日本看護管理学会誌
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7 巻, 2 号
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論点:看護政策決定過程とパワーダイナミックス
原著
  • 児玉 真利子, 新開 淑子
    原稿種別: 原著
    2004 年 7 巻 2 号 p. 10-18
    発行日: 2004年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,看護師長に期待するリスクマネジャー役割評価尺度を開発し,その信頼性と妥当性を検討することを目的とした.全国の国立大学医学部附属病院と400床以上の総合病院の看護師長1,167名を対象に郵送法による無記名自記式質問紙調査を行い,859名から回答を得た(回収率73.6%).看護師長のリスクマネジャー役割評価尺度項目として,看護師長の自由記述をもとに,ゼネラルリスクマネジャーや看護管理学の研究者と内容妥当性検討を行い,68の準備項目を作成し調査した.

    Stepwise 因子分析により適合度の高い下位尺度項目検討を行った結果,GFIが0.9を割る20項目が除外され,6因子48項目が抽出された.6因子を構成する項目内容検討より,第1因子は「看護実践における事故防止の具体的な指導」,第2因子「インシデント・アクシデントレポートの活用」,第3因子「関係部門やMRM委員会等への働きかけ」,第4因子「リスクマネジメントに関する教育指導・支援」,第5因子「事故発生時の対応」,第6因子「事故防止マニュアル等の周知・活用」と解釈した.6因子に対する高い適合性と信頼性が得られたため,評価尺度としての信頼性は高いと考える.また,6因子の構成概念妥当性・内容妥当性・交差的妥当性を検討した結果,評価尺度としての妥当性が高いことも明らかとなった.

    本研究で開発した評価尺度は,今後,看護師長のリスクマネジャー役割評価尺度として有用であると考える.

報告
  • 柴山 大賀, 小林 康司, 数間 恵子
    原稿種別: 報告
    2004 年 7 巻 2 号 p. 19-30
    発行日: 2004年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル オープンアクセス

    看護職者が,インスリンを使用していない患者に対して,外来で30分以上かけて個別相談・指導を行っている全国の200床以上の病院179施設を対象に,看護職者による外来での個別相談・指導の実態を,自記式調査票を用いて郵送法により調査した.

    281人から回答が得られた.外来での個別相談・指導に従事していた看護職者は,臨床経験が10年以上のものが70.1%で,管理職が28.5%もいたことから,個別相談・指導は,熟練を要する行為であり,相応の臨床経験が必要とされていることがうかがわれた.

    看護職による外来での個別相談・指導を実施している施設では,糖尿病診療のための多職種チームの72.1%に看護職者が参画していたことから,看護職者が診療チームの一端を担う重要な存在であることが示唆された.

    個別相談・指導にあたる看護職者の活動形態としては,診療の補助業務のかたわらで対応する場合が圧倒的に多く,専門部署の看護職者による個別相談・指導体制はまだ整っていないという現状が明らかになった.

    個別相談・指導を実施する場所としては,相談・指導専用ではないながらも個室を利用するケースが多く,患者のプライバシーに留意していることがうかがえた.

    糖尿病患者の受診時の対応として,糖尿病診療科の外来患者および糖尿病診療科の入院患者の退院後の受診時には,比較的よく対応されていたが,糖尿病診療科以外の糖尿病患者への接触は少なく,改善を要すると考えられた.

  • ─ IADL,ADL,意欲改善得点とケア実施率との関連分析─
    内田 陽子
    原稿種別: 報告
    2004 年 7 巻 2 号 p. 31-40
    発行日: 2004年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は在宅ケア利用者のIADL,ADL,意欲改善に有効なケア内容を明らかにすることである.

    在宅ケア利用者299 人を対象に2 か月間のIADL,ADL,意欲の変化得点を測定し,改善者に実施度が高かったケア項目を分析した.

    結果,自立促進のケア実施率で高かったものは「昔の話,不安等の話を聞く」,「励まし,本人を肯定する」であった.しかし,IADLに関するケアの工夫の実施率は低く,全体的にも自立を促すケアの実施率は低い状況にあった.IADL,ADL,意欲を改善するケアの特徴は①自立を促す見守り部分介助,②在宅でのリハビリの工夫,③他者との交流,④服薬管理の4 点であり,「自分で食べるように促し部分介助する」,「足踏み練習や立ち上がり訓練」,「家族や友人と交流をもつように援助」,「服薬管理」などが明確になった.

    以上,自立促進のケアを実践していくために,ケアマネジャーや管理者,各ケア提供者らは連携しながら,さまざまなサービスの相乗効果を高め効果をあげる必要がある.

論壇
  • 小林 三津子, 大谷 則子
    原稿種別: 論壇
    2004 年 7 巻 2 号 p. 41-48
    発行日: 2004年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文の目的は,医療を取り巻く急激な環境の変化を背景に,在院日数の短縮化が促進されつつある急性期病院に焦点を当て,新人教育の方策として広く普及しているプリセプターシップが,実際には有効に機能していない現状を浮き彫りにし,効果的なプリセプターシップの運用について提言を行うことにある.

    まず,新卒者にみられる特徴と,教育背景としての専門基礎教育,とりわけ臨地実習の現状が,医療技術が高度化・複雑化し,症状の変化が激しく,重症化している患者を対象とする急性期病院の現実の姿とのギャップにより,新卒者であれば誰でもリアリティショックを起こす可能性があることを述べた.次に,現行プリセプターシップのシステム上の問題点として,①導入の前提条件が保証されていない,②実際の直接指導は,主にプリセプター代行者によって行われている,③プリセプターの過剰な負担感や低い達成感,孤立感,④プリセプターと看護管理者間での認識の違い,などについて述べた.

    これらを踏まえて,現状に即した効果的なプリセプターシップを運用するための方策として,①理由の明確化と目的の単純化,②目的に合致したプリセプターの選択,③権限委譲の促進,④サブシステムとしてのサポートシステムの確立,⑤新卒者中心のフィードバックの実施,⑥プリセプターシップの目的・運用に関する知識の共有化,という6点について提言した.

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