バイオフィリア リハビリテーション研究
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最新号
滝沢茂男常務理事退任記念号
選択された号の論文の29件中1~29を表示しています
21世紀リハビリテーション研究会(1998年-2000年)
  • 滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 5-8
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     日本の総人ロは2007年から減少に転じる。2020年には国民の四人に一人が六十五歳以上の高齢者で、14歳以下の子供の数は現在より400万人減って高齢者数の半分という少子国になる。財政や社会保障の改革をせず現状を維持した場合、国民負担率は30年後の2025年に現在の35.8%から51.1%に上昇すると経済企画庁(当時)の研究会は予測した。国民の収入4分の3が消えるなどの悲観的な予測は多く、現状のしくみを変えずに放置すれば、財政・年金など既存のシステムは破たんすると論じている。

     現在広く行われているリハビリテーション(リハビリ)とこれからのリハビリを展望して、著者らは日本臨床整形外科医会会誌に論文を発表した。論文で明らかにしたのは、これまでなら寝たきりの原因になっていた骨折や脳血管障害の後遺症があっても、タキザワ式リハビリを行った結果、193名の寝たきり高齢者から59名が歩行可能となった事実であり、寝たきりになってしまった高齢者の内、30%が歩行可能になることである。入院時歩行不能であった患者193名、最高年齢99才、最若年齢47才、平均年齢は81才、女性137人、男性56人にリハビリ(平成6年12月末、当初寝たきりであったがリハ室で訓練できるようになった患者は126名、ベッドサイド訓練が続いている患者は67名)を行った。リハ室でリハビリを行っている患者の内、単独歩行は9名、杖歩行は7名、四輪型歩行器歩行が3名、新型歩行器歩行が11名、平行棒内歩行が29名と合わせて59名が歩行可能となった。

     これは、2025年における230万人の想定されている寝たきり高齢者数に当てはめると、歩行可能になるものの累計は69万人に及ぶ。我々はこの事実を基に、国民が、安心して老年を迎えられ、豊かに生活できるようにするために、21リハ研を組織し、人々が高齢になり、骨折や脳血管障害の後遺症があっても、リハビリにより、自立生活を続けられるよう、21リハ研を組織し研究をすすめている。科学的、医学的評価に耐えうる運動器/訓練器を開発し、症例毎の評価の概要を明らかにすると共に、フィールドテストを行おうと提案している。

  •  - 4 輪ソリ付き歩行器 -
    滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 9-12
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     「四つ足で、二本足で、三本足で歩くものは何か。人間である。」このスフインクスの問いは広く流布されている。人は必ず年を取り、加齢によって歩行障害を持つ人は多い。こうした人が杖なしで生活するのは困難である。スフインクスの問いは、杖をつき三本足で歩くという発想が、永く人類の生活文化として定着していることを表している。これまでの歩行器は、在宅では利用しにくく、在宅での使用は普及していない。 必要なときにいつでも利用できる器具を利用せず、介護者の支援も得られず、徐々に骨折に起因する寝たきり老人が増えていくことになる。

     病院では、リハビリテーション訓練(以後リハビリ)により、立位、歩行できても、退院後の自宅療養に於いて、訓練の継続が出来ない事や、自立歩行の介助がないことから転倒をおそれて歩行せず、ADLレベルを低下させ、そのまま寝たきりになることが多い。寝たきり老人の内骨折による者は平均20%を越えている。しかし、多くの高齢者の歩行を守り、在宅に於ける日常生活の自立をすすめる可能性があり、4輪型ソリ付き歩行器(以後本歩行器)開発が、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成の下、東大、慶應、北里、聖マリアンナ、東海、横浜市大、など、多くの大学病院、施設による治験として結実し、実証されている。

     治験対象のうち、4例の大腿骨頚部骨折患者と2例の両側の変形性股関節症患者についても、ADLレベルの低下は認められなかった。治験の結果 では利用者全員にADLレベルの低下は見られなかったが、仮に半数の利用者によい影響を与え、歩行が自立したと仮定した場合、地方財政を含め我が国の財政に対し、1993年で単年度4千2百億円(前出18万人の半分×468万円)の歳出削減効果があると推定できる。当会は、ソリ付き歩行器を歩行補助器具として、室内で利用することにより、多くの高齢者が寝たきりの不安のない、豊かで充実した長寿生活を実現できるよう、さらに治験事例を増やす努力をすると共に、普及に努める。

     ギリシャ神話の昔以来つづく、人類の生活文化に係わる常識を打破したい。平成のスフインクスが、「四つ足で、二本足で、三本足で、6本足で歩くものは何か」と問い、「それは人間である」が答えになる、「平成の神話」を築くべきであり、築いていきたい。介護保険導入の結果、歩行再獲得の経済的合理性がなくなり、介護保険導入後販売実績はないと聞く。介護保険の見直しが考慮されていると聞く。6本足で生活するという新しいライフスタイル、こうした「新たな生活文化の確立」が、少子高齢化に伴い、老後の不安を強く持つ、多くの国民が、安心して年を加え、豊かにゆったりと生活が出来る社会をもたらすと確信している。

  • 滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     これまで、脳血管障害後遺症の片麻痺や下肢骨折等による下肢障害者は、理学療法士による他動運動で身体状況の改善を図ってきた。しかし理学療法士の人的資源に限りがあり、その結果として拘縮を残し、歩行困難で寝たきりになる事が多い。我々はこの状況を変えるため研究を進めている。2000年3月米国ロスアンジェルスのCSUN学会で統合されたシステム構築に向けた器具開発を世界に発信した。これまでの臨床結果報告を中心とした研究発表のみならず、その効果を生みだした概念を明確にするために行った。

     開発器具を利用した創動運動とタキザワ式リハビリテーション(以後リハ)はインペアメントレベル(解剖学的機能損傷)からの改善を実現した。リハビリエイド(現バイオフィリア研究所)有限会社はクッション、上肢機能訓練器、下肢機能訓練器、軟下肢装具/補装具、新四輪型ソリ付き歩行器を開発した。このように高い有効性を持つリハを可能にする機器開発について述べた。個別の器具に関する発表を基礎に、器具群を統合し、運用するという視点から考察したことにより、開発器具群がシステムを構築する要素であり、新たな概念に基づいたリハを実現する根幹を成すこと、タキザワ式リハが新たな概念に基づいたリハであることを明確にした。

     障害のある一方の四肢を、器具を利用し患者自身が残存している機能すなわち他の機能の残っている健側の四肢の誘導により、自分の力で他動運動させる事を創動運動(Motivative exercise)と命名した。高齢下肢障害者のための創動運動実施プログラムであるタキザワプログラムによるリハを進める上でのポイントは、患者に無理をさせず、訓練時の体調や能力に合わせた訓練、又訓練室において、器具を利用し、マットを用いることなく、座位又は立位で訓練を行う事である。ポイントと、実施状況について報告した。報告した器具及びリハの普及と、この課題の解決により、2025年の日本で要介護老人520万人の内230万人が寝たきりと予測されているが、寝たきりの30%69万人に日常生活自立の可能性がある。寝たきりにならない人数はさらに多数になる。21リハ研は、障害があっても高齢者が自立する事こそ、21世紀高齢社会が希望に満ちた社会になりうる唯一の方法であるので、それを実現する努力を進める。

  • 滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     今国民は速い流れに足をすくわれそうな状況で、流れの中で佇んでいるように思える。2000年5月30日発表の高齢社会白書に於いて1999年10月1日現在65歳以上の高齢者人口は2109万人で総人口に占める割合は16。7%と発表された。医療・保健衛生の向上と生活環境の改善は日本人に世界1の長寿をもたらした。人口に占める高齢者の比率は推計を新たにするたびに増加に変更されている。高齢者世帯の所得も貯蓄も充実している。

     一方、7月25日で要介護認定を受けた高齢者は280万人と発表された。1997年1月の厚生省予測において2025年に介護を必要とする高齢者は520万人(内230万人寝たきり)としたが、この数字も現状のまま推移すれば増加に変更されるのであろう。かつて脳血管疾患は死亡原因の第一であった。現在では1960年代に比較すると半減している。統計から推計すると毎年8万人近くが新たに脳血管障害の後遺症を持つ介護を必要とする高齢者となっていく。これまでなら脳血管障害の後遺症によって徐々に寝たきりになることを意味したのである。

     長寿は健康に楽しく年を重ねるばかりでなく、長寿が許されたがゆえに、要介護から寝たきりになり死に至るまで数年間の無残な苦闘をもたらすのである。大多数の国民にとって、速い流れに足をすくわれ、死に至るのを待つように、順に命の輝きが薄れていく。

     我々は宿命とも思えるこの状態を変えるとして21世紀リハビリテーション研究会を結成し、研究を重ねてきた。特別養護老人ホームなどの実施状況・効果を纏めた。また器具についてはその特徴や利用した屋内移動能力の改善状況を明らかにした。タキザワ式リハプログラムによる創動運動実施の医学的検証を進めること、その機序の解明に努力することを述べた。

  • -機器開発から明らかになった問題点-
    滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     歩行補助機器の開発方法・用途開発を述べる。これまでNEDO支援による開発に対する報告は多数にのぼっている。これらは、新たな考えに基づいて製品を開発する新規な物品の開発について、また利用した場合の安全性、利用者からの使い勝手などに関する開発報告であった。昔、ヘンリーフォードが、それまで貴族等特権階級の趣味の領域であった自動車を、庶民の移動手段、貨物の運搬手段とし、人類の生活の質を改善・向上したのは方法開発又は用途開発の一例である。

     歩行器は今日までリハビリの現場で、ある意味ではリハビリの役に立たないと言われてきた。敷居等の段差が特異的な日本住宅においては外国における利用と比較して、在宅利用も有効とは言えなかった。病院現場などからは、退院後、歩行器は在宅では物置、物干しになっているとの声もあった。歩行器には幾種かあり、4点式の物と歩行車が代表的であるが前者は自由に歩行できず、後者は大きくて狭いところでは使えず、又滑りすぎて、転倒し骨折を引き起こす等の問題点があった。さらに、これまで室内で利用できる大きさの歩行器で段差を越えるものはなく、的確に段差を乗り越えることが出来る歩行器はなかった。さらにリハビリの現場での利用に関しても、理学療法に関する教科書ですら積極的利用の推薦は少なかった。

     我々は歩行器利用による自立生活確立への提案を継続してきた。開発は器具開発ばかりではなく、利用により居宅内での移動能力を獲得し自立するライフスタイルの変更、すなわちライフステージの拡大や、これまで生活の区切りとされた歩行様態の表現変更提案を含む用途・方法開発である。言い換えれば社会改革を視野に入れた開発計画である。すなわち100キロメートル300キロメートルの距離移動を可能にしたフォードの自動車による社会改革に比する、家庭内で1メートル10メートルの移動の自由を可能にしたことにより、トイレの自立を果たし、自分で日常生活が確保できるようにする社会改革を目指した開発である。この開発に伴い明らかになった問題点と、生活改革の可能性、それによる社会負担の想定を述べる。

バイオフィリアリハビリテーション学会(2002年)
  • 滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 28-30
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     2000年度テクノエイド協会助成「高齢下肢骨折患者のADL向上と自立のための調査研究」(主任研究員・日本医科大学医療管理学教室教授木村哲彦・本学会会長)の研究や、2001年の中小企業総合事業団平成13年度課題対応新技術研究調査事業に係る委託業務「創動運動用上肢訓練器兼用リフト機器開発に関する研究調査」などの研究を重ね、21世紀リハビリテーション研究会(21リハ研」が、バイオフィリアリハビリテーション学会に生まれ変わりました。「高齢障害者が、障害を受けた身体機能を改善し、又インペアメント(解剖学的機能損傷)を克服し、寝たきりになることなく自立生活を送る為の新たなリハビリテーション(以下リハ)手法を研究する。理由を探り、原理を究め、そして普及する。特定者の実施でなく一定の教育を受けたものが実施できるようにする。自立獲得による社会経済への影響(社会保障関連経費単年度3兆円削減の可能性)を探る。」が目的です。

     バイオフィリアは語源がラテン語であり、辞書では種族保存能と記載するものもあります。我々が用いているバイオフィリアは米国哲学者エーリッヒ フロムの希望の革命序文がその出典です。「私達多くの中になおも存在する生命への愛(Biophilia)、生命を脅かす危険を十分に認識した時に初めて、この潜在力を動員して変化をもたらす行動に移る事ができる。」に拠っています。これまで前身の21リハ研は、タキザワ式リハプログラム(Takizawa Method)に従った創動運動によって、対象とした寝たきり老人の30%が何らかの歩行を再獲得した事実を、医学的な事実として確認するため、研究を重ねてきました。

     日本人の優しさは、脳血管障害や骨折から介護を必要すると、施設への入所を可とし、他者の介護に依存することを是としてきました。

     賦課方式の年金制度は、ねずみ講のようです。新たな加入者が増えれば増えるほど、元の加入者は得をしていきます。団塊世代は増え、支える世代でした。公的年金が現制度を維持していけば、新規加入者・子孫が少子化現象により減少し、年老いた団塊世代すなわち受け取る者が増えて破綻します。そして、被介護者の増加、高齢化による医療費の増加(社会保障関係費2025年予測207兆円/216兆円昨年度全国民間給与総額)は、団塊世代を直撃し、これまでのように日本人の優しさの中に安住することができなくなります。

     だからこそ、私たちは、「障害者になったときにこそ、自分が人間として生き続けたいと願う心・意志」が大切と考えます。それを表象している言葉「バイオフィリア」を名称にしました。

     このように生まれたバイオフィリア リハビリテーション学会の2002年度活動を紹介します。

  • 滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     自殺者が4年連続3万人を超えた理由の一つに生活不安からの鬱病が挙げられています。雇用・年金・医療保険への不安は「年を取ると良いことは無い」との思いをいだかせているのでしょう。「高齢になり、障害を得ても自立でき、体は少し不自由でも、IT(情報技術)で社会貢献を続けられ、豊かな生活が出来る」と個々が認識することが、人々の不安を取り除く力になります。また人間として尊厳を持って生き抜こうとする意欲の源にもなります。

     私達はこれまでの研究を踏まえ、「高齢までの生存を許された人類・日本国民に対し、タキザワ式プログラム(高齢障害者に対する座位姿勢による創動運動実施プログラム)に従った創動運動(器具を用い、障害を得た者自身による健側肢の運動により、患側肢を擬似他動運動する。)と、在宅ケア(在宅看護・在宅介護・食事指導)からなるバイオフィリア リハビリテーションの研究、及びバイオフィリアに表象される「障害者になったときにこそ、自分が人間として生き続けたいと願う心・意志」を持つ者が、バイオフィリア リハビリテーションの普及により、高齢障害者であっても尊厳を確立でき、介護依存から自立へ向かうことができる社会を実現し、同時に高齢を許された人類の健康寿命を延伸し、国民生活の安定と人類の福祉向上に寄与することを目的とする。」と定款に目的を定めました。

     現在では高齢になって障害を持った者は、家族を含め地域社会において、正当な構成員と認められない感があります。施設入所・入院需要の多さは、障害を持った高齢障害者に対するこうした考え方の現れと考えます。私達は研究や普及を通じて、個人にとっては脳血管障害や大腿骨頸部骨折受傷後も自立生活を送れるまで、日常生活動作の改善が可能と考えています。そして「個人は自立獲得し、社会は障害者をその構成員として受けいれる」社会の構築を実現したいと考えています。

     私は、「国民がその特性であるやさしさを持ち続ける、しかしそれに依存しない。Aging Crisesを目前にして、福沢先生が半開社会を恐れた江戸時代以来の日本文化の一面から脱却し、自立した国民の形成する文明社会へ転換し得る機会となる。我々の研究が、高齢者の増加を負の要因としない、新たな文明社会の確立を可能とする」と確信しています。高齢者の増加を負の要因としない、新たな文明社会の確立のため、本稿読者のご意見をお待ちし、期待しています。我々の研究は事実の確認のみならず原因の解明にも及んでいますが、解明には更なる研究が必要です。私達は一人一人集まって、このたびNPOを組織しました。自分と家族の自立のため、さらには普及に向けた実践者と解明に向けた研究者のNPOへのご参加を歓迎します。

バイオフィリアリハビリテーション学会国際部会(2003年-2007年)
  •  -国際大会の開催-
    滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     バイオフィリア リハビリテーション学会は、表題を掲げ、初めての国際大会を北マリアナ連邦(CNMI)サイパン島で、私を大会長として、CNMI政府障害自立局と共同開催しました。本学会には全米とパラオなど近隣諸国から約150名の参加者がありました。

    この研究のきっかけは1987年です。厚生省は、1975年の人口予測で2025年の65歳以上高齢者の人口比率は1対5とし、シルバーシティプラン等を導入しました。1979年に藤沢市会議員になり、団塊世代の高齢化による高齢社会の到来を予期していた私は、人口動態をコンピュータで、補正推定した2025年の藤沢市における高齢者人口比率を1対4以上と市議会で発表し、それに対応する政策の実施を提言しました。

     1987年、老人保健法の導入がありました。同年隣接の茅ヶ崎市で、市機能訓練会が在宅の障害を持つ高齢者の為に4月から開設されました。藤沢市機能訓練会は医師会との調整があり、10月から廃用性維持期の高齢障害者のみを受け入れることで開設されました。私は、この間の経緯から議員として、藤沢市の会を、「回復しない(インペアメントレベルの)者だけが参加する機能訓練会」と理解しました。

     滝沢恭子理学療法士(母)は、藤沢市機能訓練会で勤務を始めました。会に参加した廃用性維持期で治療効果が無いとされた高齢障害者にリハビリテーション(以後リハ)を行い、「症状の改善をみた者、社会(職場)復帰した者、障害から自殺をほのめかす者が希望を語るようになった」など著しい成果を挙げていました。また同時に勤務を始めた寝たきり病院の長岡病院でも寝たきりから歩行を獲得する多くの事例を見ました。なお前職は藤沢市民病院勤務であり、同様の手法のリハを行い、同病院の業務報告によれば2名のリハ・エイドの協力を得て、1名の理学療法士の実施数としては非常に多い年間1万5千名のリハを実施していました。

     こうした事実から、私は母のリハがシステムであることを認めるよう、説得しました。母は、長い間「私の手は魔法の手だ、私がするから皆歩けるようになる。」と取り合いませんでした。年月が経るうち、私はリハシステムの社会的認知が必要と確信し、政治家としての未来よりも、このシステムを確立し、社会に提供する研究を選択しました。

     基調講演では、これまでの研究の実際と、文明論について述べました。学術論文の発表は5編で科学技術振興事業団の電子ジャーナルで2003年1月31日より公開されています。

     私はこの基調講演で、「私達団塊世代が高齢者になったとき、日本をさらには世界を、障害を持つ高齢者の増加による負担の増加で疲弊させないために、母の魔法の手ではなく、このリハシステムを誰でも使えるシステムとして確立するための研究が進んできたこと、そして国際学会共同開催により世界にシステムの確立を宣言したこと」と、「日本における日本医科大木村哲彦客員教授を会長としたNPO学会の設立と本日のCNMIとの共同開催の国際大会の開催が、人々が高齢になって障害を得ても自立可能であることを明確にし、高齢障害者が介護・依存から自立を果たすことにより、世界に新たな文明、高齢者の増加を負の要因としない文明をもたらす事」を述べました。この基調講演で、私はこれまでの研究を述べるにあたり、私が医師でも理学療法士でもなく技師でもない、一人の団塊世代人である事、そしてそれでもなお、この国際大会を始めとして、我々の研究が、新たな文明の確立の一歩になる事を述べました。

     それぞれの講演論文は世界に向けた英語論文であり、ソリ付き歩行器利用評価、タキザワ式リハによる虚弱高齢者の変化、同プログラムによる追試、開発中の立位歩行解析の実際と体育による気分の変化についての考察が発表されました。続いて、シンポジュームを開催し、地域におけるリハビリテーションの重要性を基軸に、そこで利用される技術・器具の報告があり、全体の質疑が行われました。

  • ―活動報告―
    滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 42-49
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     バイオフィリア リハビリテーション学会の活動報告です。「介護依存から自立へ・持続可能な超高齢社会の構築」と題し、2003年11月1日に、年次国際大会をカナダ国オンタリオ州ウインザー市で、ウインザー市・カルフォルニア州立大学身体障害センター・テクノエイド協会(日本)の各機関による後援の下、第2回国際大会を開催しました。

     高齢者の増加による社会保障経費の増大からくる社会崩壊「Aging Crisis」を避けるためには、団塊世代が高齢者になったときに他者に依存し介護を受けるのではなく、自立し、社会に貢献できる生活を続けなければなりません。

     筆者の基調講演は以下の通りです。「世界各国で高齢化が進み、特に日本は最短期間で超高齢社会に至る。高齢者・高齢障害者の増加は、社会保障関係費の増大を伴い次世代による負担を不可能にし、社会制度を崩壊させるAging Crisesをもたらすと危惧される。現在定着している教育・労働・退職のライフサイクルを改革し、増加する高齢者を生産的生活の中心に再統合する必要を認める。その実現の為の克服すべき課題に高齢者・高齢障害者の生活自立可能社会の確立、高齢者に適した職業の拡大、社会保障関係経費の削減がある。我々は、人口構造の変化に伴う課題解決には高齢になった団塊世代の社会貢献を可能にする哲学・産業技術・政策など広範な課題の解決が必要であると考察しており、課題を克服し、持続可能な社会構築のために、リハビリテーションによる寝たきりからの自立獲得事実を基礎に、医学・工学・社会科学など複合領域の研究を行い一定の成果を挙げている。世界各国とその国民にその実際を知らせ、高齢社会の到来に伴う諸課題解決に寄与するため、国際学会を開催し、その最先端の研究成果と今後の課題を報告する。」

     カナダ・ウインザー市長から開催を高く評価するご挨拶が寄せられ、関係者からの代読がありました。開催について全米各州の障害自立局(DDカウンスル)局長へお知らせし、学会参加招待を行いました。その結果、昨年の北マリアナ諸島連邦との共同開催も有り、来年の国際学会開催提案がありました。

     本論で、学会活動を以下の事項について述べます。1.年次国際大会、2.基調講演:2.1.進む高齢化、2.2.エイジング クライシス、3.研究のこれまで:3.1.廃用性維持期からの症状の改善、3.2.自ら道を開く気概、4.求められる研究:4.1.自立が必要なこと、4.2. 自立可能であること:4.2.1 脳機能やリハ関連機序解明研究、① 遺伝子によるリハ機序解明、② 対照群評価、③ データ解析、④ 統計的分析、4.2.2. 工学研究:①自動評価機器開発研究、② 立位歩行評価機器開発研究、③ クッションを用いた座位保持研究、④ その他研究、4.2.3.評価研究: ① 機能評価研究、② 日常生活行為評価、5.障害を克服し自立した社会:5.1.非営利活動の社会化、5.2.消費者教育、5.3.今後取り組む課題、6.自立した者が社会貢献 7.研究結果で世界に貢献: 7.1. 訓練基準、 7.2. 技術移転、7.3. 国際協力研究、 7.4. 国際組織、 8.われわれの目指すもの

  • 滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 50-53
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     2004年9月16日から18日までの間、第3回の国際大会をマニラで開催いたしました。大会予稿集にはフィリピン共和国アロヨ大統領のご祝辞をいただきました。基調講演は、DPI(Disabled Peoples International)のベナス イラガン(Ms. Venus Ilagan)議長が障害者としてのご自分の経験から、障害を克服し自立できることを、そして障害を克服することが重要であることを述べました。これまでインペアメント(解剖学的機能損傷)と定義され、寝たきり(歩行不能者)を施設も、介護者・家族も、本人すらも当然と思って生活してきた高齢障害者にとっても、現状を打破するために、共通の認識にするべきです。

     国内学会は「高齢障害者が、障害を受けた身体機能を改善し、又インペアメントを克服し、寝たきりになることなく自立生活を送る為の新たなリハビリテーション(以下リハ)手法を研究する。本年は特に分子遺伝学からのアプローチにより理由を探り、そして普及する。特定者の実施でなく一定の教育を受けたものが実施できるようにする。自立獲得による社会経済への影響(社会保障関連経費削減の可能性)を探る。」を目的とし、(財)東京都高齢者研究・福祉振興財団大会議室で8月7日に研究会・公開市民講座を開催しました。

     また。国際活動の充実から、この研究の創始者また関連の発明家の立場で第1回大会、第2回大会の大会長そしてこれまでの3回の大会の開催責任者として国際大会を実施してきたことから、私はバイオフィリア リハビリテーション学会国際部会長に選任されました。

     私はこの研究を1987年に志しました。一人の理解者も無く、家族内に一人目の理解者を得るのに7年を要しました。この間に私の希望であった政治家への道を自ら断念しました。タキザワ式リハは効果が高く、効率的な事を知り、予期される高齢社会、特に私の属する団塊世代の高齢化に伴う、社会保障負担の維持不能な拡大(エイジングクライシス)をこの手法で食い止めることが出来る。私はそう確信し、多くの人々にそのことをお知らせするよう努めてきました。

     リハのあり方への疑問と新たな可能性から、多領域の学際的な研究を進めるため、1996年に21世紀リハ研究会が組織され、21世紀を迎え2001年から名称をバイオフィリア リハビリテーション学会に変えました。我々の活動と社会に対する働きかけを紹介します。

  • 滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 54-56
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

    当学会は、リハビリテーションネットワーク構築研究(リハ・ネット)のために、2005年度「独立行政法人福祉医療機構」(WAM)の長寿社会福祉基金助成金を得ました。国民生活・福祉の向上に寄与するため、可能な限り多人数の高齢障害者の日常生活が「介護・依存ではなく、自立する」ことを目指し、在宅生活におけるリハビリテーション(以後リハ)・ケア実施について、障害者の意欲を高めることが出来、同時に障害者自身がリハを実施し、中核機関と在宅リハのネットワークを構築し、両者が機能的な連携を図る中で、高い効果を挙げ得るシステム構築を試行するための研究です。

    この高齢者自身による地域リハ・ネット構築事業を行うことにより、高齢障害者の歩行・移動自立(歩行補助具を利用するものを含む)と日常生活動作の向上が図られ、次のような効果が期待できます。

    ア. 高齢障害者の歩行・移動自立と日常生活動作の向上が可能になる。

    イ.身体機能と日常生活動作の向上が可能なリハ手法を普及する。

    ウ.安全で簡便な地域リハ・ネットの構築が全国で可能になる。

    エ.要介護度が低下することから、社会保障関係費の削減が可能になる。

    研究は、講演会を行い、参加者を募り、マニュアルを作成し、参加者に機器を配布して、実施し、その実際を報告する、で構成されています。

  • ドイツで第4 回国際大会を開催
    滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     介護保険を1995年に実施し、2000年の日本の介護保険法施行に先行して実施しているドイツでは、連邦社会保険庁の報告によれば、介護保険会計は1999年赤字に転落し、その後赤字が拡大し、2006年の末には流動性を確保するためのリザーブ(準備金)が底をつくと予想されています。創設から10年にして抜本的な改革が避けられない状態に追い込まれています。

     日本の団塊世代は800万人生まれ今でも700万人以上生きています。平均余命が90歳以上になるといいます。平均余命の伸びを予測せず設計しているすべての社会福祉制度は崩壊に向かいます。現在の推計では高齢者数は2015年には3188万人、約25%です(国立社会保障・人口問題研究所の推計)。もっと増えるのでしょう。

     人口ピラミッドが逆転するという未曾有の社会だからこそ、「高齢障害者が自立生活をおくれるようになり、社会保障負担が減って、人類が皆希望をもち豊かに暮らせる」事が重要です。高齢障害者の自立の獲得を基礎とした新たな生活文化の確立が重要です。

    他者依存、寝たきりになった方が儲かる、介護に依存すればすべてうまくいく、こうした考えを打破し、慶應義塾大学の創始者の福沢諭吉氏の「文明論の概略」に述べる「半開社会」から、自立した人々の「文明社会」に転換する機会にしなければなりません。

     次世代に過度に依存せずに社会を持続可能にするための手段は「リハビリテーション(リハ)医学の革新」として提供されつつありますが、真に提供できると言うためにはさらなる研究が必要です。そしてその上で、それを前提に、次世代に過重な負担を掛けずに済む社会構築の為の意識改革が必要です。

     リハ医学は、障害の受容を一側面に持っています。医学という名称を冠しながら、広範な医学に望まれる疾病・傷害の診断・治療・予防とは異なっているのです。我々の学会は、障害を受容するリハ医学、言い換えれば障害を残して寝たきりになる事を受容するリハ医学から、脳の損傷部位を回復にまではいたらないとしても、改善し、身体機能を取り戻すことの出来るリハ医学・医療の確立を期しています。リハ医学の革新の基礎は、以下の事実によっています。1987年に藤沢市において行われていた機能訓練会において障害を克服し職場に戻った人が何人も出ました。この機能訓練会は藤沢市と藤沢市医師会の間で「決して治らない人」をこの訓練会に受け入れると合意して設立された経緯があり、にもかかわらず、何人もの方々が障害を克服し、職場復帰しました。

     当時私は藤沢市会議員で「決して治らない人」が、障害を克服し、職場復帰するという異常な事態に気づき、この手法「タキザワ式リハ」を科学的なシステムとして社会に提案すべきであると認識したことから、取り組みが始まりました。機序解明に向け、2005年は4件の公的研究を実施しています。

     私はご挨拶に当たり、国際部会長・開催責任者として、「リハ医学の革新」による障害の克服が、人口ピラミッドが逆転するという人類にとって未曾有の変革期に、高齢社会に佇む人類の救済に他のどのような手段にもまして意義があり、我々の学会の活動がその実現を可能にすると述べました。本大会が、記念すべき、その嚆矢となったのです。

  • 滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     わが国の介護保険制度は定着し、利用者は当初の149万人から5年を経て2005年には329万人と増加し、総費用は急速に増大しています。高齢化の進む日本は、介護に関する問題について世界の手本になる可能性を持っています。こうした状況を踏まえ、「介護保険革新のための日本発の提案」、副題を「脳の傷害された部位の活性化の為の健側主導のリハ医学の提案」と題して第5回オーストラリア国際大会を2006年9月1日に実施しました。大会長の武藤佳恭慶応大学環境情報学部教授は、「新しく発見される物理現象を応用して、社会に役立てようと考えている」と述べました。国際大会ポスターをぜひ送ってほしい、福祉の先進地域とされる北欧からは次にヨーロッパで開催されるときには必ず参加するとした連絡回答が相次ぎました。「私たちの研究が、高齢までの生存を獲得した世界の人々の希望につながる。」との実感を強めています。今大会挨拶では学会副会長・国際部会長として、「リハ医学の革新による障害の克服が、人口ピラミッドが逆転するという人類にとって未曾有の変革期に、超高齢社会に佇む人類の救済に他のどのような手段にもまして意義があり、我々の学会の活動がその実現を可能にする」と述べました。

     我々の学会は、「障害を受容するリハ医学、言い換えれば障害を残して寝たきりになる事を受容するリハ医学から、脳の損傷部位を回復にまではいたらないとしても、改善し、身体機能を取り戻すことの出来るリハ医学・医療の確立」を期して、多面からの研究を行っています。

     脳卒中合同ガイドライン委員会(委員長篠原幸人(東海大学神経内科学・教授)は、我が国においては確立された脳卒中ガイドラインはなく、欧米のものをそのまま利用しようとしても認可されている薬剤も異なり、脳血管障害の発症率・死亡率が高く、病型にも差違があるとして、調査を行ないました。

     班長千野直一教授(当時慶應義塾大学リハビリテーション医学)のリハの部会も、調査結果を発表しています。そこでは、「我が国において、脳卒中患者の多くがリハ医療の対象となり、事実、寝たきりの原因の約30%が脳卒中で、後遺症に悩む患者数は約170万人」とし、上下肢麻痺の機能回復に対する種々のリハ治療法に関して調査結果を述べています。また「リハ医療では治療効果が機能・能力評価で判定されるために、機能・能力評価測定方法そのものの妥当性まで検討されている」としています。そして「脳卒中リハビリ医学・医療での治療法、訓練手技などは臨床経験に基づいて行われてきた領域が多く見られ、全般的にはエビデンスの面からは妥当性が十分とはいえず、今後のさらなる研究が待たれるといえよう」と結んでいます。

     日本では、障害を残して寝たきりになり、施設空間と主にベッドを生活範囲にさせられる高齢障害者は、厚生労働省の予測によれば、2025年には230万人に達します(要介護高齢者予測数520万人)。障害の受容を容認するリハ医学の革新が急がれます。

     リハ医学は、障害の受容を一側面に持っています。医学という名称を冠しながら、広範な医学に望まれる疾病・傷害の診断・治療・予防とは異なっているのです。改革に向け、4件の公的研究費を得て、研究を進めています。

自立社会構築のための機器普及プロジェクト(2006年)
  • ―独自のリハビリテーション実施ヘー
    滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 68-69
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     独立行政法人福祉医療機構(高齢者・障害者福祉基金《地方分》研究費による、表題講習会のご案内です。神奈川県中小企業センターにおいて異業種交流グループ連合会(異グ連)の所属会がWAMの助成を得たことは珍しいことです。

     講習会の目的は①講習受講者が独自にリハビリを実施できるようになり、仮に脳血管障害による麻痺があっても克服でき、自立生活を送れるようになる②福祉機器の普及および下肢骨折後高齢者の尊厳の維持と生活充実、介護者の介護負担の軽減が図られ、後期高齢者、下肢骨折後高齢者、脳血管障害の後遺症を持つ高齢者の尊厳の維持と生活充実が期待できる③介護者の介護負担が軽減することです。

     講習会では、牛澤賢二・産業能率大学教授の「“なおる” ということを、あなたはどう思いますか-統計的に“効果がある” とは?」、牧田光代・新潟医療福祉大学教授の「タキザワ式リハの構成と福祉用具利用」、滝沢恭子・湘南健友会長岡病院理学療法士の「どこでも・誰でも・いつでも簡単にできるリハの実技指導と解説」の講演があります。

     この会は異グ連所属であり、構成主体は企業です。今回助成事業実施を契機に、会社中心から個人中心へ変えるため、民間非営利団体(NPO)結成の機運が高まり、「高齢市民が活躍するための社会技術研究会」を神奈川県に2006年度中に結成します。

国際バイオフィリア リハビリテーション学会(高社研)(2009年-2013年)
  • 日本キューバ国交80周年記念大会の開催
    滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 70-71
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

    中南米の医療先進国、キューバで第7回国際大会を開催します。今大会は特に日本キューバ国交80周年事業として、健康と高齢社会関連のワークショップを開催することから、大会会長を共同会長として務めます。私にとって、憧れのカリブの海賊の活躍した島で大会を開くとの意識でカサコ博士を大会長にお願いしました。開催準備が進むとともにキューバ医療の先進性と中南米諸国へ与えている大きな影響と貢献を知りました。その拠点である中南米医学大学でのワークショップ開催には大きな意味があります。そしてそのワークショップでは中南米の諸国からキューバへ医学留学を行っている諸君に私たちの提案している創動運動によるとタキザワ式リハビリをお伝えすることになっています。諸国からの多くの参加者には充実した内容をご提供できる実り多い大会であると確信しております。

  • 滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 72-73
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     8年間代表を勤められたリハ医学の木村哲彦会長から、順天堂大学加齢制御医学講座白澤卓二教授へ会長交代あり、表題は象徴的でした。また、リハ医学は施設基準・配置基準による診療報酬システムを多年用いてきました。これは医学に求められる治癒を基準にしない考え方で、違和感を覚える医師も少なくありませんでした。今般、これらの基準に加え、「回復度基準を用いる」との中央医療審議会の動きもあります。

     第13回大会はリハビリテーション(リハ)医学が更に21世紀型の学問に発展する為に、アンチエイジング医学(加齢に対抗していくのではなく、加齢を制御して適応していく)の視点を取り入れようという試みでした。加齢制御医学では、「元気老人を元気のままで」を実現するべく努力してきましたが、加齢や骨折後の機能低下から廃用にいたる事や、認知症の発現を阻止することは困難でした。その融合に資するものにすることを意図して本大会を開催します。

     今回特記すべき講演は公開市民講座の2題があげられます。大島課長からの講演からも今後の社会保障費の増額が認識できる中で、川合会長の講演と同じ介護を継続する事が可能だろうか、の危惧から議論になりました。現在の社会福祉体制の維持ができず、介護放棄体験が日本社会のトラウマになるのではないか、という危惧です。

     学会はこれを可能にするよう努力を続け、超高齢社会において人々が誇りを持って体験を次世代に伝えられる社会構築を目指しています。新たな研究者・実施者の参加を期待しています。

  • ―なぜ「寝たきり」になるのだろう?―
    滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 74-76
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     要介護高齢者の人数は厚生労働省の統計によれば、2000年の218万人から2007年には451万人と増え、2.06倍になりました。一方、リハビリテーション(リハ)医療の担い手である理学療法士(PT)は社団法人日本理学療法士協会の発表によれば、2000年の会員は2 万3321人(合格者2万6921人)であり、2007年には会員が4万8590人(合格者5万8647人)と会員数で2.08倍、合格者数で2・17倍に増えています。さらに、リハ専門医の数は2007年4月現在1384人で、1980年から毎年30~50人の割合で増加しています。

     国民皆保険のわが国で、リハ医もPTも増え、国民は例外なくリハ医療を受けています。

    その状況で、なぜ要介護高齢者が倍になり、寝たきり高齢者が増えるのでしょうか? 疑問に思うのは筆者だけでしょうか? 

     リハ医療を受けながらも介護を必要とする人は大幅に増えます。社会技術論文への投稿査読から明らかになったことですが、このことを「ウソ」とするリハ医学専門家がいます。

     また、創動運動の研究について厚生労働省の研究費を申請しましたが、審査者に「騒動運動」と言われ、これまでの創動運動の研究は研究ではないと指摘され、評価は5点満点中「1点」でした。

     職分を高度化し、効果的なリハの実現を目指す人も多いのですが、リハ医療費の給料で自分の生活を守ろうという人にとっては、リハ医療を受けながらも介護を必要とする人が増える事実は「ウソ」であってほしいのでしょう。

    我々は、こうした状況を転換するための研究を続けています。

    診療報酬システムとして施設基準・配置基準を用い、治癒を基準にしないできたリハ医学に「回復度基準を用いる」、そして「他動的介入から自律的運動リハに手法が変化する」とした変化が起きても、従事される関係者がこれまで培ってきた経験や、患者さんとの信頼関係は損なわれることはありません。

     我々の学会は、リハ医学に大きな転換・転機が訪れるときこそ、団塊世代一学年200万人が要介護適齢期に至る間に広い領域の学問を吸収し発展させることに貢献したいと考えています。高齢になった団塊世代の活躍を実現し、一層の社会貢献が実現できると確信しています。

  • 第7 回キューバ大会の開催
    滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 77-79
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     本年は国際学会のほか、日本との国交80周年に当たる記念事業としてキューバ政府の支援を受け、また外務省の後援事業として外務大臣のご許可をいただき、「科学技術の知と人類の長寿化に係る社会保障政策」に関し、技術移転や問題探索を中心にワークショップを開催しました。

     11月24・25日の大会は、同国唯一の全国紙「グランマ」でも大きく報道されました。学会では多面的な討議が行われました。癌患者のリハビリテーションなど興味深い報告の中で両国の長寿研究へのアプローチが明らかになり、また今後の課題について閉会後も昼食会・夕食会や病院視察を通じて討議されました。また、ワークショップではキューバ政府が10年前に設立した、ラテンアメリカ諸国からの医学留学生を教育することを目標としているラテンアメリカ医科大学で、ポーランド科学アカデミー会員のポコロフスキー医学博士と私が100人程度の教員、修士課程留学生を対象に、バイオフィリアリハビリテーション(タキザワメソッド:米国特許と創動運動)の可能性について講演しました。第1回大会のサイパン政府との共同開催によってパラオ共和国にその方法が普及したように、中南米各国への普及の可能性を強く感じました。著作4冊を、日本語著作であっても在日キューバ大使館経由で図書館に配置したいとの希望があったほどでした。キューバでは一人の医師に対し179人の住民と、同500人の日本とは大きく異なっており、その現状を知るのも一つの目的でした。学会ではその現状が報告され、また地域の1次診療施設の視察もしました。私たちは、乳幼児死亡率や長寿に関して共通の認識が基盤にあることを確認しました。

     我々の学会活動は、各国政府との共同開催や昨年の世界保健機関(WHO)の後援に見られるように世界各国から期待されています。

     誕生から死に至るまでの人の一生を、自然の支配から人の意思の下に移したと理解しました。死生の自然な仕組みが変質したのであり、胃瘻造設(経口摂取困難患者へのチューブによる栄養管理処置)による生命維持などのあり方にまで議論が至りました。今後共に研究を進めたいとキューバ薬理学会と意見が一致して、来年の同学会における招待講演を依頼されました。

     自立社会確立に向けて人々の意識改革も重要と思われます。新たな課題として、生活者自立型の社会が実現できる社会保障研究へ、多くの研究者の参画を期待しています。

  • 滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 80-84
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     2010年10月29日-11月1日の第8回国際大会は中国リハビリテーション研究センター(CRRC)開催の第5回北京リハビリテーション国際フォーラムと併設で、オーガナイズドセッションとして実施しました。中国にはすでに日本の総人口を超える1億6千万人の60歳以上の高齢者がいます。人口比では12.5%になっています。チャイナネット(華僑向けの国営情報機関:国務報道弁公室発表)に拠れば、「国民の平均寿命は73歳で、建国以来60年の間医療衛生システムが全国に普及し、疫病予防と治療の能力も向上したことによる」、又「障害を持ち自活できない高齢者は960万人に及ぶ」とされています。さらに上海市の高齢者人口比率は2030年にはその人口の40%に達するとされています。

     私の基調講演「中国・日本そして世界各国の高齢社会に対するバイオフィリア リハビリテーション」は、この事実を示した上で「エイジングクライシス Aging Crises」の可能性を述べ、高齢者の自立生活をできる限り維持し、自分で生活することが持続可能な社会確立に必須であると述べました。そして現在のリハ医学の持つ問題点を明示し、その解決に向けた手法の提示、これまでの研究の実績、研究の現状と今後の概要を示しました。すなわち「障害の受容」から「障害の克服」を実現するリハ医学への再構築です。この講演を聴いたCRRC副院長のDong Hao医学博士は講演後の討論で、国際学会への積極参加を聴衆に呼びかけ、これまで本誌でお知らせしてきたタキザワ式リハの推進を表明され、さらには講演が中国へ「手法導入の種をまいた」と述べました。

     中国は孝の国といわれます。大会後の懇親会でCRRCのLi Jianjun院長は私の基調講演の「Aging Crises」をあげ、中国では「老人は国の宝」であり、老人に関する問題は起こりえないと述べました。

     私は「厚生福祉」誌に1998年から寄稿していますが、この研究を1987年に志しました。一人の理解者も無く、家族内に一人目の理解者を得るのに7年を要しました。関連研究の1987年スタート時の日本の国民意識を思い起こさせます。

     創動運動によるタキザワ式リハは効果が高く、効率的です。導入によりインペアメント(解剖学的機能損傷)の克服が可能です。現在では、研究費も10年以上にわたって給付され、その機序解明も遠くないと思われます。そして、この普及実現により高齢者自身が障害を得ても自立を基調とする新たな暮らしをする事ができます。そして、次世代へ過重な負担をかけずに、世界中でAging Crisesを食い止める事ができます。

  • 滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 85-87
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     著者の講演と著作を基礎に、「『介護依存から自立へ』を実現して、依存せざるを得ないとする高齢者の意識を変え、高齢者の増加を負の要因としない持続可能な超高齢社会の構築、そして新たな文明の確立に関する考察」を、次の諸点から述べています。

     1.門外漢の挑戦、

     2.米国で認められた方法特許、

     3.エイジングクライシスとライフステージの拡大:社会保障関係費逼迫の予見、人口ピラミッドが逆転することによる社会崩壊「AGING CRISIS」を指摘、「ライフステージの拡大」新たな神話の提案、「バイオフィリア」の語源、

     4.国際活動の推進、

     5.機序の解明に向けて、

     6.パラダイムシフト、

     7.二つのパラダイムシフトが必要、

     8.市民の要求、

     9.個の確立と自立

     江戸幕府を開いた徳川家康は「民はよらしむべし、知らしむべからず」を治世の要諦としました。以来、長い間日本人は、官への依存を美徳として、正しく情報を得て自ら判断し行動することはあまりありませんでした。個の確立と自立は望まれなかったのです。情報を伝えないことから始まった年金騒動を振り返れば、これは現在まで続いていたように思えます。国の借金は地方分を加えると1千兆円を超えています。もう官へ依存できない状態になっています。

  • 滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 88-89
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     ワークショップバイオフィリア2009では中南米の諸国からキューバへ医学留学中の諸君に私たちの提案している器具を用いた患者自身の健側運動患側受動の運動(創動運動と名付けました。)を中心とした一連のマニュアル化された自律訓練リハ(タキザワ式として米国で特許されています。)をお伝えしました。ワークショップの開催から生まれる、日本発のリハ技術の輸出は人類にとり、大きな福音になるものと喜んでいます。

     特にルーマニア開催のバイオフィリア2011に関しては、ぺトレ・ストヤン駐日本ルーマニア代理大使から、紹介した各国政府の対応を踏まえ、開催に対する感謝状をいただきました。

     こうした事実を紹介します。

  • 滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 90-94
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     2011年9月29-30日の第九回国際バイオフィリアリハビリテーション学会の内容を紹介しています。各国の発表のほか、我々の学会に特徴的な内容を紹介しました。

    筆者は文部科学省指定研究機関バイオフィリア研究所教授として、参考資料1)に示す臨床研究の責任者でもあり最初の報告者に指名されました。

     下肢の他動運動と創動運動の脳機能に与える効果を頭部機能的近赤外線分光法(fNIRS)により調べ、それぞれの脳の運動野(運動を司る脳の場所)を中心に、オキシヘモグロビン(OxyHb、酸素を運んでいるヘモグロビン)の変化の多重検定による結果を比較しました。その結果、理学療法士による他動運動と自分でする創動運動では、脳活動が膝屈伸運動に係る創動運動で、広範囲に活発なことがわかりました。統計的検定の結果で明らかになりました(P<0.05) 

     我々はこれらの結果から、他動運動を、ほぼ自力で実施できる創動運動で代替できる可能性を示せたと総括しました。簡単に言うと他動運動をせずに創動運動をすればよい可能性が示されたのです。研究対象の社会医療法人若弘会介護老人保健施設竜間之郷で、今後タキザワ式リハプログラムの内容を検討し、必要な内容を当施設で実施中のプログラムに取入れ、より有効なリハプログラム開発に努めたいと纏めました。

     その他の研究も興味深いものです。

  • 滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 95-100
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     ワークショップバイオフィリア2011は、在ルーマニア日本大使館(外務省)、在日本ルーマニア大使館、ルーマニア政府観光局及び同東京支局等のご支援の下、同国の脊損学会と脳科学の先端研究を基礎としたニューロリハビリテーション学会の会長を務めるオノセ医学博士と私を大会長として、2011年9月25日にルーマニア国ブカレスト市で開催されました。

     本稿で、ルーマニアワークショップで行った基調講演を基礎に、「勝利をおさめる可能性(持続可能な超高齢社会の構築可能性)」を読者諸兄にご理解いただき、共にその実現に努力していただきたいとの願いで、講演と同様に道程に沿って説明し、今後を展望したいと存じます。

     リハ医学というと、一番わかりやすい例は脳卒中の後遺症である片麻痺の治療です。「動かない手足が動くようになるといいな」と患者さんは「曲がらない手足を理学療法士に曲げてもらう、伸びない手足を伸ばしてもらう」、を基本に治療を受けてきました。昔藤沢市民病院で、リハの現場で、女性理学療法士(PT)に神奈川県警の刑事さんが「先生お手柔らかにお願いします」と言ったと聞きました。「どうしてですか」と聞いたら、「リハは痛い」と聞いています、という答えだったそうです。

     昔、罪を白状させたり、秘密を聞き出すために、伸びない以上に手足を伸ばしたり、無理に曲げて捻りあげたりした事がありました。

    これを思えば確かに痛そうです。しかも治る人は治り、治らない人はあきらめさせるのが現状です。脳卒中は130万人を超える患者さんがおり、半数の人々が後遺症をあきらめています。

     以前本誌で紹介されたように「神経・筋促通法について、私自身の経験を反映した結果、効果が得られない」とする医師もいます。1959年以来約50年をリハビリテーション科の医師として勤めた福井圀彦医学博士が発表したものです。

     こうしたリハ医学の治療について、私は再構築が必要であると主張し、これまで研究を進めてきました。この事を明確にお伝えした上で実施した本年のワークショップを振り返り、そこでお話しした「希望の革命はじまる」について、紹介いたします。

  • 滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 101-103
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     リハビリテーション(リハ)医学の再構築を通じ、持続可能な超高齢社会の構築を目指している本会は2013年10月15日に、在日本イタリア大使館と在イタリア日本大使館の後援の下、イタリア共和国キエーティ市で第10回国際大会「2つのパラダイムシフトの実現にむけて;リハ医学の再構築と持続可能な超高齢社会への高齢者の貢献を可能にする意識転換」を開催しました。

     本大会は、在日イタリア大使館からも評価されており、科学技術担当官からの感謝状に反映されています。以下日本語で記載された内容をご紹介します。

    感謝状

     「貴学会は各国においての国際学会を行い、リハ医学向上を通じ、各国国民の福祉の向上に貢献しています。その寝たきり老人等の高齢障害者の機能回復に関する活動は、各国政府から高く評価されています。

     本年、イタリア国キエーティ市において、第10回国際バイオフィリアリハビリテーション学会大会が開催されることとなりました。今回の大会の御成功と今後共この分野での二国間の協力関係の増進が益々強化されることを心から祈念いたします。

    開催に当たる関係者のご努力に敬意を表し、ここにイタリア政府を代表し、開催関係者を代表される国際バイオフィリアリハビリテーション学会理事長滝沢茂男氏に本感謝状を贈呈します。」以上全文をご紹介しました。また、甘利明経済再生担当、社会保障・税一体改革担当内閣府特命担当大臣から祝電を頂きました。本年2月に発行した「英文ジャーナル、バイオフィリア」には、国立大学法人岡山大学森田潔学長からご祝辞を頂いています。

     こうしたご支援から、我々の活動が社会のお役に立つ日が近づいているように思われます。読者諸兄の我々の活動へのご参加を期待します。

  • 第10 回イタリア大会の開催
    滝沢 茂男
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 104-106
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     本会は2013年10月14―15日に、在日本イタリア大使館と在イタリア日本大使館、福祉用具の総本山とも言えるテクノエイド協会・常陸宮正仁親王殿下を総裁に奉戴する日本障害者リハビリテーション協会の後援の下、イタリア共和国キエーティ市で第10回大会を開催しました。

     天正遣欧少年使節団、バチカン、ローマ帝国など日本とイタリアの間には、豊かな歴史や文化、そして交流があります。またバチカン、ローマ帝国というと12使徒といわれる少数の人々から始まった世界中に20億人を超える信者がいるキリスト教を思い浮かべます。さらに80歳を超える平均寿命という共通点もあります。

     この開催に併せ、学会ホームページの更改を行い、我々は「2つのパラダイムシフトを実現する研究と成果の普及を目的とする」を公開しました。

     すなわちこの学会の目的は、第1のパラダイムシフト「リハ医学の再構築」により、人類の長寿命化の世紀に、人類の福祉の向上に欠かすことのできない健康寿命の延伸を、複合領域(医学・工学(機械・情報)・社会科学)の研究推進を基礎に、「自律的リハビリテーション(リハ)手法をリハ医療に主導的手法として取り込む」事により、リハ医学の再構築を行い、第2のパラダイムシフト「高齢になって、障害を得ても自立生活を送り続けることができる、そうするという意識転換を実現する」を可能にするものです。

     我々のすすめる「リハ医学の再構築」を考えると、これまでの「我が国のリハ医学の人的変化:2012年までの10年ほどでリハ専門医が810人から1787人と倍増し、理学療法士が470%10万人以上に増加した。ひるがえって担当者の増加に伴い、減少すると思われる要介護者は2012年に554万人と2000年の218万人から倍増」の状況は、高齢者の増加が大きな要因とはいえ、リハ医療を再構築する必要があることを示唆しています。

     いまは文字通り12使徒にもたとえられる少数の研究チームです。そうした現状ですが、我々の志は、歴史上初めて高齢者が年少者より多い社会(日本・イタリア・世界の多くの国々)において、研究を通じて2つのパラダイムシフトを実現し、超高齢社会を持続可能にすることです。

     20億人以上の信徒を持つようになったキリスト教を振り返れば、「塊より始めよ、少数のグループによる活動が歴史的成果を導く。」です。本大会がその基礎になったものと確信しています。読者諸兄のご参加を期待しています。

バイオフィリアリハビリテーション学会名誉会長(2006年)
  • 第9 回大会基調講演
    福井 圀彦
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 107-111
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     本稿は第九回バイオフィリアリハビリテーション学会において行った講演をまとめた。表題の通り、現在のリハ医学の中核になっている理論に関する総括調査を引用し、神経筋促通法について自身の経験を反映した結果、効果が得られないとしてまとめた。

     著者の経歴は、東京帝国大学で工学博士になり、その後1959年に東京大学で医学博士になった。リハビリテーション(リハ)科の医師としては神奈川県立七沢リハビリテーション副院長、長野県の鹿教湯リハビリテーション研究所長を務め、その後2005年の11月まで介護老人保健施設「湘南の丘」施設長として勤務した。

    「患側優先の神経筋促通法によるリハビリテーションを見直す必要がある。」とする主題を以下に示す項で述べた。

    1.第9回大会基調講演、

    2.リハビリテーション医学、

    3.神経筋促通法、

    4.神経筋促通法の効果、

    5.片麻痺であまり効果のない例、

    6.神経幹細胞の新しい知見、

    7.神経幹細胞の障害部位への誘導理論、

    8.片麻痺患者に有効と思われる例、

    9.高齢障害者の歩行再獲得、

    10.両側で片麻痺上腕の訓練、

    11.痙性、拘縮の予防、

    12.回顧と反省

     神経筋促通法の理論や手技は進歩に伴い、片麻痺の改善を期待させるが、診察現場で片麻痺患者を例に40年昔と現在と比較すると、診察結果は昔と変わっていない.神経筋促通法が治療に有効との感じを受けない。患側優先で総合的な協調運動を行う事は、運動パターンの正常化には適するとされるが、実用に繋がるまでに時間を要し、その間に健側・躯幹の廃用をきたす。健側優先の法では患側優先の場合よりも健側であるため放電による促通の効果が大きいとみられ、リハの途中で、廃用状態で臥床継続状態になってしまう患者が少なく、実用に繋がる事が多い。近年の神経幹細胞の新生力に関する研究から、神経幹細胞が、損傷部位の機能回復に役立つ事も解明され、健側優先の運動リハの持つ有効性の機序解明も期待できる。また、神経伝達物質産生細胞として、神経系リハの領域に影響を及ぼすと考察する。

後記
  • ‐バイオフィリア リハビリテーション研究‐ 特集号に向けて
    長澤 弘
    2017 年 2017 巻 1 号 p. 112-
    発行日: 2017/10/03
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー

     1995年、神奈川県および東京都の理学療法士を中心として「21世紀リハビリテーション研究会」が誕生した。寝たきり高齢者を少しでも削減したいという強い思いから、医師をはじめとして工学・経済学・環境情報学・公衆衛生学・統計学・栄養学など、学際的な広まりとして会員が参画し、少しずつ発展を遂げてきた。

     2002年には、研究会から学会組織へ改変し、バイオフィリア リハビリテーション学会が成立した。この時に生まれたのが、雑誌「バイオフィリア リハビリテーション研究」である。その後毎年の発行を継続してきた。2015年には、海外からの会員も登録され、必然的に英語論文掲載が求められ、英文雑誌「BIOPHILIA」が刊行された。国内からの日本語論文雑誌への投稿が減少してくる中で、今後は国際的な発信の重要性を鑑み、日本語論文雑誌を発展的に解消し、英文雑誌として一本化することになった。これまでに論文を投稿していただいた研究者に感謝申し上げるとともに、英文雑誌への投稿を期待し歓迎する次第である。

     

     今後、2025年問題は目前の課題でもあり、その後は我が国に限らず、国際的な課題へと繋がっている。バイオフィリア リハビリテーション研究が、世界の人々のQOL向上へ少しでも貢献できることを願って、国内誌の最終的な特集号への挨拶とさせていただく。

     

     今号は総会の決議を経て、研究の必要性認識以来責任理事として、「研究組織の創設、研究の企画、研究資金の獲得、研究実施、報告」を推進してきた滝沢茂男常務理事退任の記念号になっている。掲載記事から本学会の歩みをお伝えできることは喜ばしい。

     これまでの皆様のご協力に対して感謝申し上げる。

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