生命倫理
Online ISSN : 2189-695X
Print ISSN : 1343-4063
ISSN-L : 1343-4063
23 巻, 1 号
選択された号の論文の31件中1~31を表示しています
  • 原稿種別: 表紙
    2013 年 23 巻 1 号 p. Cover1-
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2013 年 23 巻 1 号 p. App1-
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 目次
    2013 年 23 巻 1 号 p. Toc1-
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 目次
    2013 年 23 巻 1 号 p. Toc2-
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 仁志田 博司
    原稿種別: 本文
    2013 年 23 巻 1 号 p. 3-
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 伊吹 友秀, 児玉 聡
    原稿種別: 本文
    2013 年 23 巻 1 号 p. 4-13
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    着床前診断の技術的な進歩は、日産婦の会告で許容されている以外の目的での利用の可能性を人々に拓いている。そこで、本論文では、将来的なPGDの応用可能性を見据え、その利用に関する倫理規範や行為指針について考察することを目的とし、文献調査に基づく理論的な研究を実施した。中でも、親には最善の子どもを産む義務があるのだという生殖における善行原則は、多くの賛否の議論を巻き起こしているため、この原則をめぐる欧米の論争を整理し、その意義と限界を分析した。その結果、生殖における善行原則が常に守ることが要求されるような絶対の義務であるか、それとも、ロスの一応の義務のような義務であるのかについて、原則の擁護者らと批判者らの間で解釈に対立があった。そこで、本論文では、この論争に一つの解決の糸口を見出すために、原則に従うべき「よい理由(good reason to do)」について考察を加え、従来の功利主義的な議論の限界を指摘し、徳倫理学的な観点からの補完が新たな理論的可能性を持つのではないか、ということを提言した。
  • 寿台 順誠
    原稿種別: 本文
    2013 年 23 巻 1 号 p. 14-22
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本論文は、死別による悲嘆を克服する個人の心理的作業である「グリーフワーク」と、悲嘆の公的(宗教的・民俗的)表明である「喪の儀礼」について検討するものである。伝統的(近代主義的)モデルでは、グリーフワークの目的は遺族が故人との関係を断ち切って、自律することだとされてきた。しかし、近年では、むしろ遺族と故人との間の象徴的な絆の継続を重視する新しいモデルが優勢になり、そこでは日本の祖先崇拝が「継続する絆」を示すものとして評価されてきた。ところが、当の日本では少子高齢化や個人主義化によって伝統的な儀礼が衰退しつつあり、葬送の領域でも盛んに「自由」(自己決定)が主張されるようになっている。しかし、それだけでは無秩序な商品化(格差)への歯止めにはならない。従って、今後、「喪の儀礼」は「人間(死者)の尊厳」を根拠にして執行されるべきである。尊厳をもって故人を遇するとは、その生涯を語り継ぐことである(以下、適宜、本文冒頭の【概念図】参照)。
  • 一家 綱邦
    原稿種別: 本文
    2013 年 23 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    従来、本邦では、研究倫理と臨床倫理の区別が曖昧なままに、医学研究の倫理的観点からの審査と日常的に臨床で生じる倫理的問題への対応という2つの任務を、研究倫理審査委員会と病院内倫理委員会に振り分けることなく単一の倫理委員会に担わせてきた。結果的に、様々な資源が不足する倫理委員会は機能不全を起こし、前者の機能以上に公的ルールによる規律が乏しい後者の機能は有効に来たされていない。それにもかかわらず、臨床倫理の問題に対する諸ガイドラインは、臨床の医療者には倫理委員会の利用を促し、社会に対しては倫理委員会が機能するように説明をする。病院内倫理委員会の普及が進まず、有効に機能しないことの要因は、病院内倫理委員会に関する理解が本邦で十分でないことにある。適正な病院内倫理委員会を利用することの倫理的・法的意義を明らかにし、その意義を果たすために備えるべき病院内倫理委員会の要件について考えることが、我々の役割であろう。
  • 川崎 富夫
    原稿種別: 本文
    2013 年 23 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    最近、生体肝移植の存在を前提に重篤な肝硬変について検査・治療等に当たることが病院に要求される医療水準であるとする判決がなされた。健康人ドナーからの臓器採取を伴う生体移植について、医師倫理規範の観点から検討する。判決は生体肝移植を、実施例や施設が相当数に及び累積生存率も高いことから安全性と有効性が是認されたとする。そして患者へのインフォームド・コンセントの方法や内容こそが大切であるとする。しかしこの判決は、レシピエントの「安全性と有効性」ならびにインフォームド・コンセントの基準を、本来当てはめてはならない健常人のドナーに当てはめてしまったものである。健康の維持は健常人であるドナーの不可侵の権利であるため、そのようなドナーへの手術を正当化できる医学的理由がない。生体移植の是非は、広く医師の倫理規範にかかわることから、移植推進の立場の医師だけでなく、まず市井の医師を含めた医師全体での議論が必須である。
  • 今井 竜也
    原稿種別: 本文
    2013 年 23 巻 1 号 p. 38-45
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    海外に渡航して医療を受ける、いわゆる「医療ツーリズム」は、自国の医療水準では十分な治療を受ける機会を得られない人が先端医療を受けるため、先進国に渡航するという構図がこれまで一般的であった。だが今日では、単に機会格差を解消するためだけでなく、規制格差や経済格差を利用する形で、医療技術の発展した発展途上国に渡航し、自国よりも格安に、あるいは自国では受けられない、受けにくい治療を受けるために渡航するケースが増えている。とりわけ第三者生殖医療、臓器移植のように、人間の身体を医療資源として利用する医療ツーリズムは、医療技術の性質に付随する様々な問題や、規制格差・経済格差利用の問題が色濃く反映され、医療ツーリズム全体の規制の方向性を考える上でも、色々と参考になる論点が多い。本論文では、規制の方向性が固まりつつある渡航移植・移植ツーリズムとの比較から、第三者生殖ツーリズム規制の方向性を提唱する。
  • 稲村 一隆
    原稿種別: 本文
    2013 年 23 巻 1 号 p. 46-53
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本稿は、リベラル優生学の問題点、特に親が自分の受精卵に特定の遺伝子を挿入することによって子供の能力を増強しようとする積極的優生学の試みが、各人は自分の生き方を選択する権利を持っているというリベラリズムの基本原則に適合するかどうかを検討している。リベラル優生学によれば、子供の遺伝子を変えることと環境を変えることは同じように評価すべきである。しかし本稿の見解では、環境を変える場合、親は子供の意向を配慮しているが、遺伝的介入の場合、親は子供の反応を全く受け取ることなく、自分の望みを押し付けている。したがって親は「生殖の自由」を持っているが、単なるエンハンスメントを目的にした遺伝的介入を行う自由はないと本稿は議論している。また本稿はリベラル優生学に関する、カス、ハーバーマス、サンデルによる批判を検討し、これらの批判は人格に関する遺伝要因を強調しすぎている点を指摘し、人格に関する遺伝と環境の複合要因を認めたとしてもリベラル優生学の非リベラルな性質を指摘できることを示している。
  • 横瀬 利枝子
    原稿種別: 本文
    2013 年 23 巻 1 号 p. 54-62
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本稿では、国のハンセン病患者に対する強制隔離政策が続く中、社会復帰を果たした6名の女性に聞き取り調査を行い、女性退所者特有の苦悩を検討した。その結果、誤った医療政策の影響から、多くの女性は、退所後も子どもを持てないと考えており、子どもを産んだ女性も、周囲からの羨望と嫉妬に苦しんでいた。また、関係性を解体された女性たちは、今も母親との関係回復ができず、他者との関わり方に困惑していた。さらに、女性たちは今、国から受けた艱難と、国費による安堵な生活との狭間で葛藤していた。また療養所の内外を問わず、女性たちは、女性同士の相互監視のような確執に翻弄されていた。疎外は、疎外された人々の中にも生まれている。一方、多くの女性が、夫との関係は、性差も責任も五分五分で、同じ病を経験した同志であると語った。この傾向は男性にも見られた。この意識こそが、これまで女性特有の苦悩が見え難かった所以の一つと推測される。
  • 児玉 正幸
    原稿種別: 本文
    2013 年 23 巻 1 号 p. 63-71
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    平成24年7月11日付読売新聞紙上に、大谷徹郎医師が流産予防目的で、日産婦学会未承認の染色体数的異常の検査に新型PGDを無申請で適用したと公表した。それに伴い、日産婦学会は7月27日に【「着床前診断」報道に関する日本産科婦人科学会の声明】を出して、「その行為を決して容認しない」と旗幟を鮮明にした。そこで本稿では、大谷医師の画期的な治療成果が惹起する新事態と新型PGDの適用に際して今後解決されるべき生命倫理のボトルネックを指摘するとともに、そのボトルネックについて倫理的考察を加える。日産婦学会の方針は論理的整合性を欠く。
  • 神馬 幸一
    原稿種別: 本文
    2013 年 23 巻 1 号 p. 72-78
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    2012年のノーベル経済学賞は「安定配分理論とマーケットデザインの実践」に関する業績に与えられた。ここにおける数学的基礎理論と経済学的実践は,臓器マッチング体制の確立という具体的な成果を導いてきた。生体育移植における多くの事例では,他者に無償で腎臓提供をしたい場合であっても,当事者間における医学的適応性の問題により提供を諦めなければならないことがある。しかし,この臓器マッチング体制により実施される組み直し腎臓交換は,その問題を解消する。すなわち,この仕組みは,医学的適応性に関して問題を有する複数の腎移植当事者を組み換え直すというものである。これは,臓器売買の場合と異なり,無償提供の意思を結び付ける画期的な発想であるとも評価できる。本稿では,この臓器マッチング体制の様々な手順内容を確認した上で,これらの新しい生体間移植医療の手法における倫理的問題を検討する。
  • 飯島 祥彦
    原稿種別: 本文
    2013 年 23 巻 1 号 p. 79-85
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    臨床研究に関する社会的関心が高まり、「研究倫理コンサルテーション」は臨床研究の倫理審査において、必要なシステムとなってきている。しかしながら、「研究倫理コンサルテーション」の立ち位置・方法は研究機関により様々である。「研究倫理コンサルテーション」には、それの目的や概念は何か、また、「研究倫理コンサルテーション」を担当する者にはどのような能力が必要とされるのかといった、多くの解決しなければならない問題がある。「研究倫理コンサルテーション」を担当する者は、研究を推進するとともに、被検者のリスクを最小化しなければならないジレンマに直面し、臨床研究を実施するべきか否か苦悩することになる。このような困難な職務を遂行するためには、このジレンマを公共的問題と捉え、公共的に決定するシステムにより解決を図るべきである。また、「研究倫理コンサルテーション」を担当する者は、他の部署から独立した専門職として遇されるべきであり、守秘義務、誠実義務、利益相反の弊害防止などの職業上の義務を負う。本稿では、専門職として、「研究倫理コンサルテーション」を担当する者に課されている職業倫理を考察することで、「研究倫理コンサルテーション」が抱える問題点を明らかにしていきたい。
  • 倉田 真由美
    原稿種別: 本文
    2013 年 23 巻 1 号 p. 86-94
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    日本は脳死移植に先行して生体移植が普及するという世界でも類を見ない経緯を経て、生体部分肝臓移植が末期肝不全患者の治療法として定着しつつある。本研究は肝移植の主流である生体肝移植に着目し、日本で生体肝移植がどのように適応を広げ普及したのか、普及過程を整理分析し、今後検討すべき課題を明らかにすることを目的とした。生体肝移植は緊急性から実績を積み重ね、ほとんど社会的に議論されることなく今日まで順次移植適応を広げてきた。当初と比較すると肝移植の適応疾患は大きく変化し、現在はウイルス性肝硬変・肝細胞癌が主要な適応疾患となっており、C型肝炎における移植後再発、肝細胞癌の移植適応基準などが問題となっている。生体肝移植の適応についてはこれまで医師に一任してきたが、家族で取り組む生体肝移植の適応については、長期的なレシピエントの移植後のQOLを十分考慮した、広い見地からの検討が必要であり、社会的な議論を重ねていく必要がある。
  • 吉川 朱実, 角間 辰之
    原稿種別: 本文
    2013 年 23 巻 1 号 p. 95-104
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、看護師の倫理的な行動力の向上を目指し、看護実践における倫理的感受性に影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的に、臨床看護師に質問紙調査を実施した。その結果、事例分析の経験、看護倫理についての関心、倫理教育の必要性、倫理綱領等の理解、倫理的問題の経験、倫理的問題に悩んだ経験の6項目において、あると答えた看護師が倫理的感受性の点数が高い結果となった。さらに、看護倫理の知識度、積極性の度合いの特性因子が高かった群が倫理的感受性においても高い結果となった。また、年齢、勤務年数も倫理的感受性に影響を与えていることが明らかになった。以上により看護管理者は看護師の倫理的な行動力の向上にむけた教育の実施や、組織的な取り組みができるシステム作りの必要性の示唆を得た。
  • 神里 彩子
    原稿種別: 本文
    2013 年 23 巻 1 号 p. 105-114
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    2012年上半期、H5N1型インフルエンザウイルスがフェレット間において伝播可能であることを報告する論文2本がNature誌とScience誌に掲載された。これら2本の論文については、発表前の2011年末、アメリカ保健福祉省が研究方法の詳細について論文から削除すること等を勧告し、激しい議論を巻き起こした。最終的には両論文は全文公開という形で掲載されるに至ったが、その議論の過程を見てみると、「生命科学研究における成果発表」の意義や価値についての検討が全くなされていないことに気づく。そこで、本稿では、まず、上記2本のH5N1型インフルエンザウイルス研究論文の発表を巡る議論を振り返りながら、そこから見えた問題点を整理した。その上で、生命科学研究における成果発表には、「科学研究の自由」、「表現の自由」、「科学者の責務」、「生命科学研究の意義」から導き出される意義・価値が内在していることを明らかにし、そこから、その規制にはこれらの意義・価値を上回る必要性がなければならないことを論じた。
  • 鍾 宜錚
    原稿種別: 本文
    2013 年 23 巻 1 号 p. 115-124
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本稿は、台湾における「終末期退院」の慣行から「安寧緩和医療法」の制定までの過程を明らかにしたものである。まず第1章において、瀕死状態の患者を本人または家族の代理決定によって退院させ、自宅で死を迎えるという終末期退院の慣行の実態を説明し、延命治療の取りやめと家族の代理決定は実質上容認されていることを確認した。第2章では1995年以降台湾における「自然死」の法制化の動きを注目し、終末期医療に関係する医療従事者が、心肺蘇生法の差し控えを「自然死」として捉え、終末期患者の事前指示または家族の代理決定に関する法制化の動向を整理した。第3章において台湾の「安寧緩和医療法」の成立及び法改正の経緯を調査し、終末期医療における延命治療の差し控えと中止に関して本人の事前指示だけではなく家族の代理決定も法的に承認されるまでの過程を考察した。本稿によって、終末期退院の慣行が法制化の背景にあり、台湾の「安寧緩和医療法」が成立したことを明らかにした。
  • 于 麗玲, 塩見 佳也, 加藤 穣, 宍戸 圭介, 池澤 淳子, 粟屋 剛
    原稿種別: 本文
    2013 年 23 巻 1 号 p. 125-133
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    中国「優生優育」政策は、「中華人民共和国母嬰保健法」(以下、母嬰法と称する)及びその下位法令(「母嬰保健法実施方法」、「出生前診断技術管理方法」、「新生児疾病検査管理方法」ほか)から看取される。「優生」に関して、母嬰法及びその下位法令は、婚姻予定のカップルや一定の医師に、以下のような義務を課している。すなわち、同法等は、まず婚姻予定のカップルに対して、(1)婚姻前の一定の時期に「婚前医学検査」を受ける義務、及び(2)婚姻登記機関へ「婚前医学検査証明」を提出する義務を課している。次に、一定の医師に対して、一定の場合に、(3)カップルに婚姻の時期を暫く延期するように勧告する義務、(4)カップルに「婚前医学検査証明」を発行しない義務、(5)カップルに長期間の避妊もしくは避妊手術を行うよう勧告する義務、(6)妊婦に出生前診断を実施する義務、(7)妊婦に人工妊娠中絶をするよう勧告する義務を課している。母嬰法及びその下位法令は「優生」に関する義務を課すのみではない。「妊産期医療サービス」(母嬰法第14条1項と2項、「母嬰実施方法」第26条)、「新生児保健」(母嬰法第14条4項、「母嬰実施方法」第26条)等をも規定している。これは、「優生優育」政策における「優育」の側面を表すものである。
  • 小門 穂
    原稿種別: 本文
    2013 年 23 巻 1 号 p. 134-141
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    フランスにおいて、生殖補助医療を規制する生命倫理法は2011年7月に改正された。2011年改正では、生殖補助医療の目的について述べた条文(保健医療法典第L.2141-2条)から「生殖補助医療とは親になりたいというカップルの要求に応えるためのものである」という一文が削除された。主に議会資料を対象とした調査から、この修正は、2009年6月に実施された生命倫理全国国民会議での市民パネルと専門家の議論とその後の勧告の影響が大きいことが分かった。利用者を男女に限定することで生殖補助医療をあくまでも医学的不妊の治療と位置づける従来の方針に変化はないが、生殖補助医療の規制の枠組みに入らない人々の子を持ちたいという欲望について議論が深められたことは、2011年法改正の特色の一つであるといえる。
  • 木内 さゆり
    原稿種別: 本文
    2013 年 23 巻 1 号 p. 142-150
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    近年、電子カルテ等のコンピュータシステムが診療の場に導入されるに伴い、診療や検査によって得られるあらゆる項目が「医療情報」として把握されるようになってきた。これらの医療情報は医療者が利用するのみならず、患者も意思決定の材料として理解することが求められている。そのような状況を踏まえ、医療情報に内在する倫理的な課題を、特に情報に触れる機会の多い乳癌患者の闘病記から明らかにする。患者たちは近年医療情報を求め、それを手にできるようになった。しかし、患者は自身の身体感覚と医療情報との相違に戸惑いながら、医療者の知見を拠り所とせざるを得ない状況にある。「いのち」を考えるためのものであるはずの情報が、患者が自らを知ることを阻害し、患者の意識を塗りかえてしまっている可能性があると考えられる。今後は、医療情報の在り方が検討されるとともに、患者への支援に生かされることが望まれる。
  • 本田 まり
    原稿種別: 本文
    2013 年 23 巻 1 号 p. 151-158
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本稿は、フランスにおける2011年の生命倫理法改正に際し、死後生殖がどのように議論されたかを分析し、わが国における生殖補助医療に関する法整備作業で検討すべき点を挙げることを目的とする。方法としては、諸機関における議論(I)および法的動向(II)を確認し、わが国において検討すべき点(III)について述べる。国務院を除く諸機関および国民議会における議論では、死後の胚移植について賛成が得られていた。しかし元老院の反対により、2011年法は死後生殖を否定した。死後の胚移植に反対する立場からは、生まれてくる子に対して責任を負うことができないと主張される。卵子の凍結保存が可能となったため、受精卵および胚を必要以上に作成・保存すべきではないという説もある。わが国の法整備作業においては、死後の授精と胚移植を区別して考察し、胚移植が認められない場合には、胚の廃棄、研究利用または他の夫婦への提供等について検討しなければならない。
  • 佐藤 真輔
    原稿種別: 本文
    2013 年 23 巻 1 号 p. 159-167
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    H5N1鳥インフルエンザウィルスを改変してフェレット感染性にした実験結果の公表の是非を巡り、世界中で大きな論争が起こった。本稿では、その経緯を検証しつつ、同研究のもたらすリスクとベネフィットを考慮した研究実施の判断の必要性や、研究実施のための安全、セキュリティ、研究倫理等の観点からの適切な方策の確立の必要性について考察を行った。特にこのような研究に関しては、パンデミックは自然界でのウィルス変異、事故による漏洩、テロ等による意図的な放出等さまざまな原因で生じ、それに対処するためには各種の方策を有効に組み合わせていくことが必要であると考えられる。
  • 佐藤 真輔
    原稿種別: 本文
    2013 年 23 巻 1 号 p. 168-175
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    Myriad Genetics, Inc.の保有するヒト乳がんや卵巣がんに関与する遺伝子BRCA1及びBRCA2に関する特許については、米国において、これを無効とする訴訟がなされていたが、2012年8月16日、同国の連邦巡回控訴裁判所は、連邦最高裁判所からの差し戻しを受けて再審理を行い、改めて同特許の有効性を認めた。これを受けて今後連邦最高裁判所で審理が行われることになる。本稿では、同裁判の経緯を概観し、その関係者や関係機関に及ぼす影響について考察を行った。また、併せて、遺伝子特許と社会、産業、研究等との調和を保っていくための方策についても考察を行った。
  • 小田桐 拓志
    原稿種別: 本文
    2013 年 23 巻 1 号 p. 176-183
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    生命倫理学における外在主義的な思考の可能性について考察する。はじめに、President Council on Bioethics (PCBE)の報告書を取り上げ、とくにそこで繰り返し言及される「人間の尊厳」human dignityという概念について、この概念をめぐるPCBEとRuth Macklinとの対立論争を整理する。Macklinは「人間であること(の尊厳)」の価値を、生命倫理学における自律(尊重)の原則と事実上同一視しているが、本稿では、そのような解釈は、概念上及び実際上、様々な困難を生じる事を示す。次に、自殺の倫理、パーソン論、脳死論等の具体例に沿って、Macklinに代表される自律原則中心の生命倫理学が持つ問題点を描出する。最後に、いわゆる広義の外在主義の考え方が、生命倫理学における諸問題のとくに社会的側面に大きな意味を持っている事を示す。
  • 原稿種別: 付録等
    2013 年 23 巻 1 号 p. 185-192
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2013 年 23 巻 1 号 p. 193-
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2013 年 23 巻 1 号 p. 194-
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2013 年 23 巻 1 号 p. 194-
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 表紙
    2013 年 23 巻 1 号 p. Cover2-
    発行日: 2013/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
feedback
Top