春先の最初の雪解け水中の水素イオン濃度は高い傾向にある。大気中を落下する雪は酸性物質を捕捉する。大地に積もった新雪は, 圧縮され, 溶解と再結晶を繰り返し, 氷状のザラメ雪となる。この繰り返しで, 硫酸, 硝酸, 塩化物イオンは粒状ザラメ雪の表面に濃縮される。硫酸イオンを含む溶液から球状結晶を生成し, それらを溶解し, この濃縮現象を実験室的に検討した。
溶解実験により氷結晶中の硫酸イオン濃度とその分布を測定した。有機溶媒中で結晶を表面から溶解した場合, 硫酸イオンの分布は偏っていて, 表面付近により多く存在した。結晶生成時の硫酸イオン濃度が高い程一様な分布になる傾向にあることが分かった。
氷結晶をカラム中に詰め室温でそれを溶解した場合, 最初の流出液中の硫酸イオン濃度が高いことを認めた。又, その濃度比は有機溶媒を使用して得た球表面付近の値よりも高くなった。ザラメ雪を溶解した場合, 同じような結果が得られ, 最初の流出液中の硫酸イオン濃度は後のものより高いことも分かった。
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