日本看護管理学会誌
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2 巻, 1 号
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論点:創造的看護管理
資料・報告
  • 永田 文子, 矢野 正子, 叶谷 由佳
    原稿種別: 資料・報告
    1998 年 2 巻 1 号 p. 28-39
    発行日: 1998年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル オープンアクセス

    平成6年4月に①患者の保険外負担の減少,②看護の質の問題の解決,を目的として付き添い看護解消の方針が出された.

    では,付き添いを解消した病院では,これらの目的は達成されたのか? そこで,付き添い看護解消後の病院の看護を自ら経験し,看護の実態とそれらに影響する経営者や看護管理者にみられる要因を明らかにすることを目的とし,3つの病院で合計9週間調査を行った.

    方法は,調査病棟で看護業務の参与観察と,病院経営者・看護管理者と調査病棟の看護要員全員の計57名に質問紙による半構造化面接を行い,事前に調査対象者の承諾を得,テープに録音し記述化・分析した.

    調査の結果,看護職員の構成では,「看護職員に占める割合は准看護婦(士)が大半である」,「付き添い看護解消前からいる看護職員が多い」という特性があり,看護・業務内容では,「職員間の情報交換不足」,「多忙な業務」,「計画的な看護の不足」,「援助における主体的な判断の不足」,「職員間のチームワークが悪い」の5点が明らかになった.その結果,付き添い解消後の期間は短いとはいえ,解消目的のひとつである「看護の質の問題を解決する」についてはまだほど遠い状況であった.

    次に,3病院の経営者・看護管理者に共通していたことは,職員の多忙さを問題視していないことであった.また,看護のレベルは低いと認識し,看護の質の向上を職員に要求はしても,そのための環境づくりや職員の教育背景に合わせた指導はしていなかった.

    これらの経営者・看護管理者の姿勢は,看護職員から見れば自分達の意見が管理者に理解されていない,看護管理者の望むことは現状とは乖離している,という意識につながり,前述した看護の実態となってあらわれ,影響を与えてきたものと思われる.

  • ―看護管理の変化が看護婦の意識,看護内容へ与えた影響―
    叶谷 由佳
    原稿種別: 資料・報告
    1998 年 2 巻 1 号 p. 40-49
    発行日: 1998年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は1993年に半年で基準看護非認可から基準看護特2類の取得にと移行した私立病院を対象に,看護管理の内容がどのように看護職員の意識,看護内容に影響を与えて基準看護特2類取得が可能だったのかを考察することを目的とした.調査期間は①1992年7月1日~14日,②1992年11月1日~13日,③1993年3月1日~3月14日の3度行った.

    調査方法は院長,看護部長,看護職員への半構造化面接調査,1病棟での参与観察,業務活動調査を行った.また,参与観察病棟の看護職員に対して職務満足度調査を行った.

    対象病院は1992年7月1日から新看護部長体制となった.その結果,看護管理の特徴として「自己尊重の欲求を大切にするという方針」「看護職員の働く環境整備から着手」「現場に則した具体的な教育」の3点があげられた.看護内容の変化の特徴として,「看護職の身の回りの世話に費やす時間の増加」「キャリアのある看護職員の業務内容の変化」「患者個別を重視しようという姿勢への変化」「看護要員間の連携の不足」の4点があげられた.看護職員の意識としては「看護婦職務満足度の増加(115.6点から120.0点へ)」「進学希望者の増加」「病棟婦長への不満」の3点があげられた.これらの結果を考察した結果,半年で基準看護特2類取得の成功に最も重要な要因は,新看護部長の「自己尊重の欲求を大切にするという方針」であると思われた.

  • 林 千冬
    原稿種別: 資料・報告
    1998 年 2 巻 1 号 p. 50-56
    発行日: 1998年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル オープンアクセス

    英国では1986年にNational Vocational Qualification (NVQ) と称する産業技術者資格の養成制度が創設され,現在,12の産業分野で300種類,医療福祉分野では23種類のNVQが養成されている.これらNVQには5つのレベルがあるが,医療福祉分野のNVQは,今のところ自律性や責任の範囲が比較的限定されたレベル2と3のみにとどまっている.ケア業務に携わるNVQのうち日本の看護補助/介護職員に相当するのはレベル2のDirect Care NVQs で,この養成は医療施設に現在就労している看護補助者を対象に現任教育の一環として行われることが多い.

    1997年春に英国のNHS Trust 病院で実施したヒアリング調査によれば,院内でのNVQ養成は全国基準に厳密に従って行われ,NVQ と看護職員の業務分担についても,詳細なJob Description に NVQ は必ず看護婦の指示の下で業務を行う旨が明記されていた.

    こうしたNVQの養成においては,Assessor資格を持つ看護職者が重要な役割を果たしているため,NVQ養成が看護職にとって新たな能力発揮の好機をもたらしたという評価があるが,一方では,医療福祉分野にも近い将来レベル4以上のより自律性の高いNVQ導入の可能性があるため,業務におけると同時に教育課程におけるNVQと看護職との重複や混乱が危惧されてもいる.

  • ―相談活動の実態と看護婦の取り組みの変化―
    岡本 典子, 数間 恵子, 道山 知子, 横村 妙子, 滝谷 和子, 原 雅子, 角田 美代子, 清水 朝美
    原稿種別: 資料・報告
    1998 年 2 巻 1 号 p. 57-64
    発行日: 1998年
    公開日: 2018/12/28
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    平成4年度の,診療報酬「在宅療養指導料」新設を契機に,当病院では外来プライマリナーシングという独自の外来看護相談提供システムを発展させてきた.システムの概要を述べ,過去5年間の活動実態とその活動に携わることによる看護婦の変化を調べた.

    相談は「在宅療養指導料」算定基準に準じて行っている.患者に相談の必要があるかどうかは主として看護婦が判断し,医師に開始の指示を依頼して,同一看護婦が継続対応できるように業務調整している.5年間の相談患者数は615名,内科,外科,小児科の順で多く,全相談件数に占める診療報酬算定患者は増加傾向にあった.

    外来看護婦31名のうち,本活動経験があるのは19名で,活動に携わる前に比べ,看護過程の展開では「患者や家族が話しかけてきた時はできるだけ話を聞くようになった」「声をかけて家での様子を聞き出すようになった」が「非常に」変化し,チームワークが良好になり,自己学習推進・仕事に対する満足と自律性は「かなり」または「少しは」増加したものが多く,業務負担は増加と変化なしがあった.自由記載には「忙しいが,満足感がある」「患者の見方がかわった」などであった.活動経験のない12名の回答は「大変そう」だが「やってみたい」一方で,「時間内にはできそうにない」という傾向であった.これらから,本活動は看護婦の人材活用と能力育成の点で有用と考えられ,活動の拡大が目標である.

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