環境化学
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13 巻, 3 号
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  • 越智 久尚, 藤田 慎二郎, 山内 正信, 國頭 恭, 田辺 信介
    2003 年 13 巻 3 号 p. 643-651
    発行日: 2003/09/24
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    愛媛県東部にある石炭ボイラーについて, ばいじんの元素濃度を測定した。元素ごとにAlに対する濃度比を求め, 土壌の濃度比と比較した。粉じんの元素濃度上昇に与える影響は, As, Ni, Cr, Be, Pb, Zn, Vはばいじんが大きく, Mn, Fe, Ca, Mgは土壌が大きいと推察された。
    0.8μmのミリポアフィルターでろ過した雨水のAs濃度は松山市で最高8.1μg/l, As降下量は新居浜市で155μg/m2/週であった。また, 新居浜市では, 雨量とAs降下量の間に正の相関関係がみられ, Asの大気輸送が示唆された。また, 新居浜市で捕集した雨水のAsは, 96%が溶存態, 4%が懸濁態であった。土壌起源のAs (推定値) のうち, 37%は雨水に溶解したと推定された。溶存態Asは, 大部分が人為起源であり, その一部は大気輸送されていると考えられた。
    県内の5主要都市で実施した粉じんの調査結果を主成分分析により解析したところ, 1) 松山市及び新居浜市は元素濃度が高く人為的な影響が大きい, 2) 西条市の元素濃度は低いが人為的影響は大きい, などの特徴がみられた。
  • 小田 淳子, 西川 雅高, 黄 業茹, 全 浩
    2003 年 13 巻 3 号 p. 653-671
    発行日: 2003/09/24
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    中国の大気中PAHs汚染の実情を明らかにするため, 3都市 (北京, 銀川, 成都) で1998~2000年に採取した大気粉じん63検体と石炭関連試料8検体についてPAHs分析を行った。大気中23PAHsの総濃度 (Σ23PAHs) は北京323±431ng/m3, 銀川898±902ng/m3, 成都249±203ng/m3であり, 粉じん重量あたりのΣ23PAHsは各々, 545±592μg/g, 1135±1357μg/g, 566±321μ/gであった。中国の大気のPAHs濃度は岡山県の環境大気濃度レベルの35~450倍, サンティアゴの20~80倍, アルジェの17~61倍と高値であり, 重工業地域の影響を強く受けたシカゴ大気の濃度値と同程度であった。3都市のPAHs濃度プロファイル及び縮合環数別PAHsの総PAHsに占める比率では, 傾向を伴った季節変動を観測した。石炭燃焼の寄与が高い時4-ring PAHsの相対濃度が特徴的に高いが, 中国3都市の場合, 石炭燃焼の割合が高まる冬季に4-ring PAHsの相対濃度が上昇する傾向があった。環境大気中PAHsのbenzo [e] pyreneに対する相対濃度比 (BeP ratio) と特徴的なPAHs比 (molecular diagnostic ratio) を用いた解析から, 3都市の主要な発生源の影響を推定した。3都市とも共通して石炭燃焼の特徴が強く反映していたほか, 北京では自動車のパターン, 成都では火力発電所のパターン, 銀川では家庭で使用する小型ボイラーのパターンがそれぞれ特徴的であった。
  • 池田 久美子, 山田 久, 小山 次朗
    2003 年 13 巻 3 号 p. 673-681
    発行日: 2003/09/24
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    マッセルウォッチの主要な対象生物であるムラサキイガイの大きさ, 生息深度および季節による体内有機スズ化合物濃度の変動を調べた結果, 分析に供した殻長25mm~65mmのムラサキイガイでは, 生息深度および季節による体内有機スズ化合物濃度の変動は認められなかった。すなわち, 殻長25mm~65mmのムラサキイガイであれば, 季節に関わりなく, 潮間帯のいずれの生息深度からでも採集して, モニタリング生物として使用できることが明らかであった。本研究の結果は, モニタリング生物としてのムラサキイガイの有用性をさらに裏付けるものであった。
  • 小野寺 潤, 上田 祥久, 鈴木 茂, 佐藤 寿邦
    2003 年 13 巻 3 号 p. 683-694
    発行日: 2003/09/24
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    電気電子機器材料中に臭素系難燃剤として添加されるPBDEsの測定手法の検討に加え, 熱分解時の挙動の確認を行った。その結果, 溶媒抽出-GC/MS測定法では, 抽出効率及び作業性等の観点から, ソックスレー抽出法よりも, 溶媒分別法の方が適していることが判った。さらに, その際の抽出溶媒はヘキサンよりもトルエンの方が適していた。以上のことから, スチレンポリマー中のPBDEsの抽出法としては, THFとトルエンを用いた溶媒溶解分別法-GC/MS法が, 最も有効であることが確認された。一方, 試料を熱分解-GC/MSで測定した結果では, 難燃剤として添加されていたDeBDEが, 熱分解により, 1から7臭素置換体のPBDEsとPBDFsを生成することが確認された。このことから, PBDEsが, 熱分解によって脱臭素化反応を起こすことが判り, 試料中難燃剤の同定分析の手法としては相応しくないことが確認された。また, PBDEsが難燃剤として大量に添加された物質を焼却した場合, 有害な臭素化ダイオキシンが生成されることを示唆する結果が得られた。
  • 前田 憲成, 梁 明, 大住 幸秀, 草野 好司, 門上 希和夫, 尾川 博昭
    2003 年 13 巻 3 号 p. 695-704
    発行日: 2003/09/24
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    北九州市山田緑地の旧弾薬庫跡地土壌から2, 4, 6-トリニトロトルエン (TNT) を変換する微生物のスクリーニングを行い, Pseudomonas sp.TM15株とSphingomonas sp.TM22株を分離・同定した。これらの菌株は, 16SリボソームRNA遺伝子相同性解析から, 新菌種であると考えられる。さらに両菌株は, 高効率にTNTを2つのモノアミノジニトロトルエンに変換し, 最終的には芳香環を開裂していることが示唆された。特に, Pseudomonas sp.TM15株は高濃度TNTを分解する活性があり, この菌株を利用したバイオレメディエーション技術の開発が期待できる。
  • 鈴木 滋, 中村 朋之, 清野 陽子, 加藤 謙一, 高橋 正弘, 橋本 俊次, 伊藤 裕康, 森田 昌敏
    2003 年 13 巻 3 号 p. 705-718
    発行日: 2003/09/24
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    ダイオキシン類の分析過程での光分解が, その分析結果に与える影響をPCDFsを中心に検討した。その結果, 2, 3, 7, 8-TeCDDおよびPCDFsが素早く分解し, 還元脱塩素化体 (RDC) に変換することが判明した。PCDFsでは1と9位の両方に塩素が置換した化合物が容易に分解し, 実験室内の蛍光灯点灯下で一般的な器具を用いた分析操作中でも, 分解が認められた。この光分解はトルエンやベンゼン等の芳香族溶媒中で顕著に起こった。
    また, 光分解がダイオキシン類分析に用いられている内標準法による定量結果に与える影響を調べた。その結果, 分解速度は13C体と12C体の間に差はなかった。しかしRDCの生成量はその前駆体の存在量に依存する。従って一定量の13C体に対する12C体の存在比を変化させたトルエン溶液に光照射し, 内標準法で12C体を定量すると, 分解前とは異なった定量結果が得られた。これらのことより分析過程で光分解が起きた場合, 内標準法は成立しないことが判明した。
  • 宝来 佐和子, 渡邉 泉, 久野 勝治, 田辺 信介, 岩水 良和, 本村 健, 平岡 考
    2003 年 13 巻 3 号 p. 719-732
    発行日: 2003/09/24
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1999年に羽田で捕獲されたチョウゲンボウの肝臓, 腎臓, 胸筋, 肺における微量元素濃度を測定し, その蓄積特性と体内分布を検討した。FeとMnは肝臓に蓄積していたが, 他の元素はおもに腎臓と肺で高濃度が認められた。Al, V, Ga, Baは肺で高値を示し, 大気由来の曝露が考えられた。また, Biも他の器官と比べて肺において高濃度で検出された。
    Crは分析に供した全組織において加齢と供に減少し, Vは腎臓と肝臓, 肺において加齢とともに減少した。またNiは肝臓と肺において加齢とともに増加したが, 腎臓と筋肉において減少した。
    雌雄差に関して, オスはおもにアルカリ, アルカリ土類金属元素を蓄積しており, メスはMn, Fe, Cdを比較的高濃度に蓄積していた。
    他の鳥類と比較した結果, Mn, Fe, Rb, Cs, Tl, Hgの高レベルは猛禽類の特徴と考えられ, 他の猛禽類と比較すると, 本種はV, Mn, Cs, Tl濃度が高値であった。
  • 鈴木 理博, 吉永 淳, 鳥山 成一, 西川 雅高, 田中 敦
    2003 年 13 巻 3 号 p. 733-738
    発行日: 2003/09/24
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    ホウ素汚染によると考えられる植物枯死被害事例に同位体比分析を適用し, 汚染経路に関する検討を行った。対照地域に生育した植物の約10~20倍以上高濃度のホウ素を含有する枯死被害植物葉の同位体比は, 発生源と考えられる合金生産工場で使用されたホウ酸およびその工場のばいじん, さらには被害地域の表層土壌の同位体比と一致した。しかし工場から発生したホウ素が発生源→大気→土壌→植物と移行したとすれば, 土壌→植物の過程で同位体分別があるはずであるが, 本調査で発生源と葉の同位体比が一致したということは, 発生源からのホウ素が葉に直接付着・取り込まれたと考えることができる。同位体分析が汚染経路に関して知見を与えることできる例を示した。
  • 渡辺 征夫, 工藤 雅子, 寺島 千晶, 山崎 一彦, 秋田 良子, 古野 正浩, Bathini MADHUSREE, 池口 孝, 後藤 ...
    2003 年 13 巻 3 号 p. 739-752
    発行日: 2003/09/24
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    廃棄物焼却炉排ガス中のクロロフェノール類 (CPs) の2および3塩素置換体 (全11成分) を電気化学検出器 (EChD) 付きの高速液体クロマトグラフィー (HPLC) で分析するために, 吸収液による捕集効率, 濃縮管の効率, HPLCの移動相の種類やpH, あるいは検出器の最適印加電圧などの要因を検討した。それらの結果から0.1~1000ng/m3までの排ガス濃度を測定するための試料採取・分析条件を確定した。また多くの夾雑物が共存する排ガス試料を分離や分析所要時間を損なうことなく長期に連続して分析するために, 6種のプレカット用の [カラム/バルブ] ―システムも試験した。それらの結果を総合して2種類の凝縮水捕集型/自動連続測定装置を開発・作製した。
  • 越智 久尚, 藤田 慎二郎, 山内 正信, 國頭 恭, 田辺 信介
    2003 年 13 巻 3 号 p. 753-764
    発行日: 2003/09/24
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    粉じん中のAsの起源を推定するため, 愛媛県内の産業および地勢を代表する新居浜市, 松山市, 八幡浜市の3市について, 雨水に溶存するAs, NO3-, Cl-, Mg, K, nss-SO42-, ss-SO42-, nss-Caの降下量を主成分分析により解析した。その結果, 新居浜市と松山市では人為発生源の影響が大きく, 八幡浜市は自然起源の影響が大きいと推察された。また, 同降下量の相関分析から, Asの発生源として, 新居浜市は人為発生源, 松山市は主に自然発生源であると考えられた。しかし, 松山市の主成分分析結果は人為発生源の影響を示唆していることから, 同市では, 気象条件などにより突発的に人為発生源の影響が出現したものと考えられた。八幡浜市は特定のAs発生源が存在せず, さらに, 地理的条件および雨水から常時Asが検出されることから, 遠隔地からの大気輸送も関与していると推察された。
    新居浜市で採取した雨水の固形物, ばいじんおよび土壌について, Alに対する元素濃度比を求め比較した。固形物のMn, Fe, Ca, Mg濃度の上昇に土壌が寄与し, Ni, Cr, Pb, Znは, ばいじん及び土壌以外の発生源の関与が推察された。As, Vは, ばいじんと土壌が互いに寄与し, Beは土壌よりばいじんの寄与が大きいと考えられた。固形物の元素に関しては, 土壌由来の元素と人為発生源由来の元素の混在が示唆された。
    新居浜市と宇和島市における粉じんのAs濃度 (μg/m3) は, 春期に上昇する傾向がみられ, ほぼ黄砂の飛来時期と一致しており黄砂の影響が考えられた。黄砂は, 粉じん当りのAs濃度 (μg/g) を低下させるが, 空気量当りのAs濃度 (μg/m3) を上昇させていると考えられた。
  • 長谷川 淳, 松田 宗明, 河野 公栄, 須藤 明子, 坪田 敏男, 平岡 考, 脇本 忠明
    2003 年 13 巻 3 号 p. 765-779
    発行日: 2003/09/24
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    日本各地で採取された10種の野生鳥類中ダイオキシン類を測定した。各種における濃度及び組成から, 各々の生息環境や食性を反映した特有の蓄積特性が明らかとなった。PCDD/Fs, Co-PCBs共に各種の濃度レベルは, 穀類食≒雑食<肉食≒魚食<高次捕食者の傾向を示し, 栄養段階が高次のものほど残留性・毒性の高い異性体が選択的に蓄積されることを確認した。主に陸上生態系に依存する種ではPCDD/Fs, 水圏生態系に依存する種ではCo-PCBsの毒性寄与が顕著であり, 生息環境により汚染の形態が異なることが示唆された。これらの傾向を統計学的に類型化するため, PCDD/Fs残留組成比及びTEQ寄与率に基づくクラスター分析を行ったところ, 生態学的特性による分類とよく一致した結果が得られた。本研究で分析された日本産鳥類のTEQは, 欧米の近縁種が示すレベルの範囲内であったが, 特に陸域食物連鎖の頂点に立つ猛禽類が高い値を示し, 陸上生態系における汚染経路を解明する重要性を指摘した。
  • 中島 大介, 影山 志保, 後藤 純雄, 柴野 一則, 吉澤 秀治, 酒井 伸一
    2003 年 13 巻 3 号 p. 781-787
    発行日: 2003/09/24
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    市販木材をトルエン: エタノール3: 7 (v/v) で20時間ソックスレー抽出した抽出物をSalmonella typhimurium TA100及びTA98によるプレインキュベーション法で測定したところ, その一部に変異原性を認めた。杉, 松及び市販合板を用いて炭化温度をそれぞれ400℃, 600℃, 800℃及び1, 000℃とし, 1時間窒素雰囲気下で作製した炭化物の変異原性を調べた。その結果, 比較的低温 (400℃, 600℃) で作製した炭化物は変異原性を示す場合が多くなることや比較的高温側 (800℃, 1, 000℃) で作製した炭化物は変異原性を殆ど示さないことなどが示唆された。
  • 狩野 直樹, 青柳 良隆, 松井 健太郎, 今泉 洋
    2003 年 13 巻 3 号 p. 789-798
    発行日: 2003/09/24
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    新潟県の10ヶ所 (本土6ヶ所, 佐渡4ヶ所) の海岸で採取した海藻および海水試料について, ICP-MSを用いて希土類元素の定量を行い, その希土類元素パターンを解析した。その結果, 海藻試料中の希土類元素濃度は, 海水中の濃度の103~105倍程度であり, その濃縮割合は重希土の方が軽希土より大きいことがわかった。
    また, 一部の海水試料においてGd異常が見られたことにより, 新潟県においても人間活動の影響による汚染が無視できないと考えられる。
    さらに, 新潟県本土沿岸の試料と佐渡の各海岸の試料では, 希土類元素パターンにおけるCe異常の程度に有意な差が見られた。各試料の希土類元素パターンの解析は, 双方の環境動態を調べるトレーサーになりうることが示唆された。
  • 2003 年 13 巻 3 号 p. 799
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
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