「ナホトカ号」から抜き取った重油, 環境試料 (大気, 漂着重油, 海水) 中の芳香族成分をGC/MS, 蛍光検出HPLCで定着した。重油からはベンゼン, トルエン, エチルベンゼン, キシレン, ナフタレン, アセナフテン, フルオレン, アントラセン, フルオランテン, ピレン, ベンツ [
a] アントラセン, クリセン, ベンゾ [
b] フルオランテン, ベンゾ [
k] フルオランテン, ベンゾ [
a] ピレン, ジベンツ [
a, h] アントラセン, ベンゾ [
ghi] ペリレンが検出された。
大気中ベンゼン, トルエン, キシレン, ナフタレン濃度は有毒なレベルより遥かに低かった。しかし, モデル実験から重油流出直後はベンゼン, トルエン, キシレン, ナフタレン濃度は高いことが推定された。漂着重油中のナフタレン濃度は低下傾向が認められたが, ピレン, ベンゾ [
a] ピレン濃度はほとんど同じであった。ナフタレンの減少は揮散のためと考えられた。また, 海岸砂中の多環芳香族炭化水素類の組成は漂着重油中のそれと類似していた。ベンゾ [
a] ピレンの海水中濃度は低下傾向を示した。
重油の変異原性, DNA損傷についても調べた。重油は
Salmonella typhimurium TA98及びTA100株に対し間接変異原性を示した。また, 重油で処理するとヒトFL細胞中でp53遺伝子を活性化させることから, DNA損傷を引き起こすことが明らかとなった。
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