日本看護管理学会誌
Online ISSN : 2189-6852
Print ISSN : 1347-0140
ISSN-L : 1347-0140
25 巻, 1 号
選択された号の論文の28件中1~28を表示しています
論点
原著
  • 秋庭 由佳
    原稿種別: 原著
    2021 年 25 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は新人看護師の経験学習,仕事の信念,職場環境と看護実践能力との関連を明らかすることを目的とした.病床数500床以上の49病院に勤務した新人看護師1858名を対象に,就職4か月と12か月に質問紙調査を実施した.就職4か月と12か月の突合可能で尺度回答に欠損のない135部(有効回答率7.3%)を分析した.経験学習は「経験の省察」と「前向きな挑戦」の2因子,仕事の信念は「患者志向」「業務管理志向」「自己管理志向」の3因子,職場における他者からの支援は「相談・安らぎを提供する支援」「行動を促す支援」「思考を促す支援」の3因子で構成された.就職12か月の看護実践能力は,経験学習,仕事の信念,職場における他者からの支援の8因子全てと有意な相関が認められた.この看護実践能力を従属変数とした重回帰分析では,「経験の省察」「前向きな挑戦」「患者志向」が正の影響を示し,環境要因のローテーション研修が有ることが負の影響を示した.共分散構造分析では,職場における他者からの支援のうち「行動を促す支援」と「思考を促す支援」は仕事の信念と有意に相関し,その仕事の信念は経験学習に有意に影響,さらに経験学習は看護実践能力に有意に影響した.これらから看護実践能力が高くあるためには,仕事の信念を持ち,挑戦と省察を繰り返す中で,職場の先輩から行動や思考を促す支援を認識していることが重要だった.

  • 櫻間 知佐子, 山田 聡子, 中島 佳緒里
    原稿種別: 原著
    2021 年 25 巻 1 号 p. 34-45
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:非管理職中高年看護師のワーク・エンゲイジメントと看護実践能力及びその関連と影響要因を明らかにする.

    方法:自記式質問紙による郵送調査.病棟に勤務する40歳以上の看護師を対象とした.調査内容は,ワーク・エンゲイジメントを「日本語版ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度短縮版(以下,UWES-J)」を用い,看護実践能力を「看護実践の卓越性自己評価尺度―病棟看護師用―(以下,NES)」を用いた.また,先行研究に基づいた影響要因を設定した.分析はIBM SPSS Statistics ver.24を用いた.

    結果:全国39病院の調査協力を得て,1,691名に調査票を配布し892名の回答を得た(回収率52.7%).有効回答数は869名であった(有効回答率97.4%).「UWES-J」の平均値は非管理職2.61点(SD=1.2),管理職3.11点(SD=1.1)であり,「NES」の平均値は非管理職120.6点(SD=19.9),管理職127.0点(SD=19.8)であった.非管理職の「UWES-J」得点と「NES」得点は管理職より有意に低かった(p<.01).また,「UWES-J」と「NES」には比較的強い相関があった(非管理職 r=.466, p<.01,管理職 r=.400, p<.01).非管理職の「UWES-J」と「NES」には「成長の実感」が影響を与えていた.

    考察:成長を実感できるような支援の強化が非管理職中高年看護師のワーク・エンゲイジメントを高め,高い看護実践能力の発揮につながる可能性が示唆された.

  • 佐藤 初美, 定方 美恵子
    原稿種別: 原著
    2021 年 25 巻 1 号 p. 85-95
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:地域医療構想が策定される中,少子化に伴う周産期医療再編は避けて通れない課題である.本研究は,組織的移行に臨んだ助産師のトランジションの経験を明らかにする事を目的に進めた.

    方法:質的記述的研究方法を選択し,医療再編後の新設病院に勤務継続をした助産師計8名を対象に,周産期医療再編に伴って起きた選択と将来展望について半構造化面接を行い,意味ある語りのデータを分類,コード化しテーマを抽出した.

    結果と考察:周産期医療再編を経た助産師のトランジションの経験は,4テーマと11カテゴリ,34サブカテゴリで構成され, 4テーマは〝終わりの意識化〟〝新体制構築への相反する思い〟〝期待と現実の差異に抱く混乱〟〝礎を築く責任感への気づき〟というプロセスを示した.

    助産師のトランジションの経験は,旧体制との終わりを自覚しながらも,現実味の無さや納得感が得られない苦悩を抱く事から始まった.アイデンティティの再統合が十分に行えないまま,旧体制の幕引きと新体制構築を決断した助産師は,再編後の体制に期待に反する感情を抱き,準備や知識の欠如を感じる混乱を経験した.しかし,新体制構築の責任を全うするために挑戦する直向きな意思を表わし,スタッフや患者との連帯感の気づきから移行の潜在的プロセスを促進させていった.

  • ―看護職評価用尺度の開発を中心に―
    大儀 律子
    原稿種別: 原著
    2021 年 25 巻 1 号 p. 96-107
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,療養病床(医療療養病床,介護療養病床)で働く看護職と介護職の協働を図るために,看護職の立場から見て病棟看護管理者が持つべきコンピテンシーを測定する尺度を開発することである.本研究は,まず予備調査を通じて,測定概念を明確化し,仮尺度の質問項目を作成した.次に平均値の標準偏差及びI-T相関を経て確定した34項目の「管理者コンピテンシー測定尺度」試作版について,看護職に調査への協力を依頼し,853名(有効回答率64.6%)から回答を得た.このデータについて,記述統計量,因子分析,安定性分析(再テスト法)・内部信頼性分析(Cronbachα係数),関連尺度との基準的妥当性分析を行った.その結果,尺度全体及び「コンフリクトマネジメント」,「病棟内コミュニケーション」,「信頼の醸成」,「専門性への理解」,「目標共有の取組み」という34の質問項目より抽出した5つの下位尺度が信頼性,妥当性及び時間的安定性を有することを確認した.各因子の信頼性はCronbachα係数値では0.72~0.82(p<0.01),安定性分析においてもそれに近い値が得られた.その結果を踏まえて,本尺度は,複雑な人員構成を特徴とする療養病床の病棟において,看護職と介護職の協働を図る病棟看護管理者の自己評価及び病棟の実態把握に適するものであると結論付けられた.

  • ―地域の看護ネットワークを基盤としたアクションリサーチ―
    福田 広美, 原田 千鶴, 副田 明美, 田辺 美智子, 河野 壽壽代, 大戸 朋子, 竹中 愛子, 村嶋 幸代
    原稿種別: 原著
    2021 年 25 巻 1 号 p. 118-128
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:本研究は,中小規模病院等の看護管理者が,支援者と共に看護ネットを基盤に活動を行い,互いの相互作用をとおして自施設の人材育成に関する看護管理の向上に取り組む過程でおこる意識や言動の変化を明らかにすることを目的とした.また,看護管理者の変化に繋がる要件について考察を行うことを目的とした.

    方法:研究方法はアクションリサーチを用いた.病院,老人保健施設,訪問看護ステーションの看護管理者(代表者等)が,人材育成をテーマに看護管理の向上にむけた活動を計15回実施した.活動には認定看護管理者,保健師,研究者が支援者として参加した.分析は質的記述的方法により行った.

    結果:看護管理者の意識や行動の変化は【人材育成の危機感から検討会を始める】【人材育成の悩みを共有し,根拠に基づき課題を探る】【対話を通して学び,人材育成の課題に気付く】【1年目の検討会を振り返り2年目の計画を考える】【気づきを活かして人材育成の改善に取り組む】【現場の人材の変化に気付き,次の改善を目指す】の6段階が明らかとなった.

    考察:看護管理者の変化に繋がる要件は,1)看護管理者の人材育成に対する危機感と熱意,2)看護管理者の支え合い,3)対話を通した看護管理者の認識の変化が存在した.

    結論:看護管理者が,ネットワークを基盤に人材育成の改善に取り組むことで看護管理の向上に繋がることが示唆された.

  • 金子 さゆり, 松浦 正子, ウィリアムソン 彰子, 川﨑 つま子, 平岡 翠, 鈴江 智恵, 伊藤 てる子, 真下 綾子, 近藤 恵子
    原稿種別: 原著
    2021 年 25 巻 1 号 p. 139-150
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,看護管理者のマネジメント能力の向上を目指した効果的な組織的人材育成の方策を検討するために,看護管理者のキーコンピテンシーの構成要素を明らかにし,そのキーコンピテンシーの獲得プロセスを明らかにすることを目的とする.地方中核都市にある300床以上を有する4つの急性期医療施設(特定機能病院および地域医療支援病院)に勤務する看護管理者20名を対象にインタビュー調査を行った.インタビュー調査は半構造的面接法で1人あたり60分程度行い,面接内容を録音し逐語録としてデータを収集した.調査期間は2016年7月から12月である.分析の結果,看護管理者のキーコンピテンシーは,【状況認識】【意思決定】【自己管理】【メタ認知行動】【キャリア支援】の5つの構成要素からなり,これらキーコンピテンシーを獲得する上では【内的要因】である[問題意識と挑戦意欲]と[リフレクションの質],【外的要因】である上司や同僚による[フィードバック]と[機会の提供]が関係していることが示された.看護管理者のマネジメント能力向上のための方策として,5つのキーコンピテンシーの獲得にターゲットを絞り,看護管理者自身が問題意識を高め,リフレクションの質を高められるような内容の研修が必要である.

  • 髙 綾子, 末永 由理, 宮本 千津子
    原稿種別: 原著
    2021 年 25 巻 1 号 p. 151-160
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】子育て中の潜在看護師がどのようなコミュニティを持ち,そのコミュニティが復職及び就業継続にどう活かされているか明らかにし,子育て中の潜在看護師の復職支援ならびにその後の就業継続支援の方法について示唆を得る.

    【研究方法】1年から6年の離職期間を経て復職し,現在小学6年生までの子どもを育てている看護師で,東京都内の子育て支援を行う200床以上の病院に勤務する14名に半構造化面接を行った.

    【結果】子育て中の潜在看護師は,子育て中の看護師,看護師以外の子育てママ,家族や身内から構成されるコミュニティを持っていた.離職中は,復職や働き方等の不安を抱いていたが,復職にはコミュニティの中での励まし合いや仲間の頑張る姿からの刺激が関与しており,子育てしながらの働き方や復職後の生活の変化に対する具体的な情報を得ていた.また,コミュニティがあることで復職後の就業継続の意欲につながっていることが明らかとなった.

    【考察】同じ子育て中の母親からの励ましや頑張る姿からの刺激が復職の後押しとなっており,実際に看護師として復職した人から話を聞くことで,復職後の働き方への不安が軽減されたと考える.また,子育てをしながら働ける可能性を知った対象者は,復職後の生活の変化や仕事と育児の両立について具体的な情報を得たことで,復職への一歩を踏み出したのではないかと考える.

  • 丹野 真理子, 鄭 佳紅
    原稿種別: 原著
    2021 年 25 巻 1 号 p. 161-170
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:看護師長のコンピテンシーと情動知能の関係を明らかにすることを目的とした.

    方法:200床以上の病院に勤務する看護師長248名を対象に,属性,コンピテンシー,情動知能に関する自記式質問紙調査を実施し,122名の有効回答を得た.分析はKruskal-Wallis検定,重回帰分析等を行った.

    結果:コンピテンシーと情動知能の関係は,尺度の総得点間に中程度の相関(r=0.453)が認められ,コンピテンシーが高い群は情動知能も高いことが明らかになった.また,看護学修士や認定看護管理者のコンピテンシーが有意に高い結果となった.さらに,コンピテンシーの説明変数として,情動知能の領域である「状況対応」および学位(看護学修士)の2つがあげられた.

    考察:看護師長はさまざまな場面で柔軟に対応し,集団を動かしていくことが役割として求められるため,情動知能の中でも「状況対応」が看護師長のコンピテンシーに影響を与えていると考える.看護師長のコンピテンシーには学位(看護学修士)の有無や,認定看護管理者の認定の有無などの個人属性も影響していることが示唆されたため,これらの影響要因やその背景については今後も検討していく必要がある.

  • 小野 園枝, 金子 さゆり
    原稿種別: 原著
    2021 年 25 巻 1 号 p. 204-215
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:認定看護師(以下Certified Nurse: CN)による専門分野の看護の組織化とスタッフナースの仕事意欲の関連を明らかにすることである.

    方法:全国の400床以下の一般病院に勤務するCN 337名とスタッフナース1685名を対象に,CNには個人属性,認定看護師による専門分野の看護の組織化について尋ね,スタッフナースにはスタッフナースの仕事への意欲を尋ねた.CNの属性,認定看護師による専門分野の看護の組織化,スタッフナースの仕事意欲の関係モデルを共分散構造分析で検討した.

    結果:回収はCN 286部,スタッフナース1266部であった.関係モデルの適合度は,GFI=.990 AGFI=.976 CFI=.991 RMSEA=.042であった.関係モデルは,【認定看護師経験年数10年以上】から【問題解決への行動】を経由し,【積極的なコミュニケーション】から,スタッフナースの【仕事による自己実現】への関連と,【施設外活動あり】から【積極的なコミュニケーション】を経由し,スタッフナースの【仕事による自己実現】への関連の2つのルートが明らかになった.

    考察:CNは経験から事例への対応を身につけ,それを教訓としてスタッフナースに対し自信をもって積極的にコミュニケーションを図っていることが示唆された.また施設外活動を通してコミュニケーションスキルを向上させている可能性が示唆された.さらに,スタッフナースに対して,専門分野の看護の組織化の成功体験や成長を積極的にフィードバックすることが,スタッフナースの仕事の達成感や満足感を高めている可能性が示唆された.

  • 安田 美緒, 辻尾 有利子, 服部 美景, 吉岡 とも子, 中村 尚美, 吾妻 知美
    原稿種別: 原著
    2021 年 25 巻 1 号 p. 216-224
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,大学病院の副看護師長が倫理的行動をとる上で感じる困難を明らかにし,倫理的行動力の向上に向けた教育と支援体制について考察することである.対象者はA大学病院に所属する副看護師長59名(有効回答50名)である.調査内容は,臨床経験,看護倫理教育経験およびJ. Restの倫理的行動の4つの要素の枠組み(①倫理的感受性②倫理的推論③態度表明④実現)に沿って,具体的事例や自己の行動について問う自由記述とした.分析は,選択肢項目に関しては記述統計を行い,自由記述において困難について表現している文脈を抽出して内容分析を行った.自由記述の内容分析の結果,困難として【患者の尊厳が守れない】【不十分なインフォームドコンセント】【自己決定できない患者の意思決定支援】【医師とのコミュニケーション】【医療に関する価値の相違】【倫理の学習機会の不足】【指導的立場に自信がない】【ケアの不足を招く看護師配置】の8カテゴリーが抽出された.豊かな実践能力をもつ副看護師長は,臨床で多くの倫理課題に気づいているが,上記に述べた困難な状況から,倫理的行動がとれない葛藤を抱いている状態にあった.副看護師長が倫理的行動をとるためには,教育的支援として知識の享受だけでなく,倫理課題を明確化し,それを他者に伝えるために言語化する能力の強化が必要である.さらに,管理者やスペシャリストからの実践的支援が必要であると考える.

  • 石母田 由美子, 原 玲子
    原稿種別: 原著
    2021 年 25 巻 1 号 p. 236-244
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/16
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:本研究の目的は,東日本大震災と熊本地震の際に,災害急性期に病棟運営を担った看護師長の行動を明らかにし,大地震発生時の災害急性期における病棟運営に対する看護師長の行動マニュアルの開発に向けた具体的な示唆を得ることである.

    方法:研究参加者は,東日本大震災と熊本地震の際に被災地の災害拠点病院に勤務し,災害急性期に病棟運営の経験を持つ看護師長20名で,データ収集は半構造的面接法で行い,得られたデータを質的帰納的に分析した.

    結果:大地震発生時の災害急性期に病棟運営を担った看護師長の行動として【生命を守る安全確保】【関係者の安否確認】【災害対策本部との連携】【多くの被災傷病者に対する療養の場の提供】【被災により不安を抱える患者・家族・職員への支援】【暫定的勤務体制の整備】【看護師の心身の健康管理】の7カテゴリーが導き出された.

    考察・結論:大地震発生時の災害急性期における【生命を守る安全確保】は,激しい揺れの直後の危険への回避と,余震が続く中で変化する状況への対応という2つの視点で捉えることが必要であり,【暫定的勤務体制の整備】により病棟を管理する上で,【看護師の心身の健康管理】の重要性が示された.

  • ―看護職における調査―
    長嶋 英里, 片山 はるみ
    原稿種別: 原著
    2021 年 25 巻 1 号 p. 253-261
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/16
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,看護職に使用可能な自助方略尺度(SHS)の信頼性と妥当性の検討であった.3病院の職員779名を対象に自記式質問紙を配布し,メンタルヘルス研修受講歴を含む属性,尺度のアイテムプール,人生の志向性に関する質問票13項目短縮版(SOC),Kessler Psychological Distress Scale K6(K6),Brief Coping Orientation to Problems Experienced Inventory(B-COPE)を調査した.看護職(248名)の回答を分析し,探索的因子分析より15項目【第1因子:自分をいたわるための工夫】【第2因子:知識・情報の吟味と適用】がSHSとして抽出された.2因子の確証的因子分析における適合度より構造的妥当性が確認された.また,SHS得点とSOC得点との相関係数(r=.24,p<.01)より収束的妥当性が,K6陽性・陰性群における差(p=.036)ならびにメンタルヘルス研修受講歴の有・無における差(p=.003)より既知グループ妥当性が,そしてB-COPEの6つの下位尺度得点との相関係数(r=.39~.56,p<.01)より併存的妥当性が確認された.Cronbach’s α係数はSHS各因子で .76~.85を示し,内的一貫性が確認された.以上よりSHSの信頼性と妥当性が確認された.

  • 大重 育美, 山口 多恵, 中島 充代, 飛奈 卓郎, 木村 涼平, 永松 美雪, 倉岡 有美子
    原稿種別: 原著
    2021 年 25 巻 1 号 p. 262-271
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/16
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,妊娠期の16時間交代制看護師を対象に日勤,夜勤,休日の一連の流れを通した睡眠,疲労,身体活動強度について,主観的・客観的な指標を用いて分析し,その実態を明らかにすることである.本研究では,160床以上の病床数の病院に勤務する妊娠期の16時間交代制看護師11名を対象とした.その結果,対象者の平均年齢は29.5歳,平均経験年数は7.2年であった.対象者のうち,初産8名,経産婦3名で,産後うつ状態を評価するEPDSは平均4.7点と抑うつ状態ではなかった.対象者の睡眠の質を示すPSQI-Jは平均6.9点と高かった.妊娠中の交代制看護師の疲労は,日勤前後および夜勤前後でいったん増加するが夜間の睡眠によって回復していた.また休日は低い身体活動強度で過ごすことで疲労を感じることなく過ごしていた.夜勤時の仮眠時間は1時間半確保しているが,日勤後の睡眠時よりも交感神経優位でストレスを感じていることが明らかとなった.さらに妊娠期の16時間交代制看護師の睡眠の質は,非妊娠期の女性看護師と比べて悪化傾向であることがわかった.

実践報告
  • ―退院困難リスクへの早期対応を可能にする退院支援内容の明確化―
    水野 雅子, 野地 有子, 増渕 美恵子
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 25 巻 1 号 p. 46-54
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    本報告では,救命救急病棟看護師が実施している,緊急入院した患者・家族に対する退院支援内容から,退院困難のリスクとなった項目と多職種で実施可能である項目を抽出し構造化を行い,退院支援計画シートを開発することを目的とした.退院困難のリスクへの早期対応を可能にする退院支援内容を時間軸に沿って明確化した.退院困難のリスクには,「入院前に比較した退院後のADLの低下」「断続的なせん妄や認知機能低下」「患者・家族の退院に関するニーズの変化の把握不足」「新たな社会資源を必要とする患者の状態」「診療区分による転院先の制約」の5項目,多職種で実施可能である退院支援項目には,「多職種による情報収集と共有」「患者・家族・多職種間で退院に関する目標を共有」「多職種による患者・家族の退院に関するニーズへの対応」の3項目が明らかになった.退院支援計画シートの構成要素には,退院困難リスクと多職種による支援項目を,時間軸(入院時・入院3日目・1週間目)で明確化した.その結果,救命救急病棟の環境や看護師の能力に左右されることなく患者・家族を中心とした退院支援を実践できるツールの開発となった.また,退院困難リスクに対し多職種と連携し入院早期に介入を始めていくことで,入院期間の短縮や病床稼働の効率的な運用など,病床機能分化推進に貢献できると考えられた.

総説
  • 菅野 眞綾, 叶谷 由佳
    原稿種別: 総説
    2021 年 25 巻 1 号 p. 129-138
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    急性期病院における身体拘束を軽減するための看護管理に関する文献を検討し,最近の動向と今後の課題を明らかにすることを目的とした.PubMed,CINAHL with Full Text,Cochrane Reviews,医中誌Webを用い,2020年1月5日に検索した.計190件の文献が検索され,適格基準を満たし,2000年~2019年に出版された15文献(7和文献,8英文献)が対象となった.各施設における身体拘束軽減の取り組みが成功した要因は,倫理観の醸成,高齢者ケアの推進,転倒予防の推進,せん妄ケアの推進,基本的アセスメントと看護実践の質向上,適切な人員配置,認知症ケアの推進,現状・課題分析であった.主な看護管理実践内容は,1)目標,判断基準の設定,2)課題の明確化,3)問題認識の共有,4)仕組みの見直し・構築,5)安全保障,6)教育機会の提供,7)チームの立ち上げ・運用,8)連携の促進,9)動機付け,10)取り組みの評価であった.非ランダム化比較試験において,身体拘束時間の減少,身体拘束率の低下,身体拘束の使用に関する知識,態度の改善がみられた.今後は,病院規模の違いに関わらず,急性期病院における身体拘束軽減の検討が可能な共通の看護管理評価項目,評価指標を示す必要がある.

資料
  • 駒形 万里絵, 武村 雪絵, 市川 奈央子, 竹原 君江, 國江 慶子
    原稿種別: 資料
    2021 年 25 巻 1 号 p. 12-19
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    職務特性理論において,スキル多様性,タスク重要性,タスク一貫性,自律性,フィードバックという5つの職務特性は内的モチベーションと関連し,仕事に関するアウトカムに影響を与えるとされる.本研究では,これらの職務特性を測定する尺度を含むJob Diagnostic Survey(Hackman & Oldham, 1975)の修正版尺度(Idaszak & Drasgow,1987)をもとに原作者の許可を得て日本語版職務特性尺度を作成し,看護職における信頼性と妥当性を検証した.2017年6月に急性期病院1施設の看護職308名に無記名自記式質問紙を配布し,回収した297通のうち本尺度に欠損のない240名の回答を分析した.本尺度の下位尺度におけるクロンバックαは全て0.7以上,項目-合計相関は0.46~0.67,再テスト法での級内相関係数は0.62~0.71だった.探索的因子分析では4因子が抽出されたが,確証的因子分析の結果,原版と同じ5因子モデルの方が高い適合度を示した.基準関連妥当性の確認のため,職務満足および心理的エンパワメントと本尺度の各下位尺度の相関分析を行った結果,相関係数はそれぞれ0.23~0.53と0.16~0.73で,想定された概念間の相関を確認した.内的一貫性,再現性,因子妥当性,および基準関連妥当性が確認され,看護職において一定の信頼性・妥当性を有することが示された.

  • 木田 亮平, 武村 雪絵
    原稿種別: 資料
    2021 年 25 巻 1 号 p. 20-33
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    看護職員を中長期的に確保するためにはワーク・ライフ・バランス(WLB)確保を目的とした勤務環境の改善が必須である.本研究は,労働時間を含む看護職員の勤務環境改善に先駆的に取り組んでいる医療施設の看護部門責任者の語りから,施設の背景,課題,対処方針,具体的な取り組み,職員への影響を抽出し,複数の施設に共通する課題と課題に対する方略の共通性を考察することで他施設でも応用可能な参照枠組みを得ることを目的とした.2019年11月~2020年3月に研究協力の得られた5施設の看護管理者等を対象にインタビュー調査を行い,各施設の背景,課題及び具体的な取り組み内容や対処方針,組織の変化について,ナラティブ分析の一類型であるテーマ分析手法を参考に施設ごとに分析した後,課題と課題に対する方略の共通性について考察した.特定の勤務帯の担い手増加,休暇取得や超過勤務の是正,子育て中の職員の就業継続,業務負担軽減のための看護補助者の増加といった共通の課題が抽出された.具体的な取り組み内容は様々であったが,勤務帯の配置人員の変更,新たな組織の姿にむけた採用計画の見直し,データに基づく適正な人員管理,WLB制度の積極的運用と仕事への動機づけを促す職場環境の提供,WLB確保や勤務環境改善に対する看護管理者の姿勢と職場風土の醸成などが中長期的に人材確保につながり,勤務環境を改善する上で重要であることが示唆された.

  • 倉智 恵美子, 田中 二郎, 森山 由香, 須藤 久美子
    原稿種別: 資料
    2021 年 25 巻 1 号 p. 55-63
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:看護師達が日勤帯の90%以上の時間,病室内や入り口近くの廊下にいながら,看護業務を行うセル看護提供方式®実施下で,看護師がそばに長くいることに対する患者の認識を知る.

    方法:2018年11月1日より12月1日の間,患者退院時アンケート調査を実施した.質問は7項目でLikert5件選択肢法を用い,積極的肯定:4,肯定:3,否定:2,積極的否定:1,わからない:0の回答方法とした.各項目の回答を分析し,性別,年齢,病棟形態の違いで2群間の統計学的検討を加えた.

    結果:退院患者は1,608名で,537名より回答協力を得た.7つの質問項目の有効回答率は87.9%~96.6%であった.看護師がそばにいることで,ひとりになれない感じおよびプライバシーが守られていない感じは“ない”と回答したものがそれぞれ,83.2%,85.1%であり,セル看護提供方式®について多くの患者は肯定的な感じを持っていた.64歳以下と65歳以上の2群間で,そばにいる認識,安心感,仕事の態度,会話の穏やかさにおいて患者認識に統計学的有意差を認めた(p<0.05).性別,病棟形態の違いでは有意差を全項目で認めなかった.全室個室病棟群で積極的否定を選んだ者はいなかった.

    考察:患者中心の細やかなケアが患者認識の向上をもたらす可能性が示唆される.

    結論:セル看護提供方式®において,看護師が患者のそばに長くいることについて大多数の患者が,プライバシーの侵害などを感じず肯定的にとらえていた.

  • 冨樫 千秋, 石津 みゑ子, 藤本 一雄, 大塚 朱美, 鈴木 康宏
    原稿種別: 資料
    2021 年 25 巻 1 号 p. 64-73
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    非災害拠点病院の看護管理者を対象に病院災害対応計画の促進および災害に対する備え意識を醸成するための情報提供の介入をおこない,その効果を明らかにすることが目的である.

    研究協力の同意が得られた対象者をランダムに,介入群17名,対照群18名に割り付けた.介入群には,半月に1回ずつ3か月間(2020年1月から2020年3月),計6回の情報提供をおこなった.情報提供内容は減災カレンダーHDMGの一部を用いた.1回目「災害発生時,職員を集める方法は?」,2回目「職員の家族との連絡について考えよう」,3回目「多数傷病者受け入れる!施設のエリア分けは?」,4回目「災害マニュアルを見てみよう!」,5回目「地震発生時の机上訓練に職員を誘ってみよう」,6回目「必要な訓練を考えてみよう!」であった.

    結果,介入群で統計学的に有意に変化した項目は「災害時の患者のケア(優先順位の付け方や救命処置等)について教育している」であった.情報提供の介入は,看護管理者に災害時の患者のケアを教育することを意識づけることに効果があったと考えられる.

  • 西村 明子, 山田 光子, 水下 陽子
    原稿種別: 資料
    2021 年 25 巻 1 号 p. 74-84
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    A県中間看護管理職者(看護師長・副看護師長・看護主任)の倫理的行動に影響する要因を明らかにするために,承諾が得られた57施設の中間看護管理職者655名に質問紙調査を実施した.

    調査内容は,年齢,性別,看護管理年数,看護師年数,看護管理研修・看護倫理研修・看護倫理カンファレンスの有無,松本が作成した18場面から成る倫理的問題の認識と大出が作成した倫理的行動尺度である.347名より回答を得(回収率53%),307名を分析した(有効回答率89%).

    看護管理研修受講有は223名72.6%,看護倫理研修有は263名85.7%,看護倫理カンファレンス有は213名69.4%であった.倫理的問題に対する認識について「感じる」が多かった場面は,「本人の意志を確認せず家族が治療を選択する」「人手があればしなくても良い抑制をしなくてはならない」であった.倫理的行動の「公正」は,看護管理研修,看護倫理研修,看護倫理カンファレンスにより高値を示し,「自律尊重」「無危害善行」は,看護倫理研修,看護倫理カンファレンスにより高値を示した.倫理的問題の認識では18場面中13場面で「感じる」と回答した者の倫理的行動が「感じない」より低い得点であった.

    看護倫理研修と看護倫理カンファレンスは,倫理的行動を促進する要因の一つであること,倫理的問題を認識しても倫理的行動に繋がっていないことが示唆された.

  • 福田 早織, 檜山 明子, 村松 真澄, 樋之津 淳子, 中村 惠子
    原稿種別: 資料
    2021 年 25 巻 1 号 p. 108-117
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:手術室看護師の成長と発達の段階に応じた教育と支援の示唆を得るために経験年数別の看護実践を明らかにする.

    方法:全国の手術室看護師を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した.調査内容は属性と看護実践39項目で,回答は4段階の順序尺度とした.経験年数は1年以下,2~3年,4~5年,6~7年,8年以上の5群に分類した.分析は項目別平均値と中央値の算出,経験年数と看護実践の関係についてKruskal-Wallis検定を行った.有意水準は5%とした.

    結果:回収数560名(回収率58.0%),有効回答数は549名(98.0%)であった.手術看護の経験年数は平均4.9(SD=7.1)年であった.Kruskal-Wallis検定の結果,1年以下と各群間に有意差がみられた(p=0.00~0.03).1年以下は看護実践の平均値(2.0~3.7)が低く,2~3年は多くの項目で平均値(2.3~3.8)が高かった.4~5年と2~3年の間に変化はなかった.6~7年と8年以上の看護実践に違いはなく,患者の安全を重視した実践,チームとの連携を図る実践を行っていた.

    結論:2~3年は多くの看護実践の平均値が高くなり,患者に寄り添う実践は8年以上と同等であった.4~5年の看護実践は2~3年と変化がなかった.6年以上はチーム医療の軸となる実践,患者の安全と安楽を確保する実践の特に高かった.

  • 吉田 雄太, 名越 恵美
    原稿種別: 資料
    2021 年 25 巻 1 号 p. 171-181
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】マグネティズムを測定する尺度であるEOM IIの日本における構成概念妥当性を確認することを目的とした.

    【方法】看護管理者または看護管理者経験を有する9名と,DiNQL事業参加病院のうち7病院の看護師1315名を対象に質問票による調査を行った.分析では構成概念妥当性の4つの側面を検討した.

    【結果】内容的な側面ではEOM IIが日本の看護労働環境を評価している程度について「非常にそう思う」「そう思う」と回答した各項目平均は78.0%であった.構造的な側面では最終的に抽出された5因子33項目の確認的因子分析を行った結果,適合度水準を満たしており(CFI=.932, RMSEA=.056),この構造を日本語版EOM IIとして採用した.日本語版EOM IIの一般的可能性の側面ではCronbach’s αは0.74-0.92,外的な側面では職務満足との関連が確認された.

    【考察】本調査により確認された5因子33項目からなる日本語版EOM IIは,構成概念妥当性を検討した4つの側面のうち内容的な側面以外の3つの側面が確認された.5因子中4因子[協働的な看護師-医師関係],[協力的な看護管理者との関係],[適切な人員配置であるという認識],[患者への関心が最重要である組織文化]は先行研究の結果に支持され,[看護実践の自律的な管理]は日本の医療背景の特徴を反映した因子であった.

  • 大賀 知津子, 吾妻 知美
    原稿種別: 資料
    2021 年 25 巻 1 号 p. 182-191
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:中堅看護師のキャリア・プラトーの概念分析を行い,定義することを目的とした.

    方法:6つのデータベースを検索し,2000年~2020年の間に発表された14文献を対象として,Rodgersの概念分析方法を用いて分析した.

    結果:結果として,5つの属性【自己肯定感の低下】【行き詰まり】【心身の不調】【昇進に対する不安】【再燃性】,4つの先行要件【単調な日常】【負担感】【教育を受ける機会の減少】【職位の停滞】,3つの帰結【現状からの脱出】【現状維持】【現実からの逃避】を抽出した.

    考察・結論:結果から,中堅看護師のキャリア・プラトーの概念を「中堅看護師において,単調な日常,負担感,教育を受ける機会の減少,職位の停滞を契機に,自己肯定感の低下,行き詰まり,心身の不調,昇進に対する不安をきたしている状態で,再燃は不可測に起こる」と定義した.また,キャリア・プラトーは,看護の追求や新たな挑戦につながる重要な機会となり,キャリア・プラトーをどのように乗り切るかによって,今後の看護師としてのキャリア発達に影響を与えることが明らかになった.本概念分析の結果を踏まえて,中堅看護師のキャリア・プラトーを早期に把握できる尺度の開発,および中堅看護師がキャリア・プラトーから速やかに脱却するための支援および教育システムの構築が今後の課題である.

  • 鈴木 小百合
    原稿種別: 資料
    2021 年 25 巻 1 号 p. 192-203
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/08
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,先行研究で開発された既存の尺度を精錬した,新たな「看護師のワーク・ライフ・バランス(WLB)実現に向けた看護師長のコンピテンシー評価尺度」を開発し,信頼性と妥当性を検討することを目的とした.全国の431病院に勤務する看護師長2285名を対象に質問紙調査を行った.調査項目は,先行研究で構成された看護師のWLB実現に向けた看護師長のコンピテンシー評価尺度41項目と属性であった.調査票の回収数1924部(回収率66.4%)のうち1743部を分析対象とした.探索的因子分析(主因子法,プロマックス回転),確証的因子分析の結果,8因子33項目で尺度が構成された(因子名:ビジョンの共有,キャリア支援,WLB支援制度の理解の推進,休暇取得の透明性・公平性確保,看護実践における問題解決行動,対人関係構築の基盤となる柔軟性,中間管理職としての責任ある行動,個の能力を活かした人材配置).Cronbachのα係数は全体で.940,因子別で.784~.887であった.尺度と属性(認定看護管理者研修受講歴,院内の研修会の企画・運営経験,基準が明確な管理者昇任制度の有無,看護師長経験年数,WLB推進委員会設置の有無)との関連から収束的妥当性を,年齢,性別との関連から弁別的妥当性を検証したが,尺度の再現性,基準関連妥当性,有用性を検証することが今後の課題である.

  • ~看護管理実践において発揮されたコンピテンシーとその構造~
    佐々木 菜名代, 井部 俊子, 倉岡 有美子, 笠松 由佳, 澤邉 綾子, 武村 雪絵, 吉田 千文, 手島 恵
    原稿種別: 資料
    2021 年 25 巻 1 号 p. 225-235
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/16
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は「コンピテンシーを基盤とした看護管理者研修プログラム」の評価をすることである.プログラムの受講者5人にインタビューを行い,看護管理者としての成果に結びついた実践の中で発揮されたコンピテンシー群(クラスター)を記述した.さらに,より効果的なプログラムにするための課題と方略を考察した.

    問題に直面したとき,まず〈認知コンピテンシー〉により,現状の分析や問題の概念化を行うことにより,問題の本質を明らかにし,問題解決,課題達成に向けた適切な目標が設定された.そして,課題に取り組む間一貫して,〈達成とアクション〉が発揮されていた.また,課題達成に向かうプロセスを通じて〈個人の効果性〉を発揮することが,達成に向けゆるぎなく前進することを支えていた.さらに,そのプロセスにおいて,〈支援と人的サービス〉〈インパクトと影響力〉〈マネジメント・コンピテンシー〉が状況に応じて発揮された.

    コンピテンシー群(クラスター)のモジュールを構造化し,プログラムを展開することが研修成果につながること,本プログラムは,新任看護管理者だけでなく,実践に自信が持てない看護管理者の自己確信の向上を期待できることが示唆された.

  • 小川 晃司, 竹内 朋子
    原稿種別: 資料
    2021 年 25 巻 1 号 p. 245-252
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/16
    ジャーナル オープンアクセス

    看護記録時間の関連要因を勤務帯別に明らかにすることを目的とした.首都圏のA病院に勤務する看護師とその受け持ち患者の電子カルテ・人事情報システムから,2日間における日勤帯と夜勤帯それぞれの看護記録時間,看護師属性,受け持ち患者属性,看護記録属性のデータを収集した.各変数の基本統計量,看護記録時間と各属性のSpearmanの順位相関係数を算出した.また,看護記録時間を従属変数とし,各属性を独立変数とするロジスティック回帰分析を勤務帯別に行った.統計学的有意水準は5%とした.看護記録時間の平均は,日勤帯で93.8±47.8分(勤務時間の20.0%相当),夜勤帯では102.9±80.2分(勤務時間の21.8%相当)であった.日勤・夜勤帯のいずれにおいても,看護記録時間と看護師属性との間に有意な関連はなかった.日勤帯においては,受け持ち患者の「重症度,医療・看護必要度」A項目が1点以上 (OR=1.86, p=.042),B項目が3.8以上 (OR=0.50, p=.041),事象発生後60分以内のタイムリーな看護記録が80%以下 (OR=0.39, p=.002),クリニカルパス適用患者の割合が40%以下 (OR=0.39, p=.002)であることがそれぞれ看護記録時間の長さと有意に関連していた.夜勤帯では,看護記録件数のみ有意な正の相関がみられた(r=.551, p=.010).看護記録時間を短縮するためには,特に日勤帯において,患者割り当てに際して「重症度,医療・看護必要度」を指標とすることや,タイムリーに記録できるように記録端末を増設すること,クリニカルパス等を活用する有用性が示唆された.

  • 新実 絹代
    原稿種別: 資料
    2021 年 25 巻 1 号 p. 272-278
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/16
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】看護基礎教育における「看護管理学」教育に関する実態を明らかにし,教育改善への示唆を得ることを目的とした.

    【方法】「看護管理学」科目の設置状況,教育内容,担当教員の背景に関する調査を全国の看護系大学の看護管理学教育の責任者230名を対象に,無記名自記式質問紙法で行った.回収数58 名(回収率25.2%)について,SPSSVer.22を用いて分析を行った.

    【結果】「看護管理学」科目を設置している大学は84.5%であったが,未設置大学においても「看護管理学」教育は実施していた.履修単位は,1単位70.8%,2単位が29.2%で,履修年次は4年次が68.8%であった.看護管理学科目の設置大学における単位数と教育内容の関連は,調査した28教育項目の中の【チーム医療の概念】【看護の質評価】【感染防止対策】の3項目において2単位大学の実施率が有意に高かった.看護管理学科目担当教員の背景は,医療施設での看護管理者経験者が46.9%であった.

    【結論】看護系大学において「看護管理学」教育は全調査大学において実施されていたが,教育内容,実施割合等は多様であることがわかった.今回の調査を通して新人看護職員研修と関連させた「看護管理学」教育の標準化の必要性が示唆された.

feedback
Top