日本看護管理学会誌
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14 巻, 2 号
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原著
  • ―インタビューの結果から―
    藤原 史博, 勝原 裕美子
    原稿種別: 原著
    2010 年 14 巻 2 号 p. 5-14
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル オープンアクセス

    歴史上,儒教に由来する道徳観を備えている日本人の看護師は,誠意を含んだ看護実践を価値あるものとみなしていると考える.しかし先行研究では看護師の誠意について体系的に取り組んだ研究は見当たらない.そこで本研究では,患者に対する看護師の誠意の構造を明らかにすることを目的とした.

    事前に作成したインタビューガイドラインに沿い,調査協力に応じた看護師らを対象に半構成的面接を実施した.結果的に8名の看護師から協力を得たが,KJ法による分析の結果,看護実践にみられる行動や態度としての誠意が19項目挙がった.残余カードについても同様に分析したところ,誠意そのものに対する看護師のとらえ方として5項目が挙がり,計24の項目が挙がった.さらに前者の19項目は,【A.当たり前のことがきちんとできること】,【B.自己を律し研鑽すること】,【C.患者を大切にすること】の3カテゴリーに集約された.Aカテゴリーは,個人の成育歴という固有の背景を承け,かつ生涯に渡って誠意が発達してゆく可能性を示した.また,Bカテゴリーではプロフェッションフッドの概念と誠意が,Cカテゴリーではケアリングの概念と誠意が,それぞれ内容面で近似していることが確認された.これらの特徴を備えた看護師の誠意は,看護の本質にかかわる概念であることが示唆された.

    誠意は自然発生的で主体には自覚しにくいという特徴がみられたが,一方でケアの受け手や同僚が感じ取るものであることが明らかになった.同僚の看護の中に誠意を察知した看護師が,そこでの誠意を自身の看護に導入することにより,個人固有の誠意が連鎖的に職場内で共有される可能性が示された.

  • 小味 慶子, 大西 麻未, 菅田 勝也
    原稿種別: 原著
    2010 年 14 巻 2 号 p. 15-21
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,医師 - 看護師間の協働的実践の現状を明らかにすることを目的として,Weiss & Davis(1985)によって開発されたCollaborative Practice Scales(CPS)の日本語版を作成し,医師および看護師を対象とした自記式質問紙調査を実施した.4府県4病院の医師520名,看護師2,139名に質問紙を配布し,CPSの全項目に回答した医師275名(有効回答率52.9%),看護師1,678名(同78.4%)を分析対象とした.CPS日本語版のCronbachのα信頼性係数は医師用,看護師用ともに総合得点で0.9台,下位尺度で0.8台であった.探索的因子分析の結果,看護師用CPSはほぼ原版と類似した因子構造を持つことが確認された.医師用CPSは,原版とはやや異なる構造であり,下位尺度の妥当性については検討する必要があると考えられたが,総合得点を用いることによって,CPS日本語版をわが国の医師,看護師の協働的実践の評価に利用可能であると判断された.CPSの総合得点を米国の先行研究と比較したところ,本研究の対象者の方が低い値であり,医師では専門領域と,看護師では免許・資格,職位と関連があることがわかった.医師については,看護師との協働的実践に影響を及ぼす要因をさらに詳しく明らかにする必要があること,看護師については,コミュニケーションスキルの開発が必要であることが示唆された.

報告
  • 徐 廷美, 西垣 昌和, 池田 和子, 杉野 祐子, 数間 恵子, 島田 恵
    原稿種別: 報告
    2010 年 14 巻 2 号 p. 22-29
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国でのHIV感染者数の増加は顕著であり,増加抑止は喫緊の課題である.その一環として,服薬継続と二次感染防止行動の支援が重要であり,外来での療養指導における看護の役割が期待されている.平成18年度より外来HIV/AIDS医療に対し,看護師の専従配置などを満たす施設に診療報酬が認められた.本研究の目的は,エイズ拠点病院外来における看護師配置状況と,配置状況による療養指導の実施状況の相違について調べ,課題を明らかにすることである.

    369施設に郵送で自記式調査を行い,176施設から回答を得た(回収率47.7%).うち130施設でHIV/AIDS診療の経験があった.看護師を配置していたのは113施設で,HIV/AIDS看護の専従や専任として配置していたのは約6割であった.外来療養指導16項目について看護師の配置形態によって実施状況を比較したところ,専従または専任で配置された看護師はその他の看護師より実施程度が高く,専任でも外来実施頻度が高い施設ほど支援提供が充実していた.

    以上よりHIV/AIDS患者への外来療養指導を促進させるためには,専従または専任の形態でHIV/AIDS担当看護師を置くことが重要である.また診療報酬算定の施設基準として「専従」とされたことは,外来療養指導の実施程度から見ても妥当と言える.

  • 佐藤 真由美
    原稿種別: 報告
    2010 年 14 巻 2 号 p. 30-38
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,新卒看護師の成長を「新卒看護師が認識した,社会化と臨床実践能力の向上」ととらえ,成長を促進する関わりについて遡及的に明らかにした.

    地方の急性期型病院2施設において,看護基礎教育を終え直ちに就職した2年目の看護師を対象に,半構成的質問紙を用いたグループインタビューを行い,「1年目を振り返って,社会化や臨床実践能力の向上を実感する体験,どのような関わりが効果的だったか」についてデータを収集した.逐語化したデータを行動レベルまでコード化したのちカテゴリー化した.

    同意の得られた看護師6名は全て女性で,平均年齢が23.3歳,内科系および外科系の一般病棟に所属していた.全員が勤務する病棟に専任の教育担当者がいたと答えた.

    新卒看護師の成長を促進する関わりとして,【職務遂行のための実践的看護技術の教示】,【建設的学習風土の形成】,【承認】,【状況での重要な情報への注意喚起】,【看護実践の安全弁】,【動機づけ】,【社会人としての態度の育成】,【役割モデル】が抽出された.

    新卒看護師の社会化に焦点を当て,居場所をつくる働きかけがどのようなことかを明らかにした点で,今後の新卒看護師育成に活用できるものと考える.

  • 菖蒲澤 幸子
    原稿種別: 報告
    2010 年 14 巻 2 号 p. 39-48
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル オープンアクセス

    わが国の看護中間管理者に看護情報学教育を行うため,看護情報学の専門家を調査対象とし,デルファイ法を用いて,教える必要性の高い情報能力項目を同定した.

    調査対象の専門家は日本看護協会認定看護管理者教育課程ファーストレベル,セカンドレベルのコースで「情報」に関する科目を担当している講師78名とし,3回全ての調査への協力者は16名だった.

    はじめに提示したリストはStaggers(2002)の示した経験のある看護師と初心者看護師に必要な69項目である.教育が必要な項目の選択基準は,デルファイ法の3回目の調査時点における評価の中央値が4.0以上,四分位範囲(interquartile range)(以下IQRとする)の値が1.0以下,IQR%の値が80%以上の項目である.

    3回の調査を経て,看護情報能力の項目69項目中26項目が,教育が必要な項目として選択された.これらの項目内容を見ると,国内で認定看護管理者研修を担当している専門家たちは,コンピュータスキルの項目ではなく,情報の知識やスキルの項目を,看護管理者たちに教育すべきであると認識していることが明らかになった.

    同定された項目の内容を,看護管理者に教育していくための具体的な教育プログラムの作成が今後の課題である.

資料
  • 高橋 澄子, 平井 さよ子, 飯島 佐知子, 賀沢 弥貴
    原稿種別: 資料
    2010 年 14 巻 2 号 p. 49-58
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:病院看護組織での目標管理の導入による効果を明らかにすることを目的とする.目標管理の効果の指標として,職務満足度・組織コミットメント・評価システムの知識(Perceived System Knowledge以下,PSKと略す)(Williams & Levy, 1992)を用い,目標設定の方法,目標達成度の高低,上司のフィードバックとの関係について検討する.

    方法:目標管理を実施している公立病院3施設の入職後2~3年目の看護師222名を対象に自記式質問紙調査を行った.

    結論:個人を照合した49名の職務満足度総得点は導入後得点比率が有意に上昇し,職務満足度の構成項目全てが上昇した.組織コミットメントは継続的コミットメントが有意に上昇した.PSKは上昇したが有意差はなかった.目標達成度を高群・低群で分析したところ,目標達成度高群の方がより職務満足度と継続的コミットメントに上昇がみられた.中でも専門職としての自律・看護師間相互の影響・職業的地位の項目が有意に高かった.目標達成度は目標が高めに設定され,わかりやすい目標に設定されたものが有意に高かった.さらに,上司のフィードバックが行われていた方が目標達成度は高かった.

    以上より,目標管理の導入は職務満足度が高まり,目標達成度高群がより高まった.目標管理の導入は目標達成度の高低に関わりなく継続的コミットメントが高まり,離職せず勤務を継続しようという意思を高める効果があると考えられる.PSKが目標達成度低群に導入後有意に上昇したことは目標面接等目標管理の効果によるものと考えられる.目標達成度には上司のフィードバックが関連しているため上司にはコーチング技術の習得が必要であると考えられる.

特別寄稿
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