使用履歴や種類の異なる保管中のポリ塩化ビフェニル (PCBs) 廃棄物28試料を対象として, PCBs異性体および, コプラナーPCBs (Co-PCBs) , ポリ塩化ジベンゾーp-ジオキシン (PCDDs) , ポリ塩化ジベンゾフラン (PCDFs) の高分解能質量分析を行った。そして, 未使用のカネクロール製品27試料との比較により, PCBsやダイオキシン類の化学組成の変化とその変動幅, PCBsの変性の有無等を調査した。同族体組成や異性体組成では, ほとんどの試料で製品PCBと類似性があったが, 安定器充填材では低塩化ビフェニルの割合が増えているものがあった。ダイオキシン類はほとんどをCo-PCBsが占めており, PCDDs/DFsは約1/10, 000程度しかなかった。ダイオキシン類の毒性等量については, いずれも相当するカネクロール製品の濃度傾向と同様, カネクロール500や1, 000の毒性等量濃度が高い傾向を示した。カネミ油症事件での熱媒体利用過程において報告されたPCBsの変性として, PCBs総量に占めるPCDFsの割合, 毒性等量 (TEQ) 総量に占めるPCDFsと個別異性体の割合について注目した。各試料を相当する製品PCBと比較した結果から, いずれの試料もPCDFs総量およびTEQの割合, 2, 3, 4, 7, 8-PeCDF, 1, 2, 3, 4, 7, 8-HxCDFの増加もなく, 使用中に特段の変性は起きていないと考えられた。
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