日本林学会大会発表データベース
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経営
  • 井上 昭夫, 山本 一清
    セッションID: P2021
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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  • - 2003年台風10号による日高支庁森林被害 -
    菅野 正人, 対馬 俊之, 阿部 友幸
    セッションID: P2022
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    2003年8月10日に北海道を通過した台風10号により、日高支庁を中心として大規模な森林崩壊が発生した。山腹での崩壊地分布と面積を把握するために、もっとも被害が大きかった厚別川流域約29,000haを対象に、空中写真及び衛星画像を利用した崩壊地判読と面積把握を試みた。それぞれの解析手法について比較しつつ、リモートセンシング技術による被害把握の可能性について述べる。
  • 鈴木 圭, 大輪 安信, 西原 和也, 宗像 和規
    セッションID: P2023
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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  • 日下部 朝子, 白木 紘平, 都築 勇人, 末田 達彦
    セッションID: P2024
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1.はじめに 葉面積指数(leaf area index, LAI)は、単に森林の特徴をあらわすだけでなく、地表植生の物理的・生物的プロセスのパラメーターのひとつとしても重要である。また、LAIは気候モデルの境界条件のひとつとしても使用されていることもあり、正確にかつ広域的な測定が求められている。LAIの測定法としては、その広域性から衛星画像が適しているが、葉量を測るうえで重要な高さ情報がないという欠点があるうえ解像度も低い。一方、高さ情報が高解像度で得られる測定法に航空レーザー測距法があるが、データが線状にしかえられないという点で広域性が不十分である。そこで、これら衛星画像とレーザー測距法を組み合わせLAIの推定の可能性を検討した。2.方法 対象地は北海道苫小牧国有林で、アカエゾマツ、トドマツ、エゾマツ、カラマツの人工林、ミズナラなど広葉樹天然林で占められている。ここで、幅600m、長さ8kmの範囲で走査型レーザー測距を行った。地上では20のサンプルプロットで蓄積とLAIを実測し、衛星画像およびレーザーデータと対応をとるためプロットの位置をGPSで測定した。使用した衛星画像は、2000年5月29日のIKONOSのマルチスペクルトル画像(4×4m)である。各サンプルプロットに対応した、衛星画像のそれぞれ数_から_数十ピクセルに対して、植物の葉の量に比例するといわれている正規化植生指数(normalized difference vegetation index, NDVI)を計算した。レーザー測距により得られる特徴のひとつに樹冠表面から地面までの体積、すなわち空間体積があり、これから蓄積が推定できることが分かっており、他方、一般的に蓄積が大きいほど個体を維持するため葉の量も増えることから、蓄積とLAIも比例関係があると考えられる。このことから空間体積に対し、NDVIが比例することが考えられる。これら3つの比例関係、_丸1_NDVIと空間体積、_丸2_空間体積と蓄積、_丸3_蓄積とLAIの関係が成立すれば、広域をカバーできる衛星画像からより正確なLAIの推定が可能と考えられる。3.結果・考察 まず、_丸1_NDVIと空間体積は予想に反し逆比例であった。逆比例となったのは、サンプルプロットの樹冠がすでに閉じた林なのでNDVIにあまり差がないうえ、空間体積が比較的大きい林ほど樹冠表面がでこぼこしている、すなわち蓄積が大きい林ほど影のせいでNDVIが正当に反映されていないため、と考えられる。そこで、空間体積に対するNDVIの標準偏差をの関係を見ると、空間体積の増加にともないNDVIの標準偏差が僅かながら大きくなっており、正の比例関係が見られる。_丸2_空間体積と蓄積、_丸3_蓄積とLAIの関係は、いずれも正の比例関係を示している。以上3つの関係により衛星画像IKONOSからLAI推定の可能性はあると考えられるが、NDVIの標準偏差と空間体積の関係を使う場合、前提や問題がある。樹冠が閉じた森林を対象としているので樹冠の開閉の区分が必要であること、対象地のような起伏がほぼない場所以外では使えるか不明なことである。今後の研究課題として、より汎用性が高い特徴を衛星画像から抽出することが必要だと考えている。
  • 三宅 麻利江, Darmawan Mulyanto, Phua Mui How, 露木 聡
    セッションID: P2025
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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  • 飯田 和明, 阿部 信行
    セッションID: P2026
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    _I_. はじめに 近年、高分解能衛星が打ち上げられたことによって今まで解析が困難であった広葉樹の単木での樹種判別の可能性が出てきたと言える。樹種の判別が可能であるなら、画像上で樹種が特定でき、どのような樹種構成となっているのか把握することができる。そこで本研究では広葉樹の単木での樹種判別を中心に高分解能衛星が森林の動態を把握できるか検証を行った。_II_.調査地と調査方法 調査地は新潟県西蒲原郡巻町角田山で、角田山は冷温帯落葉広葉樹林帯と暖温帯常緑広葉樹林帯の境界領域に位置し、山塊の複雑さに伴う自然環境の複雑さも加わり、生物相は豊かである。角田山には原生林は見られず、そのすべては2次林で主に、スギ、マツ、竹の植林とコナラを優先種とする雑木林から成っている。 調査は5プロット取り、プロット内の全樹種と胸高直径を測定した。各プロットで数本選び樹高とDGPSとレーザーエースを用いて位置座標を測定した。その他に角田山周辺で単木を測定しこれをデータに加えた。_III_.使用データ 今回使用した衛星データは2001年に打ち上げられた高分解能衛星Quick Bird衛星を用いた。今回は2003年5月2日に撮影されたデータを用いた。解像度がマルチで2.44m、白黒のパンで0.61mと高い解像度を持つ。さらにこの二つを主成分分析で作成した高解像度のパン・シャープン画像を用いて解析を行った。_IV_.解析方法と結果単木で測定した広葉樹を50本選抜した。ここで今回はエドヒガンザクラとヤマザクラ、シナノキとオオバボダイジュは同属であることを考慮してサクラ、シナノキとして扱った。それぞれの樹木から1ピクセルずつ抽出して、バンド4、NDVI、パン画像でそれぞれ輝度値を算出し、一元分散分析を行った。この結果を表1に示す。3つの因子とも針葉樹とは1%有意差を検出することができたが、広葉樹同士ではあまりうまくいかなかった。今回広葉樹で結果が出なかった原因として考えられるのは使用した画像時期にあると思われる。今回使用した画像は昨年5月2日に撮影されたものであり、樹種の中には撮影時期より開花時期が遅いものも存在しており、またちょうどその時期に開花しているといったものが多かった。今回最も他の樹種と有意な差が出たサクラ(エドヒガンザクラ、ヤマザクラ)は他の樹種より開花時期が3_から_4月と早く、撮影時期にはちょうど花も散り、開葉が始まっている状態であったため、他樹種との差が出たのではないかと考えられる(表2)。葉の開葉している時期に撮影された画像を用いれば他の樹種間での差が多く検出され、より正確な樹種の判別が行えるものと推測できる。_V_.まとめ今回解析を行ってみて、広葉樹の単木での樹種抽出は難しいことがわかった。画像の撮影時期(5月2日)が広葉樹の樹種抽出を難しくしていると考えられた。もっとサンプル数を増やすことができれば、様々な生育条件下での解析が行えたので、高分解能衛星を用いれば単木の樹種抽出を含めた森林の動態把握を示すことができたのではないかと思う。
  • 松英 恵吾, 佐藤 匠, 佐藤 幸次郎, 内藤 健司
    セッションID: P2027
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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     戦場ヶ原湿原は日光国立公園の特別保護地区であるが、乾燥化による森林化が進行しているといわれている。しかし、範囲が広域で特別保護地区であるために全体の現地調査が困難な状況である。本研究では、衛星リモートセンシングデータを用いて、湿原全域の状態把握と時間的変化のモニタリングを試みた。その際、中解像度衛星ながらこれまで長期の観測データを重ねてきたLANDSAT/TMのデータを有効に活用するために、データ間の輝度差調整、異なる季節が含まれる時系列データからの変化抽出手法を検討し解析を行った。本研究の解析結果より、湿原への土砂流入源で上流で開拓農地への取水が行われている逆川の扇状地先端部に顕著な乾燥化傾向が、また、東戦場と小田代ヶ原で多少ではあるが湿潤化の傾向が認められ、戦場ヶ原湿原の約15年間の時系列変化を抽出することができた。特に指標としてパターン展開係数が湿原のモニタリングに有効であること、主成分分析、CVAの組み合わせることにより多時期データから変化抽出が可能であることが明らかになった。
  • 高橋 與明, 山本 一清, 千田 良道, 都竹 政志
    セッションID: P2028
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    航空機LiDARによる単木パラメータの抽出
    1.背景と目的
    京都議定書の温室効果ガス吸収源関連条項である3条3項および4項の吸収源の定義の中で、国土の多くの森林が既に造成されている日本において必要なのは、ARD活動よりもむしろ森林経営による温室効果ガス吸収であると考えられる。4項において、(1990年以降に)適切な森林施業が行われているならば、その森林を温室効果ガスの吸収源とみなすことができるとされているが、そのように吸収源として認められた森林に対し、必要となるのが森林バイオマスの高精度な推定である。しかし、広域の森林を詳細にモニタリングするには人力だけでは限りがあるため、リモートセンシング技術の併用が有効的であると考えられる。リモートセンシング技術の中でも、近年特に注目を集めているのが航空機LiDARであるといえる。航空機LiDARは物体の位置座標計測の精度が高いため、海外では単木レベルの樹高、樹冠直径、胸高直径、材積などのパラメータの推定に関して有用な結果が報告されている。しかし国内では航空機LiDARを用いた研究は数えるほどしかなく、特にわが国の主要造林樹種であるスギ・ヒノキ人工林における事例は非常に少ない。近年、施業放棄による間伐遅れが進む人工林が多く存在する日本において、京都議定書の3条4項を受け、今後適切な森林施業を行っていく場合には、そのような人工林での航空機LiDARによる詳細な森林情報の把握が重要であると考えられる。そこで本研究では、間伐遅れのスギ人工林を対象に、航空機LiDARによる先に挙げた単木パラメータの抽出を試み、その推定精度の評価を行うことを目的とした。
    2.現地調査とレーザーデータ対象地は名古屋大学大学院生命農学研究科附属稲武演習林月ヶ平内の、48年生スギ人工林である。林地に約20m×20mのプロットを設置し、プロット内の正確な樹木位置(胸高位置)の測量および毎木調査を行った。レーザー計測は、2001年8月17日に、対地高度300m、ビームの広がり角0.5mrad、スキャン角60°、ヘリ飛行速度約43km/hで取得した、First およびSecond Pulse (FPおよびSP)データを使用した。また、現地調査はレーザー計測の約2年後に行ったため、プロット付近の標本木3本について樹幹解析を行い、標本木の2年間の成長比率を計算し、それを基にプロット内の全立木についてレーザー計測時期の樹高および胸高直径を推定した。解析では、これらを実測値とみなすものとする。ただし、樹冠直径に関しては、レーザー計測時期とほぼ同時期のオルソ写真を参照した結果、樹冠の隣接状態にほとんど違いが見られなかったことから、現在の樹冠直径を2年前の樹冠直径とみなすこととした。また、立木材積は、胸高直径と樹高の二変数材積式(林野庁計画課編)を用いて求めた。
    3.データ解析
    取得されたFP, SPデータをそれぞれ解像度50cmのメッシュデータに変換した後、メッシュ内の最大標高値と最低標高値から、それぞれのサーフェス(DSMおよびDTM)を作成した。その際に各サーフェスに存在するノイズを除去後、DSMとDTM の差から林冠高データ(DCHM: Digital Canopy Height Model)を算出した。その後、DCHMにlocal maximum filter処理、および領域分割処理を行うことにより、単木単位の樹冠頂部ピクセルの三次元位置(樹高)および樹冠ポリゴンの面積(樹冠投影面積)を算出した。各単木パラメータの推定値と実測値をリンクさせる基準は、推定樹冠ポリゴン内に入る実測立木位置ピクセルの中で推定樹冠頂部に(X-Y平面上で)最も近接するもの同士を選択する方法をとった。
    4.結果と考察プロット内の全立木44本のおよそ80%にあたる36本(プロット内の上層木とほぼ一致)の立木について、樹冠ポリゴン内の推定樹冠頂部ピクセルと実測立木位置ピクセルが1対1でリンクし、その36本について4つのパラメータについて回帰分析を行った。全てのパラメータについて、統計的に切片は原点0と有意な差が認められず、また樹高推定に関しては、傾きが1とほぼ等しかった。樹高推定の精度および正確度が非常に高いことからは、今回のレーザー計測のセッティング(平均的50cmメッシュに1点の点密度計測)で十分に上層木の樹冠頂部を復元(計測)できることが示唆された。また、樹高と樹冠直径を独立変数とした単純な重回帰式(R2=0.794)から胸高直径を推定した結果、その精度は樹高推定に比べて低いことから、今後さらに胸高直径推定に適したモデル式を利用することにより、推定精度が向上すると考えられる。そして、胸高直径の推定精度が向上することにより、立木材積の推定精度も向上することが考えられる。
  • 西川 僚子, 村上 拓彦, 吉田 茂二郎, 加治佐 剛
    セッションID: P2029
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1.はじめに
     近年,竹林はその資源利用の低迷に伴う管理放棄の増加により,分布拡大の方向にある。これまでに西日本を中心として空中写真を用いた竹林分布の把握やその時系列変化に関する研究がなされてきた。今後,衛星データを用いた解析が盛んになることが予想される。小泉ら(2003)は,その際の基礎的な抽出手順を示した。他にも竹林の抽出にはいくつかの方法が考えられる。そこで,本研究では,3つの竹林抽出方法を検討した。衛星データには観測波長範囲や解像度が異なるIKONOSやSPOT等が挙げられるが,本研究ではその中でもアーカイブが充実しており観測波長範囲が広い多時期のLandsat/TMデータを用いた。また,30mという比較的大きな解像度のLandsat/TMデータが竹林の変化抽出に耐え得るかという点についても検討した。
    2.対象地および使用データ
     対象地は福岡県糟屋郡篠栗町と同八女郡立花町である。両町共にタケノコや竹材の生産が盛んであるが,篠栗町は人工林が町の47%を占め,立花町は耕作地が町の31%を占める。使用データは,篠栗町1988年,1995年,立花町1981年,1995年のオルソフォト,九州北部(Path:113,Row:37)の2時期のLandsat/TMデータ(1988年4月15日,1995年5月5日)である。
    3.解析方法
    (1)竹林パッチの抽出
     方法1:小泉(2003)の手順に従った。まず,NDVIを用いて植生のみを抽出した。次に,Band4,Band5を用いて樹林地・耕作地・草地を,Band5,Band6を用いて芝地をそれぞれ除去した。最後にBand4を用いて半裸地を除去し,竹林の抽出を行った。
     方法2:画像解析ソフトeCognition(独DEFINIENS imaging社)を用いて抽出した森林地を教師付き分類にかけて竹林を抽出した。教師付き分類には,斜面方位の45°から225°をsunny, 225°から45°をshadeとして分け,それぞれから竹林・広葉樹林・針葉樹林のトレーニングエリアを設定した。
     方法3:SSC法(スペクトル形状分類法)(Carlotto,1998)により森林地の抽出を行った。さらに竹林・広葉樹林または針葉樹林に分類し,竹林の抽出を行った。森林抽出の際のバンド順位はBand1>Band4,Band5>Band2>Band3>Band7を用いた。竹林抽出の際には,Band4>Band5が広葉樹林または針葉樹林とし,それ以外を竹林として抽出した。
     それぞれの抽出精度についてKappa係数で評価を行った。
    (2)竹林パッチの時系列変化
     二時期の抽出した竹林と空中写真より判読した竹林パッチを重ね,個々の竹林パッチ変化がLandsat/TMデータにどのように反映されているかを検証した。
    4.結果および考察
    (1)竹林パッチの抽出
     全体的に抽出精度は高かったが,過大抽出の傾向が見られた。誤って竹林として抽出された多くが広葉樹林であった。広葉樹林と竹林は全バンドにおいて輝度値が類似していたため,いずれの方法でも分類が困難であった。これには,季節的な要因等が考えられるため,他時季のデータで検討する必要かある。
    (2)竹林パッチの時系列変化
     いずれの方法においても竹林パッチの少なくとも一部は抽出できていたが,竹林パッチの形状に沿った抽出ができているところはほとんど見られなかった。
     今回の結果より,Landsat/TMデータは,広域でのおおまかな竹林の位置を把握するには適しているが,個々の竹林パッチの時系列変化を把握するには不十分であると考えられた。
風致
  • 斎藤 馨, 藤原 章雄, 石井 秀樹, 志村 正太郎, 矢野 安樹子, 大場 有希子
    セッションID: P2032
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     東京大学秩父演習林内に設置した2台の森林映像記録ロボットカメラの映像(動画と音)を利用して、森林に関する環境学習の教材として、季節変化を映像と音で閲覧できるDVDとWebページの作成と、小学校の授業で児童が容易に季節変化を見ることのできる印刷物を作成した。印刷物は、児童が容易に閲覧し、印を付けたり、異なる日の写真を比較できることに着目し、2001年と2002年の過去のロボットカメラの写真を1年間並べる際に、2004年版のカレンダーの形式を用いて、カレンダーの日付と同一の過去の写真を配置した。これにより小学生が、1年分に並んだ過去の森林の写真を、1年間の日々の並びとして直感的に理解できる。ロボットカメラの映像には森林の音も記録されていて、鳥や蝉の鳴き声が入っている。音から鳥の種を同定しカレンダーの日付欄に記載した。また映像を使ってDVDとWebページを作成し、カレンダーで一覧している1年間の変化を、視聴できる教材を作成した。今後は実際に小学校での授業に試験的に用いて、これらの教材の有用性を検証していく。
  • 北海道根室市の酪農家集団による運動を事例として
    松村  綾子, 山本 美穂, 久保 文香
    セッションID: P2033
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    1.研究の背景と目的  フットパスとは、英国の長距離自然遊歩道の事を指す。英国のフットパスは、グリーンツーリズム(以下GT)の一環として捉えられており、農村地域への経済効果が高い。近年英国の影響を受け、日本各地でフットパスづくりを実施する団体が見られる。これらのフットパスは、自然を楽しむという従来の自然遊歩道の特徴に加え、地域の事を知るといった目的も付随している傾向がある。そのため、フットパスを用いた地域の振興へと繋がる可能性がある。本研究では、先駆的な事例である根室の運動の到達点と課題を明らかにし、今後の方策について考察する事を目的とする。2.研究の方法5戸の酪農家(グループ名AB-MOBIT、以下MOBIT)に活動経緯と今後の意向、関係者7人(以下関係者)MOBITとの関わりと今後の意向、ルートが設定された周辺の牧場経営者(以下住民)7戸に、自分の土地にフットパスを敷設する事への考え、GTやMOBITの活動への意向を聞き取った。3.調査結果活動経緯:Uターンで1994年に戻ってきたメンバーの中心人物I氏は、「生産者の事を理解してもらいたい」という想いから、1997年に根室管内初の体験型牧場を始めた。更にI氏は、2000年にGTへ向けた施設を導入し、マスコミにも取り上げられるなど、根室管内でも有名な酪農家となった。同時期、酪農家の友人らとMOBITを結成し、市民参加型のイベント活動を始めた。その中から5人の牧場を30kmのフットパスで繋ぐという構想が生まれ、2003年には、関係者の支援のもと、全国から参加者を募ったワークショップが開催され、2戸の牧場を結ぶフットパスが完成した。その後、I氏は森林管理署にルート周辺の国有林の苗畑跡地を環境教育の場として利用する事を申請した。関係者および森林管理署の意向:いずれの関係者も、今後もMOBITの活動を支援して行きたいと好意的であった。JRのみフットパスによる乗客数の増加を期待して協力したが、それ以外は、地域のリーダー的存在のI氏であるから協力したという面が強かった。関係者は、フットパスによるGTの促進を望んではいるものの、今後の具体的な方策については、曖昧な状態であった。森林管理署は、MOBITがどのような団体か分からないため、現段階では様子を窺っているという状況であった。住民の意向:住民は、酪農1本志向が強く、GTを自ら行おうとは思わないが、MOBITの活動に関しては、反対する人はいなかった。中には「将来GTをやってみたい」、MOBITの活動に関して「地域振興になる」と述べた理解ある層も存在した。人が地域に訪れる事は、誰しも賛同していた。しかし、フットパスに対しては、「誰が歩くのか」と疑問を呈する人が多かった。土地の侵入に関しては、土地の端なら良いと回答した人もいるが、土地の中央は、経営への影響から、全員拒んだ。4.考察フットパスという媒体を用いてMOBITと個別に関わってきた関係者の総括的活動が行われた事が、運動の到達点として挙げられる。運動の課題の1点目として、運動が特定の人物に依存しており、一人抜けると運動が停滞する危険性がある事が挙げられる。その要因として2つ考えられる。_I_関係者が受身の状態である。関係者は、GTに関しては積極的であるため、今後フットパスとGTの橋渡しが必要とされる。_II_住民がGTを理解していない。住民は、GTは酪農以外の経営をしなければならないと考えており、MOBITの活動に参加するにはハードルの高い状態となっている。今後フットパスも含め、GTについての十分な説明が必要とされる。課題の2点目として、フットパスのルートが公有地とMOBITの牧場だけで終わっている事が挙げられる。住民の土地の端を利用し、「地域に人が来る」という趣旨でのフットパス整備は可能である。今後の可能性として、MOBITの活動は酪農と観光の間に位置しているが、上手く機能すれば、森林サイドや複合経営を行わない農家との連携もとれる事が考えられうる。地域住民によるフットパスづくりは、土地所有者を含め、多くの主体の連携を自ずから要請する。地域の様々な主体のニーズをどうくみ上げ、地域振興に繋げて行けるかが、今後のフットパスづくりの決め手である。今回は、受け入れ側のみの研究となったが、利用者の確保についても検討する必要がある。
  • 本江 一郎, 鈴木 直樹, 鍛代 邦夫, 前田 重紀
    セッションID: P2034
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    I はじめに 森林を学ぶ学生にとって夏季の長期休暇は遠隔地の森林で実施されるレクレーションを体験、学習、経験する好機である。 しかし、自宅ないしアパートで自由に生活する現代の学生にとって、多数の学生がともに長期間生活することは困難なことと推測される。 そこで男女5名ずつの学生それぞれ約70_m2_の建物2棟で生活を行い、生活環境改善について検討を行い、114回日本林学会大会で発表した。 その結果大部分が改善したにもかかわらず起床時間、就寝の阻害、朝食時間の分散、プログラムの準備不足が指摘されたため、今回はこれらを改善するため情報の共有化を目的として共同生活を実施した。II 方法 2003年7月19日から8月31日までの42日間男子4名、女子8名が参加し、新潟県十日町市あてま高原リゾートが運営する自然学校のプログラムとして森林レクレーションの実施に参加した。 参加した学生の生活環境は昨年の2棟使用から、今年は2階建て延床面積約190_m2_を使用し、1階は男子、2階は女子にわけて一棟で生活することにした。III 結果と考察1. 睡眠について  起床時間は昨年で6時が40%、7時が50%、8時が10%であったが今年度には6時が0%、7時が67%、8時が33%となり7,8時が増加した。就寝時間は昨年が22時が10%、23時が30%、24時が60%に対し、今年度では22時が8%、23時が58%、24時が33%で23時が増加した。このように就寝を阻害した要因が減少したが、まだ翌日の準備が阻害要因として存在した。2. 食事について 昨年は起床との関係から朝食をとることのできない者が10%いたが、プログラムの準備や就寝時間の改善で、今年は7時が17%、8時が83%となり全員が朝食を終了した。 時間的な制約もあるが昼食は従業員食堂を利用することにより、自炊による時間制約の負担を軽減することができ、昨年は希望どうりにならないが20%あったが、今年は100%となった。 夕食は各自の希望を聞き取り、複数日責任を任された担当者を中心に自炊を行った。その結果、食事担当者はプログラムに左右されることなく学生の生活面のバックアップに徹することができた。これにより昨年では多少の問題があると100%答えたのに対し、今年では83%が楽しめると答えた。又、夕食を全員で取る事により、情報の共有化も可能となった。3. プログラムについて 内容は森で行うバームクーヘン、ピザや森の材料を用いたクラフトづくり、森の探検隊などの従来の項目の他に、更に森林に接する物としてDay campを加えた。 今年のアンケートの結果から昨年同様、午前の開始時間は10時が適当であると100%であったのに対し、午後の開始は2時が20%、3時が70%から2時が75%、3時が25%となり2時が増加した。この間に昼休み、手の空いた人は次回の準備を行っていた。なお昨年は車両が運営に必要と感じたのは100%であったが、今年は92%であった。 以上のことから一棟での共同生活は学生間のコミニュケ_-_ションの改善に役立ち、この事が昨年の問題を解決し、効率化に役立ったと考えた。
  • 高山 範理, 辻 華欧利, 下村 彰男
    セッションID: P2035
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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  • ドイツ・フライブルクにおける風車の建設とその評価
    波田 創, 大山 勲
    セッションID: P2037
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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経営
  • 加治佐 剛
    セッションID: P2038
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
    会議録・要旨集 フリー
  • 大西 紀子, 村上 拓彦, 吉田 茂二郎
    セッションID: P2039
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
    会議録・要旨集 フリー
  • 山手 規裕, 瀬戸島 政博, 船橋 学, 今井 靖晃, 岡崎 亮太, 小熊 宏之
    セッションID: P2040
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1.目的現在、二酸化炭素の吸収源となる森林域の把握は重要な課題となっており、その一手法として航空機搭載型レーザスキャナの森林への適用性が研究されている1)。既往の研究において森林地形や樹高等の計測に関してはその成果が得られてきたが、レーザ入射角については、リターン数や標高精度などについて詳細に検証を行った例は少ない。 そこで,本研究では国立環境研究所苫小牧フラックスリサーチサイトにおいて、3コースを重複させてデータを取得し、レーザ入射角が計測データに及ぼす影響について検証した。2.研究対象地域調査地は、北海道苫小牧市内に位置する、苫小牧国有林1196_から_1198林班内を対象とした。同地区は傾斜が5°未満の緩斜面で起伏がほとんどなく、レーザの入射角の影響を検討する上で適した場所である。植生は樹齢40年前後の樹高のそろったカラマツが広範囲に分布している3)。3.調査方法_丸1_レーザ入射角の計算レーザ入射角は、対象となる点からコース中心線までの水平距離を算出し、次に航空機の対地高度から対象となる点の標高値を引いて対象となる点から航空機までの垂直距離を求め、この2つの値から入射角を算出した_丸2_グリッドデータによる差分比較3コースそれぞれについてファーストパルス、ラストパルスを用いたグリッドデータを作成し、各コース間で各点の標高値と入射角の差分を計算し、標高値の差分値と入射角の差分値との間で相関分析を行い、標高値の傾向を分析した。_丸3_グリッドデータの傾斜角および地上開度との関係の検証各コースのグリッドデータから各点における地上開度を周囲5mの範囲で求め、その値と_丸2_で得られた標高値の差分との値の間で相関分析を行い、地上開度とコース間の標高値の差分の間の関係について検証した。_丸4_実測値との比較GPS及びレベル測量によって得られた地盤面の3次元ポイントデータの近傍2m以内のレーザ点を3コースのラストパルスのランダム点群データから抽出し、入射角と標高誤差との間で相関分析を行った。4.解析結果及び考察コース間の差分値と入射角の差分値との相関係数を表1に示す。コース間差分値と入射角の差分値との間には相関が見られないことから、コースの違いによる標高地のぶれはランダムであるといえる。地上開度とコース間の差分値との相関係数を表2に示す。地上開度とコース間の差分との間にはわずかに相関が認められ、樹木の縁の部分でコース間の標高値の差が大きくなる傾向が認められた。これらの結果から、飛行コースの違いがレーザスキャナの標高値データに与える影響は認められるものの、その傾向は入射角に起因するものではなく、地上の状況に依存するものであることがわかった。入射角と地盤面に対するレーザー点の標高誤差との相関係数は0.11であり、入射角と地盤面標高誤差とは無関係であることが示された。また、入射角と実測値と比較した時の標高誤差との関係を図1に示す。この図から、標高誤差1m以内の点の入射角もほぼ均等に分布しており、地盤面に届くレーザー点の数も、入射角とは無関係であることが示された。本研究は(独)国立環境研究所地球環境研究センターが運営する苫小牧フラックスリサーチサイトを利用して得た成果である。また、本研究で使用した地上データの解析を行っていただいた米康充氏、ならびにGPSを貸してくださった北海道大学雨龍研究林の方がたに厚く御礼申し上げる。
  • 田中 万里子
    セッションID: P2041
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    長野県北部の北信地域では平成5年から列状間伐が実施されるようになり、10年経過した現在、列状間伐による収入間伐が継続的に行われている。初めは県職員が間伐材の搬出適地を探し、間伐事業を推進して実際の間伐事業収支と機械による作業効率を調査した。その結果、森林所有者に収入間伐などその効果を明確に示すことができた。平成9年からの第2期では、SPやAGが主体となって活動し、民有林をまとめ間伐事業を推進した。その後、素材生産業者がまとめ役をするようになり、県は間伐事業促進の仕組みを作ったことになった。 北信地域では、森林管理のために民有林の団地化の動きもあり、県職員の活躍を整理した。
  • 笹川 裕史, 松本 光朗
    セッションID: P2042
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1.目的
     材価の低迷のなか、機械化により低コストを狙った列状間伐が広く行われている。収穫予想表や林分密度管理図といった従来の収穫予測手法は、林分全体に施す均一な間伐を想定しており、列状間伐のように伐採列の位置により残存木の密度環境が明らかに異なる間伐には適用できない。しかしながら、他に適切な予測手法が無いため、一般的な収穫予想表を便宜的に利用している場合が多い。
     本報告は、このような現状を背景に、列状間伐がもたらす空間的な特徴と推移をふまえながら、列状間伐に対応した収穫予測手法を提案するものである。

    2.方法
     列状間伐において、間伐列と残存木の位置関係が直径成長に影響することが知られている。伐採列の両側は占有面積の増大や光環境の改善といった間伐の効果を受けるものの、伐採列から離れた列はそのような変化はなく、間伐効果が期待できないことは容易に推測できる。
     実際行われている列状間伐を見ると、その基本パターンは限られている。一般には1伐3残や1伐2残が行われ、まれに2伐3残や2伐4残なども見られる程度である。ただし、下層間伐との組み合わせや、繰り返しによる組み合わせなどによってパターンは複雑になる。そこで、様々な列状間伐のパターンを想定し、時系列的な林木の密度環境の変化を解析したところ、それぞれのパターンにおいて、林分内に同様な占有面積の推移をしている列やブロックが見られることが分った。
     さて、システム収穫表のひとつであるLYCS(白石 1992)は、直径成長モデルを背景に様々な密度管理計画に対応した収穫予測手法であり、下層間伐のみならず上層間伐にも適用の実績がある(Matsumoto 1997)。その基本構造からすれば、一様間伐にも対応可能であることが推測できる。
     このような検討から、列状間伐林の収穫予測手法として、次のようなブロック化による手法を考案した。まず、列状間伐のパターンを時系列的にモデル化し、林分内の単木の占有面積の推移が等しい林木域をブロック化する。次にブロックごとにLYCSによる成長予測を行い、最後に各ブロックの結果を合算して林分の収穫予測とするものである。
     なお、ここでは単木の占有面積をボロノイ図から得られた面積とし、占有面積からha当り本数密度に換算してLYCSに適用するものとした。

    3,結果と考察
     先の手順に従い、1伐2残、1伐3残、2伐4残といった列状間伐に、比較のための定性下層間伐を加え、計4種の間伐型について収穫予測を行った。ここでは、LYCSの北関東・阿武隈地方スギのパラメータを用い(田中ら 2004)、地位を1とし、19年生時に切捨て間伐、27年生時及び35年生時に間伐、50年生時に主伐を行うものとした。間伐率は、それぞれの間伐型で異なるが、主伐時に1000_から_1125本/haとほぼ等しくなるように密度管理計画を立てた。
     2回目と3回目間伐において隣接する列が伐採されるブロックでは、本数密度が低下する。この時、残存木に与える間伐効果は、直径の大小に関係なく間伐された場合と同等であると考えられ、LYCSでは一様間伐がなされたとして取り扱った。
     他2種の列状型に対しても同様にブロック化作業を行い、LYCSによる推定をふまえて、それぞれの収穫予想表を作成した。
     作成された収穫予想表を比較すると、次のような特徴が見られた。まず、2回目の間伐木の平均直径が、列状型において下層型よりも2cm(10%)大きかった。その反面、主伐木の平均直径は、下層型が列状型よりも平均2cm(4%)大きかった。また、間伐木材積合計については、列状型では下層型より平均102m3(23%)大きかった。
     これらの推定結果は、実際の列状間伐で見られる特徴や傾向に沿っており、本手法は適切なものであると言えよう。
  • 杉山 精一
    セッションID: P2043
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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  • 宮崎県椎葉村での事例
    溝上 展也, 阿南 篤宜, 岡田 広行, 井上 昭夫, 山下 健一, 小濱 亨
    セッションID: P2044
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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  • -中部森林管理局奈良本山国有林を事例に-
    遠藤 寛子, 植木 達人, 飯島 一成, 井出 利松
    セッションID: P2045
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1.はじめに 国有林における漸伐作業は、1970年代より各地で採用されてきた。しかし更新期に長い時間を費やすうえ、上木の伐採方法・程度と天然更新との関係がいまだ十分解明されていないこと等から,その技術はなお発展途上の段階にあるといえる。そこで本報告では、1977年当時前生稚樹の存在が比較的多く確認された64年生ヒノキ人工林に対し漸伐作業が採用され,現在更新が完了したと考えられる林地において,これまでの作業が更新に与えた効果・影響を検討し,ヒノキ人工林における漸伐作業確立に向けた更新期の技術的問題点を明らかにすることを目的とした。2.調査地の概要および調査方法 _I_調査地の概要 調査地は東信森林管理署管内奈良本山国有林1180林班た小班に位置し,標高は1,100_から_1,160,斜面方位は北東,中傾斜,年間降水量は972mm,年平均気温は11.2℃である。林分は89年生のヒノキがおよそ90%を占め、残る10%はカラマツ,アカマツ,および広葉樹である。 _II_調査方法 上木の伐採方法と更新との関係を時間的推移より捉えるため,森林管理署のデータを分析,検討するとともに,追跡的な調査として,毎木調査と更新調査をおこなった。なお,以前の調査プロット復元を目指したが特定不可能だったため,新たに50m×50mのプロットを2箇所設け毎木調査をおこなった。更新木調査は毎木調査プロット内に2m×2mのプロットを15箇所設置し,更新プロット内に出現したヒノキ稚樹を全て計測した。3.施業履歴と林分構造 _I_上木の推移 調査林分は1915年にヒノキが植栽され,現在89年生である。現在までに2回の間伐と漸伐作業としての伐採が3回,全刈りが2回おこなわれている。間伐の詳細は不明である。ここでは漸伐作業としての伐採を1回目伐採とし,林分の推移を検討した。1979年に材積は280m3/ha,本数は830本/haであったが,その後2回の伐採と成長により現在は材積162.6m3/ha,本数282本となっている。伐採は1979年,1993年,2003年におこなわれ,各伐採率は材積で41%,43%,25%であり,1回目,2回目は比較的強度な伐採であった。各伐採年の1本当たりの材積を検討すると,1979年には0.34m3/ha,1993年には0.45m3/ha,2003年には0.65m3/haと順調な成長を示している。 _II_更新状況 1979年にはすでに56,000本/haの稚樹が更新しており,1981年には183,000本/haとさらに増加している。これは1回目伐採の効果であると考えられた。稚樹本数および平均稚樹高より判断して,このときすでに更新は完了したと思われる。それ以降稚樹本数は1985年には110,000本/ha,1990年には106,000本/ha,2回目の伐採後1995年には63,000本/ha,2003年には11,000本/haと大幅に減少しており,稚樹が枯損したと考えられた。4.まとめ過去2回の間伐により1回目の伐採時にはすでに稚樹が多数更新していたことから,この間伐は下種伐に相当し,1回目の伐採は1回目の後伐と位置付けられる。伐採率41%(材積)という1回目の後伐は,稚樹の樹高成長を促進し,稚樹を多数発生させる効果があることがわかった。その効果を受け,更新は早い時期に完了したと判断できた。それ以降稚樹本数が大幅に減少したことは,2回目の後伐が遅れ,更新が完了していたにもかかわらず,依然として上木が保残されたことによると考えられることから,上木は更新完了後直ちに伐採する必要があると思われた。
  • 伊藤 奈々恵, 広嶋 卓也
    セッションID: P2046
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    本研究では,どのような市町村で森林施業が活発に行われているのか,またどのような小班で施業が実施されているのかを明らかにし,人工林における森林施業を一層進めるにはいかなる方策が有効であるかを考察した.
    岐阜県の森林簿データ,単層林保育データの提供を受けた.市町村ごとの特性については,主に2000年センサス,岐阜県林業統計,森林組合統計を使用した.森林施業の分析対象を除間伐に限定した。本分析では,除間伐の対象林分をIIIからVI齢級の人工林単層育成林とした.
    次の二つの分析を行った.分析1 市町村の特性と除間伐実施率 平成10から12年の3年間を対象に重回帰分析を行い,除間伐実施率を市町村の特性で表現することを試みた.実施面積/対象面積を除間伐実施率とした.説明変数として国有林率(X1),民有林の人工林面積/総土地面積(X2),不在村で森林組合未加入である人の所有する森林面積/私有林面積(X4),民有林の林道密度,高性能林業機械導入数/人工林面積,森林組合作業班員数/人工林面積(X3),市町村による補助金嵩上げの有無,産直住宅協同組合の有無,農業地域類型,その他を用意した.
    分析2 小班の特性と除間伐実施率 平成7から9年の3年間を対象に,間伐データの多い15市町村を選び,分析を行った.実施小班数/対象小班数を除間伐実施率とした.森林簿データに含まれる林道からの距離,森林所有形態,所有規模,小班面積などの情報を保育データと対応させ,それぞれの特性と除間伐実施率の関係を調べた.さらに,特性による差が有意であるか分散分析で確かめた.
    結果 分析1 次の式で除間伐実施率を表すことが出来た.(除間伐実施率)=0.298 X1 + 0.230 X2 + 9.176 X3 - 0.203 X4+ 0.121自由度調整済みR2=0.4903、F=20.7>F(0.1%)
    分析2 1)森林の所有規模 個人の所有する森林を対象に,森林所有規模5ha未満,5-20ha,20-50ha,50ha以上に区分した.所有規模が大きい森林ほど除間伐実施率が高い傾向が見られた.分散分析の結果,グループ間に有意な差が見られた(α=5%).2)小班の面積小班面積を0.1ha未満,0.1-0.2ha,0.2-0.3ha,0.3-0.5ha,0.5-1ha,1-5ha,5ha以上の7つに区分し,除間伐実施率の関係について調べた.どの町村においても,小班面積が大きくなるほど除間伐の実施率が上がった.分散分析を行った結果,グループ間に有意な差が認められた(α=1%).
    3)林道からの距離 林道からの距離50m未満,50-100m,100-150m,150-250m,250m以上の5つに区分した.林道からの距離が遠くなるほど実施率が高まる傾向が見られ,分散分析を行ったところ,グループ間に有意差が認められた(α=5%).林道から遠いほど除間伐実施率が上がるのは公社造林の影響ではないかと考え,個人有林に絞って同様の分析を行ったが,結果は同様であった.
    考察 分析1の結果から除間伐を一層進めるためには,林業労働者の確保が重要であることがわかる.また,とくに不在村森林所有者に森林組合加入を促すことが必要である.分析2の結果から,林道から近くても除間伐実施率が上がらないことが明らかになった.この結果から,森林施業に経済的要因が働いていない現状が垣間見える.また,面積の大きい小班、所有規模の大きい人が所有する小班において除間伐実施率が高いとの結果を得た.経営規模の拡大,施業実施の単位である小班の規模の拡大が,除間伐の実施を促すのに有効であると考えられる.たとえば,団地化によって森林を経営が可能な規模にまとめることは、有効な方策であるといえる.
  • 宮崎県椎葉村での事例
    小濱 亨, 永仁 亜紀, 溝上 展也, 伊藤 哲, 井上 昭夫, 岡田 広行
    セッションID: P2047
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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  • 時光 博史
    セッションID: P2048
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1.目的 列状間伐は気象害に弱い林をつくるおそれがあり,残存木をよくするという間伐の目的に合致しない面もあるが1)主伐可能となった林分から生産を行いながら間伐を進めることができる手法である。そこで木材生産に伴う強度な列状間伐が行われた林分の成長回復の特性を明らかにして,林業経営者の判断資料とする。
    2.方法 140本生立する次の林分のうち6本を樹幹解析し,列状間伐による5年間の肥大成長を評価した。
     対象林分は広島県庄原市標高550mの南東向斜面上部に残存する500本/ha,上層樹高17m,胸高直径12から31cm,平均22cm,標準偏差3cmの42年生ヒノキ林分。列状間伐後残存していたと思われる立木のうち2%の本数は調査時点で幹折れ枯死木となっていた。列状間伐は平成9年に1から2列残存,1から5列伐採,架線による搬出が行われたと所有者から聞きとり,試料の採取は平成15年3月に行った。
     試料木は胸高直径20から22cmの中の木4本,26cmの大の木1本,16cmの小の木1本とした。樹幹解析は地上1.2m位置から2mごとに各立木から円板を採取して4方向の年輪を1年ごとに0.1mm単位でデジタルノギスによって読み取り,t年年頭の年輪半径の平均値r(t)を求めた。
    連年成長量はt年について半径r(t+1)-r(t),断面積π((r(t+1)2-r(t)2)として求め,それぞれを 年頭の直径d(t)=2r(t)によって図化した。
    また肥大成長の大小は連年成長量を次の3区分とし,3区分の境界としてやや大,やや小の2区分を加えて5段階とした。
    大:半径成長量2.5mm/年以上,中:半径成長量2.5mm/年未満かつ断面積成長量が5cm2/年以上,小:断面積成長量5cm2/年未満
    さらに時間の経過は,間伐実施年とその前年を間伐前,間伐実施後1年目と2年目を間伐直後,3から5年目を間伐後として,幹直径が6cm以上の部分について図から読み取った。
    3.結果 大の木の肥大成長は間伐前に中,間伐直後に大,間伐後はやや大であった。中の木の肥大成長は間伐前に小またはやや小,間伐直後は中,間伐後は中またはやや小であった。小の木の肥大成長は間伐前に小であり,間伐直後に小,間伐後も小であった。
    このことから列状間伐による残存木の肥大成長促進効果は,大の木で大きく,中の木にもみられ,小の木にはみられなかった。特に間伐直後の2年間に肥大成長促進効果は明瞭にみられた。
    4.考察 列状間伐後5年経過した40年生を超えるヒノキ林から採取した試料木6本のうち,小の木を除く5本に間伐によると考えられる肥大成長の回復が認められた。
    図から読み取った連年成長量は間伐直後に大となり,その後低下した。その最大値は保育技術の1つの目標となる年輪幅2から3mm1)を大きくは超えないものであり,肥大成長の回復は過大とはいえなかった。
     しかし胸高部位においては5年目に間伐直後と同等またはそれ以上の成長がみられるものがあり,今後増大する傾向にあると思われた。また間伐前と比較して比較的小径の試料木のほぼ樹冠内に当たる年頭直径10cm以下で成長の低下がみられた。強度な間伐実施直後に観察されるヒノキ立木枯死との関係が疑われる。
     さらに間伐前においては,択伐林に適用される樹幹成長モデル2)のとおり断面積成長量が陽樹冠基部高以下で位置によらず同値といえた。しかしその他の成長は半径成長が地上高によらず一定の場合が多いと思われた。観察された傾向が今後継続,拡大すれば,過大となる肥大成長の制御とその根拠となる強度間伐のための成長モデルが必要となる。今後の課題としたい。
  • 澤内  寧子, 野堀 嘉裕
    セッションID: P2049
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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  • 山本 博一, 伊藤 延男, 清水 真一, 村田 健一, 後藤 治, 飛山 龍一, 足本 裕子, トリフコビッチ スタンコ
    セッションID: P2050
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1.はじめに文明のシステムが揺らいでいるなかでその基盤をなす土壌ともいうべき文化は時間を超越し、その風土、民族にとって普遍的なものとして存在し続ける。その象徴は再生可能な生物資源を利用した木造建造物である。西欧文化と本質的に異なる循環型社会を築いてきた日本文化を端的に表現しているのが木造建造物である。こうした木の文化を育んだ背景には豊かな森林があり、この森の恵みを巧みに利用してきた伝統工芸技術があり、その表現形として見事な木造建造物がある。豊富な降水量と温暖な気候に恵まれ、暖温帯林と冷温帯林の多様な樹種からなる森林は、気候変動など環境の変化に対応できる柔軟な構造を備えている。こうした森林から、ケヤキ、クリ、クスノキ、ヒノキ、スギ、マツなどの耐久性の高い、優れた構造材を見出したのが日本地域に独特の木の文化である。西欧文化を象徴する構造物が再構築を想定しない一回限りの有限のものであるのに対して、木の文化では樹木の再生により同じ物を再構築することができるのである。有限な資源の中で21世紀の世界は進むべき方向を模索しているが、自然と共生することに原点をおく木の文化はこれに重要な指針を与えることのできる文化であり、木造建造物はその象徴として評価されるべきである。我が国の重要な建造物文化財の90%が木造であり、半数近くの屋根が植物性資材で葺かれている。これらの木造建物や植物性資材で葺かれた建物は、風雨による風蝕や腐朽を避けることはできず、それぞれの建物について定期的に修理を行う必要がある。このような修理は文化財の保存にとって必要不可欠であり、今後も長く続けていく必要がある。本研究の目的はその体制づくりのため、文化財の修理現場と森林資源の管理現場の間で共有すべき情報を提供することと修理用資材の確保について提言することである。2.研究方法1)檜皮;国宝と重要文化財の檜皮葺建造物に限定しても、これらを35年周期で永続的に葺き替えていくためには、常時350,000本の70年生を超えるヒノキ立木を檜皮採取木として確保していく必要がある。檜皮の採取が樹木の成長阻害や材質劣化をもたらすのではないかという懸念が森林所有者から示されている。文化財の檜皮資材を採取するための剥皮行為がヒノキにとって、どのような生理的影響があるかを検証するため、福岡県から千葉県の間にある4カ所の大学演習林のヒノキ80本(うち対照木40本)を対象に剥皮実験を行った。剥皮による影響として、形成層の損傷や内樹皮の剥離が考えられるが、これは採取技術の問題であり、一定水準の技術レベルが維持されるという前提のもとではこのようなことは検証の対象外のことである。剥皮5年後に24本を伐倒し(うち対照木12本)、年輪幅と材質(細胞数、晩材率、色調)について評価を行った。2)長大材;ユネスコ傘下のイコモスの「歴史的木造建造物保存のための原則」では「同樹種」「同品質」「同技術」でなければならないとされている。そのため昭和51年_から_61年に行われた文化財建造物の解体修理や半解体修理の65件の実績報告書から使用された木材を解析した。さらに、日本を代表する木造建造物である法隆寺を対象として、国宝の金堂(世界最古の木造建造物)、中門、回廊、大講堂、綱封蔵に使われている主要な部材27点及び収蔵庫内の古材13点について、規格(長さ、幅、厚さ)と品質(節・年輪幅)を調査し、使用された丸太の規格と採材法を推定した。3. 結果及び考察これまで千年以上にわたって「檜皮葺き」という伝統技術が継承されてきたという事実は非常に重いものがあり、日本文化を守るという観点からこの実験は大きな意味を持つ。文化財の修理用資材として重要な材は、樹種では、ヒノキ、スギ、マツ、ケヤキ、クリであり、材質等では大径材(末口径40cm以上樹齢300年以上)、高品位材(赤身8割以上、無節、上小節、年輪幅3mm以下)、特殊材(幅60cm以上、厚さ70_から_80mmの厚木)である。品等別に見るとヒノキでは無節、上小節で3割を占め高品位なものを求められており、スギも同様であるが、マツでは高い品等の割合が低く、構成材の取替え率は1/3_から_2/3程度で野物材の取替え率が高い。法隆寺の部材調査から長材では12m(末口径42cm)、大径材では末口径80cm(長さ7m)の丸太が必要であり、金堂の扉板には末口径180cmの材が用いられていることが明らかになった。
  • 伊藤 幸介, 阿部 信行
    セッションID: P2051
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    昨今、森林に対する公益的機能の維持増進や、二酸化炭素の吸収及び固定、さらに森林整備に伴う雇用確保などの期待が高まっているが、実際に森林施業を行う上でも森林情報の把握及びデータベース化は不可欠である。これまでにも森林GISや空中写真といった技術の利用がそれらに大きく貢献している。近年、衛星センサ技術開発の発展によりリモートセンシングの利用可能性が大きく向上しており、広域かつ即時的な情報の提供が可能になっている。それらの技術を用いて材積、樹高等の林分因子を推定することが可能になれば、林分の情報や資源量を広範にわたって推定することができる。これまで、衛星データを利用して森林における林分因子との関連性について研究した例は種々あったが、対象とする範囲を市町村単位等に絞り込んだものが多く見られた。そこで本研究では県単位という広範囲のデータを利用して林分因子について解析することを目的とする。 本研究の対象林分は新潟県のほぼ全域におけるスギ人工林である。今回の研究では、新潟県森林研究所が県全域にわたって行った高齢林を対象とした林況調査での、100プロットにも及ぶ毎木調査データを使用させていただいた。使用した衛星データは、2002年9月2日撮影のPath-108、Low-34のLandsat-ETMデータである。さらに、標高及び斜面方位データを得るために国土地理院刊行の50mメッシュ(標高)を使用した。解析にはERDAS社製IMAGINE8.6を使用した。 毎木調査については林齢50年から80年の高齢級のスギ人工林を対象に2003年6月から9月にかけて行われ、40m×40mの方形プロットを設定し、プロット内全立木の樹高、胸高直径等を測定し、被害木の状態等も調査した。そして測定されたデータを元に、プロット毎のhaあたり材積・本数密度、平均樹高、平均胸高直径、胸高断面積合計を算出し、それらを林分因子として使用した。そして各プロット位置におけるLandsat-ETMデータのDN(Digital Number)及びNDVI(正規化植生指数)と林分因子との関係を調べた。その際50mメッシュについてIMAGINE8.6のAspect処理を施し各プロットの斜面方位データを得、解析に使用した。 新潟県ほぼ全域における毎木調査プロットに対応するDN、NDVIと林分因子との間には有意な相関はみられなかった。そこで標高、斜面方位、地域等を考慮にいれて関連性を調べてみたところ、有意な相関を示したものがいくつかあった。
  • 都築 勇人, 日下部 朝子, 平井 杏子, 池添 浩之, 末田 達彦
    セッションID: P2052
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1. はじめに北半球の高緯度では顕著な温暖化が予測されているとともに、これに伴う広範な植生の変化が懸念されており、両者の検出が重要な研究課題となっている。通常、植生の変化とは、種組成の変化に代表される定性的な変化を指すが、われわれはその前兆として現れる立木蓄積、バイオマス、葉面積指数などの量的な変化をとらえるべく、北半球高緯度の亜寒帯林を中心に航空レーザー測距を行い、これによって得られる植生の縦断形状(植生プロフィール)から広域にわたる森林の立木蓄積、バイオマス、炭素蓄積、葉面積指数を推定している。この植生プロフィールの縦断面積は、林木が高くて密生しているほど、すなわち蓄積やバイオマスに比例して大きくなるので、この回帰を用いれば航空レーザー測距により広域にわたる森林の諸特性を正確に推定することが可能となる。2. 方法本報では、Fig. 1に示したカナダのユーコン準州ドーソン(64.05°N)から北西準州イヌビック(68.30°N)までの南北750 kmの亜寒帯林北部からツンドラとの移行帯までのトランセクトを対象に、航空レーザー測距とその航跡直下17林分でのバイオマス実測調査から、広域にわたるバイオマスを地下部も含めて推定した。航空レーザー測距では地下部分の形状を計測することは出来ないので、地上調査においてバイオマスを地上部だけでなく地下部についても測定し、前者に対する後者の割合から、広域の地下部も含むバイオマスを推定した。3. 結果と考察Fig. 2に、750 kmにわたるトランセクトの地上部、地下部、合計のバイオマスをそれぞれ0.1 kmと10 kmの間隔で示した。バイオマスの平均は、地上部8.0 t dm/ha、地下部1.9 t dm/ha、計9.9 t dm/haであった。バイオマスは南側2/3の区間では北に向かって漸減し、北側1/3の区間では北に向かって漸増する傾向にあった。南側の区間については、トランセクトを南北の方向に配置させていて、また気温も南端より北端で低いことから、気温の南北勾配によることがわかる。北側の区間については、大河マッケンジーのデルタに位置し、気温の南北勾配よりもデルタの要因が大きい。デルタでは水路が網の目状に入り組みながら下流の北に向かって水量は増していく。川の水はこの地域の植生の存在と成長とを抑制する永久凍土を融解するので、北に向かっての水量増加により植生が豊かになるということからも、推定の結果は妥当であると考えている。これとは別に実施したカナダ中部の600 kmのトランセクト(Fig. 1)も併せると、南はプレーリーへの移行帯から亜寒帯林を経て北はツンドラにまで及んでいて、_丸1_3つの植生帯には森林蓄積という量で見ても明瞭な違いが認められること、_丸2_亜寒帯林部分のバイオマスの分布中心はプレーリー側に寄っていることを明らかにした。バイオマスのこの分布様式は南北の環境勾配を反映したもので、分布中心から南に向かっては乾燥が、北に向かっては寒さが森林の存在と成長を抑制している。
  • 山本 一清, 高橋 與明, 宮地 洋輔, 都竹 正志, 千田 良道, 宮坂 聡
    セッションID: P2053
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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     都市緑地は、日射の遮断や蒸発散作用等により気温の上昇を抑制し、都市域におけるヒートアイランド現象の緩和に重要な役割を果たすことが期待されている(国土交通省, 2003)。 しかし、都市域における詳細な緑被分布の情報はまだ十分に整備されているとは言えず、航空機や高分解能衛星等のリモートセンシングを用いた効率的な調査手法の研究が行われているが(足永ら, 2001; 国土交通省, 2003)、その多くは緑被率の推定が中心であり、今後の長期的シュミレーションに必要な樹木本数や樹木個体サイズ等の計測技術については、有効な手法が開発されていない。 一方、航空機LiDAR技術の進歩により、地表起伏を精密に計測できるようになり、筆者らはこれを用いた樹木個体自動抽出技術の開発を行ってきた(山本ら, 2003)。 本研究では、これまで開発してきた樹木個体自動抽出技術を応用し、航空機LiDARと光学センサを同時搭載し、観測できるシステム(Hyper Mapper)を用いた、都市域の樹木個体抽出技術の有効性にについて検討した。 その結果、本研究で提案した手法では、緑地はほぼ問題なく抽出され、街路樹及び比較的樹木が疎な緑地内についても、ほぼ正確に樹木個体が抽出されたが、比較的樹木が密な街路樹帯等では、個々の樹木が正確に認識されていない部分が見られ、さらに解析手法の検討が必要であることが示唆された。。
  • 安川 直樹, 酒井 徹朗
    セッションID: P2054
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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  • 熊本県と愛媛県の事例を中心にして
    今安 清光, 早田 佳史, 柴山 善一郎, 山本 武
    セッションID: P2055
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    全国における「さし木ひのき」の選抜育成の状況について調べた。その結果、品種が選抜育成されている地域は,熊本県,大分県,福岡県,愛媛県と極めて限定されていることが分かった。特にさし木品種が多いのは熊本県のナンゴウヒ32品種(高森神社,ナンゴウヒS,N14,N3,N6,N8,N13,N15,N23,N25など)、次に多いのは愛媛県の11品種(百年桧,東山1号、東山3号,ヒワダ,神光桧,上光7号,天王1号-林業品種登録済み-など)であり、それ以外は2品種(高垣1号と陽貴桧は林業品種登録済み)であった。それらの育成地の地理分布やその選抜された品種の時間的流れを図に表示した。ナンゴウヒ研究会や個別林家などの品種の選抜・育成などの活動状況やそれらをもとに今後の動向などについて若干の考察を加えた。 
  • 柴山  善一郎, 今安 清光, 早田 佳史, 山本 武
    セッションID: P2056
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    遠野地方で発見された極めて珍しいヒノキの系統を知りたいからと, あるご縁により,平成12年10月下旬にその枝葉の一部が高知大の筆者らの元に持ち込まれた。それを受けて,その鑑定を本学の徳岡正三教授にお願いした。その結果,それは「葉の形」,「葉のやわらかさ」,「気孔線帯の形」をみると「ヒノキ」の形質が強いと判断されが、「葉のサイズ」をみると「サワラ」の形質も一部に有している珍しいタイプのヒノキと鑑定された。その系統を鑑定するまでには至らなかった。その枝葉を冷蔵庫に保管していたが,ヒョイと思い立ち、季節はずれの時期に,交流のあるさし木名人で篤林家の石田多美雄氏にさし木苗育成という無理なお願いした。その願いを受け入れていただき、石田氏はビニールハウス内の電熱温床パットで大切に育成し, 遠野由来の珍しいさし木ひのき苗5本の育成に成功した。そのうちの3本が石田氏の山林に平成14年12月に植えつけられ、それらの苗木成育調査(樹高,幹径,枝ごとに着生高・枝元径・枝の長さ・岐出角・着生方位)を平成15年12月に行って、その結果をまとめた。調査結果を3本の平均値で示すと次のようである。樹高は70.7cm, 樹幹長は92.3cm, 幹直径(地上高30cm),枝着生本数は50cm当たり16.3本. 枝元径は0.51cm, 枝長は29.3cm,枝岐出角10.7°,岐出方位角には大きな偏りは見られなかった。石田氏(これまで多くのさし木ひのき品種を育て豊富な経験を持つ)は「この木は他の品種と比べて太りがいい」との総評であった。枝の岐出方位に大きな偏りは見られなかった。今後、この珍しい遠野由来のさし木ひのきが加齢にともないどのような形質を示すのかを追跡調査するとともに,他のさし木品種との成長比較などをしていく予定である。
  • 24年間のモニタリングから
    國崎 貴嗣, 若山 幸世
    セッションID: P2057
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     岩手県内の林齢158年のスギ高齢人工林1林分を対象に,最近24年間における風雪害の発生状況と林分構成値,個体サイズとの関係について解析した。台風の被害率は本数で0.5_%_と低かった。一方,冠雪による被害率は3.6_%_,4.9_%_であった。林木レベルでは形状比が70_から_75以上の,胸高直径が低い林木で被害が発生していた。ブロック別の林分構成値と被害率の関係を調べたところ,平均形状比と材積被害率との間に有意な正の相関が認められた(P<0.05)。平均形状比84以上で被害率の高いブロックが含まれた。被害率の高いブロックはすべて斜面に位置していた。以上のことから,大径木主体の高齢林であっても,肥大成長の悪い林木集団では冠雪害の比率が高いという,若齢・壮齢林での傾向と一致した。
  • 金子 野吾, 野堀 嘉裕
    セッションID: P2058
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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  • 小谷 英司, 藤原 章雄, 松英 恵吾, 倉本 惠生
    セッションID: P2059
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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     研究開発の目的は、1)魚眼レンズとCCDカメラによる映像を中心に、周囲の音響空間を記録することにより、森林内を歩行する際に人間の感じる主観的な映像音響空間を記録し、さらにGPSによる位置を加えて客観的情報として記録できるシステムを開発し、2)記録映像音響を人間の感じる状態により近く再生するシステムを開発することであった。 森林の映像を広角で撮影するために、魚眼レンズを用いて、CCDで撮影し、ディジタルビデオ(DV)形式で記録した。調査記録としては位置情報が重要であるので、GPSを利用して撮影と同時に位置を把握し、時刻データをキーにして、ビデオ映像と結合した。撮影した映像を、大型テレビあるいは液晶投影機で投影した。GPSデータと映像はGISからハイパーリンクで結合した。 開発したシステムを用いて野外撮影し、検討した結果、以下の2つの応用が可能であった。a) 野外調査記録装置として:  野外調査時に、周囲の状況や雰囲気を、従来のカメラに比べてよりよく記録できた。b)森林映像空間の疑似体験: このシステムを利用して、CAVEのように森林の映像音響空間を疑似体験できる。一般向けに展示施設などで森林を紹介する際に有効と考えた。
  • ハン クリシュナ, 植木 達人
    セッションID: P2060
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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  • 佐野 真琴, 宮本 麻子
    セッションID: P2061
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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     森林は多様な機能を持ち、国民の重要な生活の基盤となっている。また、地球温暖化問題では森林の二酸化炭素吸収源としての機能も注目されている。このように、森林に期待される役割は木材の生産といった直接的経済効果から、公益的機能の発揮へとシフトしている。これらの公益的機能は、森林が適切に管理されていれば十分発揮可能と考えられるが、近年の社会構造の変化や木材価格の低迷から手入れが十分でない森林が増加している。茨城県の県南西部から県央地域に広がる平地林においては、首都圏域に位置することから都市化の進展とともに平地林の減少、荒廃が進んでいる。このため県は平成5年から6年間平地林の保全と管理のため平地林保全特別対策事業を実施し、平成11年から新たな平地林保全対策を進めている。本報では、この事業が実行されている地域を対象とし、平地林がどのように変化しているかをランドモザイクの変遷過程としてとらえ、実態を把握しようとするものである。これにより平地林の保全や整備の基礎資料が提供できる。 対象地域は、茨城県第2次平地林保全整備基本計画の対象区域で、かつ、2000年林業センサスにおいて森林が著しく減少した地域として選定した結果、友部町とした。ここで、基本計画でいう平地林とは、地勢条件で標高150m以下、かつ、傾斜15度以下に所在する森林で、対象区域は市町村単位とし、平地林面積が70%以上ある市町村が指定されている(水戸市ほか62市町村)。 友部町の最も古い空中写真(1960年撮影)と最も新しい空中写真(1998年撮影)を利用し写真判読を行い、結果を2万5千分の1地形図上に図化した。判読区分は、常緑広葉樹林、落葉広葉樹林、アカマツ林、スギ・ヒノキ植林、竹林、二次草地、植栽樹群、果樹園・苗圃・桑畑・茶畑、水田、畑地、人工草地、造成裸地、自然裸地、緑の少ない住宅地、緑の多い住宅地、開放水面の16区分で、常緑広葉樹林、落葉広葉樹林、アカマツ林、スギ・ヒノキ植林、竹林については樹高による区分も行った。 作成された土地被覆区分図をGIS(ArcView3)へ入力した。入力されたデータをもとにGISの計算機能を用い各ポリゴンに属性として面積と周囲長を付加した。各ポリゴンの面積データから土地被覆区分毎に面積を集計した。また、2時期(1960年、1998年)のデータを用い土地被覆区分別面積のクロス集計を行った。 1960年と1998年の土地被覆区分の結果を林地(常緑広葉樹林、落葉広葉樹林、アカマツ林、スギ・ヒノキ植林、竹林を集計。以下同じ。)、草地(二次草地、植栽樹群、人工草地)、田畑(果樹園・苗圃・桑畑・茶畑、水田、畑地)、住宅地(緑の少ない住宅地、緑の多い住宅地)、その他(造成裸地、自然裸地、開放水面)の区分へまとめ土地被覆区分の割合を計算した。これより、林地、田畑の割合が減少し、草地、住宅地、その他の割合が増加している。草地の増加は、造成・伐採・耕作地の放棄によるものと、ゴルフ場開発等による人工草地の増加とによるものであり、また、住宅地の増加は対象地域が首都圏域に位置し都市化の進展が著しいためで、人為活動による影響の大きさが確認された。 上述の土地被覆区分で1960年に林地であったものが1998年ではどのよな土地区分となっているかをクロス集計の結果より算出した。林地がそのまま林地として残ったのは63%であり、林地が開発されていることが分かる。1998年に林地以外の土地被覆となった区分の詳細を面積の多いものから見ると、1番目は緑の少ない住宅地、ついで果樹園・苗圃・桑畑・茶畑、畑地、人工草地(ゴルフ場、公園等)となっている。この結果より、林地の多くは住宅地と農用地となっていることが分かった。
  • 坪内 義樹, 島崎 浩司, 土屋 大輔, 中野 貴雄, 田中 和博
    セッションID: P2062
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    金沢市においても独自の景観ならびに生物多様性を保全するうえで里山を維持・管理していくことは重要である。しかし,里山の内容や構造は地域によって様々であるため,里山を類型区分し,類型ごとに適した維持・管理の方策を立てる必要がある。本研究では,里山の類型区分に必要な基礎資料を得ることを目的として,里山の分布特性と土地利用多様性の分析を試みた。具体的には,金沢市を代表する二次林であるコナラ群落,クリ‐ミズナラ群落について選好的分布域を推定し,ならびに土地利用多様性指数を求めた。さらに,その結果を実際の土地利用と比較し,保護,保全策が必要とされる地域の検討を行った。
    研究対象域は,金沢市において林班として指定されている範囲すべてとした。コラナ群落,クリ‐ミズナラ群落の選好的分布域を推定する際にはJacobs Index(Jacobs,1974)を用いた。この指標は,もともと魚類の捕食に関する選好性を数量化する指標である。Jacobs Indexをこれら2つの群落に適用し,標高,傾斜角,斜面方位,累積流量(集水面積),土壌の5つの環境要因に対しそれぞれ選好性のある地域を抽出し,更にそれらすべてが重なり合う地域をコナラ群落,クリ‐ミズナラ群落それぞれの選好的分布域とした。
    土地利用多様性を分析する際には,土地利用多様性指数(Land Use Diversity Index=LUDI)(田中,2000)を用いた。LUDIとは,ランドスケープを構成する複数のパッチ類型の面積,形状,多様度に基づいて,その土地利用の多様性を数量化したものである。本研究では,環境省による自然環境情報GISの植生図における群落をパッチ類型とし,その多様度には環境省の定義する植生自然度を用いて林班をランドスケープの単位としてLUDIを算出した。LUDIは,植生自然度の高い群落が数多く,なおかつパッチが均一に分布し,形状も複雑である場合に高い値を示す。
    Jacobs Indexによる解析の結果,コナラ群落では標高が50から350m,傾斜角が0から15°の比較的緩やかな南向き斜面上部(尾根を含む)の褐色森林土壌,赤色土壌に選好性が認められた。一方,クリ‐ミズナラ群落については標高が400から550m,傾斜角が20から45°の比較的急な東向き斜面中腹の褐色森林土壌,岩石地に選好性が認められた。
    LUDIによる分析の結果,緑の多い住宅地が大半を占める林班で土地多様性が最も低かった。反対に,値の高い林班を構成する主な群落はコナラ群落,クリ‐ミズナラ群落,ケヤキ群落などであった。コナラ群落の選好的分布域を実際の植生分布域と比較したところ,コナラ群落の選好的分布域に緑の多い住宅地や竹林が存在している場合が認められた。これらの地域では今後これ以上の住宅地や竹林の拡大を防ぐ必要がある。これとは反対に,選好的分布域ではない地域にコナラ群落が存在している地域も認められた。この地域は,石川県の指定する医王山県立公園区域と重なっており,コナラ群落を維持する何らかの働きが加わっているものと考えられる。クリ‐ミズナラ群落についても同様の比較を行ったところ,クリ‐ミズナラ群落の選好的分布域にスギ・ヒノキ・サワラ植林やコナラ群落が存在している地域が認められた。コナラ群落がクリ‐ミズナラ群落の選好的分布域に存在している地域は,今後,両方の群落がともに混在する多様性の高い里山として維持していくことが望ましい。この地域も医王山県立公園区域と重なっており、LUDIも高く,保全活動を行っていくうえでは重要な地域であると考えられる。
    今回の解析により金沢市における里山の分布特性ならびに土地利用多様性の高い地域が明らかになったとともに,特色のある地域や重要と考えられる地域を見出すことができた。これらの地域については今後、現地踏査による検証が必要である。
  • 長島 啓子
    セッションID: P2063
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    都市の拡大は緑地の減少や分断化,汚染物質の増加,気温の上昇など環境に様々な変化をもたらす.近年,地球規模の環境問題や緑に対するニーズの高まりにより,都市の緑の回復・保全の観点から生活環境を整備することが求められている.これらの動きを受け,緑地の生物多様性の保全機能,気温低減機能や大気汚染物質の吸収・吸着による大気浄化機能を考慮した緑地整備の重要性が指摘されている.これまで生物多様性の保全の観点から緑地の変遷と連結性を議論した研究は数多く行われている.しかし,緑地の気温低減能力や大気浄化能力をも考慮した緑地の配置を議論したものは少ない.広島大学大学院国際協力研究科では,21世紀COEプログラム「社会的環境管理能力の形成と国際協力拠点」の一環として,これら3つの機能を考慮した緑地の最適配置に関する研究を行っている.本研究はその手始めとして,1980年以降の広島市における都市拡大プロセスとそれに伴う緑地分布の変遷を隣接土地利用,傾斜,標高との関係から把握する. 調査対象地は広島市全域および府中町・海田町西部を含む領域とした.近年の都市の拡大状況と緑地分布の変遷は,自然環境GIS(環境省)の第3,4,5回の各調査データを,地理情報システムを用いてオーバーレイすることによって得た.造成によって緑地から改変されたパッチについては,それに隣接するパッチの属性と最も近接する市街地・農村地帯までの距離も記載した.標高・傾斜データは数値地図50mメッシュ(国土地理院)を用いた.緑地の連結性は分断化指数(fragmentation ratio; Young & Jarvis, 2001)を指標とした. 1980年代からの約20年,広島市の森林面積は約1300 ha,農耕地は160 ha減少した.一方,市街地は1017 ha, 草地は約100 haの増加を示した.森林から造成地に転換されたパッチの多くは市街地・農村地帯に隣接していた.立地条件も多くが標高200m以下の緩やかな斜面であった.広島市中心部では大きな改変はなく,緑地の増減もみられなかった.しかし,中心部は緑地がほとんどなく,周辺緑地との連結性は1980年代において既に低い状態にあった.これらの緑地の開発や配置パターンは,これまでの緑地政策と大きな関係があることから,今後は広島市の緑地政策の歴史と緑地分布の変遷の関係を吟味する必要がある.
  • 鈴木 一行
    セッションID: P2064
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
    会議録・要旨集 フリー
  • 川田 伸治, 松村 直人
    セッションID: P2065
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    三重県では,「生産林」と「環境林」によるゾーニングを行い,それぞれの森林区分に応じた管理によって,森林の持つ多面的な機能の維持・増進を図っている。「環境林」には森林環境創造事業と呼ばれる,20年間皆伐を禁止する代わりに,100%公費による間伐事業を実施している。人工林は,針広混交林,天然林はさらに多様な広葉樹林に移行させる事を目標としている。本研究では三重県美杉村を対象地に,公共性と公益的機能発揮のために30ha以上という事業実施条件に対して,GISを用いて三重県型森林ゾーニング,所有者数,小班面積を考慮して森林環境創造事業の対象地を抽出し,団地化の得失を明らかにした。
  • 黒岩 祐子, 増谷 利博, 水本 真衣
    セッションID: P2066
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1.はじめに 森林の姿は時代背景、管理主体、利用方法、自然環境によって大きく変化する。今日存在している森林はこれらの要素・原因が重なりあって成立していると考えられる。本研究では流域内の森林モザイク、特に形状特性について検討した。2.対象地 対象地域は神奈川県北西部に位置する丹沢山地の西部にある玄倉川流域であり、蛭ヶ岳(1673m)、丹沢山(1567m)、鍋割山(1272m)、檜洞丸(1551m)、丹沢湖に囲まれた流域である。面積は約4800ha、30度以上の傾斜地が流域の70%を占める急峻な地形である。3.資料及び研究方法 使用した資料は、林相区分のため航空写真を、林齢等の小班属性を得るために神奈川県発行の森林簿デジタルデータを、地形データを求めるために森林基本図(1/5000)を用い、GIS(Arcview3.2)によって入力、デジタル化した。方法としてまず、流域全体の土地利用を針葉樹、広葉樹、草地・竹林、森林以外(渓流・林道)に区分し、前三者のパッチ面績、フラクタル次元(D)、形状指数(SI)を算出した。つぎに小班単位での面績、フラクタル次元(D)、形状指数(SI)を算出した。パッチとは、例えば針葉樹の小班が隣接している場合、一つのパッチとみなす。4.結果及び考察 流域を土地利用別に区分した結果、区画された総個数は477個(針葉樹333個、広葉樹84個、草地・竹林6個、森林以外54個)、全小班数は1416個(針葉樹744個、広葉樹609個、草地・竹林6個、森林以外57個)であった。(1)面積 流域における針葉樹の面積は661.9ha(13.7%),広葉樹3810.6ha(79.1%),草地・竹林8.1ha (0.2%),森林以外338.3ha(7.0%)であった。その中で針葉樹及び広葉樹のパッチ面積を0.5ha未満, 0.5ha_-_1ha未満, 1ha_-_2 ha未満, 2ha_-_5ha未満, 5ha_-_10ha未満, 10ha以上に区分した。その結果、流域全体では0.5ha未満のパッチ数の割合が67.3%であり、針葉樹、広葉樹ともに0.5ha未満のパッチの割合が高い。小班単位では2ha未満の小班が針葉樹では88%、広葉樹では67%であった。10ha以上の小班割合は針葉樹では0.8%、広葉樹では13%であり、針葉樹では2ha未満の小班の割合が、広葉樹では面積の大きい小班の割合が高い。(2)フラクタル次元 フラクタルDを1.25未満, 1.25_-_1.5未満, 1.5_-_1.75未満, 1.75_-_2.0に区分した。流域全体ではD=1.25-1.50未満のパッチの割合が76.5%であり、1.25未満のパッチは存在しなかった。針葉樹・広葉樹別にみると1.25_-_1.5未満では針葉樹、1.5_-_1.75未満では広葉樹の割合が若干高く、広葉樹の方が多少複雑な境界線のパッチが存在する。針葉樹、広葉樹、草地・竹林のいずれも1.75以上の複雑な境界線のパッチは存在しなかった。また、小班単位でのDの値は広葉樹と針葉樹では、ほとんど差はなく、約9割が1.25_-_1.5未満の間にある 。(3)形状指数 状指数は1.25未満, 1.25_-_1.5未満, 1.5_-_1.75未満, 1.75_-_2.0,2.0以上に区分した。流域全体では2.0以上の割合がやや高いが、突出したカテゴリーはみられない。針葉樹・広葉樹別にみると針葉樹では形状指数が低い値の割合が高く、広葉樹では2.0以上のパッチの割合が高い。小班単位で値を算出した結果、1.2未満では針葉樹の割合が高く、広葉樹では2.0以上の小班割合が高い。5.おわりに 玄倉川流域の森林モザイクの特徴は面積については針葉樹、広葉樹の3分の2が0.5ha未満の小面積のパッチであり、広葉樹は10ha以上の小班が針葉樹と比べ多く存在する。形状についてはパッチ・小班ともにフラクタルDが1.25_-_1.5未満でありパッチ・小班の境界線が比較的なめらかな曲線をしている。広葉樹の場合は形状指数が2.0以上の細長い形状のパッチ・小班の割合が高いことが明らかになった。
  • 古家 直行, KEOMORAKOT Bounmanh
    セッションID: P2071
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1.背景と目的 近年水資源に関連して国際河川であるメコン流域について注目が注がれている。ラオスはメコン流域において上流から中流にかけて広い面積を占めており、この植生や土地利用の変化は地域に大きな影響を与え得る。とりわけラオスの北部山岳地帯においては焼き畑移動耕作が農民の生業として広がっており、この活動は少なからぬ影響を与えていると考えられる。政府としても焼き畑移動耕作の対策を国としての重要な課題としているものの、地域に他に主だった産業がなく、また地形的な制限もあることから一足飛びに問題の解決が図れる状況ではない。このような中で近年90年代後半より森林及び土地利用区分事業及びそれに伴う土地の利用権分配事業が行われ、焼き畑移動耕作の箇所についても制限が行われている。そこでこの事業から数年が経過しており、この成果と現状について明らかにし、同時にこの政策が焼き畑移動耕作の分布に与えた影響について事例を挙げて紹介する。2.対象と方法 対象はラオス北部地域のルアンプラバン県とビエンチャン県に位置する村落を対象とした。方法はまず空中写真並みに植生や土地利用の判読の可能な高分解能の衛星画像(QuickBird衛星画像)を利用し、これを参照しながらの現地聞き取り調査及び踏査によって、村落ごとの境界の確定、森林及び土地利用区分境界の確定を行った。これをベクタ情報として村落ごとに図面を作成した。また、それぞれの区分について村長及び村人に現状の認識について過去との比較を行ってもらいながらインタビューした。3.焼き畑移動耕作の概要 伝統的には陸稲の栽培が焼き畑移動耕作においては行われてきたが、政府の方針などで換金作物の栽培が奨励されており、ハトムギやゴマなど地域ごとに換金作物の栽培が徐々に拡大してきている。70,80年代にはまだまだ森林資源も豊富で各地において立派な森林を切り開いての焼き畑を行っていたらしく、草刈りなどの労働も少なくて済み、広い面積でしかも収穫も良く、耕作も急傾斜の箇所から山頂まで至るところで行われていたという。現在では単位当たりでの収量が期待出来ない場合でも、しばしばそのような土地では単位当たりの必要労働量も多くなるため単純に栽培面積を広くすることは出来ない。4.森林・土地利用区分、分配事業の概要 90年代後半から徐々に各地で区分事業が行われた。森林については、保全林、保護林、利用林、再生林などに区分される。保全林は山の斜面上方や急傾斜の箇所などに設定され木材の伐採などは基本的に禁止。保護林は沢沿いや水源地域などに設定される。利用林は村人の住居用や柵の作成などのための木材伐り出しなどの利用のための森林でありしばしば村落の近くに設定されている。再生林は衰退した地域を対象として植生の回復を図る地域である。これらの森林区分の他に農業用地として利用する区域が指定され、その区域の中で世帯の人数や安定した収入の得られる水田などの所有の有無などを考慮しながら、それぞれの家族に土地の利用権が配分された。村落には村落内の森林資源の管理を義務づけ、農民には自らの土地に対する管理意識を持たせる狙いがある。また税金などの徴収も厳格に行えるようになってきている。5.結果a.焼き畑移動耕作の空間分布 対象とした地域では山の斜面上方などでは多くが保全林などに指定され、遅くとも区分事業以降には焼き畑箇所としての利用は禁止されていた。これに伴い、植生の回復が進んでいる地域が多かった。70年代から80年代など急峻な箇所や山奥、山頂部分に至るまで、至る所で焼き畑移動耕作が行われていたということであり、以前と比べると焼き畑移動耕作の空間分布は明らかに限定されてきていた。b.森林及び土地利用区分の現状 森林及び土地利用区分事業については、村長はもちろん農民に聞いてもそれぞれ一様に評価していた。村にとっては近隣村との、農民にとっては隣人との土地を巡るトラブルが境界が明確化し減少したとのことである。配分された農地面積は村落面積と世帯数、水田の有無などが状況を左右するが、扶養する家族が多く農地に生計を依存せざるを得ない世帯には配分を多くするなど、村落内部での配分は柔軟で内部の配分の問題よりも、村落間での格差に焦点を当てている声が多かった。
  • 陳 鍾善, 石橋 整司
    セッションID: P2072
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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  • 中島 徹, 広嶋 卓也
    セッションID: P2073
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    京都議定書3条4項における森林面積の算定に関する研究○中島 徹・広嶋 卓也(東大農) _I_ はじめに 京都議定書が規定する2008年から2012年にわたる第一約束期間において、日本は1990年を基準年とする6%の二酸化炭素排出削減を課されている。他方、そのうちの3.9%については、森林による炭素固定量を算入することが認められており、6%という削減目標を達成する上で、森林に期待される役割は大きい。 この点、京都議定書3条4項は、吸収源として認定される森林を、1990年以降に施業が行われた森林(以下3条4項林)に限ると規定する。したがって、削減目標のうち3.9%が森林によって達成されるか否かを明らかにする上で、このような3条4項林に該当する森林面積を算定することは重要である。 そこで、本研究では、森林簿、施業履歴などの統計データを用いて、京都議定書3条4項における森林面積を算定することを目的とするものである。_II_ 方法 対象地は、岐阜県の民有林である。岐阜県では県全域にわたり森林に関する統計データが整備されている。本研究では、これらのデータを用いて、1990年から2001年にかけて3条4項林に該当する森林の面積を算定することを試みた。 使用した統計データは、県全域の森林簿、1990年から2001年までの森林施業履歴である。森林施業履歴は、施業が行われた年度、施業の種類などが記載されている。このうち、全施業面積比で4分の1の施業が、どの小班になされたものか特定可能である。算定の対象である3条4項林は1990年以降に一度でも施業がなされた森林である。したがって、基本的には森林になされた施業面積がそのまま3条4項林の面積となる。しかし、同一面積に複数回施業がなされた場合等、単純に施業面積を累積することは3条4項林の重複算定に通じる危険性がある。そこで以下のように施業面積の重なりを除去する処理を行った。まず、ある小班について、一度しか施業がされていないケースでは、施業面積が小班面積を場合は、そのまま3条4項林の面積として算入した。これに対し、同一小班に複数回施業がなされた場合は、各施業面積を順次累積していき、小班面積に達した時点で、以降なされた施業面積は算入しないこととした。一方で、施業履歴について前述したように、特定年度の市町村によっては、行われた施業がどの小班になされたものかが不明なものがある。このような施業面積は、対応する小班面積が確定できず、小班面積によって上記のように重なりを除去することができない。そこで、対象小班が特定可能な施業面積について、重なり除去を行う前と、行った後との比率を求めた。さらにこれを換算係数として施業の対象小班が不明な施業面積に乗じ、重なりを除去したものと近似した。なお、換算係数にはばらつきが生じるため、施業面積の推定値の信頼区間を求めた。_III_ 結果以上の方法から得られた岐阜県の民有人工林に関する2001年時の3条4項林の面積は下表のようになる。面積算定においては、上記信頼区間の上限、平均、下限についてそれぞれ行った。その結果岐阜県の民有林の人工林に関して、下限で45%、上限で72%程度が3条4項林の面積としてカウントされると推定された。もっとも、施業履歴のデータとして計上されていない施業面積もあるものと考えられることから、実際の3条4項林の面積は、より大きいものと予想される。今後は、年度ごとの推移を踏まえ、3条4項林の面積が将来にわたってどのような拡大を呈するかについてシミュレーションを行う予定である。
  • 異なる調整手法による構成数値の比較
    長濱 孝行
    セッションID: P2074
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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     鹿児島県(以下「本県」)においては,スギ人工林管理基準として,既存の鹿児島地方スギ林林分収穫表(1965)及び九州地方スギ人工林林分密度管理図(1980)を適用してきた。しかしながら,前報(長濱,2003)のとおり,現実林分と構成数値に差が生じていること等が問題視されていることから,本県の人工林レベルでの基準資料を検討してきた。今回は地位区分を再度吟味し,これを基準とした収穫予想表を調製することとした。しかしながら,収穫予想表の調製には幾通りか存在することから,今回は家原(1990),猪瀬(1992)の調製手法を用いて構成数値を比較した。 解析に用いたスギ人工林データは前報と同じく653点を用い,異常資料を棄却した後,地位区分について曲線式を再検討した。家原(以下「家原式」)は林分密度管理図を構成する諸関係式から収穫予想表の構成数値を決定し,一方,猪瀬(以下「猪瀬式」)は林分構成因子間の相互関係式から構成数値を決定している。副林木については,いずれの手法についても主林木の前期・後期の本数差で積算した。 地位区分については,決定係数の最も高かったRichards関数で近似でき,これを地位_II_等地の中心線とした。この中心線から各林分データの標準偏差×2を分布の範囲とし,その範囲内で3区分した。 従来の地位曲線と比較すると,60年生時で地位1区分程度の上昇変化がみられた。 次に,収穫予想表の構成数値の中でも主要因子である胸高直径,幹材積を比較した。いずれも従来の構成数値を超える傾向を呈し,従来版の過小値を裏付ける結果を得た。家原式では胸高直径が,猪瀬式では幹材積が,高齢になるに伴い増加傾向が大きくなった。しかしながら,ha当たり本数に対応する説明変数が家原式では林齢,猪瀬式では胸高直径であることから,このことが上述の結果の要因の一つであることが推察された。 従来より問題視されている林分密度管理図と収穫予想表の構成数値の差を考慮すると,家原式を採用していくことが望ましいと思われる。また,ha当たり本数の減少曲線については,林齢に対応させるのではなく,収量比数を用いて上層樹高から逆算する方法がスギ人工林管理基準を策定する観点上望ましいと考えられる。これらにより,収穫予想表の構成数値は林分密度管理図上で一致することになる。 しかしながら,本県の平均的なガイドラインとして位置付けられるため,環境因子等の調整係数を導き,地域性を考慮していく必要がある。
  • 田中 邦宏, 笹川 裕史, 松本 光朗
    セッションID: P2075
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    全国のスギを対象に多様な密度管理方法に対応した収穫表の調製を可能にするため、既存の収穫表を解析し、以下の11地方のスギ林について、システム収穫表プログラムLYCSのパラメータを推定した。青森、山形、越後・会津、北関東・阿武隈、茨城、天城地方、大井・天竜、紀州、山陰地方、土佐、鹿児島。
  • 北原 文章, 吉田 茂二郎, 村上 拓彦, 光田 靖, 前田 勇平
    セッションID: P2076
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1.はじめに
    近年,「森林原則声明」と「アジェンダ21」で示されているように,持続可能な森林経営の重要性が国際的に認識されている。わが国もヨーロッパ以外の温帯林と北方林諸国とで,モントリオールプロセスとして温帯林等の保全と持続可能な森林経営を評価するための基準・指標を合意した。わが国はこれまで森林簿のみを基礎とした森林資源の把握を行ってきたが,森林簿による森林情報からでは,この基準・指標に対応できない項目が多い。そこで1999年度からわが国でも森林資源モニタリング調査(以下モニタリング調査と記す)が行われることになった。
    現在九州のモニタリング調査点の内,スギ,ヒノキ人工林は多く,適正に人工林を管理することが重要になっている。今回,収量比数(Ry)を林分密度の指標としてとりあげ,民有林の密度管理図からRyを算出しその値により林分がどのような状態にあるかを把握し,適正な林分と判断できるものを抽出した。そこで現在の収穫表の情報が現状に即しているか確かめることを目的とし,モニタリング調査データを利用して,九州地方における適正な林分の基準となる収穫表の調製を行った。
    2.方法
    1)林分材積の推定
    離島を除く,九州管内においてスギ,ヒノキ人工林の1999_から_2002年までの計4年分のデータを用いた。モニタリング調査では,胸高直径は毎木調査されているが,樹高は1林分につき20本を計測するため,樹高未推定木においてはネズルンド式をあてはめ,樹高推定した。次に樹高と胸高直径より九州地方の材積式にて単木当たりの材積を求め,各プロットの面積割合からha当たり材積を求めた。
    2)適正な人工林の抽出
     今回,適正なスギ,ヒノキ人工林を抽出するに当たって,各プロットにおいてのha当たりの断面積合計を求め,スギ,ヒノキそれぞれの断面積合計割合が75%以上のものを抽出した。モニタリング調査データには各プロットの林分の面積割合がありそれを占有率と呼んでいるが過大評価の恐れがあったので全体の占有率の50%以上を抽出した。さらにスギにおいては熊本,鹿児島県の国有林収穫表(地位上,中,下)から5年ごとの収量比数(Ry)を国有林の密度管理図から計算し,その最大値最小値に±0.1の幅を持たせ,その範囲内にあるものを抽出した。
    3)収穫表の調製
    各プロットの上層木平均樹高,熊本県の収穫表のパラメータ,林齢からRichards成長関数のA(成長の上限値)を逆算し,そのAの値から40年生の上層木平均樹高をRichards成長関数で推定した。その上層木平均樹高を地位指数(SI)としてRichards成長関数(式1,2)にあてはめた。
    スギ:V=(61.084×SI-311.789)×(1-EXP(-0.0272×AGE))^1.655  (R^2=0.81)  _-_式(1) 
    ヒノキ:V=(57.472×SI-213.27)×(1-EXP(-0.0314×AGE))^2.183 (R^2=0.41) _-_式(2)
    V:ha当たり材積 AGE:林齢 SI:地位指数
    3.結果と考察
     抽出したスギ人工林は129プロット,ヒノキ人工林は60プロットであった。特にスギ人工林はRyの範囲外のプロットが128プロットと非常に多かった(図‐1)
    調製した収穫表(図‐2)は,実際の九州各県の現実収穫表と比べ大きく評価され理想収穫表となり適正に管理すればこれだけの蓄積が得られると考えられる。Ryの範囲内の林分が適正に管理している林分とすると,Ryが最大値以上の林分は密な林分であると言え,最小値以下の林分は疎な林分と言える。Ryが最大値以上の林分は適正な管理がされてないと考えられ,Ryが最小値以下の林分は弱齢林であるか攪乱があった林分であると考えられる。
  • 嘉戸 昭夫, 田中 和博
    セッションID: P2077
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    1. はじめに田中(1991)は林分表と樹高曲線から将来の林分表と樹高曲線を予測するシステム収穫表「シルブの森」を開発した。これにより、平均直径、平均樹高および林分材積だけではなく直径階別の立木や丸太の本数の予測も可能になった。 嘉戸・田中(1995)は富山県の主要スギ品種であるタテヤマスギを対象に伐期齢を50年生程度とした「シルブの森」を調整した。しかし、近年、木材不況をはじめとする様々な原因によって人工林の伐期齢を従来以上に延長する傾向が強まり、それに対応したシステム収穫表が必要になってきた。そこで、長伐期施業にも対応したタテヤマスギの「シルブの森」を調整する目的で、前回の調査資料に新たに調査した高齢林の資料を加えてシステム収穫表の成長パラメータを算出した。2. 「シルブの森」の成長モデル 「シルブの森」で使われている直径成長モデルは、定期直径成長量と期首直径との関係を示す確率論的モデルである(Tanaka、1986)。 3.資料 前回用いた毎木調査資料323箇所に、新たに高齢林を中心に調査した44箇所の資料を加えて林分平均の胸高断面積と立木密度および平均樹高の間に成り立つ等平均樹高線を求めた。また、期首直径と定期直径成長量の関係および地位指数曲線を調べる目的で、林齢53_から_110年生の6林分で合計48本について樹幹解析を行った。 4.結果 本調査で得られたシステム収穫表の成長パラメータの概要は以下の通りである。_丸2_ 地位指数曲線 「シルブの森」では,平均樹高Hの成長を次式のMITSCHERLICH成長曲線で表し、地位指数曲線としている。H(t)=MH(1_-_LH・EXP(_-_kH・t))これまでは地位指数曲線のkHを一定として取り扱ってきた。しかし、樹幹解析の資料に、この成長曲線をあてはめた結果、各成長パラメータが調査林分によって異なり、高齢林分ほど晩生型の成長を示す傾向が認められた。この原因については今後さらに検討する必要がある。 _丸2_x切片C(t)と平均直径D(t)の関係 定期直径成長量と期首直径の間に直線関係があり、D(t)とC(t)の差κは平均直径や樹齢の増加に伴って増大する傾向があった。この結果から、回帰直線の傾きを決めるκを林分の成長に伴って変化させることが必要と考えられた。   κ=0.698 D(t)_-_4.74 (r2=0.655)_丸3_最大林分断面積λの推定 林分の平均断面積に対する等平均樹高線の常数を平均樹高のべき乗式で表し、この式から各平均樹高における最大林分断面積λを推定した。さらに、λの平方根と平均樹高Hとの関係にMITSCHERLICH成長曲線を当てはめた。_丸4_平均直径の成長曲線 平均直径は次式で表されている(田中、1991)。D(t)=1/(ρ+qα)0.5・MD(1_-_LD・exp(_-_kD・t))ここで、MD、LD、kDは成長パラメータで、ρは立木密度、qは間伐のたびに変化する補正項、αは平均樹高の関数である。MDはλに比例することから、平均直径の成長は樹高成長と密接に関係しているといえる。したがって、晩生型の樹高成長を示す林分では、高齢林であっても成長量の低下が比較的小さくなると推測される。事実、晩生型の樹高成長を示した上市試験地では、95年生時の平均年輪幅は2mmで、材積成長量が17m3/ha/年であった。
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