環境化学
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14 巻, 1 号
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  • 橋本 洋平, 田島 淳
    2004 年 14 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    Phytoremediationによる重金属汚染土壌の改良は, 現行の掘削除去法などの工学的技術と比較し, 技術の安全性・公共性・経済性に優れている。一方, Phytoremediationは土壌からの汚染除去に長期間を必要とする。現段階において, Phytoremediationの技術はHyperaccumulatorの利用とキレート剤添加によるPhytoextractionに区分される。キレート剤添加を随伴したPhytoremediationは, 土壌重金属の溶解性を向上し植物への吸収を促進させるが, 適切な添加剤の適用により, 土壌金属の過剰な溶解を防止し二次的な汚染発生を最小限にすることが必要である。植物が吸収した土壌金属を再利用することにより, Phytoremediationは土壌汚染改良と金属資源の保全を可能にする技術として, さらなる技術発展の可能性を有している。
  • 瀧上 眞知子, 新井 英彦, 廣田 耕一, 田口 光正, 箱田 照幸, 小嶋 拓治
    2004 年 14 巻 1 号 p. 13-23
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    日本原子力研究所は高浜クリーンセンターにおいて, ゴミ燃焼ガス中のダイオキシン類 (DXN) を電子ビームを用いて分解する実験を行った。試料の採取と前処理をJIS法に従って行うと少なくても2週間が必要である。しかし, 排煙から試料を採取するために活性炭繊維からできたDXN吸着採取フィルタを採用することにより, 試料からのDXN抽出にかかる時間は16時間から2時間半に短縮された。また, クリーンアッププロセスの改良により, JIS法の半分以下の時間でクリーンアップを行うことができた。この方法により, 排煙試料の取り扱いに慣れていない実験者でもGC/MS試料を調製することができた。また, JIS法に比肩する正確さで, 試料採取及び前処理を4日間で行うことが可能になった。
  • 田中 博之
    2004 年 14 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    PCB, PCDD, PCDFの異性体濃度あるいは組成について, 1) 異性体間の濃度差が明らか, 2) 試料間の比較が容易, 3) 化学構造との対応が容易, そして, 4) コンパクトに表現できる, 新規の表現法を提案した。本表現法を環境試料に適応したところ, PCB, PCDD, PCDFの環境中での動態を考えたとき, PCBにおいては2, 4, 5位の塩素置換が, PCDD/Fでは6, 8位塩素置換及び7, 8位塩素置換がキーとなる構造であると考えられた。
  • 渡辺 高志
    2004 年 14 巻 1 号 p. 33-47
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    水田にフェニトロチオンを散布した後, 大気をシリカゲルカラムに捕集し, アセトンで溶出後, FPD-GCで定量し, 大気中濃度を測定した。大気中濃度は, 散布当日~散布1日後が最も高く, 経時的に減衰した。散布区域外における濃度は, 区域内の約1/2~1/10であった。大気採取と同時に測定した気象条件等から面源プルームモデル (ASPLM) を用いて予測した大気中濃度は, 散布区域内では一定のばらつきの範囲で実測値とほぼ一致したことから, 発生量の計算方法の妥当性は検証されたと考えられる。しかし, 散布区域外での予測値は実測値と比べてやや低くなっているので, 大気拡散に用いるプルーム式のパラメーターについて改善の必要があると考えられる。
    開発したASPLMの実用性は一部改善を要するものの, 検証されたと考えられる。また, 大気採取中の気象データあるいは経過時間と発生量の相関式 (べき乗) を用いることにより, 予測精度を向上させることができた。
  • 小松 俊哉, 三田 美紀, 姫野 修司, 藤田 昌一
    2004 年 14 巻 1 号 p. 49-56
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    信濃川下流域における6箇所の浄水場の水道水と各浄水場付近の河川水 (水道原水) を用いて, 2002年の1年間, 毎月1回TA100-S9条件でAmes変異原性試験を実施した。水道水の変異原性の年平均値は500~990netrev./lであり, 新潟市では1993年よりも低下していた。年平均値のリスクレベルは, 発がんリスクと関連させた評価からは低いと判断された。しかし, 冬期は高めであり, この時期の特に下流地点については留意する必要があると考えられた。
    水道原水については変異原性生成能 (MFP) を測定した。MFPの年平均値は600~1, 000net rev./lであり, 水道水と同様に冬期に高い傾向を示した。水道水の変異原性と水道原水のMFPには正の相関が見られたことから, 水道水の変異原性の低減を図る上でMFPが水道原水の有用な水質評価指標になる可能性が示唆された。
  • Tadashi TSUKIOKA, Jun-ichi TERASAWA, Shouichiro SATO, Yoshiyuki HATAYA ...
    2004 年 14 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    We have developed a reliable analytical method for determining trace amounts of bisphenol A (BPA), a suspected endocrine disruptor, in urine samples by use of GC/MS so that daily exposure of human bodies to BPA can be estimated. We administered BPA-d16 (100μg) to volunteers in order to conduct an excretion experiment and found that the BPA was absorbed quickly through the digestive tract and excreted mainly as a glucuronide conjugate into urine, in an amount of almost 100 % in 24 hours. The results suggest that determining the BPA content of urine samples enables estimation of the exposure to BPA.
    The results of our analysis of urine from adults show that the average total BPA concentration was 0.82 ng/ml (0.14-5.47 ng/ml, n=91) and that the average free BPA concentration was 0.08 ng/ml (0.01-0.27 ng/ml, n=11) . Also, from a determination of whole-day urine samples, the exposure to BPA was estimated to be 1.68 μg/day (0.48-4.5 μg/day, n=22) on the average.
  • 渡邊 雅之, 深澤 均, 白石 不二雄, 白石 寛明, 塩澤 竜志, 寺尾 良保
    2004 年 14 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    試験用離解機を用いて古紙原料の離解排水を作成し, そのBPA濃度を測定した。8種類の古紙原料のうち, 感熱紙で440mg/lと高濃度のBPAが検出された。さらに, ワープロ用あるいはFAX用の11種類の感熱紙について検討したところ, 1999年以前に製造された感熱紙の離解排水で170~460mg/lのBPAが検出された。しかし, それ以降に製造された感熱紙ではBPA濃度が大きく低下することや, 顕色剤としてBPSあるいはBPS-monoPが検出されることが示された。これらのことから, 感熱紙の顕色剤としてBPAから他の製品への切り替えが進んでいることが示唆された。また, 増感剤としてm-テルフェニル, 4-ベンジルビフェニル, 1, 2-ビス (3-メチルフェノキシ) エタン及びベンジル2-ナフチルエーテルも検出された。
    感熱紙に含まれる可能性のある物質について酵母ツーハイブリッド・アッセイ法によるエストロゲン・アゴニスト試験を行ったところ, 4-ヒドロキシ安息香酸ベンジルとトリフェニルメタンにBPAより強い活性が認められた。
  • 長谷川 敦子, 鈴木 茂
    2004 年 14 巻 1 号 p. 73-79
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    液体クロマトグラフィー/質量分析法 (LC/MS) を用いて, 主要な臭素化難燃剤であるテトラブロモビスフェノールA (TBBP-A) を水質試料から検出する手法を開発した。水質試料中のTBBP-Aは固相抽出カートリッジに通水して抽出した後アセトンで溶出し, 内標準物質として13C12-TBBP-Aを添加, 濃縮, メタノールに転溶し, LC/MSで分析した。イオン化法として大気圧化学イオン化法を用い, 生成した [M-H] -イオンをモニターイオンとして選択イオン検出 (SIM) モードで分析した。添加回収率, 相対標準偏差, 検出下限値はそれぞれ90.5%, 7.2% (n=5) , 0.1ng/4であった。本法を用いて神奈川県内の廃棄物埋め立て処分場浸出水を分析したところ, 9検体中8検体から最大43ng/4のTBBP-Aが検出された。一方周辺の河川水を分析したところTBBP-Aは全検体不検出であった。TBBP-Aは, 近傍に難燃化処理されたプラスティック系廃棄物が埋められていることを示すマーカーに利用できると考えられる。
  • 大隅 仁, 大山 聖一, 工藤 聡, 坂田 昌弘
    2004 年 14 巻 1 号 p. 81-89
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    イオン電極を用いて排水中のホウ素濃度を簡易かつ迅速に計測する手法を開発した。H3BO3溶液に対してH2SO4とHFを添加することによりH3BO3をBF4-に変換し, 生成するBF4-を市販のBF4-電極を用いて計測した。BF4-の生成速度はH3BO3濃度についての一次式として解析することができた。このことから, 反応初期 (1~10min) のBF4-の濃度変化に対して, 反応速度式をフィッティングさせることにより, ホウ素濃度を計測できることを明らかにした。フッ素源として安全性の高いNaFを用いた場合も同様にホウ素濃度を計測することができた。本法の適用範囲は1~300mg-Bdm-3であり, 現行のホウ素の排水基準値付近の排水を前処理なしで測定することができた。
  • 山本 耕司, 角谷 直哉, 森 義明, 鶴保 謙四郎
    2004 年 14 巻 1 号 p. 91-97
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    高度浄水処理水が広範囲に給水されている都市域で, 我々が飲用する蛇口水のTOXレベルを明らかにした。
    マンションと戸建て住宅の蛇口におけるTOX濃度に差は認められなかった。大阪府の高度処理水のTOX濃度は浄水場から給水栓に向かって増加した。一方, 大阪市は増加しなかった。高度処理水のみが給水されている大阪府と大阪市の蛇口水のTOX濃度に差は認められなかった。大阪市の浄水のTOX濃度は大阪府に比べ高い値を示した。これらは浄水場での浄水池・配水池あるいは配水・送水管での滞留時間の差に大きく依存していると考えられた。TOXレベルは高度処理水=高度処理水と地下水のブレンド≦地下水<高度処理水と表流水のブレンド<表流水であった。TOXはあくまでもスクリーニグ手法であり, ハロゲン化消毒副生成物の組成および濃度については今後の課題である。
  • 吉田 光方子, 藤森 一男, 中野 武, 奥村 為男
    2004 年 14 巻 1 号 p. 99-107
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    本研究において, 環境中に存在する4種のtert-ブチルフェノール類の同時分析を行うための検討を進めた。
    その結果, 水質, 底質, 生物試料においてGC/MSで測定する方法を確立した。水質試料は, ENVI-18カートリッジを用いた固相吸着法で, 底質試料はアセトンを用い, 生物試料はアセトニトリルで各々溶媒抽出により前処理を行った後, ヘキサンで溶出または転溶し, 脱水・濃縮後, クリーンアップを行った後, GC/MSで分析を行った。
    本法での回収率は, 水質試料51~87%, 底質試料68~87%, 生物試料111~125%であった。また検出下限値は, 水質試料0.0067~0.011μg/l, 底質試料0.16~0.66μg/kg, 生物試料0.35~0.79μg/kgであった。
    本法を環境試料に適用したところ, 夾雑物の妨害はなく測定可能であった。
    なお, 本研究は平成12, 13年度の化学物質分析法開発調査として, 環境省の委託を受けて実施したものである。
  • 小林 淳, 梶原 秀夫, 高橋 敬雄
    2004 年 14 巻 1 号 p. 109-120
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1980年代前半, 2000年代前半に秋田県米代川流域で水田土壌を採取し, ダイオキシン類と除草剤PCP, CNPを測定した。1980年代前半から現在にかけて, 除草剤濃度は大きく減少したが, ダイオキシン類濃度は大きな減少はなかった。濃度分布は比較的狭い地域において上流よりも下流で高い傾向があった。汚染起源は主成分分析からPCPとCNPと推察され, 焼却由来は小さいことが示唆された。物質収支解析によると, 除草剤は99%以上が消失していたが, ダイオキシン類のほとんどは水田に残留していた。水田地域の流域内におけるダイオキシン類の長期的挙動の解明が必要である。
  • 中島 大介, 影山 志保, 倉持 秀敏, 後藤 純雄, 塩崎 卓哉, 柴野 一則, 吉澤 秀治, 酒井 伸一
    2004 年 14 巻 1 号 p. 121-126
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    木材の炭化処理に伴い発生する変異原性物質の挙動についてヒノキ材を用いて調べたところ, 主にガス状成分 (煙) として放出されること, その変異原性物質は塩基対置換型の変異を誘起し易い直接変異原性物質であることなどが示唆された。木材リサイクル利用の一方法として炭化製品を生産する場合は, その作製過程において発生するガス状成分 (煙) の捕集と, その適切な処理が必要であると考えられた。
  • 石井 善昭, 王 寧, 尹 順子
    2004 年 14 巻 1 号 p. 127-134
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    環境水中医薬品の分析法として液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法 (LC/MS/MS) による7物質同時多成分分析法の検討を行った。イオン化法にはエレクトロスプレーイオン化法を用い移動相にはメタノールと水を用いてグラジェント分析を行った。最適条件下で検量線を作成したところ全ての物質で0.5~100μg/lの範囲で良好な直線が得られた。また, 各物質の検出下限値は0.00076μg/lから0.0025μg/lとなり十分低い下限値が得られた。本分析法を用いて環境水試料を測定したところ7物質全てが検出され, 本法が環境水中医薬品の分析に有用であることが示された。
  • 伏脇 裕一, 森 康明, 中島 大介, 後藤 純雄, 小野寺 祐夫
    2004 年 14 巻 1 号 p. 135-139
    発行日: 2004/03/29
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    クレオソートに関する室内環境汚染実態とその成分の毒性についての研究を行った。防腐剤としてクレオソートを使用していた集合住宅の調査では, クレオソートの主成分7物質が検出された。また, 細胞増殖阻害が住戸における居間の室内空気について認められた。
    クレオソートが塗布された木片をモデルボックスに挿入した実験において, 各種温度条件下で発生したクレオソート成分の濃度変化を検討したところ, クレオソート成分の気中濃度は温度の上昇に伴い増加する傾向にあった。同様に細胞増殖阻害性についても温度の上昇に従って増殖阻害率が上昇した。しかし, Ames変異原性試験では, クレオソート各成分の濃度範囲では変異原性を示さなかった。室内環境汚染質の評価には, バイオアッセイ法を併用することにより, 化学物質測定のみの評価では不十分なものが, より詳細に評価できるようになる。
  • 2004 年 14 巻 1 号 p. 141
    発行日: 2004年
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
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