海洋深層水研究
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7 巻, 2 号
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  • 岡本 一利, 高瀬 進
    2006 年 7 巻 2 号 p. 1-6
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    海洋深層水 (以下, 深層水) を利用した養殖化の観点から, 通常, 淡水で養殖されるニジマスの飼育実験を行った.ふ化してから約9ヶ月間淡水で飼育された平均尾叉長8.6cm, 平均体重9.5gのニジマス111個体を, 深層水へ徐々に馴致しながら飼育を開始した.生残率の推移, 体色, 摂餌行動より, 飼育ニジマスは1週間で深層水に馴致したと判断した.飼育開始7日後までの生残数は31個体で, サイズ別生残率は, 尾叉長8cm未満が0%, 尾叉長8cm以上11cm未満が39.7%, 尾叉長11cm以上が100%であった.飼育開始330日後には9個体が生き残り, 平均尾叉長32.9cm, 平均体重628.6gで, 飼料効率は55.6%, 体色は銀色を呈し, 通常の淡水養殖の出荷サイズを超えるサイズまでの飼育に成功した.今回の飼育結果に基づき, 深層水でニジマスを養殖する場合の飼育開始から出荷目標サイズまでの所要日数と歩留まりについて推定した.海洋深層水の低温性, 清浄性, 高塩分により, 新タイプの商品の養殖生産が可能であることが示唆された.
  • 二村 和視, 岡本 一利, 高瀬 進
    2006 年 7 巻 2 号 p. 7-11
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    著者らは, 先に, 駿河湾深層水 (水深397mから取水, 以下, 深層水) がサガラメとカジメの種苗生産に有効であることを明らかにし, 水温と光の影響についても報告した.本研究では, 深層水または表層海水 (水深24mから取水) を掛け流した透明パイプ内でサガラメとカジメの幼体を培養し, 0.5-9.4cm・sec-1の4段階の流速条件で生長を比較した.サガラメは約14℃ で24日間, カジメは約18℃ で16日間, いずれも自然光下で培養を行った.深層水中では, 2種の葉長の相対生長率は調べた範囲 (ただしサガラメでは9.4cm sec-1が欠測) の流速に対してほぼ一定で, サガラメで4.9-5.2% day-1, カジメで9.1-9.7% day-1となった.しかし, 表層海水中では, 流速の増加に伴い増加し [サガラメ: y=0.40Ln (x) +4.47 (r2=0.99);カジメ: y=0.84Ln (x) +7.99 (r2=0.99)], 最大でそれぞれ5.4, 9.7% day-1となった.以上, サガラメやカジメは深層水を用いれば, 流速の多少に関わらず培養できることが示唆された.
  • 辻本 良, 松村 航, 渡辺 健, 大津 順
    2006 年 7 巻 2 号 p. 13-22
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    富山湾の水深321mから汲み上げた海洋深層水を利用して, エゾァワビ, マッカワ, マコンブの順に飼育する多段養殖システムの開発研究を行った.このシステムのなかで, 栄養塩 (アンモニウム塩, 硝酸塩+亜硝酸塩及びリン酸塩) 濃度の日周変動と収支を調べた.エゾアワビは, 屋内水槽 (60 l 容量×2基) に260個体, 6.19kgを収容し, 18℃ に加温した深層水を用いて飼育した.この排水を屋内水槽 (400 e 容量) に注水し, マッカワ30個体, 21.0 kgを飼育した.さらに, マッカワを飼育した排水を屋外水槽 (3600 l 容量) に注水し, マコンブ600藻体, 55.8kgを培養した.マッカワ水槽とマコンブ水槽には, 深層水原水 (3℃) を混ぜることによってそれぞれ14℃ 及び10℃ に調温した.エゾアワビには, マコンブ水槽で培養したマコンブを剪定し, 16: 00に1水槽あたり450gを給餌した.マッカワには, 9: 30に配合餌料95gを給餌した.2004年8月25日にそれぞれの水槽の注水と排水の栄養塩濃度を毎時測定し, 水槽ごとの栄養塩収支を求あた.その結果, エゾアワビ水槽とマッカワ水槽において栄養塩の排出が, マコンブ水槽において吸収が確認された.このシステムにおける栄養塩濃度には2っの特徴が確認された.すなわち,(1) マッカワ水槽排水におけるアンモニウム塩濃度の上昇とマコンブ水槽による吸収 (水槽段階による変化),(2) エゾアワビ水槽におけるマコンブ給餌後の硝酸塩+亜硝酸塩とリン酸塩濃度の上昇 (日周変動) であった.マコンブの栄養塩吸収割合を給水と排水の栄養塩濃度差から算出したところ, 供給量のうちアンモニウム塩, 硝酸塩+亜硝酸塩及びリン酸塩をそれぞれ, 38%, 6%及び12%吸収していた.マコンブによる栄養塩吸収割合が低かったことから, マコンブ培養量を増加させることによって, さらに栄養塩を効率良く利用できるシステムの構築が可能であることが示唆された.
  • 岩崎 誠二
    2006 年 7 巻 2 号 p. 23-30
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    深層水に含まれる窒素・リン等栄養塩を利用したバイオレメディエーションの基礎実験として, 深層水, 表層水及びそれらの1: 1混合海水における1, 10及び100mgl-1のフェノール分解性の比較検討を行った.その結果, 上記の各種海水におけるフェノールの分解速度は, おおむね1: 1混合海水>深層水>表層水であった.1: 1混合海水では, 10mgl-1のフェノールは, 1日間の分解試験で, 90%以上分解された.細菌数は, 混合海水では初期値が104CFU ml-1のオーダーであったが, 2日間で106CFU ml-1程度まで上昇した.表層水は微生物数が多いが栄養塩類に乏しく, 深層水は栄養塩類が豊富であるが微生物数は少ない.1: 1混合海水では, 微生物及び栄養塩類を相互に供給する結果となり, 化学物質を分解する上で適切な系が形成されたと推測される.本結果から, 深層水の新たな利用方法として, 深層水を利用したバイオレメディエーションの可能性が示唆された.
  • 戎井 章, 村上 宙, 小柳津 義人, 榎 牧子, 兼広 春之, 若林 信一, 渡部 俊広
    2006 年 7 巻 2 号 p. 31-35
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    海洋に流出した漁網等によるゴーストフィッシング問題の解決の一っとして生分解性漁網の利用が検討されている.海水中における生分解性プラスチックの分解性に関する研究は少なく, 特に深海域における分解性についてはほとんど知見がない.本研究では, 富山県水産試験場の深層水汲み上げ施設の飼育水槽 (流水式: 常圧, 平均水温0.6℃) 中で, 生分解性プラスチックのポリカプロラクトン (PCL) モノフィラメントの浸漬試験を行い, 深層水中における生分解性の評価を行った.0.6℃ の深層水中に浸漬したPCL (110デニール) の強度は浸漬時間とともに大きく低下していき (1ヶ月で約20%, 6ヶ月で約65%低下), 8ヶ月後には強度はほぼ0にまで低下していた.電子顕微鏡観察結果より, 浸漬時間とともに繊維表面に小さな円形の穴が多数生じているのが認められた.繊維表面上に見られる円形の穴は浸漬水中に存在する微生物 (プラスチック分解菌) による分解の進行にともなって起こったものと推測された.これらの結果から, 生分解性プラスチックが低温の海洋深層水中で十分に分解することが確認され, ゴーストフィッシング軽減にっながることが示唆された.
  • 鵜垣 厚夫
    2006 年 7 巻 2 号 p. 37-40
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
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