録全体を表示
-
中川 翔太, 岡本 真生子, 額田 祐子, 森田 修
セッションID: P-24E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
類似化合物の毒性情報を評価化合物の毒性判断に用いるread-acrossにおいて、化学構造の類似性に加えてAOP(毒性発現経路)に基づく生物学的応答の類似性を考慮したIATA(統合的)アプローチの有用性が議論されている。これまでに化学構造の類似性のみからの予測には全身毒性を中心として精度に限界があった一方で、生物学的応答性がどれほど毒性予測に寄与するかは明確ではない。そこで、化学構造の類似したモデル化合物(クロロベンゼン類; CB、p-アルキルフェノール類; PAP)の生物学的応答性を評価して、全身毒性評価におけるread-acrossにどのように寄与するか検討した。
両化合物群のAOPは既存毒性情報、物理化学的性状、in silico代謝物予測から推定した。CBではエポキシド分解や、アルキル鎖のω酸化により生じた代謝物が引き起こす酸化ストレスが主なAOPであると考えられた。そこで、AOPに対する類似性を、ラット肝初代培養細胞を用いた網羅的な遺伝子発現解析から比較した。結果、一部のCBはβ酸化やミトコンドリア異常に関する遺伝子発現上昇が共通して確認され、化学構造の類似した化合物から、さらに生物学的な応答が類似する化合物を抽出することができた。一方、PAPでは反応性代謝物であるキノンメチド生成によるグルタチオンの枯渇がAOPとして推定された。そこで、AOPに対する類似性を、グルタチオン抱合を利用した反応性代謝物解析から比較した。結果、PAPは4位のアルキル鎖長や分岐と反応性代謝物の生成量に相関が認められ、アルキル鎖の構造により毒性の強さを類推することができた。
以上の検討から、AOPに基づく生物学的な応答を検討することで化学構造の類似性からは類推しきれなかった毒性の傾向や類似性を予測できることが示唆された。その為、IATAアプローチはread-acrossの精度を向上させる有効な手段の一つであると考えられた。
抄録全体を表示
-
山本 裕介, 藤田 正晴, 鰐渕 彩花, 佐藤 彩子, 勝岡 尉浩, 笠原 利彦
セッションID: P-25E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
光アレルギー性試験は、化粧品や一部の医薬品の申請に必要な試験であるため、代替法の開発が期待されているが、まだ公定法になったテストガイドラインはない。それゆえ、我々は、感作性メカニズムのKey event 1である化学物質とタンパク質の結合性を評価するin chemico 皮膚感作性試験代替法のAmino acid Derivative Reactivity Assay (ADRA) を応用して光アレルギー試験法 (photo-ADRA) の確立を目指した。まず、試験の判定基準を決定するために、光アレルギーポテンシャルが既知の59物質を用いた検討試験を実施した。具体的には光照射条件下と非光照射条件下で反応させたサンプルをHPLC-UV法とHPLC-蛍光法(HPLC-FL法)の2方法で実施し、光照射条件下depletion値から非光照射条件下のdepletion値を差し引いた値を用いて光アレルギーポテンシャルの判定基準を決定した。設定した判定基準に基づき、59物質についてヒトに対する予測精度を算出したところ、UV法は82.8 % (48/58)、蛍光法は81.4 %(48/59)であった。UV法では、光によって変化した複数の被験物質由来のピークが、求核試薬であるNAC/NALと共溶出したため、正確に測定できない物質があったが、FL法ではすべての物質を共溶出なく正確に測定することができた。また、光アレルギー物質として報告されているが、3T3NRUにおいて陰性または疑陽性に判定される8化合物についても、photo-ADRAではすべて陽性として判定することができた。さらに、5種類の非光アレルギー物質から成る混合液に3種類の光アレルギー物質を1種類ずつ添加した疑似混合液について、光アレルギー評価をHPLC-UV法およびHPLC-FL法で実施したところ、光アレルギー物質単独で測定した場合とほぼ同じdepletion値となり、評価において他の化合物の影響を受けなかった。以上より本研究は、化学物質の光アレルギーポテンシャルの判定方法を示しただけでなく、複数の物質を含む混合液の評価ができる可能性を示すことができたことから、光アレルギー性試験代替法として利用価値は高いと考えられる。
抄録全体を表示
-
縄司 奨, 村上 佳穂, 久樂 喬, 松浦 武, 関 雅範
セッションID: P-26E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【背景・目的】近年、医薬品規制調和国際会議(ICH)の生殖・発生毒性試験ガイドライン(S5)の改訂により、種々の適格性基準を満たした評価系が、胚・胎児の発生に及ぼす影響を評価する試験(EFD試験)の代替法として利用可能となることから、代替法の開発が活発化している。その中で、ゼブラフィッシュ(ZF)胚を用いる試験系は欧州で非動物試験と定義され、動物愛護の点で有利であることに加え、生体内の薬物動態が考慮可能であるという利点から特に注目されている。我々はこれまで、独自のZF胚中濃度測定手法を活用し、ZF胚の吸収及び排泄の解析、ZF胚の薬物代謝におけるヒトとの類似性の検証といった薬物動態学的知見を報告してきた。しかし、ICH S5対照物質を用いたZF胚試験の検証は未実施であり、こうした検証の報告はこれまで殆ど無い。そこで本研究では、ICH S5規定の対照物質を用いたZF胚発生毒性試験を実施し、EFD試験代替法としての有用性を確認することを目的とした。【実験方法】ICH S5の対照物質群から選定した医薬品の水溶液をそれぞれ調製し、ZF(NIES-R系統)の受精卵を28±1℃の環境下で受精後5時間(5 hpf)~5日までばく露した後、Yamashitaら(2014)1)を参考にして毒性評価及び発生毒性陽性/陰性の判定を行った。【結果・考察】ICH対照物質20種を用いて検証した結果、陽性対照物質の正答率は80%(8/10)、陰性対照物質の正答率は90%(9/10)、全体の正答率は85%(17/20)であった。また、偽陽性及び偽陰性と判定された計3物質については既報の判定結果と一致しており、ヒト-ZF間の種間差が原因であると考えられた。さらに、既報の試験条件を一部変更することで一部の物質で判定結果の改善が認められた。以上より、本研究におけるNIES-R系統のZF胚を用いた発生毒性試験はEFD試験代替法として有用であることが示唆された。本発表では、ICH対照物質群から追加で選定した医薬品について検証した結果も併せて報告する。1) Yamashita et al., J. Toxicol. Sci., 39, 453-464, 2014
抄録全体を表示
-
久木 友花, 廣田 衞彦, 額賀 巧, 吉田 光輝, 関根 秀一, 上月 裕一
セッションID: P-27E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【背景、目的】欧州化粧品指令により、欧州では2013年3月以降は動物実験を伴った化粧品が販売禁止となっており、動物を用いない化粧品の安全性評価法の開発が早急に求められている。なかでも全身毒性は代替法開発が極めて難しく、OECDガイドライン等に収載のある試験法はほとんどない。現状では一試験に頼った毒性予測は困難であることから、in vitroやin silicoを組み合わせたWeight of Evidence(WoE)による評価が、お客さまに安全な製品を提供するうえで重要である。本報告では、香料品に使用される原料を題材に挙げ、どのような評価か可能か、生殖発生毒性などの全身毒性を中心とした評価事例(ケーススタディ)を検討した。
【方法】ECHA REACHデータベースなどに記載されている香粧品の既存安全性情報を参考に、香料や化粧品素材数品を選択し、これまでに報告してきたin silico評価系である定量的構造活性相関(QSAR)モデルおよび類似化合物の毒性情報を用いるRead-acrossを用いたリスク評価を実施した。また、ハザード評価としてin vitro評価系であるHand1-Luciferase Embryonic Stem cell Test (Hand1-EST)などの試験法を実施した。得られた結果を既存の安全性情報と比較した。
【結果、考察】今回、ケーススタディに用いた香粧品素材の代替法による評価では、既存の安全性情報と大きく変わらない評価結果を得ることができた。以上の結果より、曝露量やin silico、in vitro解析など複数の情報を組み合わせることにより素材の安全性について総合的に判断し説明することが可能であることが示された。
抄録全体を表示
-
友塚 育美, 松本 博士, 加藤 英里子, 馬場 敦, 澤田 光平
セッションID: P-28E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【背景・目的】心感作性とは急性心毒性の一種であり、心感作性を示すガス状物質としてハロタンやイソフルランなどの吸入麻酔薬およびフルオロカーボンなどのハロゲン化炭素の一部が知られている。現在、ガス状物質の心感作性評価は動物(イヌ)を用いた吸入曝露試験で行われているが、動物愛護等の観点から代替法の開発が急務となっている。そこで、既存試験の代替法として培養細胞を用いたin vitro試験法の開発を目指し、これまでにヒトiPS細胞由来心筋細胞内のCa2+濃度変化を観察することで、ガス状物質の心感作性を評価できることを見出した。今回は本評価法の適用範囲を確認するため、新たに既知の心感作性の強さが異なるガス状物質を用いて実験を行った。
【実験方法】ヒトiPS細胞由来心筋細胞(iCell Cardiomyocytes2)を数日間培養した後、心感作性既知のガス状物質を培養プレート内に封入することで心筋細胞に曝露させた。共焦点イメージングシステム(CQ1)を用いて曝露後の心筋細胞内のCa2+濃度変化を測定し、ガス状物質が心筋細胞へ与える影響を評価した。
【結果・考察】心感作性の強弱が異なる複数のガス状物質を心筋細胞に曝露させたところ、最小毒性量(LOAEL)が8%以下の物質では拍動数増大が認められた。また、本評価法の検出限界を設定するには心感作性の程度だけでなく培養液中のガス濃度も考慮する必要があると考えられた。現在の手法では培養液中のガス濃度は物質固有の溶解度に依存しているため、今後、培養液中のガス濃度をコントロールし一律の濃度条件で心筋細胞に与える影響について比較検討を行う予定である。
抄録全体を表示
-
馬場 皓子, 石井 悠貴, 小林 英恵, 真邉 知佳, 吉村 知久, 長濵 徹, 小島 弘之, 尾形 信一, 板垣 宏
セッションID: P-29S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【背景・目的】 human Cell Line Activation Test(h-CLAT)は、植物エキスのような微量の感作性成分を含む混合物を正確に評価できないことが知られていた。我々は、短時間高濃度暴露を基本とするh-CLAT(改変h-CLAT)を用いることでその評価が可能となることを見出した。
さらに、改変h-CLATが微量の感作物質を捉え、評価しているのかを微量感作モデルを用いて検討したところ、6物質中1物質が偽陰性と評価された。この偽陰性となった1物質はpro-/pre- haptenであることが原因と考え、改変h-CLATが微量のpro-/pre- haptenを評価可能であるかを検討した。
【方法】 従来のh-CLATで陽性と評価される4種の皮膚感作性物質eugenol(EU)、cinnamic alcohol(CA)、2-methoxy-4-methylphenol(MM)、p-phenylenediamine(PD)を1,3-butylene glycol(1,3-BG)溶液(1,3-BG:蒸留水=1:1)で希釈し、生理食塩水を溶媒とした微量感作モデルを作製した。各微量感作モデル500µLを1×10^6cellsのTHP-1細胞に5分間暴露し、洗浄後24時間の後培養を行った。被験物質調製、細胞暴露以外はプロトコル(OECD TG 442G)に従い測定した。また、prehaptenと考えられているPDについては、構造が酸化により変化しているか確かめるため吸光度の時間変化を測定した。
【結果・考察】 EU、CA、MMは改変h-CLATでは偽陰性となった。これらはprohaptenと考えられ、代謝に酸化が必要であるが、短時間化したために十分な代謝が起こらなかったと考えられる。一方、PDは正しく陽性と評価された。特にPDの吸光度は調製直後から時間に依存して吸光度が変化していた。これらのことから、PDは調製時から暴露時間内に自己酸化されたと考えられる。以上よりpro-/pre- haptenの評価の改善にはそれぞれ個別の検討が必要と示唆された。
抄録全体を表示
-
三浦 結美, 澤田 結花, 小林 英恵, 尾形 信一, 板垣 宏, 飯島 一智
セッションID: P-30S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
現在、化学物質の皮膚感作性評価法の1つとしてヒト単球由来細胞株THP-1細胞を用いるHuman cell line activation test (h-CLAT)が確立されている。この方法は化学物質だけでなくタンパク質の皮膚感作性評価への適用が検討されている1)。また、THP-1細胞はPhorbol 12-myristate 13-acetate (PMA) で刺激することでマクロファージ様細胞に分化することが報告されている2)。そこで本研究では、分化THP-1細胞を用いて化学物質及びタンパク質に対する反応性を評価し、未分化THP-1細胞の反応性との比較を行い、その有用性について検討した。まず、温感剥離器材上でTHP-1細胞をPMAを含む誘導培地で72時間培養後、通常培地で5日間培養することにより分化誘導を行った。大半の細胞が接着し偽足の伸展が見られるなどマクロファージ様の形態に変化した。冷培地を添加し細胞を剥離・回収し、分化マーカーであるCD11cの発現量、蛍光標識latexビーズの取り込み量をフローサイトメーターを用いて測定し機能的な評価を行った。CD11cの発現量、latexビーズの取り込み量はともに未分化の細胞と比べて増加した。これらより分化誘導を行った細胞は形態的にも機能的にもマクロファージ様細胞に分化していることが示唆された。h-CLATのプロトコールに従い、得られた分化THP-1細胞に化学物質を24時間暴露し、h-CLATで指標とされるCD86およびCD54の発現量を測定した。感作性物質である2,4-Dinitrochlorobenzene (DNCB) を暴露すると未分化および分化THP-1細胞どちらもCD86とCD54の発現が増加した。今後は他の化学物質やタンパク質についても検討し、皮膚感作性評価における分化THP-1細胞の有用性を判断する。
参考文献
1) H. Tsukumo, et al., J. Pharmacol. Toxicol. Methods., 92, 2018, 2) M. Daigneault, et al., PLoS ONE, 5, e8668, 2010.
抄録全体を表示
-
柳沢 佑, 池田 和弘
セッションID: P-31
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
米国において心毒性は臨床試験の取り下げ理由の28%を占める。心毒性の評価には、平面培養した心筋細胞を多電極アレイや蛍光イメージング等で解析する手法が用いられているが、心筋の本来の機能である収縮力を測定することは難しい。収縮力を測る系として、近年では、多能性幹細胞由来の心筋細胞から作製した細胞塊や細胞シートを利用する系が開発されている。しかしながら、①1度の測定で106〜107個程度の大量の細胞を用いる必要がある、②長期培養できないため薬剤の長期的影響を見られないという課題が残されている。今回我々は、①②の課題解決を目的として、細胞ファイバ作製技術によりひも状の心筋細胞塊を作製し、これを用いた収縮力測定試験系を構築した。細胞ファイバは、直径数百マイクロメートルのアルギン酸ゲルチューブ内部に細胞とECMを封入する技術であり、均一な大規模三次元組織の作製と長期培養に優れるという特長を持つ。我々は、はじめにiPS細胞由来の心筋細胞を内包した細胞ファイバ(心筋ファイバ)を作製した。ファイバ内部の細胞は、作製直後はばらばらであったが、培養日数の経過と共にひも状に構造化し、作製翌日から自発的な拍動が観察された。培養40日間後も高い生存率が保たれていることをLive/deadアッセイにより確認し、これを収縮力測定に用いた。測定にはCell Scale社のMicro Testerを用いた。37℃の培地に浸した状態の心筋ファイバを測定用ステージの上に置き、収縮力測定用の治具で挟み込み、20%程度の圧縮歪みを加えた状態で力を測定したところ、一定周期の拍動が測定できた。また、イソプレテレノールを培地に添加したところ、応答が見られた。測定に使う心筋ファイバ長から計算すると、1測定あたり105個以下のごく少量の細胞で測定が可能であった。今後はより創薬現場のニーズに合致した、薬剤評価システムを開発していく。
抄録全体を表示
-
小田原 あおい, 松田 直毅, 石橋 勇人, 堀 晃輔, 遠井 紀江, 饗庭 一博, 鈴木 郁郎
セッションID: P-32E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
ヒトiPS細胞由来神経細胞を用いた微小電極アレイ(MEA)アッセイ系は、薬剤の神経毒性予測と薬効メカニズムの解析に有用である。しかし、ヒトiPS細胞由来神経細胞が機能的に成熟するためには長期培養を必要とすることや、iPS細胞由来神経細胞が培養中にMEAプローブ上で凝集を形成し剥離する現象が発生することで、計測が出来なくなることが問題となっている。さらに、薬効評価のためのパラメータとして、新規な評価項目も求められている。これらの解決を目指し、配向性ファイバーデバイス上で培養されたiPS細胞由来神経細胞(神経デバイス)を開発しMEA測定方法を確立した。
配向性ファイバーデバイス上でヒトiPS細胞由来神経細胞を培養したところ、細胞の凝集や剥離は培養期間中に発生することはなかった。神経デバイスをMEAプレート(アルファメッドサイエンティフィック社)にMEA測定の間だけ設置することで細胞外電位が測定可能であり、培養3週間目から明確な自発発火が検出できた。神経デバイスでは従来法である2D培養と比べて、発火頻度が高くなり、同期バーストも1週間以上早期に観察することができた。培養6週間目にpicrotoxin、4-aminopyridine (4-AP)、そしてpilocarpine の薬物応答評価を実施した。同期バースト発火パターンの変化は予想通りであり、足場による薬物応答への影響はなかった。また、神経デバイスではiPS細胞由来神経細胞がファイバーに沿ったことよって、伝導速度と伝達速度を含む神経伝播速度の計測が容易になった。痙攣誘発薬剤処理によって神経伝播速度は上昇した。
これらの結果は、神経デバイスによって、ヒトiPS細胞由来神経細胞の成熟が促進されること、また神経ネットワーク内で神経伝播速度を基にした薬効評価を行うことが可能であることを示している。
抄録全体を表示
-
阪東 友香, 寺井 織枝, 北中 淳史, 松田 一起, 岩田 美紀, 岡嶋 孝太郎, 十亀 祥久
セッションID: P-33E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
軟寒天コロニー形成試験法は、軟寒天培地中で正常細胞は増殖せず、足場非依存性の悪性形質転換細胞は増殖してコロニーを形成する性質を利用して確立された手法であり、形質転換細胞のスクリーニングや抗がん剤感受性スクリーニングの用途で広く用いられている。一方、近年開発が進む再生医療等製品のうち、特に細胞加工物は、培養・加工途中での予期しない形質転換による造腫瘍性の獲得が懸念されている。「再生医療等製品(ヒト細胞加工製品)の品質、非臨床試験及び臨床試験の実施に関する技術的ガイダンス」あるいは「ヒト細胞加工製品の未分化多能性幹細胞・形質転換細胞検出試験、造腫瘍性試験及び遺伝的安定性評価に関する留意点(案)」ではヒト細胞加工製品の造腫瘍性試験として、免疫不全動物を用いたin vivo 造腫瘍性試験と並び、in vitro造腫瘍性試験として軟寒天コロニー形成試験法が記載されている。しかし、軟寒天コロニー形成試験法を細胞加工品の評価に使用する目的で詳細を検証した事例はない。
今回我々は、悪性形質転換細胞の陽性対照細胞にHeLa細胞、正常細胞には間葉系幹細胞を用い、軟寒天コロニー形成試験法の感度を検証した。培養は30日間で行い、検出は目視及び顕微下の観察とした。感度検証の結果、106細胞の間葉系幹細胞中に含まれる5細胞のHeLa細胞及び、6×106細胞の間葉系幹細胞中に含まれる6細胞のHeLa細胞を再現性よく検出することが可能であった。さらに、複数種類の株化細胞を用いて軟寒天コロニー形成試験を行い、細胞種の違いによるコロニー形成能の違い、コロニーの形態の違いを評価した。
抄録全体を表示
-
北口 隆, 溝田 泰生, 田中 政春, 松田 高博, 大野 克利, 小林 和浩, 田中 充
セッションID: P-34E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【背景・目的】
食品の加熱等の加工過程により、多種多様な化合物が生成することが知られている。近年、脂質の加熱や酸化により、不飽和結合がエポキシ化された、エポキシ脂肪酸が油性食品中に含まれると報告されている。一般に、エポキシ構造を有する化合物はDNAやタンパク質などの生体分子との反応性が高く、遺伝毒性や細胞傷害などの影響が懸念されるが、エポキシ脂肪酸類の毒性試験については、ほとんど報告されていない。そこで本研究では、エポキシ脂肪酸類のin vitro遺伝毒性試験および細胞毒性試験を行い、健康影響評価の一助とすることとした。
【方法】
オレイン酸(C18:1)およびリノール酸(C18:2)のエポキシドである9,10-エポキシステアリン酸(ESA)および9,10:12,13-ジエポキシステアリン酸(DESA)を試験に用いた。In vitro遺伝毒性試験として、細菌を用いる復帰突然変異試験(Ames試験)、in vitroほ乳類細胞小核試験およびヒトリンパ芽球細胞TK6を用いたp53R2の発現に基づく遺伝毒性試験(NESMAGET®試験)を実施した。細胞毒性試験はヒト肝臓がん由来細胞株HepG2を用い、被験物質24時間曝露後、WST-8法およびLDH活性を指標に評価した。
【結果・考察】
ESAおよびDESAのin vitro遺伝毒性試験(Ames試験、in vitroほ乳類細胞小核試験およびNESMAGET®試験)はいずれも代謝活性化の有無に関わらず陰性であった。細胞毒性試験では、高濃度で細胞生存率の軽度な低下がみられたが、エポキシ化されていない脂肪酸と比較して明確な差は認められなかった。類似化合物であるエポキシ化大豆油(用途:可塑剤・安定剤)では発がん性の懸念は低いとされていることから、エポキシ脂肪酸類による健康影響の懸念は低いと考えられた。
抄録全体を表示
-
渡邉 心也, 宇都宮 慎治, 山田 昂, 薮内 かおり, 孫谷 弘明, 角崎 英志
セッションID: P-35E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
In vivo光毒性試験の照射条件として、紫外線A波(UVA)は5~20 J/cm2の範囲の照射量が広く用いられている。UVA以外の波長を吸収する化合物の光毒性評価は、擬似太陽光(ASL)の照射が望ましいが、UVA以外の可視光が生体に及ぼす影響を考慮する必要がある。そこでUVAのみを照射した場合と擬似太陽光を照射した場合の、薬物誘発光毒性を比較した。
雄SDラットをUVA照射群(n=3)とASL照射群(n=5)に分け、それぞれに光毒性誘発物質である8-Methoxypsoralen、Lomefloxacin HClあるいはOfloxacinを単回経口投与し(それぞれ20、100あるいは1000 mg/kg)、投与30分後からUVAあるいはASLをそれぞれ60分間10 J/cm2照射した。照射終了後0。5、24、48、72時間に皮膚反応観察(背部皮膚、左右耳介)及び耳介厚測定を行い、また、投与3日後に眼科的検査及び病理組織学的検査(眼球/視神経、皮膚、耳介)を行った。
皮膚反応及び眼科的検査において、UVA群とASL群の間に差はなかった。耳介厚はUVA照射群が統計学的に有意に厚く、また、病理組織学的検査では、UVA照射群に炎症細胞浸潤(耳介)、浮腫(眼球)などがASL群より重度にみられ、ASL照射群では皮下出血(耳介)、炎症細胞浸潤(背部皮膚真皮)などがUVA群より重度にみられた。全体としてUVA群で重度の所見が認められたものの、8-Methoxypsoralenでは、どちらも十分な光毒性陽性反応を示した。一方、ASL群の陰性対照物質(0。5 %Methylcellulose)経口投与群で網膜に外顆粒層及び色素上皮の変性が認められた。ASL照射の網膜への影響については、可視光領域のみの照射で影響がみられるか等のさらなる検討を行う予定である。
抄録全体を表示
-
秋澤 文香, 諸木 孝泰, 近藤 聡志, 藪下 尚智, 河野 富美子, 井上 裕基
セッションID: P-36
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
亜鉛は生体内必須微量元素の1つであり,生体内の様々な酵素等に存在する。亜鉛不足による生体への影響は,貧血や皮膚炎など様々である。近年では食生活の変化に伴い亜鉛不足が問題視されており,亜鉛欠乏を対象とした食品や医薬品の開発が期待される。亜鉛欠乏及び亜鉛の毒性評価のためには亜鉛の定量が必要である。従来,生体試料中の亜鉛の測定には,誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)あるいは原子吸光法が多く用いられてきた。近年では比色測定試薬が開発され自動分析装置でより簡便に測定が可能になったが,亜鉛化合物を生体内に投与した時の血漿中亜鉛濃度を定量する方法としての妥当性は明らかではない。そこで本研究では亜鉛化合物を投与し,比色分析及びICP-MSの2つの方法で血漿中亜鉛を定量して比較することを目的とした。
亜鉛錯体であるジンクピリチオンを,2, 5及び10 mg/kg/dayの用量で各群3匹ずつの雄ラットに経口投与した。10 mg/kg投与群は13日間,その他の群は14日間投与を行った。各群において最終投与の約24時間後,イソフルラン麻酔下で開腹し,後大静脈よりヘパリン処理した注射筒で約5 mL採血した。遠心分離して血漿中亜鉛濃度を2つの方法,すなわち(1)亜鉛比色測定試薬を用いた自動分析装置による測定,及び(2)ICP-MSで定量した。
両測定において,媒体対照群と比較して10 mg/kg投与群の血漿中亜鉛濃度は有意に高かった。また,両測定の測定値を比較すると,比色測定法の方がICP-MSの測定値より高値を示す傾向がみられた。本研究で用いた比色法では,試薬によってタンパク質から遊離させた亜鉛をキレート化し,形成した錯体の吸収極大近傍の吸光度を測定する。比色法の方が高値を示した原因として,何らかの生体内物質が試薬反応や吸光度測定などの測定過程に影響を与えた可能性が考えられる。なお,現在より多くの例数を用いた試験を計画しており,検討結果を会場にて報告する予定である。
抄録全体を表示
-
相川 博明, 鍛冶 秀文, 渡辺 秀幸, 木村 栄介, 加藤 仁士, 内田 秀臣
セッションID: P-37E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【背景及び目的】クロロキンは副作用としてクロロキン網膜症を引き起こすことが知られる.これまでの研究で,投与されたクロロキンが眼球の網膜部分に蓄積すること,またその毒性として色素上皮の肥大・増生がみられることが知られるが,クロロキンの詳細な分布については明らかにされていない.本研究は,毒性発現のメカニズム解明の一助としてイメージング質量分析法を用いて,網膜内におけるクロロキンの詳細な局在を評価することを目的として行った.
【方法】クロロキンをBN/CrlCrljラットに2 および6 mg/kgにて単回経口投与し,投与24時間後に眼球を摘出した.FT-ICR型質量分析MALDIイメージングシステム(solariX, ブルカー)を用いて眼球中クロロキンの分布評価について検討を行った.
【結果】クロロキン投与ラット眼球組織について高解像度イメージング質量分析を行い,クロロキンの組織中分布およびそのシグナル強度について解析を行った.その結果,クロロキンは色素上皮細胞層へ集積することが確認された.また,網膜におけるクロロキンシグナルは投与量に依存した強度を示した.以上から,本研究では高解像度イメージング質量分析法により従来よりも詳細にクロロキン局在を評価することに成功した.本法は組織切片中の測定対象化合物および関連分子の局在を,標識せずに評価しうる技術であることから,創薬におけるPOC確認や毒性メカニズム解明のための有力なツールとして創薬研究への貢献が期待される.
(略語)
FT-ICR:フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴,MALDI:マトリックス支援レーザー脱離イオン化法.
抄録全体を表示
-
矢橋 里和, 沖 宏二郎, 泉 誠臣, 桑木 慶子, 西渕 晃生, 安田 リエ, 玉井 朝子, 角崎 英志
セッションID: P-38E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
マーモセットは他の霊長類に比べて血液量が少ないことから頻回採血の量に制限がある.マーモセットの採血部位は大腿静脈や尾静脈が一般的であるが,尾静脈は薬物の投与で使用するため採血部位としては適切ではない.大腿静脈(FV)は深部血管であるため血管刺入部位を的確に止血することが難しく,採血後の血液ロスが生じる.そこで,ヒトの採血でも用いられる表在性の手背静脈(DVH)を用いて,血液ロスを最小限に抑え,頻回採血可能な方法を検討した.更に,単回投与毒性試験におけるTK測定用の頻回採血を想定し,投与日から3日間で総循環血液量の約5.4%である計1.2 mLを採血した(生理食塩液の5 mL/kgの尾静脈投与後0.5,1,2,4,8時間,1,2,3日目,各採血ポイント150μL).6~9才齢で体重270~360 gの雄動物を用いてFV及びDVH採血群を5匹ずつ設け,投与日から3日間は各採血時に血液学的検査を実施し,7日目は血液学的検査及び血液生化学的検査(計950μL採血)を実施した.
血液学的検査では,FV群とDVH群に統計学的に有意差はなかったが,FV群の2例では赤血球,ヘモグロビン,ヘマトクリットの減少がみられ,いずれも投与前値の最大約60%まで減少し,7日目ではやや回復した.網赤血球比率の増加が3日目から7日目にみられた.一方,DVH群では2例で赤血球の減少が投与後2日目あるいは3日目のみにみられ7日目には回復し,ヘモグロビン及びヘマトクリットには変化はなかった.血液生化学的検査では両群に差はなかった.
これらの結果から,少量の頻回採血にはFVよりも的確な止血が可能で血液ロスが抑えられるDVHの方がより適した静脈であり,単回投与毒性試験では,DVHからの採取で1.2 mL/3日採血後,7日目に血液検査における評価が可能であることが示された.
抄録全体を表示
-
中山 瑞希, 青木 啓将, 山下 美紗季, 坡下 真大, 松永 民秀
セッションID: P-39S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【背景】
中枢神経系を標的とした新薬候補化合物の開発は、脳毛細血管内皮細胞(BMEC)の強固なバリア機能により中止となることが多い。そのため、BMECを用いたin vitro BBB評価系の構築は治療薬スクリーニングに重要である。しかし不死化細胞や実験動物由来の細胞を用いた現在の評価系では、排出トランスポーター機能や細胞間結合の強度が不十分である。そこでヒトiPS細胞由来BMEC(hiBMEC)を作出し、評価系に応用することで上記の問題を克服できるのではないかと考えた。本研究では、hiBMECを簡便かつ大量に作製するため、ヒトiPS細胞からBMECの前駆細胞である血管内皮前駆細胞(EPC)への効率的な分化誘導法の開発を目的とした。
【方法】
ヒトiPS細胞をEPCと造血幹細胞からなる嚢状の構造物(iPS-sac)へ分化誘導し、CD31ビーズによりEPCを純化した。EPCの遺伝子・タンパク質発現量をRT-qPCRと免疫染色により、また血管細胞としての特性をチューブフォーメーション試験、アセチル化LDLの取り込み試験により評価した。
【結果・考察】
VEGF添加群(コントロール群)とVEGF+化合物X添加群(改良群)で性質を比較した。遺伝子発現解析の結果から、改良群はコントロール群と比較して血管内皮細胞関連マーカーの発現が上昇し、最大発現時も早まることが示された。また、iPS-sacをピペッティングで細かくし、平面培養したEPCの純度は、改良群において有意に高かった。これらの結果から化合物XはEPCへの分化に対して促進的に作用することが示唆された。
改良群をCD31抗体ビーズにより純化した細胞は血管様構造を構築し、アセチル化LDLの取り込み能を有していたことから、機能的なEPCであることが示唆された。また、遺伝子発現量解析の結果から、作出したEPCはHUVECよりもやや未熟な性質を持つことが示唆された。
以上の結果より、化合物Xを用いた分化とCD31抗体ビーズを用いた純化の組合せは、ヒトiPS細胞から機能的なEPCを効率良く作出可能な方法であることが明らかとなった。
抄録全体を表示
-
野島 由衣, 田上 瑠美, 国末 達也, 田辺 信介, 岩田 久人, 野見山 桂
セッションID: P-40S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
神経伝達物質は情緒、学習、睡眠など重要な生体機能の調節に関与している。先行研究のin vivo試験では、ポリ塩化ビフェニル(PCBs)やポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDEs)の曝露により、脳中神経伝達物質と一部代謝物濃度の変動が確認されている。しかし、影響メカニズムの詳細は不明であり、その作用機序を解明するには、活性体だけでなく前駆体や代謝物の挙動についても理解する必要がある。本研究では、液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC-MS/MS)を用いて脳組織中の神経伝達物質のみならず、その前駆体および代謝物を含む計14物質について分析手法の開発を試みた。
アセトニトリル添加によるタンパク沈殿・除去が、全対象物質に対して効果的であったことから、精製方法として採用した。抽出効率と回収率を評価するため、Methanol/ Milli-Q water(1:1, v/v) (1)中性溶媒(2)酢酸添加溶媒(3)ギ酸添加溶媒用いて検討した。ギ酸添加溶媒を使用した際、Dopamine、L–Dopa、3–MTで最も高い抽出効率が得られたが、NorepinephrineとOctopamineの回収率は低値を示した。したがって、ギ酸添加溶媒をDopamine、L–Dopa、3–MTの分析に採用し、中性溶媒を他の化合物の抽出に使用した。以上の分析条件で、良好な補正回収率(71%–120%)と日内(CV: <7%)および日間精度(CV: <10%)が達成された。脳試料中でS/N比 = 10となる濃度を定量下限値(LOQ)として算出し、先行研究の神経伝達物質の分析結果と比較すると、同程度または低値であった。本手法を用いてin vivo PCBs曝露試験がビーグル犬の神経伝達物質系へ及ぼす影響を調査したところ、対象群と比較して小脳中DOPAC濃度に有意な減少が確認された。今後、DOPACの生成に関わる酵素活性など詳細な調査を試みることで、PCBsによる神経伝達物質攪乱のメカニズムの一端の解明が期待できる。また、本手法は、環境汚染物質曝露による神経伝達物質の影響評価への適用が可能である。
抄録全体を表示
-
小野 純華, 髙口 倖暉, 田上 瑠美, 国末 達也, 岩田 久人, 田辺 信介, 野見山 桂
セッションID: P-41S
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
甲状腺ホルモン(THs)は甲状腺で合成・分泌され、神経の成長など多様な役割を担っている。近年、ポリ塩化ビフェニル(PCBs)などの環境汚染物質によるペット動物の甲状腺機能撹乱が疑われている。さらに、PCBsの水酸化代謝物であるOH-PCBsはTHs様構造を持ち、脳移行に伴う脳神経発達への悪影響が危惧されている。また、視床下部や脳下垂体はTHsの合成と分泌を調整する重要な器官でもあるため、脳を対象としたTHsの分析はリスク評価の観点において重要である。しかしながら、これまでに脳中THsの分析法はいくつか報告されているが、絶対回収率が低いことや夾雑物質の不十分な除去が指摘されている。そこで本研究では、LC-MS/MSを用いて高感度で高精度な脳中THs分析法の開発を試みた。
超音波抽出法、EVOLUTEⓇ CXを用いた前処理法の検討により絶対回収率:46.6-52.5 %、マトリックス効果:58.7-82.3 %を達成した。日内・日間変動は15 %以下、検出下限値、定量下限値はそれぞれ0.01-0.12 ng/g、0.04-0.3 ng/gを達成し、高精度かつ高感度な分析法の開発に成功した。さらに、PCBsを曝露したイヌ脳試料を分析に供試し、PCBsとOH-PCBsが脳中THsへ及ぼす影響について検証した結果、THs濃度に有意差は認められなかったが、3,5,3’-Triiodthyronine(T3)は減少傾向、3,3’,5-Triiodothyronine(rT3)は上昇傾向を示した。そこで、rT3/T3の濃度比を算出したところ、有意差が認められたことから、PCBs曝露により脳内で脱ヨウ素化酵素が撹乱され不活性方向に代謝が進行したとものと考えられた。しかし、本結果は脳組織を均一化した試料による分析であるため、今後は脳部位別分析や他臓器との関係を検証することが必要である。
抄録全体を表示
-
青木 重樹, 藤森 惣大, 山田 悠士郎, 薄田 健史, 白柳 智弘, 伊藤 晃成
セッションID: P-42E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【目的】特異体質薬物毒性の発症リスクとヒト白血球抗原(HLA)多型との関連が多数報告されている。我々はHLA-B*57:01遺伝子導入マウス(B*57:01-Tg)を作出し、このマウスモデルを用いて、HLA-B*57:01多型保有者で過敏症発症との関連がある抗HIV薬アバカビルによる免疫応答の再現に成功している。本研究では、HLAの関与する薬物毒性が皮膚で好発することに注目し、HLA-B*57:01とアバカビルの組み合わせを例に、B*57:01-Tg由来のケラチノサイトにおけるHLA多型特異的な免疫応答とその意義について検討した。
【方法】B*57:01-Tg由来のケラチノサイトにアバカビルを曝露した際の免疫応答をDNAマイクロアレイによって評価し、また下流シグナルをイムノブロット法で検討した。さらに、アバカビルを曝露したケラチノサイトの培養上清を骨髄細胞由来樹状細胞(BM-DC)に添加し、その活性化をCD86発現を指標に解析した。
【結果・考察】アバカビルを曝露したB*57:01-Tg由来のケラチノサイトでは、カルシウムシグナルやMAPK経路などに関連するmRNAの発現が上昇していた。さらに、B*57:01-Tg由来のケラチノサイトにアバカビルを曝露したところ、MAPK経路の中でも特にストレス応答性のJNK経路が亢進した。また、そのJNK経路の亢進は、小胞体ストレス阻害剤の事前処理によって抑制された。さらに、アバカビルを曝露したB*57:01-Tg由来のケラチノサイトの培養上清をBM-DCに添加したところ、活性化BM-DCの割合が上昇することが示された。以上の結果から、B*57:01-Tg由来のケラチノサイトにおいて、アバカビル曝露による小胞体ストレス応答を起点とした免疫増強液性因子の発現・分泌の誘導が、樹状細胞の活性化へと続く獲得免疫系を亢進させており、これがHLAの関与する薬疹発症に関与しているものと考えている。
抄録全体を表示
-
世戸 孝樹, 當波 諒, 猪山 陽輔, 佐藤 秀行, 尾上 誠良
セッションID: P-43E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【目的】薬剤性光線過敏症は光感受性の高い薬剤で認められる有害反応であり,一部の医薬品では代謝物が光毒性反応に関与することが報告されている.すなわち,親化合物と代謝物の光毒性リスクを併せて評価することで信頼性の高い化合物の光安全性を提示できる.本研究では光毒性化合物である imipramine (IMI) をモデル薬物とし,その活性代謝物である desipramine (DMI) を含めた包括的光安全性評価を行った.
【方法】IMI および DMI について,UV 吸収特性評価および reactive oxygen species (ROS) assay を実施した.ラットに IMI (10 mg/kg) 経口投与後,血漿および皮膚中 IMI および DMI 濃度を測定した.ラットに IMI (100 mg/kg) 経口投与後および IMI あるいは DMI (5 mg/site) 塗布後の in vivo 皮膚光毒性を評価した.
【結果・考察】IMI および DMI は高い UV 吸収特性および ROS 産生を示し,どちらも同程度の光反応性を有していた.IMI 経口投与後,血漿および皮膚中にて IMI および DMI を検出し,IMI と比し血漿では DMI の Cmax および AUC はそれぞれ 6.0 および 21 倍高値を示し,皮膚での DMI の Cmax および AUC はそれぞれ 3.6 および 8.1 倍高値を示した.以上の結果を統合的に解析することで IMI の光毒性リスクに DMI も強く関与することを示唆した.IMI あるいは DMI 皮膚塗布後の in vivo 光毒性は同程度であった.一方,IMI 経口投与後の in vivo 光毒性評価にて皮膚における DMI の tmax (4 h) 付近で UVA を照射することで IMI の tmax (1 h) 付近における UVA 照射時と比し,より強い光毒性反応を示し,IMI の in vivo 光毒性における DMI 曝露の寄与を示唆した.現行ガイドラインでは代謝物の光安全性評価への関心は低いが,光反応性の高い代謝物の皮膚曝露とその推移も光安全性評価に重要であり,親化合物とその代謝物を含む包括的評価により光安全性の高い医薬品を提供できるだろう.
抄録全体を表示
-
猫本 千波, 殿村 優, 向井 美穂, 岡 宏之, 戸田 嗣人, 奥 久司, 福島 民雄, 上野 元伸
セッションID: P-44E
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
【目的】特発性肺線維症治療薬であるpirfenidone (PFD) は,臨床で薬剤性光線過敏症を惹起することが報告されている.一般的に,光毒性の発症には活性酸素種 (reactive oxygen species,ROS) の産生が関与することから,本研究では,各種抗酸化物質の併用によりPFDの光毒性が軽減されるかをROS assay及び3T3細胞光毒性試験法を用いて検証した.
【方法】ROS assayは,PFD 25~800 μMを含む反応液を96ウェルプレートに分注後,2.75 mW/cm2で1時間の光照射を行い,Singlet oxygen (SO) 及びSuperoxide anion (SA) の産生を測定した.疑似太陽光照射装置はATLAS社製SUNTEST® CPS+を用いた.3T3細胞光毒性試験は,マウス繊維芽細胞3T3にPFD 14.3~1000 μg/mLを1時間処置後,細胞毒性の誘発されない照射量 (2.50 mW/cm2,15分間) で同様の機器を用いて光照射した.細胞内ATPの定量 (Promega社,CellTiter-Glo® 2.0試薬) により光照射時と非照射時でのPFDによる細胞毒性発現濃度を比較し,光細胞毒性の有無を評価した。また,細胞に各種抗酸化物質を一定時間前処置した後PFD 600 μg/mLを処置し光照射を行い,光細胞毒性を精査した.
【結果・考察】光照射によってPFD濃度依存的にSO及びSA産生量の増加及び細胞生存率の低下が認められ,PFDの光細胞毒性が示された.また,抗酸化物質 (D-α-tocopherol及びGlutathione) の前処置により,PFDの光細胞毒性は軽減された.以上より,PFDの光毒性にはROS産生が関与しており,抗酸化物質の併用により光毒性を軽減できることが示唆された.
抄録全体を表示
-
宋 彬彬, 青木 重樹, 劉 聡, 伊藤 晃成
セッションID: P-45
発行日: 2019年
公開日: 2019/07/10
会議録・要旨集
フリー
Early hepatocyte death occurs in most liver injury cases and triggers liver inflammation, which in combination with other risk factors, leads to the development of liver disease. However, the pathogenesis of early phase hepatocyte death remains poorly understood. Here, C57BL/6J mice were treated with the hepatotoxic drug flucloxacillin (FLUX) and the toll-like receptor 9 agonist CpG oligodeoxynucleotide (ODN) to reproduce the early phase of drug-induced hepatotoxicity and investigate its pathogenesis. C57BL/6J mice were treated with FLUX (100 mg/kg, gavage) alone or in combination with ODN (40μg/mouse, intraperitoneally). Plasma alanine aminotransferase (ALT) level was measured as a marker of hepatotoxicity. FLUX or ODN alone was insufficient to induce ALT elevation, whereas combination treatment with FLUX and ODN increased ALT levels 24 h after FLUX treatment and upregulated Fas ligand in natural killer T (NKT) cells and Fas in hepatocytes. FLUX induced mitochondrial permeability transition (MPT), and pretreatment with ODN sensitized mitochondria to FLUX-induced MPT. The increase in ALT levels induced by ODN and FLUX co-treatment was suppressed in Fas ligand (gld/gld)-deficient mice and in mice deficient in a component of MPT pore opening (cyclophilin D-knockout mice). These results suggested that ODN activated the Fas/Fas ligand-mediated pathway in NKT cells and hepatocytes, which may predispose to FLUX-induced mitochondrial dysfunction, and lead to early phase hepatocyte apoptosis. Taken together, these findings elucidate a potentially novel mechanism underlying drug-induced early phase hepatocyte death related to the Fas/Fas ligand death receptor pathway and mitochondrial dysfunction.
抄録全体を表示