本研究では,どのような市町村で森林施業が活発に行われているのか,またどのような小班で施業が実施されているのかを明らかにし,人工林における森林施業を一層進めるにはいかなる方策が有効であるかを考察した.
岐阜県の森林簿データ,単層林保育データの提供を受けた.市町村ごとの特性については,主に2000年センサス,岐阜県林業統計,森林組合統計を使用した.森林施業の分析対象を除間伐に限定した。本分析では,除間伐の対象林分をIIIからVI齢級の人工林単層育成林とした.
次の二つの分析を行った.分析1 市町村の特性と除間伐実施率 平成10から12年の3年間を対象に重回帰分析を行い,除間伐実施率を市町村の特性で表現することを試みた.実施面積/対象面積を除間伐実施率とした.説明変数として国有林率(X1),民有林の人工林面積/総土地面積(X2),不在村で森林組合未加入である人の所有する森林面積/私有林面積(X4),民有林の林道密度,高性能林業機械導入数/人工林面積,森林組合作業班員数/人工林面積(X3),市町村による補助金嵩上げの有無,産直住宅協同組合の有無,農業地域類型,その他を用意した.
分析2 小班の特性と除間伐実施率 平成7から9年の3年間を対象に,間伐データの多い15市町村を選び,分析を行った.実施小班数/対象小班数を除間伐実施率とした.森林簿データに含まれる林道からの距離,森林所有形態,所有規模,小班面積などの情報を保育データと対応させ,それぞれの特性と除間伐実施率の関係を調べた.さらに,特性による差が有意であるか分散分析で確かめた.
結果 分析1 次の式で除間伐実施率を表すことが出来た.(除間伐実施率)=0.298 X1 + 0.230 X2 + 9.176 X3 - 0.203 X4+ 0.121自由度調整済みR2=0.4903、F=20.7>F(0.1%)
分析2 1)森林の所有規模 個人の所有する森林を対象に,森林所有規模5ha未満,5-20ha,20-50ha,50ha以上に区分した.所有規模が大きい森林ほど除間伐実施率が高い傾向が見られた.分散分析の結果,グループ間に有意な差が見られた(α=5%).2)小班の面積小班面積を0.1ha未満,0.1-0.2ha,0.2-0.3ha,0.3-0.5ha,0.5-1ha,1-5ha,5ha以上の7つに区分し,除間伐実施率の関係について調べた.どの町村においても,小班面積が大きくなるほど除間伐の実施率が上がった.分散分析を行った結果,グループ間に有意な差が認められた(α=1%).
3)林道からの距離 林道からの距離50m未満,50-100m,100-150m,150-250m,250m以上の5つに区分した.林道からの距離が遠くなるほど実施率が高まる傾向が見られ,分散分析を行ったところ,グループ間に有意差が認められた(α=5%).林道から遠いほど除間伐実施率が上がるのは公社造林の影響ではないかと考え,個人有林に絞って同様の分析を行ったが,結果は同様であった.
考察 分析1の結果から除間伐を一層進めるためには,林業労働者の確保が重要であることがわかる.また,とくに不在村森林所有者に森林組合加入を促すことが必要である.分析2の結果から,林道から近くても除間伐実施率が上がらないことが明らかになった.この結果から,森林施業に経済的要因が働いていない現状が垣間見える.また,面積の大きい小班、所有規模の大きい人が所有する小班において除間伐実施率が高いとの結果を得た.経営規模の拡大,施業実施の単位である小班の規模の拡大が,除間伐の実施を促すのに有効であると考えられる.たとえば,団地化によって森林を経営が可能な規模にまとめることは、有効な方策であるといえる.
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