ダイオキシン類排出削減対策として, 焼却炉の改造を行った2施設について, 同じごみを焼却したときの18種類の重金属類の発生量, 排ガス除去装置による除去効率, 最終的な排ガス中の濃度を調査した。炉内で発生するガス中の重金属類濃度レベルはZnが10mg/m
3Nレベル, Pb, T-Cr, Sb, Sn, Cu, Mn, Baは1mg/m
3Nレベル, Ni, Cd, V, Coは0.1mg/m
3Nレベル, T-Hg, As, Seは0.01mg/m
3Nレベルであった。重金属類の除去率は排ガス処理装置のばいじん除去率と共に向上した。特にHgの除去率は20%台から90%以上と改善した。各元素の揮散率の平均はHgが100%, 70%以上がCdとSb, 50~70%がAs, Se, Zn, Pb, Sn, 20~50%がT-Cr, Mn, Co, 20%以下がNi, V, Cu, Baであった。排ガス中の重金属類はほとんど粒子態であったが, 炉内発生ガス中ではAs, Se, Zn, Sb, Snが微量ガス態として検出された。
本研究におけるごみ1tあたりの排出係数は, Hg: 0.05g/t, Zn: 0.1, Pb: 0.027, Cr: 0.056, Sn: 0.14, Cu: 0.015, それ以外の元素はほとんどが0.029/t以下であり, 従来報告された排出係数よりも1~2オーダー低かった。日本のごみ焼却による重金属類の排出量は, ごみ発生量5000万t/年の75%が焼却され, 良好な排ガス処理を経た場合, Hg, Sn, Zn, Pb, Crが1~6t, その他の金属は1t/y以下と見積もられた。
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