台農67号のような長稈穂重型品種は, 個体群内のCO_2拡散効率がよいことが関係して乾物生産量および収量が高く, 今後の多収性品種の育種方向として長稈穂重型品種を再評価する必要のあることを指摘し, 長稈穂重型品種の備えた物質生産上の有利な性質を十分生かすために必要な耐倒伏性を長稈穂重型品種に付与することを目的に, 国内外多数の品種間の耐倒伏性の相違とその機構について検討してきた. その結果, わが国の品種はいずれも稈基部の挫折強度を表す葉鞘付挫折時モーメントが小さいが, 中国農試で育成された多収系長稈品種の中国117号, 台湾の長稈品種の台農67号, 台中189号の葉鞘付挫折時モーメントはわが国の品種の約2倍と大きく, とくに中国117号は稈がコシヒカリより2倍程度太く, 葉鞘による稈の補強度が大きいことが関係して葉鞘付挫折時モーメントの著しく大きい品種であることを明らかにした. そこで, わが国の長稈品種に耐倒伏性を付与する端緒として, 葉鞘付挫折時モーメントの最も小さいコシヒカリに中国117号を交配し, 耐倒伏性に表れる形質がどのように遺伝するかを検討することとした.
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