日本糖尿病教育・看護学会誌
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26 巻, 2 号
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実践報告
  • 呉屋 秀憲, 具志堅 美智子
    2022 年 26 巻 2 号 p. 105-109
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/10/27
    ジャーナル フリー

    糖尿病療養指導カードシステム(以下,カードシステムと略す)を用いた教育支援法は療養支援提供者側に有益であるとの報告が多いが,支援を受ける側の視点に立った検討はいまだない.今回96名の糖尿病者を対象に本教育支援前後の糖尿病負担感情の変化を調査した.調査方法はProblem Areas In Diabetes Survey(PAID:糖尿病問題領域質問表)を用いて教育支援前後のPAIDスコアをWilcoxon符号付き順位検定にて解析した.

    その結果,PAID総スコアの中央値は教育前50.0,教育後42.5と有意に減少した(p<0.001).領域では,Q1.目標がない,Q2.治療が嫌,Q3.糖尿病への恐怖,Q5.食の楽しみ 略奪,Q6.糖尿病と生きる憂うつ,Q7.感情との関連,Q8.糖尿病に圧倒される,Q11.食への執着,Q12.合併症不安,Q14.非受容の10項目において,有意な減少が認められた.糖尿病細小血管症の有る群と無い群の比較において,糖尿病細小血管症無し群および腎症1~2期群において有意に減少した(p<0.001).

    カードシステムによる教育支援法は,支援対象者の心理的負担感情の減少に寄与する可能性が示唆された.

原著
  • 劉 彦, 正木 治恵, 高橋 良幸
    2022 年 26 巻 2 号 p. 111-119
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/10/27
    ジャーナル フリー

    目的:糖尿病患者は生活全体のバランスをどのように取っているのかを明らかにすることである.

    方法:血糖コントロールが良好な6名の糖尿病患者に対して普段の生活について半構成的なインタビューを行い,インタビューで得られた内容を質的統合法(KJ法)を用いて分析を行った.

    結果:生活全体のバランスは【バランスの崩れの整え】【バランスの偏りの整え】【取捨選択によるバランスの維持】【両立によるバランスの維持】【バランスの崩れの予防】【バランスの偏りの予防】【超越的なバランス】の7つのあり様が明らかになった.それらが補完し合いながら生活全体のバランスを保っていることが明らかになった.

    結論:糖尿病患者は,生活の中で状況に応じて柔軟に対応しつつ,病気の管理に限らず睡眠や感情などを含めた生活全体のバランスを取っていた.本研究の結果は,患者の価値観や生活習慣,生活状況などの個別性を重視した糖尿病患者教育の提供に貢献出来ると考える.

  • 吉田 恵美, 藥師寺 佳菜子, 永渕 美樹, 田中 るみ, 梶野 美保, 藤田 君支
    2022 年 26 巻 2 号 p. 121-128
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/10/27
    ジャーナル フリー

    目的:糖尿病性腎症患者を対象に,6年間の後方視的調査を行い,チーム医療による個別的な予防指導と腎機能や血糖管理などの評価指標との関連について明らかにする.

    方法:腎症2期以降の患者について,診療記録を用いて個別予防指導群(介入群)と通常診療群(非介入群)で評価指標を比較し,HbA1c,eGFR,血圧を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った.

    結果:分析対象者は介入群224名,非介入群209名であった.ベースライン(開始時)において,HbA1cは介入群7.5(6.8-8.9)%,非介入群7.2(6.6-8.1)%で介入群の方が有意に高かったが(p<0.05),観察期間終了時,介入群では有意に改善を認めた(p<0.01).また,介入回数が多いことがHbA1cの維持・改善に有効で,eGFRはベースライン時腎症3期以降では悪化を認めた.

    結論:予防指導は腎症進行例では限界を示したが,血糖管理には有効であることが示唆された.

短報
  • 呉屋 秀憲, 具志堅 美智子
    2022 年 26 巻 2 号 p. 129-132
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル フリー

    個人のペン型インスリン注入器は血液逆流リスクがある.その為,打ち間違い事故発生時には,患者間の血液交差として対処されなければならない.ペン型注入器が臨床現場に導入された2008年に日米で看護師の認識不足による使い回し事故が多発した.米国ではその責任は看護師教育部門にあると指摘し,それ以降も教育活動が継続されている.一方,日本では厚生労働省が注意喚起をその年のみ行うに留まり,その後の打ち間違い事故報告書を見ると血液交差への言及は稀である.そこで,臨床看護師のペン型注入器を介した血液曝露リスクに関する認識を明らかにするため,予備的研究としてA病院看護師330名を対象にWeb調査を実施した.その結果,49.7%の看護師が血液曝露リスクを認識しておらず,約半数は打ち間違い事故後に血液交差として対処しない可能性が示された.毎年の新人教育で本件を指導してきたが,結果を踏まえ,マニュアル改訂と注意喚起ポスターによる継続的な教育を行った.本研究は1施設対象のため拡大調査が課題である.

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