目的:新たに訪問看護分野に就労した看護師が,訪問看護事業所への入職直後から6か月までの訪問看護への移行期に経験した困難と,その関連要因を明らかにすることである.
方法:東京23区内の435事業所に勤務する経験年数6か月以上3年以内の訪問看護師を対象として,自記式質問紙を用いた横断研究を実施した.訪問看護への移行期に経験しうる困難,訪問看護開始前の看護実践能力の自己評価,訪問看護師の個人特性,所属する事業所の特性を調査票で尋ねた.探索的因子分析により移行期に経験しうる困難を構成する3つの因子を特定し,それらを従属変数とした重回帰分析を行った.
結果:移行期に経験した困難の割合は,医療保険(86.7%)や介護保険(85.5%)の制度に関する知識が不足していることへの困難が高かった.看護実践能力の自己評価が低いことは,「在宅と病院の看護実践環境の違いへの困難」(β = -0.205,p <0.01),「訪問看護の知識・技術不足」(β= -0.250,p <0.001)に影響していた.
考察:移行期に経験した困難に看護実践能力の自己評価が関連していたことから,訪問看護の開始時に看護師個々の看護実践能力を見極め,個々に応じた教育を行うことが,訪問看護への移行期の困難を緩和させるために重要であると考えられた.
結論:訪問看護への移行期に,看護師個々の実践能力に応じて訪問看護特有の専門性や知識を教育していくことが,新たに訪問看護を開始する看護師の訪問看護への適応に有用と考えられた.
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