日本看護管理学会誌
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最新号
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論点
原著
  • 佐田 明子, 山澄 直美
    原稿種別: 原著
    2023 年 27 巻 1 号 p. 10-19
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,パートナーシップ・ナーシング・システム(PNS)を採用している病院に勤務する看護師が看護業務の中で行っているタイムマネジメントの内容を明らかにし,効果的な協働に向けて看護管理者に求められる支援を検討することである.全国の病院26施設に就業する看護師767名を対象に郵送法による質問紙調査を実施した.質問紙は,タイムマネジメントの内容を問う自由回答式質問および対象者の特性を問う質問から構成した.有効回答412部の記述内容を内容分析を用いて分析した.結果は,【業務開始時に患者の状態,予定,医師の指示の内容,必要な看護ケアの内容をパートナーと共有し,援助の方法や援助上の注意点を相談する】【業務開始時にパートナーと相談し,患者の情報に基づき業務の優先順位,時間配分を決め1日の行動計画を立てる】などタイムマネジメントの内容を表す39カテゴリを明らかにした.PNSに特有のタイムマネジメントを表す27カテゴリのうち,6カテゴリがPNSの「補完」に該当し,PNSにおけるタイムマネジメントの中核であることが示唆された.また, 確実かつ頻繁な情報共有と適切かつ柔軟な業務分担がPNSにおけるタイムマネジメントの重要な要素であることが示唆された.看護管理者は,タイムマネジメントの観点から補完のシステムが機能するようシステムの点検とスタッフへの教育を行っていく必要がある.

  • 小渕 美樹子, 立石 憲彦
    原稿種別: 原著
    2023 年 27 巻 1 号 p. 20-30
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    短時間勤務看護職員と共に働くフルタイム勤務看護職員の協働意識に影響する要因を明らかにすることを目的とした.

    全国の国立大学病院の短時間勤務看護職員と共に働くフルタイム勤務看護職員1,352名を対象とし,南谷らが開発した「短時間勤務看護師との協働意識尺度」と独自に作成した特性調査紙を用いた質問紙調査を行った.データはピアソンの積率相関係数,t検定,重回帰分析を用いて分析した.

    質問紙の回収数639(回収率47.3%)のうち有効回答590を分析対象とした.協働意識尺度総得点と対象者の特性との関係では,年齢,臨床経験年数,現部署経験年数,職位に有意な差があった.協働意識尺度総得点と職務に対する意識との関係では,職務に対する意識を問う設問のうち15項目において有意な差があった.重回帰分析の結果,協働意識尺度総得点に影響を与えるフルタイム勤務看護職員の職務に対する意識は,仕事の責任の負担の程度,同僚との人間関係の良好さ,職場の自由に意思を言える環境,やりがいの知覚の程度,仕事の業務の負担の程度,福利厚生の利用のしやすさの6項目が抽出された.

  • 太田 純子, 山崎 千寿子, 廣島 麻揚
    原稿種別: 原著
    2023 年 27 巻 1 号 p. 51-60
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:緩和ケア病棟における中途採用者に対する教育担当者の役割意識と役割遂行の乖離の有無とそれらの関連要因を明らかにし,中途採用者に対する教育担当者が役割遂行しやすい環境を検討する.

    方法:緩和ケア病棟入院料届出受理施設431施設の中途採用者に対する教育担当者431名を対象に,教育に関する組織の体制,個人属性,役割意識・役割遂行(4因子27項目),職場風土(5因子30項目)の無記名自記式質問紙調査を実施.役割意識得点から役割遂行得点を引き,役割意識得点の方が高かったものを対象に教育に関する組織の体制,個人属性,職場風土との関連を分析し,重回帰分析を実施.

    結果:回収数180名(回収率41.8%)のうち,教育担当者の配置がない,過去5年間に中途採用者の配属がない,師長と兼任,役割意識と遂行の回答に欠損のあったものを除外し72名(有効回答率16.7%)を対象とした.乖離が生じていたのは69名であり,役割意識と遂行の全ての下位因子において乖離があった.教育に関する組織の体制,個人属性との乖離には有意な関連はなく,乖離と関連があると考えられた職場風土を説明変数とした重回帰分析の結果,乖離に関連する要因は意思疎通感(β=-0.33,p<0.05)であった.

    考察:意思疎通感の高い職場風土は,緩和ケア病棟における中途採用者に対する教育担当者の役割意識と遂行の乖離を埋め,役割遂行を促すと考える.

  • 山本 武志, 佐伯 昌俊, 西宮 岳, 小松 亮, 山本 則子, 酒井 郁子
    原稿種別: 原著
    2023 年 27 巻 1 号 p. 61-70
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    2015年10月に創設された「特定行為に係る看護師の研修制度」は,医師・歯科医師が作成した手順書に基づき,看護師が高度かつ専門的な知識及び技能を必要とする特定行為を実践するための研修制度である.2022年3月時点での研修修了者数は4,832人で,厚生労働者が掲げる目標値への到達には及ばない現状がある.本研究は,全国の病院において特定行為研修の修了者が導入・配置されることに関連する施設側の要因を明らかにすることが目的である.全国300床以上の全病院の看護管理者(看護部長)を対象にオンライン調査を行った.1,436病院中412名の対象者から回答が得られた(回収率28.7%).研修修了者が導入・配置されている病院は252(61.4%)病院であった.二項ロジスティック回帰分析の結果,各病院に研修修了者または研修中の看護師が導入・配置されていることに関連する要因は,施設特性として病床規模が大きい,特定行為研修の指定研修機関であることが挙げられた.看護管理者の特性としては,認定看護管理者資格を有している,特定行為研修に対する期待・認識として協働の推進を期待している,診療・ケアに良い影響を与えうる制度と認識していることが挙げられた.

  • ―デルファイ法による内容妥当性の検討―
    桑原 美弥子, 飯島 佐知子
    原稿種別: 原著
    2023 年 27 巻 1 号 p. 71-81
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    身体拘束を必要最小限に抑えるための具体的な手順については十分に明らかになっていない.本研究の目的は集中治療室において患者の安全と人権を保障するために身体拘束適正実践を推進する標準手順を開発し,内容妥当性を検討することであった.全国の急性・重症患者看護専門看護師157名を対象にデルファイ調査を実施し,68名が第2回調査まで参加した.調査票は国内外の文献から抽出し,既存ガイドラインとの整合性を確認した身体拘束適正実践のための標準手順内容46項目について「スタッフ全員が知るべき知識として重要であるか」「身体拘束実践適正化の方法として有効であるか」「実施可能であるか」を尋ねた.46項目中43項目について「知識として重要である」「方法として有効である」との合意に達し,身体拘束適正実践の標準手順内容として妥当であると考えられた.身体拘束をせずに患者1人だけを担当するなど,人員配置方法に関連する項目の有効性についての合意率は90%前後と高かったが,実施可能性については低かったため,人員の配置方法の工夫が必要と考えられた.また「看護管理者は身体拘束を実施していない状況下でデバイス抜去等が発生したとしても,身体拘束を実施していなかったことを責めない」など看護管理者の認識,行動,態度に関する項目の合意率は90%前後と高く,看護師は看護管理者のサポートを強く期待していることが明らかとなった.

  • 綱嶋 里枝子, 土肥 眞奈, 叶谷 由佳
    原稿種別: 原著
    2023 年 27 巻 1 号 p. 82-91
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:訪問看護ステーション(以下ST)における訪問看護師が既存の診療報酬や介護保険制度に入らないサービス(保険制度外サービス)を創出するスキルを明らかにすること.

    方法:保険制度外サービスを創出,展開している7つの訪問看護STの臨床経験年数16年以上の看護管理者7名を対象に半構造化面接を行い,質的記述的研究の手法を用いて分析した.

    結果:訪問看護師のサービス創出スキルとして,9つのコアカテゴリーが抽出された.【在宅の可能性をもって本質的ニーズの追求と実現】,【求められ必要とされる訪問看護STつくりとPR】,【コミュニティをつなぐための基盤構築】,【現状の看護展開での不足部分をアセスメント】,【多角的視点から地域をアセスメント】,【サービス創出への柔軟な発想と工夫】,【地域のあらゆる人が利用できる予防的関わりと場の創出】,【住民の自主活動の提供と促進】,【サービスの持続発展化】であった.

    考察:サービス創出経験がある訪問看護ST管理者は,保険制度外サービスを創出するために,生活の場を重視し地域の一資源となって地域とつながり,地域の不足部分を開拓する流れに加え,柔軟な発想をもって地域住民とかかわっていた.これらの視点をすべての訪問看護師がもつことでその地域にあった理想的な地域包括ケアシステムの実現につながると考える.

  • 都築 久美子, 宇城 令
    原稿種別: 原著
    2023 年 27 巻 1 号 p. 112-121
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,病棟看護師の退院支援の実践に影響を及ぼす組織的要因および個人的要因を明らかにすることである.対象は,Z県の19施設の病棟に勤務する1,256名とし,自記式質問紙調査を行った.調査項目は,目的変数に病棟看護師の在宅の視点のある病棟看護の実践に対する自己評価尺度,説明変数に組織的要因として「院内退院調整部門からの情報提供」「院内多職種からの情報提供」「院内退院調整部門とのカンファレンス」等,個人的要因として「退院支援における成功体験」「退院を見据えた関連職種への働きかけ」等とする重回帰分析を行った.その結果,退院支援の実践を促進していた要因は,看護師自身が「院内多職種に対する情報収集」(β=0.211)し,「院外地域関係職種への対応力」(β=0.157)があること,「退院支援における成功体験」(β=0.107)が重要であった.組織的要因は「院内退院調整部門とのカンファレンス」(β=0.139),「先輩・同僚のサポート」(β=0.138),「院外在宅ケアスタッフや家族との退院カンファレンス」(β=0.111),「医師からの情報発信」(β=0.101)等が示された.これらより病棟看護師の退院支援の実践を高めるには,看護師自身が退院を見据え,院内多職種へ積極的に情報収集し,院外地域関係職種に対して積極的な働きかけが重要であり,そして先輩・同僚からのサポートやカンファレンス,医師からの情報発信等によっても高められると考えられた.

  • 鈴木 久美子, 片山 はるみ
    原稿種別: 原著
    2023 年 27 巻 1 号 p. 132-139
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:一般病棟に勤務する看護補助者の職務に対する動機付けと職場サポートとの関連を明らかにする.

    方法:看護補助者409名に自記式質問紙調査を実施した.質問紙は「基本属性」「多側面ワークモチベーション尺度」「職場サポート尺度」で構成した.SPSS ver. 27を用いt検定,一元配置分散分析,重回帰分析により分析した.

    結果:325名より有効回答が得られた(有効回答率=79.5%).競争志向的モチベーションには看護師による情報的サポート(β=.329, p<.001)と看護補助者による情報的サポート(β=-.176, p=.005)が影響していた.協力志向的モチベーションには看護師による評価的サポート(β=.180, p=.021),看護師による情緒的サポート(β=.203, p=.006),看護補助者による評価的サポート(β=.155, p=.016)が影響していた.学習志向的モチベーションには看護師による情報的サポートが影響していた(β=.353, p<.001).達成志向的モチベーションには看護師による評価的サポート(β=.245, p<.001)が影響していた.

    結論:一般病棟に勤務する看護補助者の職務に対する動機付けには看護師や看護補助者からの肯定的な評価や情報提供,看護師からの共感が影響していた.以上より, 看護補助者が意欲的に働くためには,これらの職場サポートを意識した看護管理が必要であることが示唆された.

  • ―中堅看護師が看護実践の意味を見出せるように支援するプロセス―
    太江田 晶子, 水戸 美津子, 榎本 麻里
    原稿種別: 原著
    2023 年 27 巻 1 号 p. 161-170
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    看護の実践現場が急激に変化しているなかで,看護の質の維持・向上のために,看護管理者にはより高度な管理能力が求められている.特に,優秀な中堅看護師の人材の確保及び育成は看護管理者の重要な役割である.そこで本研究では,看護師長が中堅看護師に対して,就業継続の支援をどのように実践しているのか,その具体的な態度や方法や考えなどに焦点をあて,その支援のプロセスを明らかにすることを目的とした.研究方法は半構造化面接法による質的帰納的研究法である.研究対象は看護部長から推薦を受けた看護師長11名とした.分析にはM-GTAを用いた.面接内容は,中堅看護師に対して実践している具体的な就業継続の支援で工夫していることや,印象に残っている出来事等とした.面接内容は録音し,逐語録にしたうえで分析した.分析の結果,17概念,7サブカテゴリー,4カテゴリーが生成された.その結果,看護師長による中堅看護師の就業継続の支援は【支援者として身近にいる】【立ち停まる機会をつくる】という直接的な支援と,【「場」をつくる】という間接的な支援を上手く組み合わせながら,看護師長自らが看護管理において【ぶれない姿勢を示す】ことを常にしながら,中堅看護師が看護実践の意味を見出せるように支援するプロセスになっていることを明らかにした.

  • 亀井 ひとみ, 朝倉 京子, 高田 望, 杉山 祥子
    原稿種別: 原著
    2023 年 27 巻 1 号 p. 179-187
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:中期キャリアにある看護師が,後輩看護師の育成者としてどのように変容していくのか,そのプロセスを明らかにすること.

    方法:就業経験年数8年から19年の看護師16名にプライバシーが保てる個室を使用して半構成的面接を1人につき1回行った.研究デザインは修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを採用した.研究代表者が調査当時に所属した組織の倫理委員会の承認を受けて面接調査を実施した.

    結果:16個の概念を抽出し,これらの概念から6つのカテゴリーを生成した.後輩看護師を育成するプロセスの初期から終期に至るまで,看護師は【自分自身がとるべき行動を模索(する)】していた.看護師は後輩看護師を育成し始めた頃は【自分自身も勉強をしながら指導(をする)】しており,時には【自分の感情を出してしまう】こともあったが,【後輩看護師の心情を慮(る)】り,【後輩看護師の主体性を支持する】ように変容し,最終的には【寛容さを発揮する】ように変容していた.

    結論:看護師が後輩看護師の育成者として変容するプロセスは,未熟な段階から成熟段階まで【自分自身がとるべき行動を模索する】ことが通底しており,成熟段階ではより寛容さを示した.後輩看護師の育成者として変容するプロセスには,持続する省察,上司や同僚からの影響が関与していたと示唆された.

  • ―DPCデータを用いた探索的分析―
    松村 いつみ, 森脇 睦子, 大成 佳純, 佐々木 美樹, 林田 賢史, 緒方 泰子
    原稿種別: 原著
    2023 年 27 巻 1 号 p. 208-217
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,大腿骨近位部骨折術後患者が退院時ADL状態に至るまでの経日的変化を明らかにするとともに,病院規模など施設要因との関連を調査し,早期ADL回復に影響する環境要因を明らかにすることである.急性期病院において股関節・大腿近位の骨折で手術を行い退院した65歳以上の患者のうち,手術翌日から退院前日までに移乗の状態が回復した患者20,025人を分析対象とした.Diagnosis Procedure Combination(DPC)データを用いて,対象者属性,施設属性,移乗の状況についてデータ収集し,移乗能力の回復速度と施設属性との関連を調査した.統計学的手法はMann-WhitneyのU検定,もしくはχ²検定による群間比較をグループごとに用いた後,両グループの早い群と遅い群を統合してロジスティック回帰分析を行い,有意水準は5%とした.平均年齢は84.2歳,平均在院日数は25.3日だった.回復には施設規模が影響し,ロジスティック回帰分析(早い回復=1)において,「0-199床」と比較したオッズ比は「200-399床」で1.23,「400-599床」で1.29,「大学病院」で1.38であった(p<0.01).リハビリ量・頻度については統計学的有意差はなかった.我が国では現在,医療機関の機能分化が進められているところであるが,急性期病院を対象に高齢者の急性期代表疾患である大腿骨骨折に着目した本研究では病床規模によって回復速度に差が生じた.現行の病床機能分化の実施を進めている状況下でも,施設規模によってアウトカムに差が出ていることが明らかになった.

  • ―認定更新審査時の看護管理実践報告書の内容分析―
    南谷 志野, 三枝 克磨, 原田 博子, 白井 麻希, 佐藤 美子
    原稿種別: 原著
    2023 年 27 巻 1 号 p. 218-226
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は, 認定看護管理者(以下,CNA)の病院における看護管理実践の実態を明らかにすることである.2021年8月時点の認定看護管理者会会員850名のうち,認定更新審査時に提出した病院における看護管理実践報告書を保有する会員を対象にWeb調査を実施した.分析方法は,KH Coder 3を用い,報告書内の『実践経過・結果』について内容分析を行った.84の報告書を分析対象とし共起ネットワーク図を描画した結果,病院に在籍するCNAは,看護サービスの質を中心に捉え,業務改善を通した労働環境整備,外来-入院-退院における患者への一貫した支援,地域連携推進に取り組んでいた.次に,階層的クラスター分析により分類された14クラスターうち6クラスターは,CNAが取った実践方法を示し,CNAはプロジェクトチームを立ち上げる,調査結果に基づき課題を明確にする,計画を立て実践し評価する,看護師長を通して部署ごとの目標を設定して管理する,研修参加や会議の開催を通して説明し理解を得るという方法を取り入れていた.さらに対応分析の結果,更新を重ねた看護部長は,所属施設外にも視野を広げ,より能動的な管理実践を行っている傾向があった.このことは,マネジメント・プロセスに沿った看護管理実践を展開していることと,5年後の認定更新に向けた活動計画の立案が経験学習の質を高めていることが寄与していると考えられた.

実践報告
  • 岡本 悦子, 山中 真, 山本 恵美子, 青山 恵美, 川村 和代, 池田 幸代, 井上 里恵
    原稿種別: 実践報告
    2023 年 27 巻 1 号 p. 41-50
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:実習時間が縮減された看護学部4年次生に対して,附属病院の臨床指導者と協働し,看護連携型ユニフィケーションを基盤とした卒業前研修を実施し,リスク感性や熟慮性の変化などからその効果を明らかにする.

    方法:対象者12名に対して経管栄養に関するシミュレーション教育を実施し,研修前後,1か月後のリスク感性尺度,認知的熟慮性-衝動性尺度,技術の獲得状況を測定(回収率100%)した.分析は反復測定による一元配置分散分析を行い,多重比較はBonferroni法を用いた.

    結果:研修前後,研修1か月後で比較した結果,リスク感性平均総得点と標準偏差は研修前109.67±7.06点.研修直後119.00±13.98点.研修終了1か月後119.08±8.87点であり,研修前と研修直後および研修前と研修終了1か月後の平均得点に有意な差が示された(F(2,33)=4.58,p<.05).認知的熟慮性-衝動性尺度の得点については,有意差はみられなかった.

    考察:臨床指導者と看護基礎教育者が連携してシミュレーション教育を用いて教材と教育介入の工夫をしたことは,学生に臨床場面を想起させ学修への動機づけを促進し,リスク感性の向上につながる関わりとなった.

    結論:看護連携型ユニフィケーションを基盤とした4年次生に対する卒業前研修は,リスク感性の向上につながった.

  • 相澤 恵子, 國江 慶子, 深堀 浩樹, 谷口 陽子, 保科 英子, 丸山 美津子, 庄子 由美, 小玉 淑巨, 西田 和美, 奥 裕美
    原稿種別: 実践報告
    2023 年 27 巻 1 号 p. 237-246
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    本調査の目的は,日本看護管理学会教育委員会が主催している「コンピテンシーを基盤とした看護管理者研修」を受講した看護管理者がコンピテンシーの概念をそれぞれの職場で活用する上で感じている困難や,看護管理者による活用に向けた支援ニーズを明らかにすることである.2019年7月から2022年2月の間に日本看護管理学会が主催するコンピテンシー研修を受講した看護管理者を対象にしてアンケート調査を実施し,49人から回答を得た(回答率25.8%).看護管理能力・実践力向上に向けてコンピテンシーの概念を組織において導入し,運用を開始している者は17人(34.7%)であった.多くの対象者が感じていた困難は「コンピテンシー研修の企画・運営」31人(63.3%),「研修受講生のコンピテンシーの概念の理解」27人(55.1%),「コンピテンシー研修後の実際の活用」25人(51.0%)であった.ニーズが高いと考察された支援は,コンピテンシーの概念を組織に導入するためのチームづくりや研修の円滑な運営に向けた資料及び学習機会の提供,コンピテンシーの概念についての学習を容易にするための教材の提供,ファシリテータースキルを高めるための学習機会の提供,受講修了者同士が交流し相談しあう機会の提供であった.これらの知見は,看護管理者がコンピテンシーの概念を組織に導入して活用する際の困難を解決するための一助になる可能性がある.

総説
  • 星 美鈴, 叶谷 由佳
    原稿種別: 総説
    2023 年 27 巻 1 号 p. 227-236
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:地域包括ケアに関わる国内外のサービスや制度における看護職のコンピテンシーについて網羅的に文献を検討し,看護職による高齢者の生活を支える地域包括ケアのコンピテンシーの内容を明らかにすることを目的とした.

    方法:医中誌WebとPubMedを用いて文献を検索し,適格基準を満たした23文献(11和文献,12英文献)を対象とした.対象文献から,看護職による高齢者の生活を支える地域包括ケアのコンピテンシーを抽出し,類似性・相違性を検討して分類した.

    結果:先行文献から得られた看護職による高齢者の生活を支える地域包括ケアのコンピテンシーは,1)基本的な看護技術,2)看護職としての適切な接遇,3)地域包括ケアを提供する他職種と関わり多職種連携をする,4)社会資源を活用し地域包括ケアの視点でアセスメント・支援・評価をする,5)高齢者の個別性を踏まえ生活者の視点でケアをする,6)家族へ関わり支援する,7)高齢者の意思を確認し看取りケアを行う,8)地域包括ケアに必要なリスク・危機の管理をする,9)地域包括ケアにおける看護職として役割や専門性を発揮する,に分類された.

資料
  • ―管理者へのインタビューによる質的研究―
    佐伯 昌俊, 小松 亮, 西宮 岳, 酒井 郁子
    原稿種別: 資料
    2023 年 27 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,急性期病院で特定行為研修修了者の効果的な活動を支援するため,施設管理者および看護管理者の管理実践の要素を明らかにすることを目的として実施した.特定行為研修を受講した看護師がいる病院の施設管理者と看護管理者を対象にオンラインで半構造的面接法による個別インタビューを行った.インタビューは1人あたり20分程度行い,録画をもとに逐語録を作成しデータを収集した.調査期間は2021年3月である.研究協力者は施設管理者8名と看護管理者11名だった.特定行為研修修了者の活動を支援する管理者の管理実践には,「組織における修了者の活躍を期待する」「組織における修了者活用のニーズを把握する」「特定行為研修制度及び修了者に対する理解を得る」「組織の機能に応じた修了者の配置計画を立案する」「特定行為研修に看護師を送り出して受講継続を支援する」「組織の構想に応じて修了者を配置する」「組織で修了者が活動継続するための環境を整える」「修了者の活用による効果を見出す」「組織の構想に応じて修了者の活動を調整する」「修了者の活動を多様な対象に周知する」が含まれていた.これらは特定行為研修修了者を導入して複数の修了者を組織で配置・活用するための管理実践の要素として解釈でき,構想・育成・配置・活用・最適化・周知が見いだされた.

  • 中村 幸代
    原稿種別: 資料
    2023 年 27 巻 1 号 p. 31-40
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:病気を抱えながら就業している看護職に対して,看護師長が支援提供をした際の体験を記述することである.

    方法:病気を抱えながら就業している看護職へ支援経験がある看護師長10名を対象に,オンライン通信を用いた半構造化面接を実施し,支援提供した際の出来事やその際に生じた思いについて経時的に自由に語ってもらった.分析は質的帰納法に基づき,看護師長の支援提供における体験が含まれる語りに着目し,カテゴリーまで抽象化を行った.

    結果と考察:看護師長の支援提供における体験として,【病気に負けず頑張っている看護職を大切に思う】【師長としての役割以上に寄り添って関わる】【看護職だからこそ病気体験に意味を見出す】【立場上でのスタッフとの距離の取り方に試行錯誤する】【師長としての対応力の不十分さと直面する】【病状に合わせた個別的な介入の難しさを痛感する】【病気と仕事を両立する組織風土の構築に努める】【周囲と相談しつつ円滑な病棟運営を図る】という8カテゴリーで構成された.看護師長は,病気に負けずに頑張っている看護職を大切に思う一方で,スタッフ全体と適切な距離感で関係性を保つことへ葛藤を抱いていた.また,安全かつ質が担保された看護ケアを提供するための人材管理として,関係各所との密な関わり合いを持ちながらも,病気を抱えながら就業することを容認できる組織風土の構築に向けた対応を図っていた.

  • ―看護職における調査―
    長嶋 英里, 片山 はるみ
    原稿種別: 資料
    2023 年 27 巻 1 号 p. 92-101
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,改訂版自助方略尺度(Revised Self-Help Strategies Scale: R-SHS)の信頼性と妥当性を確認することであった.A県内の病院,訪問看護ステーション,健診実施機関に勤務する看護職826名を対象に自記式質問紙を配布した.調査項目は基本属性,R-SHSの原案,Kessler Psychological Distress Scale K6(K6)であった.回答のあった466名(回収率56.4%)のうち有効回答462名(有効回答率55.9%)を分析した.因子分析によって,改訂前と同じ2因子15項目であることが示された.Cronbach’s α係数は全体で.88,各因子は.88~.89であった.R-SHSの下位尺度である【自分をいたわるための工夫】と【知識・情報の吟味と適用】がK6得点より算出された心理ストレスを軽減させるとした仮説モデルのモデル適合度は,適合基準を満たしていた(CFI=.898,RMSEA=.084).以上より,R-SHSの信頼性と妥当性が概ね確認された.

  • 中村 智美, 児玉 真利子, 升田 由美子
    原稿種別: 資料
    2023 年 27 巻 1 号 p. 102-111
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は看護師のキャリア形成とライフキャリア・レジリエンスの関連を明らかにし,キャリア形成支援の示唆を得ることを目的とした.

    対象は日本医療機能評価機構認定一般病院2・3の200床以上の施設に勤務する20~50代看護師とした.調査項目は個人要因,成人版ライフキャリア・レジリエンス尺度(LCRS),成人キャリア成熟尺度(ACMS)とした.質問紙は706名に配付,回答335名(回収率47.5%),無効回答を除く309名を分析対象とした.キャリア形成の指標とするACMSを従属変数,個人要因とLCRSを独立変数とし重回帰分析を行った.

    人生キャリアに最も関連があった要因は,継続的対処(β=0.452),次に多面的生活,長期的展望,リフレッシュ,年齢,専門的な資格取得や進学であり,超過勤務時間は負の関連要因であった(調整済みR2=0.486).職業キャリアに最も関連があった要因は,継続的対処(β=0.474),次に長期的展望,役職,職業継続意思,専門的な資格取得や進学であり,超過勤務時間は負の関連要因であった(調整済みR2=0.491).余暇キャリアに最も関連があった要因は,多面的生活(β=0.413),次に継続的対処,リフレッシュであり,職業継続意思と育児支援制度活用は負の関連要因であった(調整済みR2=0.383).キャリア形成とライフキャリア・レジリエンスの関連が明らかになった.

  • ~多様な属性に着目して~
    五藤 陽子, 田中 幸子, 中山 栄純
    原稿種別: 資料
    2023 年 27 巻 1 号 p. 122-131
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:特定機能病院に勤務するキャリア中期看護師の情動的コミットメントに影響を及ぼす職場ソーシャル・サポートを明らかにする.

    対象と方法:特定機能病院の勤続10年目以上のキャリア中期看護師に質問紙調査を実施した.1,277名に配布し614名から回答を得た(回収率48.1%).このうち,対象条件を満たす473名中,回答に欠損のない428名(有効回答率90.5%)を分析した.属性を性別,勤続年数,婚姻状況,子供の有無で階層的に分類し,情動的コミットメントを従属変数,職場ソーシャル・サポート尺度を独立変数とし,強制投入法で重回帰分析した.

    結果:情動的コミットメントに対し,統計的に有意(p<0.05)な影響要因は,女性では上司の情緒的サポートと道具的サポートであった(情緒的:β=0.193,道具的:β=0.206).一方,男性では先輩の情緒的サポートは正(β=0.506),逆に,先輩の道具的サポートは負の影響があった(β=-0.568).勤続10年~20年未満の女性,未婚の女性では,上司の道具的サポートのみ正の影響があった(20年未満;β=0.248,未婚;β=0.341).また,既婚と子供有では同僚の道具的サポートは正の影響があった(既婚:β=0.281,子供有:β=0.244).

    考察及び結論:以上より,特定機能病院のキャリア中期看護師の個々の属性に応じたサポートの重要性が明らかとなった.

  • 福田 早織
    原稿種別: 資料
    2023 年 27 巻 1 号 p. 140-149
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:手術看護の経験年数および手術室配属希望の有無と勤務継続の実態を明らかにする.

    方法:全国の手術室看護師を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した.調査内容は属性と勤務継続に関する経験35項目で,回答は4段階の順序尺度とした.経験年数は1年以下,2~3年,4~5年,6~7年,8年以上の5群に分類した.配属希望の有無は希望有りと希望無しの2群に分類した.分析は経験年数と勤務継続の関係をKruskal-Wallis検定,配属希望の有無と勤務継続の関係をMann–Whitney-U検定を行い,有意水準は5%とした.

    結果: 回収数560名(回収率58.0%),手術看護の経験年数は平均4.9年(SD=7.1),配属希望有は56.3%,希望無しは42.3%であった.「手術室勤務を辞めたいと思ったことがある」平均2.9(SD=1.1)に経験年数の差はなかった.一方で「手術室勤務を辞めたいと思っている」平均2.1(SD=1.1)は1年以下と2~3年,4~5年の平均値が全体平均より高く,配属希望の有無による差はなかった.

    結論:手術室勤務を辞めたい理由は病棟・他部署への異動希望が多かった.6~7年,8年以上の看護師は多くの項目の値が全体平均より低く,自身の存在価値の実感と現状に甘んじた満足感の2側面が勤務継続に繋がっていた.

  • 佐藤 啓, 窪田 和巳, 末永 由理
    原稿種別: 資料
    2023 年 27 巻 1 号 p. 150-160
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】認定看護師(以下,CN)に対する組織や上司からの支援とワーク・エンゲイジメント(以下,WE)との関連を明らかにすること.

    【方法】日本国内の病院に所属する6分野(救急看護,皮膚・排泄ケア,集中ケア,緩和ケア,がん化学療法看護,認知症看護)のCNから層別サンプリングで抽出した1000名を対象とした.調査項目は上司の支援を「看護師の職場サポート尺度」, CN活動の支援を先行研究に基づいて作成した項目,CN活動以外の支援を「新職業性ストレス簡易調査票」から抜粋した項目,WEを「ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度」で測定した.

    【結果】1000名に研究依頼書を送付し,宛名不明等を除き971名を調査対象とした.回答は334名で,そのうち323名を分析対象(有効回答率33.3%)とした.対象者の看護師経験21.5±6.4年,CN経験7.6±4.4年,WEの平均得点は3.4±1.1点.WE合計点と組織の支援・上司の支援で階層的重回帰分析をおこない,「自身で認識している活動割合(β=0.236,p<.01)」「認定看護師の活動に対し,看護部と自身の意向を調整するシステムがある(β=0.186,p<.01)」「評価的サポート(β=0.349,p<.01)」で有意な関連を認めた.

    【考察】CNのWE上昇には,CN活動の割合が多いと実感できるよう,普段から意向を調整し,CN活動に対し上司の視点で評価をすることが示唆された.

  • 河野 敬, 大山 裕美子
    原稿種別: 資料
    2023 年 27 巻 1 号 p. 171-178
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    看護ケアの暗黙の選択(Implicit Rationing of Nursing Care)とは,「看護資源の不足(人員配置,多職種協働,時間)が原因で,患者にとって望ましい結果を達成するために必要な看護ケアを患者に提供することを差し控える,または,できないこと」である.看護ケアの暗黙の選択は,Revised-Basel Extent of Rationing of Nursing Care(BERNCA-R)尺度によって測定される.本研究は,日本語版BERNCA-R尺度の作成と信頼性・妥当性の検証を目的とした.標準的な方法に基づき,原版を日本語に翻訳,文化的に適合させた.次に信頼性と妥当性の検証のため,急性期病院の看護師545名を対象に2018年11月に質問紙調査を実施し,317名を最終的分析対象者とした.日本版BERNCA-R尺度の得点の Cronbach’s α係数は0.94であった.主成分分析では,日本版BERNCA-R尺度は1因子構造を持つことが示唆され,原版と同様の因子構造を示した.一方,収束的妥当性に関しては,日本語版the Practice Environment Scale of the Nursing Work Index(PES-NWI)尺度の合成得点,各下位尺度得点とも弱い相関関係であった(r=-0.14~-0.22, p<.01).以上より,日本語版BERNCA-R尺度の妥当性には課題が残った.看護ケアの質指標としての価値を高めるために,本尺度を用いたさらなる信頼性と妥当性の検証が必要である.

  • ―二つの質問紙調査から―
    丸岡 直子, 石川 倫子, 中嶋 知世, 田村 幸恵, 湯野 智香子
    原稿種別: 資料
    2023 年 27 巻 1 号 p. 188-197
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    患者・家族との対話を基盤とした在宅療養移行支援研修プログラムに参加した病院看護師53名の学びの内容と研修プログラム前後の在宅療養移行支援実施状況の変化を明らかにすることを目的とした.学びの内容は,研修プログラム終了後に自由記載により調査し,記述内容を質的記述的に分析した結果,【対話の持つ力】【言葉だけではない対話の手だて】【対話を成り立たせる要素】【顔の見える環境づくり】【学び合う環境づくり】にまとめられた.在宅療養移行支援の実施状況は,研修プログラム実施前後に在宅療養移行支援質指標(外来用:30項目,病棟用:38項目)を用いた無記名自記式質問紙により調査し,各項目の平均得点を対応のあるt検定により分析した.その結果,外来患者への在宅療養移行支援では「在宅で患者が行っていたセルフケア行動に承認の言葉を伝える」が,入院患者への在宅療養移行支援では「入院前の在宅における患者のセルフケア行動に承認の言葉を伝える」「退院後の療養生活を目指した患者(家族)の取り組みを支持する」など6項目で研修後に平均得点が高くなった.患者・家族との対話場面を再構成した事例を用いた研修プログラムは対話の効用と対話促進への学びを生み出し,患者・家族と看護師の対話が必要となる支援項目の実施状況が高まることが示唆された.

  • 河野 めぐみ, 菅野 雄介, 末永 由理
    原稿種別: 資料
    2023 年 27 巻 1 号 p. 198-207
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/16
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,中堅看護師の職場継続意思に対し,看護チームのチームワークとの関連,職務満足度との関連を明らかにすることを目的とした.都市部の中規模病院30施設に勤務する臨床経験4~15年目の看護師に無記名自記式質問紙調査を行った.調査項目は,属性,職場継続意思,チームワーク測定尺度,職務満足測定尺度とした.解析は,職場継続意思を従属変数,両尺度の下位因子を独立変数,属性を調整変数とし3つのモデルを作成し,ロジスティック回帰分析を行った.結果は,中堅看護師1183人に配布し,263人を解析対象とした(有効回答率22.2%).チームワーク測定尺度では,【チーム志向性】の[対人志向性](OR 1.20,95%CI 1.00-1.43)が,職務満足測定尺度では,[仕事に対する肯定的感情](OR 1.20,95%CI 1.09-1.31),[上司からの適切な支援](OR 1.09,95%CI 1.00-1.20)が,職場継続意思ありと関連がみられた.また,現在の職場で継続勤務する意思のある中堅看護師において,チームワーク測定尺度と職務満足測定尺度と正の相関がみられた.中堅看護師が継続勤務できる環境として,チーム内のスタッフ間で同じ目標に向かい業務を遂行するなかで,良好な人間関係の維持,仕事を肯定的に捉えられる,上司の適切な支援の必要性が示唆された.

特別論文
  • ―一般社団法人日本看護管理学会新型コロナウイルス感染症対応整備事業部会活動を通して―
    叶谷 由佳, 洪 愛子, 坂本 すが, 秋山 智弥, 末永 由理
    原稿種別: 特別論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 247-258
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:新型コロナウイルス感染症対応に必要な看護マネジメント体制を明確にする.

    方法:①看護管理者支援事業,②「新型コロナウイルス感染症対応のための応援派遣看護職受け入れ・応援派遣マニュアル(応援派遣マニュアル)」の作成,③コロナ禍における看護管理の課題に関するWEBセミナーを行った.

    結果:①一般社団法人日本看護管理学会内にNursing Management Assistance Teamを発足し,支援協力者登録78名,支援施設28施設,支援回数延べ43件であった.受援後アンケートで,17施設から回答があり,支援により安心感につながり,施設の課題や組織全体のマネジメントに積極的に取り組むことができた等と回答された.②39ページの応援派遣マニュアルを作成した.③地域別に全6回のWEBセミナーを実施した.WEBセミナーの全プログラムに出席したのは76名であり,出席者より新型コロナウイルス感染症対応にあたり,組織一丸となって取り組むこと,職員のメンタルヘルス,事前の準備や地域で相互に協力しあえる関係づくりの大切さ等が語られた.

    考察:以上より,組織を超えた看護管理者を支援する体制整備の必要性が示唆された.身近な組織を超えた看護管理者同志のネットワークを構築すること,応援派遣マニュアルを活用した応援派遣可能な体制を構築することが必要である.

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