粉じん中のAsの起源を推定するため, 愛媛県内の産業および地勢を代表する新居浜市, 松山市, 八幡浜市の3市について, 雨水に溶存するAs, NO
3-, Cl
-, Mg, K, nss-SO
42-, ss-SO
42-, nss-Caの降下量を主成分分析により解析した。その結果, 新居浜市と松山市では人為発生源の影響が大きく, 八幡浜市は自然起源の影響が大きいと推察された。また, 同降下量の相関分析から, Asの発生源として, 新居浜市は人為発生源, 松山市は主に自然発生源であると考えられた。しかし, 松山市の主成分分析結果は人為発生源の影響を示唆していることから, 同市では, 気象条件などにより突発的に人為発生源の影響が出現したものと考えられた。八幡浜市は特定のAs発生源が存在せず, さらに, 地理的条件および雨水から常時Asが検出されることから, 遠隔地からの大気輸送も関与していると推察された。
新居浜市で採取した雨水の固形物, ばいじんおよび土壌について, Alに対する元素濃度比を求め比較した。固形物のMn, Fe, Ca, Mg濃度の上昇に土壌が寄与し, Ni, Cr, Pb, Znは, ばいじん及び土壌以外の発生源の関与が推察された。As, Vは, ばいじんと土壌が互いに寄与し, Beは土壌よりばいじんの寄与が大きいと考えられた。固形物の元素に関しては, 土壌由来の元素と人為発生源由来の元素の混在が示唆された。
新居浜市と宇和島市における粉じんのAs濃度 (μg/m
3) は, 春期に上昇する傾向がみられ, ほぼ黄砂の飛来時期と一致しており黄砂の影響が考えられた。黄砂は, 粉じん当りのAs濃度 (μg/g) を低下させるが, 空気量当りのAs濃度 (μg/m
3) を上昇させていると考えられた。
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