日本林学会大会発表データベース
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選択された号の論文の814件中601~650を表示しています
立地
  • 相澤 州平, 吉永 秀一郎
    セッションID: P3114
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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  • -タイ国乾燥落葉林におけるリターフォールとA0層の比較から-
    戸田 哲也, 武田 博清, 徳地 直子, 太田 誠一, ワチャリンラット チョンラック, カイトプラニート サン
    セッションID: P3115
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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     タイ国乾燥落葉林において、防火措置が養分循環をどのように変化させるかを明らかにするため、野火侵入後の経過年数が異なる3林分(35年:F35、10年:F10、0年:F0)のリターフォール量とA0層を調査し、これらの違いが窒素還元様式に及ぼす影響について考察した。
     年間リターフォール量は3.92から8.79t/haであり、野火侵入後の経過年数と共に増加し、樹木が回復あるいは新規加入している影響がみられた。リターフォールの季節変化は、どのプロットでも雨季に少なく、乾季に多く、乾季中盤の12月から1月にピークがみられた。リターフォールの窒素濃度はプロット間で差がなく、どのプロットにおいても成長期の雨季に高く、落葉期の乾季に低い傾向がみられた。濃度とリターフォール量から推定した地表への年間窒素還元量はF35、F10、F0の順に123.8、75.1、33.4kg/haであり、防火措置により窒素還元量は4倍に増加した。
     A0層量とリターフォール量から求めたリターの年間消失係数はF35、F10、F0の順に1.250、1.153、2.906とF0で最も大きかった。また、窒素の消失係数も、F35、F10、F0の順に1.265、0.935、2.138であり、F0で最も大きかった。このようにF0で消失係数が大きいのは、乾季の野火によって蓄積されたA0層が焼失してしまうためである。毎年の野火侵入によって、F0では他の防火措置をしたプロットに比べて養分循環へのA0層蓄積量の寄与が低く、C/N比の高いリターフォールで養分の還元が行われていることが考えられた。
  • 培養による硫黄含有率および硫黄安定同位体比の変化
    谷川 東子, 野口 享太郎, 赤間 亮夫, 高橋 正通
    セッションID: P3116
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    亜高山帯土壌について,土壌培養実験を行い有機態硫黄の無機化特性を明らかにした.前回は有機態硫黄のうち,HI-reducible Sは土壌のアルミニウム酸化物に, C-bonded Sは土壌pH(H2O)によって無機化速度が規定されていることを示した(1).今回は培養前後における硫黄含有率と硫黄安定同位対比(δ34S)の変化から推察される有機態硫黄の形態変化について報告する.現在知られている有機態硫黄の形態変化のうち,主要な経路の1つはC-bonded SがHI-reducible Sへ形態変化し,そのHI-reducible Sはさらに無機化されると硫酸イオンになる,というものである.本研究はとくに,C-bonded SがHI-reducible Sとして保持されるのか硫酸イオンにまで分解するのかが,どのような要因によって決定しているのか,という点に着目している.培養試験には栃木県奥日光地域の3地点(DC,HL,NA)および山梨県大弛峠1地点(OD)の計4地点の表層土壌を用いた.培養温度は20℃および35℃の2段階,期間は280日間,1土壌1温度につき3反復で培養試験を行った.なおHI-reducible Sは炭素と硫黄が酸素を介して結合しているエステル硫酸などを指し,不安定で無機化されやすい化合物であると考えられている.またC-bonded S は炭素と硫黄が直結しているアミノ酸などを指し,HI-reducible Sよりは安定して存在している化合物であると考えられている.PO4可溶性Sはリン酸溶液によって抽出される硫酸イオンを指し,吸着態硫酸イオンを主体とする.培養後にC-bonded S 含有率は4土壌とも低下し,δ34Sは低くなった.HI-reducible S含有率は2土壌で低下し2土壌で高くなったが,δ34Sはいずれも高くなった.PO4可溶性Sは含有率,δ34Sとも一定の傾向は見られなかった.また分解されたC-bonded SがHI-reducible Sへ変換される率をHI-reducible S変化量/C-bonded S 変化量とすると,この値は土壌のAld含有率が高いほど低いことが明らかになった.従って,C-bonded S →HI-reducible S→硫酸イオンの反応がHI-reducible Sで止まるか硫酸イオンまで進むかは,土壌のAld含有率に影響を受けると考えられる.供試土壌では,Ald含有率はDC>NA>HLの順に高く,分解したC-bonded S がHI-reducible Sとして保持される率も同じ順で高かった(培養温度20℃の場合,DCでは81%,NAでは40%,HLでは0%に加え当初含有されていたHI-reducible S の13%も硫酸イオンになった).培養前後における硫黄化合物含有率の変化から推察される硫黄画分の形態変化をδ34Sの変化と照合したところ,例外はあるもののほとんどの試料で矛盾しないことが明らかになった.
  • 佐藤  冬樹, Giesler Reiner, Ilstedt Ulric, Nordgren Anders
    セッションID: P3117
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    土壌表層が強いリン吸着能を持っている亜寒帯森林では、通常N-limitedである森林生態系がP-limitedになっている可能性がある。この場合、土壌中における鉄やアルミニウムの存在状態が植物や微生物による土壌中のP利用と強いかかわりをもつことが予想される。 著者等はスウェーデン北部に森林地帯において土壌表層部における鉄やアルミニウムの集積が土壌微生物のP利用に与える影響を、土壌呼吸に関するインキュベーション実験により調査した。その結果、非晶質のFeやAlの多い土壌ほど微生物によるP利用を制限することがわかった。また、これらの土壌では、少量の無機態Pを添加することにより、呼吸速度は200%以上増加し、土壌からの緩やかなPの放出が微生物活性の制限因子となっていることが推定された。また、土壌呼吸速度が1mgCO2/hになるまでの積算CO2放出量は、ピロリン酸抽出のAL+Feと強い相関を持ち、有機物と複合体を形成している鉄やアルミニウムが微生物活性に大きく影響を与えていることが分った。 一方、土壌中のリンの分画を試みたところ、土壌の鉄やアルミニウム酸化物と結合している有機態リンが主体を占めており、微生物が非晶質物質に結合しているリンを利用し、利用のしやすさは土壌中の鉄やアルミニウムの存在形態に依存することが明らかとなった。
  • 神澤 嘉顕, 高橋 輝昌, 浅野 義人, 小林 達明
    セッションID: P3118
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1.目的 都市化が森林土壌に与える影響として、pHの上昇、土壌有機物量の減少、菌類相の単純化、菌根菌の活性の低下が報告されている。しかし、都市化が緑地土壌を変化させる仕組みとして、粉塵や建築廃材の影響が考えられているが、未だに不明な点が多い。一般に河川の上流域から下流域にかけて都市化が進行する傾向にある。下流域では、上流域に比べて、都市化の影響を強く受けると考えられる。そこで、本研究では、多摩川流域にある緑地土壌の性質を上流から下流にかけて調査し、都市化による土壌環境の変化を化学的、生物的な面から明らかにすることを目的とする。
    2.調査地
    多摩川流域のコナラ、クヌギを主とする森林型緑地を多摩川の河口から奥多摩湖周辺にかけて、10km程度おきに1,2箇所ずつ合計15箇所選定した。図-1のように、多摩川の上流域から下流域にかけて、周辺市町村の人口密度は、上昇し、人口密度の上昇は、都市化が進行していることを示している。
    3.方法
    それぞれの森林内で土壌深0_から_5cmの表層土壌をA0層の状態が平均的な6箇所_から_10箇所から、およそ100gずつ採取した。採取した土壌を乾燥させ、1mmのふるいにかけ、実験に供した。
    土壌のpH(H2O)をガラス電極法(風乾土:H2O=1:2.5)で、全炭素量、全窒素量をCNコーダー法で、有効態リン酸濃度をブレイ第二法で、セミミクロショーレンベルガー法の抽出液を使い、インドフェノール青法でCEC(陽イオン交換容量)を、交換性カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)量を、原子吸光法で測定した。ただし、CEC、交換性塩基量の測定には、各調査地の土壌を混合し、実験に供した。
    4.結果および考察
    交換性塩基量は、いずれの元素についても、総量(Ca+Mg+K+Na)についても、都市化の進行に伴って、増加した。交換性塩基の元素の組成をみると、Caの割合が都市化の進行に伴って高まった。
    全炭素量は、都市化の進行に伴って増加する傾向を示した。全窒素量、有効態リン酸量は、全炭素量と同様に、都市化が進むにつれて増加する傾向を示した。各調査地での、樹木の落葉による有機物の供給量を推定した結果、都市化の進行に伴い、大きくなると予想された。また、調査地のうち6箇所で土壌の微生物活性を測定した結果、都市化が進むにつれて、低くなる傾向を示した。以上より、都市化が進んだ下流域では、有機物の供給量が多くなる一方で、微生物活性の低下により、有機物が無機化されにくくなるため、土壌中の全炭素量が多くなると考えられる。有効態リン酸量は、pH(H2O)の上昇に伴い、有効態リン酸量が増加したと考えられる。交換性塩基量や全窒素量、有効態リン酸量の増加は、樹木の生育を促進し、落葉量を増加させる一因になると考えられる。
    CECは、都市化が進むにつれて増加した。pH(H2O)とCECは、正の相関にあり、pH(H2O)が高くなると、CECもまた、高くなる。CECは、全炭素量とも正の相関が高くなっており、全炭素量が増加すると、CECも増加する。
    以上のことから、CECが河口に近づくにつれて増加する要因として、_丸1_都市化が進んだ場所では、全炭素量の増加によるCECの増加、_丸2_比較的都市化されていない場所の低pH(H2O)下での陽イオン交換基の不能化によるCECの減少の2つの要因が考えられる。
    塩基飽和度は、交換性塩基量の増加に伴い、都市化が進むにつれて増加した。pH(H2O)(図-2)は、塩基飽和度が高まったことにより、上昇したと考えられる。
    5.まとめ
    都市化の進行は、交換性塩基量の増加、塩基飽和度の上昇によって、pH(H2O)を上昇させていた。pH(H2O)が上昇することにより、有効態リン酸量が増加した。また、有機物供給量を増加させ、微生物活性を低下させていた。これらのことから、土壌中の有機物量は、都市化の進行に伴い増加したと考えられる。
  • インドネシアスマトラ島の事例から
    向井 悠紀子, 太田 誠一, 金子 隆之, 沖森 泰行, Dwi Sulistyono, Saifuddin Anshori
    セッションID: P3119
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1 背景と目的熱帯アジア域で急速に拡大しているマメ科早生樹種であるアカシア類を用いた産業造林は、その成長の早さや比較的貧栄養な土壌でも良好な生育を示す性質から今後さらなる拡大が予想される。しかし短期間で植栽と収穫を繰り返す早生樹造林は林地からの養分収奪が多く、地力を低下させることが懸念されている。一方、熱帯地域の早生樹造林における養分収支に関する科学的な調査事例は特にアジアでは少ない。養分収支面から見た持続可能性は造林地毎に異なる可能性が高く、持続可能な早生樹造林を実現するためには土壌条件の異なる造林地での養分収支を明らかにし、これを類型、定式化することが必要となっている。そこで本研究ではインドネシアスマトラ島においてAcacia mangiumの伐採に伴って収奪される養分と還元される養分についての解析を行った。また同時に林地間の養分量の差と土壌条件との相関についても考察した。2 調査地と方法調査はインドネシア南スマトラ州(年間降水量2,000-3,000mm、平均気温22-33℃)に位置する約20万haのAcacia mangiumパルプ用産業造林地(伐期8年)において行った。生育状況が異なる砂質土壌と埴質土壌の二箇所の7年生(伐期1年前)の林分にそれぞれ約1haの調査プロットを設置した。毎木調査後、胸高直径クラスの異なる10本をプロット周辺から選び出して器官ごと(幹、樹皮、枝、葉、果実、根)のバイオマス量を測定した。これをもとに各器官の相対成長式を作成し、各林分のバイオマス量を算出した。さらに各林分で平均的な胸高直径クラスの2本を選び出し、器官ごとに養分分析用サンプルを採取した。分析した元素はC, N, P, K, Ca, Mgである(C, NはNCアナライザ_-_によって、P, K, Ca, Mgは硝酸_-_過塩素酸法で湿式灰化後、Pはモリブデンブルー比色法、K ,Ca, Mgは原子吸光法で分析)。各器官毎にバイオマス量と養分濃度から養分量を算出した。そのうち収穫される径8cm以上の材(樹皮含む)の養分量を養分収奪量とし、それ以外の残渣として林地に残される部位の養分量を養分還元量とした。3 結果と考察各器官の養分濃度を比較するとN, P, K, Mgは葉で、Caは樹皮で最も高かった。材の養分はいずれもごく低濃度であった。また枝、根は直径が小さいほど養分濃度が高く、材では心材よりも辺材の濃度が高かった。Nを除く各養分濃度は林地差間で顕著に異なり、埴質土壌で濃度が砂質土壌より高い傾向を示した。この結果、林地間で全ての養分量に差が見られ、Kの林地間差は3倍近くに達した。両林分での土壌調査の結果によれば土壌養分量も大きく異なることから(山下、未発表)、土壌養分量が植物体の養分量を規定している可能性が示された。また、バイオマス量の林地間差が比較的小さいにも関わらず養分量の差は大きく、特にKでその傾向が顕著であった。養分収奪率は元素によって異なり、Ca>N≧K>Mg, Pの順に高い。Caは樹皮で濃度が高いため収奪率が特に高かった。次に樹皮を林地に残すと仮定した収奪率を試算すると全ての養分で13-25%にまで低下し、Caでも48-59%から14-20%まで大幅に低下した。このため樹皮を林地に残すことで養分損失を大幅に減らすことが可能であると考えられた。深さ30cmでの土壌養分量と残渣中の養分量から試算した継続可能なローテーション回数はK, Caでは2~3回であった。8年では大気や風化起源の養分供給で収奪養分を補うには不十分であると考えられ、近い将来K, Caが枯渇する可能性が示唆された。さらに、残渣の大部分は分解が早いと考えられる葉や細枝、細根であり、試算ではこれらの分解により次のローテーションの初期に供給される養分量は次世代植栽木の初期の吸収量を2-4倍上回り、植栽初期にKをはじめ可動性の高い養分の損失が生じる可能性があり、これらの養分の枯渇の可能性はさらに高くなることが予測された。
  • Widodo Moh Agus, 生原 喜久雄, 戸田 浩人, 井口 紗織
    セッションID: P3120
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    I. IntroductionTusam (Pinus merkusii) is the only pine that occurs naturally in the south of EquatorIn Sumatra, 30 year-old stands with average diameter of 58.5 cm may have a standing volume of 397 m3 ha-1 with a total yield of 814 m3 ha-1. On favorable sites, it can reach heights up to 60 m and DBH of 150 cm (CABI, 2000). Growth apparently varies between sites. In general, tusam grows well on high lands where soil is strongly weathered, well drained, and acidic. Site Index (SI) is used to determine site quality and to estimate potential productivity. Although widely used for predicting productivity, SI has a weakness, i.e. for a given site index, growth of basal area vary between sites. Therefore, it cannot be used to predict what management practices will affect productivity in the short-and long-terms (Richardson et. al., 1999; Skinner et. al., 1999). The objectives of this research are (i) evaluating soil characters and plant nutrient contents; (ii) assessing the relationship among soil, tree nutrition, and tree growth, and (iii) interpreting the results in order to provide information for management practices.II. Material and Methods Research was conducted in tusam plantations belonging to Perum Perhutani (State Forest Enterprises), KPH Pekalongan Timur in Central Java, Indonesia in 7 compartments, namely, compartments 48a, 31a, 55i, 62d, 48d, 58a, and 74d This area is characterized by climate of type A (Schmidt and Ferguson classification) with rainfall of more than 4500 mm/yr; mean annual temperature between 20 to 30°C. The altitude ranges from 100 m to 1200 m asl. In each compartment, three permanent plots were established in the plantations of more than 25 years age. Circular plots were used where plot size varied between 0.04 to 0.20 ha depending on stand density..Diameter at breast height (DBH) of 1.3 m for all trees was measured using a diameter tape (YAMATO, Japan). Height was measured using a Hagameter for 10 dominant or co-dominant trees. In each plot, three soil profiles were excavated and each profile was divided into 3 soil depths: 0-10 cm, 10-30 cm, and 30-50 cm. Undisturbed soil samples were taken by core sampling (± 100 cm3 in volume. After air-drying and sieving with 2mm screen, samples were composited for each soil depth. Needles collected from the third fully expanded mature fascicle from the apex of three dominant/co-dominant trees were composited after drying at 70-80°C and ground. Samples were digested with nitric acid and perchloric acid (Jones, 2001). The relationships among soil, tree nutrition and tree growth were evaluated using the correlation procedure of the SPSS statistical package. III. Result and Discussion3.1. Soil Characteristics and Tree NutritionSoil pH of all sites was strongly acidic, ranging from 4.5 to 5.5. As a result, availability of Al, Cu, Fe, Mn, Zn increased; some nutrients (Al and Mn) however became toxic, whereas availability of major plant nutrients such as N, P, K, Ca, Mg, S declined (Lal, 1997; Jones, 2001). Additionally, many tropical soils have high P-fixing capacity due to low pH and predominance of Fe and Al ions that reduce P availability to plants. Oxisol is dominated by Kaolinites, which has low cation exchange capacity (3 to 8 cmol kg-1) and low inherent fertility. However, CEC in this study was found to be 30 to 40 cmol kg-1 because of the high content of clay and a possibility of some clay minerals 2:1 being present at this soil. Surprisingly, the CEC was slightly lower in the high SI (plot 58a and 74d) than in the low SI. Total base elements and P also were lower in the high SI, but exchangeable cations were high. The results revealed that nutrients availability to plants were high, although total contents were low. As a result, the growth in the high SI was better.
  • pH、炭素、窒素と遊離酸化物
    今矢 明宏
    セッションID: P3121
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    褐色森林土群は、他の土壌群のように特徴的な層位の発達は見られないが、層位の分化が進み未熟土群とは区分される土壌の総称で、温帯域にあたる全国に分布し我が国森林土壌の約7割がこれに区分されている。このため森林が果たす温暖化物質蓄積能等の機能の精密な評価に対し、土壌型レベルで広範に同じ区分となる土壌が存在することとなり、その差異を表すには不十分である。そこで褐色森林土群の化学的特徴を明らかにし、その数量的評価法を確立することによって、この問題に対処することを目的として、本研究では表層地質の違いが、土壌母材として褐色森林土の化学的特徴に及ぼす影響を明らかにするため、福岡、佐賀、熊本、宮崎県下において採取した褐色森林土群(典型亜群、黄色系亜群)の、pH、全炭素、全窒素、遊離酸化鉄、アルミニウムを測定した。
    pH値は、蛇紋岩、石灰岩を表層地質にもつ土壌で高く、それ以外の表層地質では、pH(KCl)の値のみ溶結凝灰岩でやや高い以外は明瞭な違いはなかった。pH(H2O)の垂直分布様式は、深さに伴う変化を示さないもの、表層でやや高いが、下層ではほぼ変化を示さないもの、そして表層で著しく低く、深さに伴い急激な上昇傾向を示すが下層においては変化を示さないものの3つに区分された。
    全炭素、窒素含有率は、溶結凝灰岩を表層地質にもつ土壌が、表層部において一部を除いて他の土壌より高い傾向が認められたが、石灰岩などにおいても高い含有率を示すものがみられた。
    遊離酸化物のうち、ジチオナイト可溶鉄は、花崗岩を表層地質にもつ土壌で低く、砂岩、蛇紋岩、溶結凝灰岩、角閃片岩、石灰岩と高くなっていた。しかし、酸性シュウ酸塩可溶鉄では、溶結凝灰岩、蛇紋岩で高くなっていた。アルミニウムについては、ジチオナイト可溶、酸性シュウ酸塩可溶とも、溶結凝灰岩の表層部で高いが、それ以外では明瞭な違いはなかった。
    宮崎県下で採取された溶結凝灰岩を表層地質にもつ土壌の一部は、他の土壌とは異なり表層部で高い遊離酸化物含有率を示していることから土壌母材への相当量の火山灰の混入が示唆された。pH(H2O)の垂直分布様式において表層から下層へ向けての急激な上昇を見せた土壌は、これらと一致しており、この特異な上昇傾向を示す深さの範囲は、火山灰の影響を受けている層位の範囲と関係していると考えられた。そのため遊離酸化物含有率が低く火山灰の影響を受けていないとみられる下層では、他の土壌と同様、深さに伴う変化を示さない。またこれに伴いpH(H2O)とpH(KCl)の関係もA層とB層では異なっており、火山灰の影響がないか少ないと考えられるB層では、どの表層地質の土壌も類似の傾向を示すのに対し、火山灰の影響が強いと考えられる土壌のA層では、同じpH(H2O)を示していても他の土壌より高いpH(KCl)を示していた。
    炭素含有率に及ぼす遊離酸化物の影響を、ジチオナイト可溶鉄、アルミニウム、酸性シュウ酸塩可溶鉄、アルミニウムのそれぞれについてみると、ジチオナイト可溶鉄は炭素含有率と、表層地質ごとでも全体でも相関がみられなかったが、酸性シュウ酸塩可溶鉄では、これが高い表層で炭素含有率も高くなっており下層との差が大きかった。またこの炭素含有率の低い下層を除いて、表層地質ごとにほぼ一定の範囲を示していた。これに対し、アルミニウムでは、ジチオナイト可溶、酸性シュウ酸塩可溶とも炭素含有率が断面内で最大となる最表層または火山灰の影響を受けている土壌ではA層においては、炭素含有率との相関関係は不明瞭であるが、それ以外の層位ではこれらの間には正の相関が見られた。また断面を一つの単位として考えると、これらの遊離酸化アルミニウムが高い断面では、高い炭素含有率を示す傾向にあり、遊離酸化物が炭素の蓄積に関与していることが示唆された。また最表層では遊離酸化物の含有量以上に炭素が蓄積していることになるが、これは分解の未熟な有機物の存在量が多いことを示唆したものと考えられた。
    このように表層地質によって褐色森林土の化学性に差異が生じており、中でも火山灰が土壌母材として及ぼす影響の大きいことが明らかとなった。
  • 酒井 寿夫
    セッションID: P3122
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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  • 斜面上の分布およびEDXによる観察
    益守 眞也, 野口 亮, 石塚 成宏, 河室 公康, 八木 久義, 寳月 岱造
    セッションID: P3123
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    秩父山地の急斜面上に見いだされた厚いA層をもつ黒色土について,その斜面上の分布や鉱物組成,植物珪酸体を調べた。斜面上方からの移動堆積によって厚いA層が形成されたことが示唆された。また炭素同位体比分析の結果,腐植の供給源として現在植生とは異なるススキ草原の寄与が示された。さらにエネルギー分散型X線分析をおこない元素の分布を観察した。
  • 隣接する森林との透水性の比較
    藤本 浩平
    セッションID: P3124
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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  • Razafindrabe Bam Haja Nirina, Ezaki Tsugio, Inoue Shoji, Fujiwara Mits ...
    セッションID: P3125
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    The objective of the study is to establish the relationship between Forest Conditions and some soil physical characteristics such as soil porosity, infiltration rate, moisture content, water maximum, soil depth, soil hardness, soil color and degree of erosion. The study has been conducted in a small watershed, located upstream the Ishitegawa Dam in Matsuyama City, Ehime Prefecture.
    Forest operations and degree of lightness significantly affected most of the soil related variables in both A and B layers. The means for those variables were higher in plots having experienced forest thinning (mostly those that have lighter plots) than in others. Natural forests (broadleaved species) showed higher means of most soil variables than artificial forests.
  • 三浦 覚, 重永 英年
    セッションID: P3126
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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     TDR (Time Domain Reflectometry) 法やADR (Amplitude Domain Reflectometry) 法による誘電率水分計は、土壌の体積含水率(以下、含水率)測定に広く利用されている。本研究では、ADR法による誘電率水分計を用いた含水率測定において、プローブ性能を最大限に引き出すための測定条件について検討する。 ADR水分センサーはDelta-T Devices製のProfile Probe PR1/4(以下、Profile Probe)を使用し、データロガーは、HIOKI製メモリハイロガー8421を用いた。ロガーは、±1 V (分解能0.05 mV)または±10 V(分解能0.5 mV)のDC電圧測定レンジを用い、10秒ごとに瞬時値を記録した。供試土壌には、森林総合研究所千代田試験地にある平面ライシメータの関東ロームと第三紀層山砂を用いた。縦横2×2 m深さ1 mのライシメータに充填されたこの2種類の土壌と立木有無の組み合わせを変えながら、2003年7月から10月まで含水率を測定した。Profile Probeの出力と供試土壌の含水率とのキャリブレーションには、Delta-T Devices製のADR誘電率水分計Theta Probe ML2(以下、Theta Probe)を利用した。ライシメータをシートで覆って降雨を遮断して乾燥させながらロームと山砂区のA層(0-7 cm)とB層(20-27 cm)でTheta Probeにより誘電率(ε)を測定し、続いて同位置で100 mLの採土円筒試料を採取して炉乾法により含水率(θ)を測定し、ε-θ較正式を作成した。 ロームと山砂は土性が異なるために、ε-θ直線には大きな違いが認められた。特にロームのε-θ直線の切片と傾きは、メーカーが与えている鉱質土壌や有機質土壌の汎用パラメータから大きくずれており、汎用パラメータを用いると著しく過小評価する結果となった。出力電圧300 mV付近では同じ誘電率測定に対して、ロームの含水率は山砂より10%程度高かった。無降雨期の立木区の含水率は明瞭な日変動を示した。立木区の含水率の日減少率は、ロームでは0.025 (5 cm深) から0.005 m3 m-3 (35 cm深) 、山砂では0.040 (5 cm深) から0.010 m3 m-3 (35 cm深) であった。 ロガーのDC電圧測定レンジを±1 Vから±10 Vに変えた場合には、電圧分解能の違いにより測定精度に違いが認められた。ローム15 cm深の1 V(分解能0.05 mV)レンジで得られた平均0.368 m3 m-3、標準偏差0.0005 m3 m-3に対して、±10 V (分解能0.5 mV)のレンジに変更すると平均0.371 m3 m-3、標準偏差0.0014 m3 m-3に変化した。 土壌の含水率測定に利用されるデータロガーの多くは、電圧記録の分解能が0.5-1 mVである。Profile Probeの測定レンジの中央部に当たる出力電圧300 mV付近では、出力電圧1 mVの差は、含水率に換算するとロームで0.0010-0.0013 m3 m-3、山砂で0.0015-0.0016 m3 m-3に相当する。これを有効土層深を考慮して水高換算すると3_から_5 mmで、日蒸散量と同程度の値となる。分解能1 mVのロガーによる測定は土壌水分の日減少量の評価には利用できるが、日変動の解析には十分とはいえない。本研究で用いたHIOKI製ロガーのレンジ±1 Vの分解能は0.05 mVであり、他のロガーに比べて分解能が1桁小さい。そのため、含水率にすると0.00010-0.00016 m3 m-3に相当する変化を検出できる。本研究で示したような短い時間間隔で多数のサンプリングを行い平均値を算出するか、測定インターバル中の平均電圧を測定すれば標準誤差が小さくなり、センサーとロガーの分解能の性能を最大限に利用した測定が可能になる。このような分解能の高い測定は、樹木による土壌水分利用過程を日変動のレベルで詳細に解析する際に有効である。
  • 岡本 透, 三浦 覚, 吉永 秀一郎
    セッションID: P3131
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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  • 愛知県内3地点の二次林において
    金谷 正太郎, 竹中 千里
    セッションID: P3132
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    樹木葉内における微量元素含有量_-_名古屋市近郊二次林3地点において_-_○ 金谷正太郎、竹中千里(名大院生命農) 1. はじめに古くから植物にとって必要不可欠な元素の特定の研究が行われてきた。その結果、現在では16種類の元素が植物の必須元素として認められている。その中でも植物が多量に必要とする元素は多量元素と呼ばれ、様々な研究が行われてきた。これに対し、植物の要求量は先の元素と比べ微量ではあるものの、必須元素である元素は微量元素と呼ばれ、近年特に注目を集めている。 樹木に関する元素の研究は、各元素の生理的役割や過剰害などの解明に関するものや、大気や土壌汚染と重金属元素との関係、また森林内の物質循環などに関する研究など、様々な分野に渡って行われている。しかしこれらの研究で扱う元素の種類は、数種類に限られており、一度に多くの元素を対象とする事は少なく、各樹種の元素含有量を調べた基礎的なデータもほとんどない。また様々なストレス実験により各元素間に相関関係が存在するのではないかと思われるデータは存在するものの、それに焦点を当てた研究はほとんど行われていない。 本研究では数種の樹木葉内と土壌の様々な元素含有量を調べ、基礎データを蓄積し、季節変化などから樹種特性、地域差を明らかにし、樹木葉内の元素含有量がどのような影響を受け変化するのかを明らかにすることを目的とする。2. 材料と方法対象樹木は名古屋市内及び近郊の二次林3地点(名古屋大学内、昭和の森、トヨタフォレスタヒルズ)より、ヒサカキ(Eurya japonica Thunb)、コナラ(Quercus serrata Thunb)、アラカシ(Quercus glauca Thunb)、アカマツ(Pinus densiflora Sieb. Zucc)、タカノツメ(Evodiopanax innovans Sieb. et Zucc)の5樹種とした。1樹種に対し5個体ずつ選び、その葉を2003年4月から12月にかけて毎月採取した。採取位置は採取位置高枝切りバサミ(3m)が届く範囲内で、各葉の環境条件を統一するため太陽光の当たりにくい陰葉で統一した。アラカシとヒサカキについては当年葉と旧年葉を採取した。また葉の採取と同時に土壌(A層)を林内5箇所より採取した。採取した葉は蒸留水200mlで3分間振とうし、表面のゴミ等を洗浄除去した後、80℃48時間で乾燥させ1試料当たり3枚の葉を使い、細切化しよく振り混ぜ葉全体を均等になるようにした後、約0.1g測りとり、硝酸分解しICPにて各元素濃度(18種類)を測定した。採取した土壌は2mmのふるいにかけ風乾し、塩酸抽出法・酢酸抽出法・水抽出法にて抽出した後、それぞれ葉と同様にICPを用いて各元素濃度を得た。3. 結果と考察 葉内元素分析の結果より、去年の報告と同様、いずれの地点のヒサカキには当年葉旧年葉共に、非常に高濃度のAl(約10mg/g)が蓄積されていた。また、いずれの地点のタカノツメにおけるCd、Zn含有量はCd(約1.5μg/g)、Zn(約300μg/g)で、他樹種のCd(ほとんどの樹種で検出されず)Zn(約20μg/g、コナラ)と比べ多く蓄積されていた。このことからタカノツメは他樹種とは異なる養分吸収を行っていることが示唆された。 ヒサカキ・アラカシの当年葉と旧年葉ではいずれの地点においても、Al, Fe, Mn, Ca, Siでは当年葉より旧年葉の方が多く含まれている傾向が、Cu, K, Mg, P, Sでは当年葉の方が旧年葉より多く含まれている傾向が見られた。このことから樹木体内の元素配分は当年葉と旧年葉では異なることが示唆された。 同樹種における地点別の葉内元素において、Mnでは地域差が見られたが、他の元素ではいずれの樹種においても大きな地域差は見られなかった。
  • 長尾 忠泰, 三浦 正史, 原田 洋
    セッションID: P3133
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    川崎市内に造成された環境保全林において5年間にわたり林外雨・林内雨・樹幹流中の煤塵量を測定してきた。今回新たに若齢林分である熱海環境保全林を追加したので、ここに報告する。 川崎市の埋立て地に1984年に造成した19年生の環境保全林と、熱海市の畑地跡地に1994年に造成した9年生の環境保全林である。前者はスダジイとタブノキ、後者はスダジイとシラカシが優占している。測定には,林外雨中・林内雨中の煤塵については降下煤塵採取装置で採取した雨水をろ過した。樹幹流中の煤塵についてはウレタンラバー法で採取した。また溶存成分のうち陽イオンは原子吸光法、陰イオンはイオンクロマトグラフィーで分析した。川崎は1999年1月から,熱海は2002年4月から毎月末に1回回収し、測定を行った。
  • NO2測定結果
    栗田 直明, 岩本 則長, 山田 利博, 竹崎 靖一, 前田 暢子, 古田島 正男
    セッションID: P3134
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    大気汚染は酸性雨や光化学スモッグの原因となり、人体にも悪影響を及ぼし大きな問題となっている。その原因となるのが、主として車の排気ガスなどにより発生する窒素酸化物(主としてNO2)や、主に工場の煙から発生する硫黄酸化物(主としてSO2)である。最近ではSO2は減少傾向にあるが、NO2の発生量は依然として多く、大きな問題となっている。東京大学演習林田無試験地(以下、演習林)は、住宅地、幹線道路等に囲まれた中にある貴重な都市林である。演者らは1993年から演習林内、演習林外のNO2の測定を天谷式簡易測定法を用い月1回行っている。今回これらの測定データを解析し、(1)演習林内と演習林外(付近の緑地、道路、住宅地)でNO2濃度とその経時変化、季節変化にどのような違いがみられるか、(2)演習林内での場所による違いを明らかにし、樹林がNO2に対してどのような効果を及ぼしているかを考察した。解析方法として、演習林内25地点、演習林外49地点(緑地10地点、幹線道路18地点、生活道路6地点、住宅地15地点の4グループ)の計74地点について測定した。今回はその中から演習林内は林内の環境に応じて8地点(自然林、農場との境界、改良ポプラ林、ヒノキモデル林分、北側壁沿、天然生ヒノキ植栽林、アカマツ疎林、苗畑内露場)、演習林外は位置的バランスを考慮して19地点(緑地5地点、幹線道路7地点、生活道路3地点、住宅地4地点)の計27地点を選び1995年_から_2003年までの測定結果をまとめた。今回のNO2濃度の解析で、グループ別に見ると、道路で高く、中でも幹線道路沿いが高かった。また、演習林内がもっとも低く、緑地も低い値を示した。演習林内では、自然林内で低い傾向があった。季節変化についてみるとグループ間あるいはグループ内に共通する明瞭なパターンは認められなかったが、道路では変動が大きかった。経年変化については、どのグループでも増減は認められなかった。以上のことから演習林の樹林が安定的に低NO2濃度に寄与しているのではないかと考えられる。
  • 伊藤 優子
    セッションID: P3135
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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樹病
  • 斉藤 正一, 中村 人史, 三浦 直美
    セッションID: P4001
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1990年以降,日本海側を中心に発生しているナラ類の集団枯損被害は,終息の目処は立っていない。 ナラ類集団枯損の防除法の研究は,斉藤ら(1999)が枯死木の樹幹下部にドリルで注入孔をあけてNCSくん蒸剤を注入することで樹幹内のカシノナガキクイムシ(以下カシナガ)を効果的に殺虫でき,Raffaelea quercivora(以下ナラ菌)の分散抑制を図る駆除技術を開発した。また,小林ら(2001)は健全木にビニールシートを巻付け樹幹部へのカシナガの穿入を阻止する予防技術を開発した。これら防除法に対して,作業が簡易・安全で効果的な防除法について建築用水溶性接着剤住友スリーエム製JA7562(以下接着剤)を利用した技術を開発した。1.殺虫剤と接着剤を利用したカシナガ駆除効果 枯死木樹幹内の殺虫率は,接着剤のみの散布では60%程度であるが,バークサイドE(以下MEP10)20倍液+接着剤処理では約70%MEP10の10倍液+接着剤処理では約80%の殺虫効果があった。またMEP10と接着剤の別散布と混合液散布との間には殺虫率に違いは無く,混合液散布のほうが作業性は2人1組で1日41本と効率的に処理できることが明らかになった。しかし枯死木内の殺虫率が80%と低いため激害地では期待するほどの駆除効果は得にくい。この方法は,傾斜が急な林分での補助的な使用が望ましいと考えられた。2.殺虫剤と接着剤を利用した予防効果 無処理の場合健全なナラ類の枯死率は3年間で65%に達するのに対して,スミパイン乳剤50倍液(以下MEP80)散布後に接着剤散布した場合は枯死率が8.3%,MEP80のみは16.7%,接着剤のみでは6.7%ととなり接着剤を樹幹に塗布する処理が枯死率を低下させる傾向にあった。接着剤を利用した予防法は,ビニール被覆の予防法と同等の予防効果を持ち,根曲や株立の立木の処理にも適していた。
  • 小村 良太郎, 久保 守, 村本 健一郎, 江崎 功二郎, 鎌田 直人
    セッションID: P4002
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    カシノナガキクイムシが媒介するRaffaelea quercivoraが原因で発生するナラ類の集団枯損が本州の日本海側で進行している。森林内で広範囲の枯死木の位置を把握し、その分布を解析することは、効率的に防除対策を行う上で重要となる。これまで、航空写真を目視判読し、限定された領域の枯死木の位置を把握し位置分布の解析を行ってきたが、目視判読のみによる枯死木の識別には労力がかかるため、広範囲の解析を行うには現実的ではない。そこで本研究では、枯損被害箇所を自動抽出する手法を考案し、その抽出結果の検討を行った。枯死した個体は、萎凋症状が急激に進行するため、離層が形成されず、赤褐色に変色した葉は樹木に着生したままになる。したがって紅葉が始まる10月中旬までに撮影した航空写真を使うと枯死木の目視識別が可能である。本研究では2000年10月19日に撮影された、石川県刈安山周辺の航空写真をスキャナで読み込み画像化し使用した。本研究では枯死木の樹冠が赤系色であることを利用して枯死木の分類を行い位置を特定し、その後、特定された位置を始点として樹冠領域を算出することで被害箇所を抽出する手法を考案した。位置特定では赤系色領域を効率的に抽出するために通常のRGB色空間ではなく、色相(H)、彩度(S)、明度(I)で表現されるHSI色空間情報を用いた。考案手法では、色相と明度を利用して枯死木位置の特定を行う。また、上空から地面が直接見える道路・裸地周辺では枯死木に近い色の画素が存在している場合があるため、道路・裸地周辺の画素は枯死木候補から除外した。色情報より枯死木の位置を定めた後、その位置を始点として枯死木の樹冠領域を抽出した。樹冠領域抽出にはRGB色情報を元に樹冠を近似色円領域で表現する手法を利用した。分類・抽出の手順は次の通りである。1)RGB色空間の輝度値をHSI色空間に変換する。2) 色相と明度に閾値を定め、枯死木、健全木、道路・裸地に分類する。3) 枯死木と分類された画素のうち、道路・裸地周辺のものを除外する。4)枯死木と判定された画素を中心として近似色円を算出し枯死木の樹冠領域を算出する。以上の手順により枯死木の領域の抽出を行った。結果では、目視判読に比べ過検出が見られたものの、目視判読で見落としていた影領域周辺部の枯死木と思われる領域も抽出できていた。考案手法を用いた後、過検出箇所の除去を行うことにより効率的な枯損被害箇所の抽出が可能となる。
  • 竹内 友二, 竹本 周平, 山崎 理正, 二井 一禎
    セッションID: P4003
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1.目的 ナガキクイムシ科穿孔性昆虫の1種であるカシノナガキクイムシ(Platypus quercivorus)の穿入によってナラ類が大量に枯死する被害が、1980年頃から日本海側を中心に問題になっている。これらの被害木からは例外なく Raffaelea quercivoraが高頻度で分離されている。本研究では本菌の主な宿主木であるミズナラ(Quercus mongolica var. grosseserrata)とコナラ(Quercus serrata)の3年生苗に対してR. quercivoraを接種し、その後本菌の材内進展の様子と、それに伴う材の抽出成分の変化を時間的・空間的に解析することを目的とし、R. quercivoraの再分離と材の抽出成分の定量を行い、その結果を両樹種間で比較した。2. 材料と方法1)Raffaelea quercivoraの接種2003年の7月上旬に、苗の地表から垂直上向きに約10 cmの部位にドリルを用いて直径1.2 mm・深さ4cmの穿孔3点を施し、その穿孔に爪楊枝に繁殖させたR. quercivoraを接種した。また非接種区(対照区)の穿孔には無菌の爪楊枝のみを接種した。2)サンプリング接種後1、2、3および4週間目に接種部位を含む垂直上向きに18 cmの主軸を採取した。この主軸を3cm毎の6つのセグメント計6つに剪定バサミで分割し、各セグメントの下部数mmを菌の再分離に、残りを抽出成分の定量に用いた。処理区としてはミズナラ・コナラともに接種区と対照区、さらに接種後1週間毎に4週間目までの合計16 処理区を設け、各区につき7本の苗を供試した。3)Raffaelea quercivoraの再分離 各試料を0.5 _%_アンチホルミン溶液で5分間表面殺菌した後滅菌水で3回洗浄し、PDA平板培地に置いた。その後20 ℃の暗室に約1週間静置し観察した。4)材抽出成分の定量各試料を凍結乾燥させ、剪定バサミで数mm角に刻んだ後、ボールミルにより粉砕し、粉末状にした。この試料を50 _%_メタノールで24 時間抽出し、その抽出液からトータルフェノール、縮合型タンニン、エラグタンニンを比色法によりそれぞれ定量した。3. 結果1) Raffaelea quercivoraの再分離 Raffaelea quercivoraの各部位における分離率については、ミズナラ・コナラ両樹種とも接種点で最も高く、接種点から離れるにしたがって減少していた。ミズナラ・コナラ間でR. quercivoraの分離率および分離部位に大きな違いは見られなかった。 Raffaelea quercivora接種区の試料では、ミズナラ・コナラ両樹種ともに対照区より明らかに大きな辺材変色域の形成が認められた。接種区では、ミズナラ・コナラ両樹種とも変色域の形成は接種部位付近に留まっていたが、R. quercivoraは変色域から離れた部位からも分離された。2)材抽出成分の定量ミズナラ・コナラ両樹種とも各抽出成分量が一度ピークに達し、その後減少した。しかし、ピークに達したのはミズナラが接種後3週間目であったのに対し、コナラは接種後2週間目であった(図1)。一方、対照区の各抽出成分はミズナラ・コナラ両樹種ともに、接種後時間が経過しても大きな変動は認められなかった。4.考察材抽出成分の定量実験の結果、材抽出成分量の時間的な変動様式においてはミズナラ・コナラ間で差が見られた。一方、R. quercivoraの再分離試験では両樹種間に差は見られなかった。これらのことから、ナラ枯れ被害の程度は本菌の材内進展の程度によるものではなく、それぞれの樹種が菌の感染に対して引き起こす生理的防御反応の応答速度の違いによるものである可能性が示唆された。
  • 小坂 肇, 相川 拓也, 菊地 泰生, 清原 友也
    セッションID: P4004
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    マツノザイセンチュウ(以下、センチュウ)はマツ材線虫病を引き起こす病原生物である。しかし、その病原力の変異は非常に大きく、マツを高率に枯死させる分離株からほとんど枯死させない分離株まで存在する(清原, 1989)。そして、病原力の弱い(弱病原力)センチュウを接種されたマツは、後に病原力の強い(強病原力)センチュウを接種されても枯死しないことがあることが明らかになった(清原, 1989)。この現象は、弱病原力センチュウの接種によりマツにマツ材線虫病に対する抵抗性が誘導された(誘導抵抗性が発現した)と考えられている。誘導抵抗性の発現程度は、弱病原力センチュウの接種方法(例えば接種頭数)により異なるため、より頑強に誘導抵抗性を発現させる方法の開発が求められている(小坂, 2003)。 動物の病気では、同じ病原生物が同一の宿主に2度目に侵入したときに宿主の免疫能力が向上することがある。このことをブースター効果という。同じ種類のワクチンを時間をおいて2回接種する場合があるのは、ブースター効果を利用してより病気に強い免疫能力を得るためである。 マツ材線虫病に対するマツの誘導抵抗性の発現と病気に対する動物の免疫獲得は、現象としては同様である。そのため、マツにおいてもセンチュウが複数回侵入したときにマツ材線虫病に対する抵抗性が向上するかもしれない。そこで、本研究ではアカマツ及びクロマツに弱病原力センチュウを時間をおいて2回接種したときの誘導抵抗性の発現を調べた。 1999年と2000年の2回、試験を行った。1999年は森林総合研究所内の苗畑に生育する3年生アカマツ及びクロマツ苗木を用いた。6月29日、7月15日及び8月4日に所定の頭数のセンチュウ懸濁液(0.05ml)または蒸留水(0.05ml)を接種した。11月16日に健全な苗(枯死した苗と葉の一部が赤く変色した苗以外、すなわち病徴が全く表れていない苗を健全とした)を確認して誘導抵抗性の効果を調べた。2000年は森林総合研究所千代田試験地に生育する4年生アカマツ及びクロマツ苗木を用いた。6月16日、6月30日及び7月14日に所定の頭数のセンチュウ懸濁液(0.05ml)または蒸留水(0.05ml)を接種した。11月21日と翌年3月2日に苗の健全性を確認して誘導抵抗性の効果を確認した。いずれの試験も、弱病原力センチュウはOKD-1分離株、強病原力センチュウはKa-4分離株を使用した。 弱病原力センチュウを2回接種したアカマツの健全率は、1回接種したアカマツのそれより高かった。すなわち、弱病原力センチュウを2回接種することで、マツのマツ材線虫病に対する誘導抵抗性の発現程度を高められる可能性が示された。しかし、クロマツの場合、弱病原力センチュウを2回接種しても生存率あるいは健全率が高くならない場合もあった。弱病原力センチュウを2回接種しても、誘導抵抗性の発現程度が劇的に向上しない可能性も考えられた。
  • 金谷 整一, 中村 克典, 秋庭 満輝, 玉泉 幸一郎, 齋藤 明
    セッションID: P4005
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1.はじめにヤクタネゴヨウ(屋久・種子・五葉:Pinus armandii var. amamiana)は、台湾のタカネゴヨウ(var. masteriana)ならびに中国のカザンマツ(var. armandii)の近縁種とされ、種子島と屋久島にのみ自生する五葉松である。ヤクタネゴヨウは、種子島で100個体、屋久島で1,500-2,000個体が生残していると推定されている。また、個体数が減少傾向にあるとみられることから、レッドデータブックでは絶滅危惧IB類にランクされている。特に個体数が少なく、島内に散在している種子島においては、屋久島より絶滅の危険性は高いとみられる。種子島におけるヤクタネゴヨウの個体数減少の要因として、数十年前までは丸木舟の用材や建築材による伐採が主な要因であった(金谷ら,2001)。近年では、日本のマツ林に影響を及ぼしているマツ材線虫病による被害が考えられている。ヤクタネゴヨウとマツ材線虫病に関する知見として、苗畑などにおける実験で、マツノザイセンチュウを接種すると枯死することが確認されている(Akiba and Nakamura, unpublished)。また、種子島の自生地において枯死したヤクタネゴヨウ1個体の樹幹材辺より、マツノザイセンチュウが検出されている(Nakamura et. al, 2001)。これまでに、種子島におけるヤクタネゴヨウの個体数減少およびマツ材線虫病の影響等に関する定量的な情報はない。そこで本報告では、種子島におけるヤクタネゴヨウのモニタリング調査を行うことにより衰退過程ならびにその枯死要因について明らかにすることを目的とした。2.調査地と調査方法種子島は、九州本土最南端より南方40kmの海上に位置し、南北58km、東西13km、最高標高282mと屋久島のような急峻な山岳が存在しない丘陵性の島である。本島の基盤となる地質は、砂岩と頁岩からなる新生代古第三紀の熊毛層群である。調査は、種子島の一市二町(西之表市、中種子町、南種子町)で行った。当該調査地域内に自然分布および植栽されている98個体のヤクタネゴヨウ成木(胸高直径5cm以上)を調査対象とした。モニタリング調査は、1994年よりを開始し、おおむね毎年1_から_3回の割合で行った。 毎調査時に生死の確認を行った。枯死していた際には、その形態を、「立枯れ」、「根返り」、「伐採」の3つに分類して記録するとともに、樹幹よりドリルを用いて材辺を採取した。採取した材辺は、森林総研九州支所(熊本市)に持ち帰り、据え置き等の処理をした後、ベールマン法により材線虫類の検出を試みた。3.結果と考察調査期間中に23個体の枯死が確認された(2004年1月20日現在)。生残率は、1994年の調査開始時を100%とすると、10年間で76.5%まで減少したことになる。枯死形態をみると、「立枯れ」が19個体(83%)、「伐採」が4個体(17%)であり、「根返り」は確認されなかった。「伐採」で枯死(消失)した3個体は、採石場内に分布しており、事業の推移により伐採されたものと考えられる。残りの1個体は、神社境内に植栽されており、材辺採取する前に伐採されてしまい、枯死要因を確認できなかった。屋久島では、強力な台風の襲来という気象的要因と、地形が急峻かつ表土層の薄い環境的要因により「根返り」や「土壌流出」による枯死個体が確認されている(Kanetani et. al, 2001)。しかしながら、種子島で行った今回の調査で「根返り」がみられなかったことは、地質や地形といった要因が関係していると推察される。「立枯れ」した枯死個体のうち14個体について材辺を採取し、11個体よりマツノザイセンチュウが検出された。特に2002年以降、枯死要因の80%以上が、マツ材線虫病であった。以上のことから、最近10年間の種子島におけるヤクタネゴヨウの個体数減少の大きな要因は、マツ材線虫病被害と採石事業に伴う伐採であった。例年、種子島においては、マツ材線虫病による被害が確認され、島内に分布するクロマツに深刻な被害が発生している。また、ヤクタネゴヨウが分布する地域周辺でも、マツ材線虫病で枯死したクロマツが確認されている。このままの状況が続くと、種子島におけるヤクタネゴヨウに対し、マツ材線虫病被害の拡大が懸念され、個体数減少(維持)に大きな影響を及ぼすことが予想される。
  • 中村 克典
    セッションID: P4006
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    防除により材線虫病の発生が抑制された佐賀県虹の松原において,クロマツ枯損木の発生状況とそれらにおけるマツノザイセンチュウの感染を調査した。2002年に発生した46本の枯損木のうち6本からマツノザイセンチュウが検出され,当地において材線虫病は根絶されていないことが示された。枯損木の40%以上が被圧木であり,また被圧木以外でも大径木では葉量の減少や樹幹の空洞化が観察され,虹の松原におけるクロマツ枯損には,被圧と樹木の老齢化による衰弱の寄与が大きいことが推測された。
  • 田島 瑠美, 玉泉 幸一郎, 辻 英敏, 高倉 和雄
    セッションID: P4007
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1.目的
     マツ材線虫病の防除法として種々の方法が用いられてきた。その中で、薬剤を松の樹幹に注入する樹幹注入法は、高い防除効果を持つことから、現在、有効な防除法として多用されている。しかし、この方法には樹幹への穿孔に伴う傷害、腐朽菌が侵入しやすい事、薬害、高価である事等の欠点がある。そこで、新たな防除法として考案されたのが電撃を利用して防除を行う電撃防除法である。この方法は、マツ材線虫病に罹病した松の樹体に定期的に電撃を与え、侵入して来た線虫の活動を抑え、あるいは壊死させて、発病や病徴進展を遅らせるものである。我々は、この電撃防除法が樹幹注入法の欠点を補う新たな防除法であると捉え、電撃防除の効果を確認する事を試みてきた。しかし、これまでに行われた枯死率を指標とした電撃防除試験では、効果の認められる結果と、効果の認められない結果が混在した。その原因は、この方法が試験木のサイズ、試験環境、あるいは電撃の強さや印加時間など多くの内的、外的要因に影響されやすいことにあると考えられた。このことから、本防除法の確立にはさらに詳細な実験データの蓄積が必要となっている。そこで本研究では、まず、マツ材線虫病の進行に対する電撃の効果を明らかにすることを目的として実験を行った。実験では、マツ材線虫病の初期症状として認められている樹脂滲出異常を指標としたが、新たに、初期症状として顕著な変化を示す樹皮呼吸を指標に加え、それらの指標の時間的な変化を観察した。
    2.方法
     供試木には九州大学農学部構内に生育する6年生のクロマツを用いた。平均樹高、根元直径はそれぞれ2.5m、5.3cmであった。各実験では、コントロールに1本、接種木に2本、接種+印加木に実験第1回目は1本、2、3回目は2本、また1回目には、印加のみを1本供試し、それぞれクロマツ5本を用いた。マツノザイセンチュウの接種実験は3回行い、接種日は2003年7月14日、8月7日、9月10日で、1年生側枝の先端に3千頭/0.1ccに調整されたマツノザイセンチュウを3箇所に計9千頭/本を接種した。線虫は強毒性のKa-4系統を用いた。電撃装置は実験開始直前に設定し、電撃の印加は、接種直前から始めた。電撃の印加は当年生主幹の基部と地際部との間に行った。印加は、電圧18000v、電流20mAを1秒間で3分毎に行った。呼吸速度の測定は供試木の幹に呼吸チャンバーを設置し、チャンバーへの流入空気と排出空気のCO2濃度を赤外線ガス分析計で計測して求めた。チャンバーへの流入空気は5l/minとし、測定は各チャンバーで1時間に1回行った。樹脂滲出は針葉除去跡からの樹脂滲出量をおよそ3日に1回、目視により観察し、同時に針葉の葉色変化も観察した。
    3.結果と考察
     第2回目の実験における樹皮呼吸の変化を、接種日を1とした相対値として示した所、接種木3、4の樹皮呼吸は接種日から12日目と13日目に増加した。しかし、接種+印加木2では31日目の実験終了日まで増加は認められず、接種+印加木3では22日目まで増加は見られなかった。樹脂滲出については、接種木3、4で異常が見られたのは20日目であったが、接種+印加木2では測定期間中の異常は見られず、接種+印加木3は46日目に異常が起こった。樹脂滲出の停止は、接種木3、4はそれぞれ22、28日目、接種+印加木3は78日目であった。3回の実験の結果をまとめると、電撃により呼吸速度、樹脂滲出異常ともに遅れて発生し、実験1では呼吸速度は6.5日、樹脂滲出の異常は1.5日、実験2では10.5日と26日、実験3では1.5日と20日であった。このことは電撃がマツ材線虫病の進行を抑えていることを示しており、電撃がマツ材線虫病に効果のあることを意味する。シャーレ内の培養線虫に電撃を与えると、線虫の増殖率は低下することから、樹木内でもこの効果により線虫の増殖が抑えられ、樹皮呼吸増大あるいは樹脂滲出異常の時期を遅らせたと考えられる。しかし、枯損に関しては接種+印加木において5本中4本が枯死し、電撃によって枯損を食い止めることはできなかった。今後は、さらに研究を進め、枯損防止のための印加条件を見出す必要がある。
  • 小岩 俊行, 蓬田 英俊, 高橋 健太郎, 阿部 豊
    セッションID: P4008
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1999年10月,岩手県江刺市にあるドイツトウヒ(Picea abies Karst.)列状植栽林の枯死木にマツノマダラカミキリの寄生が確認された。その後,材片調査を行ったところ,複数の枯死木からマツノザイセンチュウが確認された。マツ材線虫病によるドイツトウヒの被害はこれまで,によって単木的な枯死事例が報告されているが,林分での発生は報告がみられない(海老根ら,1981)。また,ドイツトウヒがアカマツ,クロマツの被害拡大に関与する可能性も考えられた。そこで,ドイツトウヒ林で発生した被害の実態を調査した。調査したドイツトウヒ林では,発生した枯死木約150本のうち,42%にマツノマダラカミキリが,20.5%にマツノザイセンチュウが寄生していた。寄生が確認されたドイツトウヒ枯死木は,健全木に比べ,サイズが小さかった。しかし,この林分は防風林で列状に植栽されているため,被圧のみによって枯死した可能性は極めて低い。また,マツノザイセンチュウおよびマツノマダラカミキリが確認された個体の一部は明らかに大きく,被圧は受けていないと考えられる。したがって,ドイツトウヒ林に発生した枯死木の発生原因は,マツ材線虫病によるものと判断された。これまで,マツノザイセンチュウを接種したドイツトウヒは枝枯れ症状のみで枯死木が発生しなかった(小倉ら,1983)。今回,苗木で低率ながら枯死木の発生が確認された。また,加温乾燥条件により枯死木が発生した。これらのことから,ドイツトウヒは加温,乾燥など何らかのストレス下で枯死に至る可能性が高くなるのではないかと考えられた。マツ材線虫病によって枯死したと考えられるドイツトウヒから羽化脱出したマツノマダラカミキリは,体内に少数ではあるがマツノザイセンチュウを保持していることが確認された。また,放虫試験によりマツノマダラカミキリは,ドイツトウヒを比較的好んで後食することも確認された。今後,ドイツトウヒとマツノザイセンチュウ,マツノマダラカミキリの関係,マツ類被害拡大に及ぼすドイツトウヒの影響など確認する必要があるのではないかと思われる。
  • 秋本 正信
    セッションID: P4009
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1.はじめに 1988年、北海道北部の中川町で葉ぶくれ症状を示すケヤマハンノキを発見し、その原因解明の過程で葉の病変部に線虫が生息することを知った。2002年には、函館市で局部黄変症状を示すブナの病葉から線虫が分離された。その後、葉ぶくれ、変色などの症状を示すその他数種の広葉樹の葉から相次いで線虫が分離された。イチゴ、キクなど多くの草本植物が線虫の寄生によって葉に病変を生じることは、「葉枯線虫病」としてよく知られている。一方、樹木では、葉の病変と線虫との関係についての記録は見当たらず、今回の発見は新知見と考えられる。ここでは、予備的な試験・観察結果について報告する。2.方法                  線虫の存否の確認:地上高1_から_2mの位置から採取した病葉の徒手切片を作成し、顕微鏡で葉組織内の線虫の存否を調べた。同時に、病葉片を時計皿の水に浮かべ、線虫遊出の有無を実体顕微鏡で調べた。 病葉の組織学的観察:病変部と健全部の境界部分を含む病葉横断面の氷結ミクロトーム切片を作成し、葉組織の変化と組織内の線虫を観察した。 線虫の分離・同定と増殖:病葉片から時計皿の水中に遊出した線虫を一頭ずつ毛筆の毛先ですくい上げ、形態観察のためのプレパラート作成、増殖試験に用いた。線虫増殖試験ではBotrytis菌培養シャーレに殺菌水を滴下し、水滴中に200頭の生線虫を接種して20℃に保持した。 なお、組織学的観察、線虫の分離、増殖試験はブナ、ミヤマハンノキ、アサダについてのみ行った。3.結果 (1)線虫が分離された樹種と病徴  これまでに線虫が分離された樹種はカバノキ科のケヤマハンノキ(植栽木)、ミヤマハンノキ(天然木)、アサダ(天然木)およびブナ科ブナ属のブナ(植栽、天然木)、ムラサキブナ(植栽木)、セイヨウブナ(植栽木)の計6種である。これらのうち、ブナは函館市、松前町などブナが自生する渡島半島各地で発見された。一方、ミヤマハンノキとアサダは函館市近郊の七飯町、ムラサキブナは函館市、セイヨウブナは札幌市、ケヤマハンノキは中川町の各1カ所だけで発見されている。 病徴の経過観察は不十分であるが、各樹種共通の病徴は、葉の部分的な肥厚と肥厚部の退色_から_黄変である。ケヤマハンノキ以外の樹種では、病変部はしばしば側脈に区切られ、細長い形で側脈間に生じることが多い。特に、ブナ、セイヨウブナは側脈に区切られた病変部の鮮やかな黄変が特徴的である。一方、ケヤマハンノキでは葉脈に区切られることなく小さな葉ぶくれが多数生じ、葉ぶくれ部分に対応する葉裏の葉脈が肥大する点で他の樹種と異なった。 なお、肉眼的には病変部に昆虫の食痕などの傷害は認められなかった。   (2)病葉の組織学的観察  葉の病変部断面の健全部に対する厚さの比はミヤマハンノキで約4.6、アサダで約3.3、ブナで約3.1であり、ミヤマハンノキは他樹種より葉の肥厚程度が大きかった(写真-1)。病変部の肥厚は、各葉組織の細胞の肥大と海綿状組織の細胞間隙の増加によるものであり、細胞数の増加によるものではなかった。また、葉の肥厚部には多数の線虫が認められた(写真-2)が、健全部には線虫はまったく認められなかった。 (3)線虫の同定と増殖  形態観察の結果、ブナ、ミヤマハンノキ、アサダから分離された線虫はTylenchida目の同一種であることが判明した(元森林総合研究所真宮靖治博士による同定)が、標本数、標本状態が不十分だったこともあり、目レベルの同定にとどまった。また、線虫は培養2ヶ月後にも増殖はみられなかった。
  • 渡邉 章乃, 上田 奈実, 矢口 行雄
    セッションID: P4010
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1. はじめに2002年渡邉らは本大会において、常緑および落葉広葉樹8種の葉から葉面菌および内生菌の分離を行った結果、それぞれ特徴ある菌類が分離されたことを報告した。すなわち葉面菌ではAlternaria属、Cladosporium属、Microsphaeropsis属、Pestalotiopsis属の4属菌が高頻度に分離され、また内生菌ではPhyllosticta属、Phomopsis属、Glomerella cingulataの3属菌が高頻度に分離された。特にG.cingulataPhyllosticta属は、葉面ではほとんど分離されず、代表的な内生菌であることがわかった。そこで本報告は、常緑広葉樹4種の葉の成長と内生菌との関係について解明するため、当年生葉と1年生葉を経時的に採取し、内生菌の分離、同定を行い、さらに季節的変動についての調査を行った。2. 方 法東京農業大学世田谷キャンパス内にある常緑広葉樹、トウネズミモチ、サンゴジュ、キョウチクトウ、ヤマモモの4種の当年生および1年生葉を供試した。当年生葉は、新葉が展開した2003年4-11月まで、1年生葉は同年3-11月までの間、2週間に1回、葉を経時的に採取した。その後、当年生葉においては葉柄を除く葉の先端から基部までの葉身および葉幅を計測し、葉面積(葉身長と葉幅長の積を2/3倍, Shimwell,1971)を求めた。葉の計測は、2003年4-8月まで行った。採取および計測後、直ちに直径1cmのコルクボーラーでくり抜き、葉ディスクを作製し、70%エタノール30秒→1%次亜塩素酸ナトリウム水溶液1分→70%エタノール30秒→滅菌水30秒で表面殺菌処理を行った。その後、葉ディスク3枚を葉の表面にPDA培地が接するように置床し、室温下で3週間の培養を行った。発生した菌類は、分離、同定し発生率を求めた(発生したディスク数 / ディスク数×100)。3. 結果および考察1)当年生および1年生葉から分離された内生菌常緑広葉樹4種の当年生および1年生葉から分離された菌類を同定した結果、全調査期間に当年生葉で306ディスクから17属菌が分離でき、1年生葉では704ディスクから14属の菌類が分離、同定できた。すなわち当年生葉が1年生葉に成長するに従い内生菌は増加傾向を示すことがわかった。分離した菌を同定した結果、当年生および1年生葉ではほぼ同様にPhyllosticta属、Phomopsis属、G. cingulataの順に高頻度で分離された。これは2002年に同様な調査を行った渡邉ら(2002)の報告に類似した。このことからPhyllosticta属、Phomopsis属、G. cingulataの3属菌は、常緑広葉樹4種の当年生および1年生葉における代表的な内生菌であることが示唆された。    2)葉の成長と内生菌の関係 当年生葉の成長と内生菌との関係を検討するため、常緑広葉樹4種の新葉展開後から葉面積を調査した結果、新葉から成葉に成長する期間は樹種によって差がみられた。すなわちキョウチクトウとヤマモモでは約30日であり、これに対してトウネズミモチとサンゴジュでは、約60日であった。新田(1995)は、常緑広葉樹8種において2_から_6週間で葉の成長は完了すると報告し、本実験の結果もこれに類似した。 次に葉の成長と内生菌の発生について調査した結果、新葉から葉の成長がほぼ止まる間の成長期には、内生菌の発生は低く、葉が成長するに従い内生菌の発生は増加した。すなわち成長期には、葉面からの感染が低いことが示唆された。 3)異なる葉齢における内生菌3属の季節的変動当年生および1年生葉で高頻度に分離されたPhyllosticta属、Phomopsis属、G. cingulataの季節的変動を調査した結果、トウネズミモチとキョウチクトウでは、新葉が展開した4月の早い時期から発生がみられたのに対して、サンゴジュとヤマモモでは7月頃から発生し、樹種により新葉展開後の内生菌の発生時期が異なった。さらに、トウネズミモチとサンゴジュでは、当年生および1年生葉において3属菌の発生がほぼ同様にみられたのに対して、キョウチクトウとヤマモモでは、葉の成長に伴いPhyllosticta属菌の発生が顕著にみられた。以上の結果より、常緑広葉樹4種の葉における内生菌の発生を当年生および1年生葉に分けて調査した結果、明らかに樹種により新葉展開後の内生菌の発生時期が異なり、さらに内生菌の中でも樹種により優占的に発生する菌が異なることがわかった。
  • 淺田 慶子, 松田 陽介, 伊藤 進一郎
    セッションID: P4011
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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  • 植栽後7年間および40年目の調査結果
    浜 武人, 太田 祐子
    セッションID: P4012
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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  • 栗原 怜子, 松下 範久, 鈴木 和夫
    セッションID: P4013
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1、目的
    ならたけ病の病原菌であるナラタケ属菌は、わが国に11種存在することが確認されている。近年、種ごとに生理生態的特徴が異なることが明らかにされつつあり、ならたけ病やナラタケ属菌に関する研究を行う上で、種の同定は欠かせないものとなっている。ナラタケ属菌の種の同定は、既知種と未同定種の単相菌糸間の交配試験により行われている。しかし、ナラタケ属菌は人工培養基上に子実体を形成することがまれであるため、同定したい菌株の単相菌糸が得られない場合が多い。これまでに、シイタケやヒラタケにおいて、界面活性剤を培地に添加することにより、子実体形成や菌糸成長が促進されることが報告されている。そこで、本研究ではナラタケ属菌の子実体形成方法を確立するために、ナラタケ属菌の菌糸成長に及ぼす界面活性剤の影響について検討を加えた。
    2、方法
    実験には、Armillaria gallica、A. mellea、A. ostoyaeの3種各1菌株を用いた。界面活性剤を添加したMYG平板培地に各供試菌株の培養菌糸体を接種し、23℃で3週間培養した後、菌叢の形態観察を行った。界面活性剤は、サポニン、SDS、Triton X、Tween 40、Tween 80を用い、添加量は0.1、1、5%とした。次に、サポニン、SDS、Triton X、Tween 40、Tween 80をそれぞれ5%添加した大麦_-_鋸屑培地にA. gallica、A. ostoyaeの培養菌糸体を接種し、23℃で4週間培養した後、培地中のエルゴステロール量を測定した。また、Tween 80を5%添加した大麦_-_鋸屑培地に各供試菌株の培養菌糸を接種し、23℃で1、2、3、4週間培養した後、培地中のエルゴステロール量を測定した。
    3、結果と考察
    界面活性剤を添加したMYG平板培地を用いて培養を行い,菌叢の形態観察を行った。その結果、Tween 80を5%添加することにより、すべての菌株において気中菌糸の減少が認められ、A. ostoyaeにおいては根状菌糸束の増加が観察された。
    次に、ナラタケ属菌において子実体形成が報告されている大麦_-_鋸屑培地を用いて、菌糸成長に及ぼす界面活性剤の影響を調査した。サポニン、SDS、Triton X、Tween 40、Tween 80のいずれかを添加した大麦_-_鋸屑培地を用いてA. gallicaおよびA. melleaの培養を行った結果、サポニン、Tween 40、Tween 80を添加した培地において、菌糸成長の促進が観察された。しかし、Triton X添加培地においては菌糸成長の抑制が観察され、SDS添加培地においては菌糸成長が認められなかった。Tween 80を5%添加した大麦_-_鋸屑培地を用いて菌糸成長量を調査した結果、供試3菌株において培養1週間後から、培地中のエルゴステロール量が有意に増加し、培養4週間後ではA. gallicaでは2倍、A. melleaA. ostoyaeでは1.5倍にも増加した。
    以上の結果から、大麦_-_鋸屑培地へのTween 80の添加は、ナラタケ属菌類の菌糸体の培養に有効であることが示唆された。
  • 土佐 珠江, 松下 範久, 鈴木 和夫
    セッションID: P4014
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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  • 長谷川 絵里
    セッションID: P4015
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    サクラの衰弱・枯死に伴い発生するナラタケモドキの感染方法を解明するため,つくば市内の3つのサクラ並木において子実体および菌糸膜を採取し,分離菌株の対峙培養を行い,ジェネットの分布を調べた。その結果,3調査地において,それぞれ5,8,6のジェネットが識別された。並木上に連続して発生する子実体群は同一のジェネットと識別され,無性的な感染方法によるものと考えられた。同一ジェネットがほぼ連続して発生する場合の寄主間の最大長さは104mであった。あるジェネットが他のジェネットに入り込んでいる場合の感染方法は胞子感染と考えられた。胞子感染を助長する要因として,草刈り機による下刈り時のサクラ樹幹への傷付けが推測された。
  • 小林 元, 鍜治 清弘, 中井 武司, 岡野 哲郎
    セッションID: P4016
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1.はじめに カラマツはトドマツに次ぐ北海道の主要造林木であり、十勝地方を主な生産地の一つとする。九州大学北海道演習林においては、カラマツ林はおよそ1,000 haと、全人工林面積の8割近くを占める。カラマツは材質腐朽菌への感染に弱いことから、高齢林分においては、生立木の腐朽が懸念される。九州大学北海道演習林の53年生カラマツ林においても、皆伐跡地のおよそ4割の伐根に根株の腐朽が見られた(小林ら、2003a)。本研究では、23年生から54年生までの林分で根株腐朽木の発生を調べ、加齢による立木腐朽の進行について検討した。2.材料と方法 北海道足寄郡足寄町にある、九州大学北海道演習林を対象とした。本演習林においてはカラマツの伐期齢を40年生以上に設定しており、主伐までに切り捨て間伐を2回(9年生、15年生)、生産間伐を3回(24年生、31年生、38年生)行っている(小林ら、2003b)。本研究においては、伐採本数が100本を越える生産間伐林分を対象として、間伐跡地の伐根における根株腐朽の有無を調べた。原則として各林分において全体の2割以上の伐根を調査するようにした。また、50年生以上の林分については皆伐林分を対象とした。調査林分数は、23-24年生が5林分、31-32年生が5林分、37-39年生が6林分、53-54年生林分が3林分で、調査は2002年から2003年にかけて行った。また、32年生および54年生の一部の林分では、伐倒した腐朽木の幹を根本からおよそ0.3 mの間隔で玉切りして、樹幹のどの高さまで腐朽が進入しているか調べた。3.結果と考察 表-1に根株腐朽木の割合を林齢別に示した。腐朽木の割合は、23年生から39年生までの林分では6.8%_から_13.3%と少なかったが、53-54年生の林分では41.9%と多かった。各林齢とも腐朽木の割合には大きなばらつきが見られた。 図-1に根株における腐朽径と樹幹部における最大腐朽高との関係を示した。樹幹部の最大腐朽高は、根株の腐朽径が大きくなるにつれて高くなった(r = 0.327,p < 0.01,n = 83)。また、最大腐朽高は54年生林分が、32年生林分より高く、54年生林分では腐朽高が根株腐朽径の10倍を越えるものも見られた。 以上の結果をまとめると、間伐林分と皆伐林分の比較からは、標本抽出の方法が異なるためにはっきりと結論することは出来ないが、本演習林においてはカラマツの立木腐朽は40年生以降に大きく進行している可能性が示唆される。今後、カラマツ林の長伐期施業を行う上で、このことについての充分な配慮が必要となろう。引用文献小林 元・鍜治清弘・馬渕哲也・岡野哲郎(2003a)九州大学北海道演習林の53年生カラマツ林における心腐れの状況.日林北支論51:79-81.小林 元・鍜治清弘・馬渕哲也・岡野哲郎(2003b)九州大学北海道演習林におけるカラマツ林作業と高齢林分における心腐れの状況.森林保護289:2-3.
  • 徳田 佐和子
    セッションID: P4017
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    エゾシカの角こすり被害を受けた25年生アカエゾマツ造林木16本を伐倒し、損傷の状況と樹幹腐朽の進行程度について調査した。受傷後1年未満の1本を除く15本すべてが角こすりによる損傷部から腐朽していた。樹幹上方向への腐朽は損傷部から最大2.6m進んでいた。15本中10本の腐朽材からSpiniger属菌が分離されたが、これらは菌叢および分生子の特徴からレンガタケの無性世代と同定された。
  • 山口 岳広
    セッションID: P4018
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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     モミ類の白色腐朽菌でトドマツ溝腐病を引き起こすモミサルノコシカケ(Phellinus hartigii)をトドマツに人工接種し、トドマツ溝腐病の発生・拡大と辺材腐朽の被害進展を調査した。
     シイタケ用種駒材に培養した菌を接種源として1993年5月、20年生のトドマツに接種を行った。接種後、毎年外部病徴である樹皮の病斑の有無と大きさ外観から調査した。接種9年後の2002年5月に接種木5本対照木1本を伐倒し腐朽の進展長および腐朽体積を求めた。腐朽材から火炎滅菌法により再分離を行った。モミサルノコシカケ接種木には早いものでは接種3年目から病斑が発生し接種9年後の病斑の軸方向の長さの平均は68.6cmであった。
     トドマツに接種したモミサルノコシカケは,トドマツ5本に接種した32箇所の接種点のうち20箇所から腐朽が進展し、腐朽の軸上下方向における平均進展距離は9年間で102.8cm、算出された腐朽材積量の平均値は81.5cm3 であった。これらの平均値から軸方向の年平均腐朽進展長は11.4cm、年平均腐朽増加量は75.7cm3と算出された。なお、対照木には腐朽は生じなかった。
     病斑長および病班面積と腐朽進展長との間には有意な正の相関があった。また病斑面積と腐朽材積の間にもそれぞれ正の相関があったが、病班長と腐朽材積の間には有意な相関は見られなかった。材の腐朽が腐朽が見られた20箇所の接種点のうち、17箇所の腐朽材からは接種したモミサルノコシカケが再分離された。
     この実験はモミサルノコシカケを人工的に接種しトドマツ溝腐病を再現することに成功した初めての報告であり、これによってモミサルノコシカケがトドマツ溝腐病の病原菌であることを病理学的に初めて立証することができた。腐朽進展長および腐朽材積はそれぞれの個体および接種個所によって非常にばらつきが大きいが、これは腐朽菌を接種後材部に定着進展するまでの時間がまちまちであることが考えられる。また、外部病徴である病班(溝)が早い例で接種後3年ほど経過して出現することから、モミサルノコシカケは接種後辺材部から進展し、やがて形成層に達していくのではないかと考えられる。病斑長および病班面積と腐朽進展長・腐朽材積との間には有意な正の相関があることから、外部病徴である病斑の大きさから腐朽材積を推定できる可能性が示された。
  • 清水 淳子, 谷本 丈夫, 林 康夫, 福田 廣一
    セッションID: P4019
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1.目的
    日光街道桜並木(以下桜並木)は宇都宮市上戸祭町から今市市山口までの総延長16kmにわたって植栽されているヤマザクラ(以下サクラ)の並木である.植栽後50年を過ぎた現在,材質腐朽病害が多発しており,突然の幹折れ・枝折れが人に被害を及ぼすため,腐朽病害の防除対策が必要である.しかし緑化樹木の腐朽病害研究例は少ない.また,腐朽菌は樹木の生育状態,環境条件により分布に差が生じるため,まず腐朽菌を同定し,その生態を把握することが必要である.
    そこで本研究では,桜並木のうち宇都宮市内1105本のサクラにおいて材質腐朽病害の菌類相およびサクラの植裁環境を調査した.これらの結果から桜並木における腐朽菌の分布に及ぼす植裁環境の影響を検討した.
    2.方法
    サクラ生立木から発生した木材腐朽菌を対象にサクラの個体別に調査を行った.野外観察は5/24_から_7/17,9/4_から_10/10,10/17_から_11/23の3回にわたり,調査項目は1.菌類相調査_丸1_種の同定_丸2_樹木個体内の発生位置,2.サクラの生育環境調査_丸1_サクラの根の露出・傷,枝・幹の車両衝突傷,剪定の後も残された枝(残枝),コスカシバ傷害についてその有無の記録_丸2_サクラ各個体の生育する並木敷形態区分(8区分),_丸3_周囲の土地利用形態区分(オープンエリア・林地・人工構造物の3区分)を行った.
    3. 結果
    腐朽菌出現種数は49種,その内訳は根株腐朽菌7属7種,樹幹腐朽菌33属42種であり,またその本数被害率(以下 被害率)はそれぞれ46.2%,6.2%,43.3%で,樹幹腐朽菌が根株腐朽菌に比べ,種数・量ともに多かった.
    最も被害率の高かった樹幹腐朽菌はカワラタケ(18.8%),根株腐朽菌ではベッコウタケ(5.2%)であった.被害率上位9種の菌について,子実体発生部位を被害本数の多い順に図1に示す.樹幹腐朽菌では枝での発生が,根株腐朽菌では根元での発生が多かったが,例外的にコフキサルノコシカケは樹幹腐朽菌にもかかわらず根元での発生が多かった.さらに,ベッコウタケの発生率は根の露出や傷の有無により有意な差がなかった.樹幹腐朽の発生率は枝・幹の車両衝突傷,剪定痕の残枝,コスカシバ傷害の有無により有意な差があった.ベッコウタケは車道と並木を挟んで水路が存在する並木敷での被害率が高かった.樹幹腐朽は,オープンエリアにおける被害率が高かった.
    4.考察
    ベッコウタケの侵入門戸は地上部の露出根ではなく,土壌中根系部にある可能性が示唆された.ベッコウタケなど根株腐朽の発生は土壌や水分との関係が極めて密接である.そのため,水路のある並木敷で被害率が高かった理由として,土留めの石垣から土壌へ水が漏水し,加湿になった土壌中で根が枯死している可能性が考えられる.
    樹幹腐朽菌がオープンエリアに多く出現した明確な理由は分からなかった.また,枝・幹の車両衝突傷,剪定痕の残枝のあるサクラで被害率が高かったこと,残枝部分に多くの腐朽菌の発生が確認できたことなどから,車両衝突傷や剪定傷害が腐朽菌の侵入門戸となることが示唆された.
  • 亀山 統一
    セッションID: P4020
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
    会議録・要旨集 フリー
     琉球列島の純マングローブ構成樹種のうち、枝枯れなど幹枝の壊死を示す病害は、メヒルギにおいてしか報告されていない。しかし、マングローブにおいて、とくに林縁部の個体や孤立木には、強いストレスを受け樹冠の変形などにいたる枝枯れ症状を呈するものも少なくない。その要因として、風波・落雷や動物による損傷・食害、漂着物による被陰などのみならず、病原微生物の関与も推測される。そこで、琉球列島の主要なマングローブ植物のうち、メヒルギとニッパヤシを除き、オヒルギBruguiera gymnorrhiza(ヒルギ科)、ヤエヤマヒルギ Rhizo-phora stylosa (ヒルギ科)、ヒルギダマシ Avicennia marina (クマツヅラ科)、ヒルギモドキ Lumnitzera racemosa(シクンシ科)、マヤプシキ Sonneratia alba (マヤプシキ科)の5樹種を対象として、病害調査を行った。 石垣島と西表島を調査地とし。石垣島では2002年7月_から_2003年3月に計4ヶ所(名蔵アンパル、宮良川、吹通川、底地川)、西表島では2002年7月_から_2003年10月に西表島で計7ヶ所(浦内川、星立、船浦川、美原、後良川、前良川、仲間川)のマングローブを調査地とした。干潮時に林内を流路沿いに歩行し、5樹種について病徴を探索し、衰弱・枯死した枝を採集した。得られた試料は、流水洗浄してから滅菌刀で小片に切り出し、アンチホルミン-エタノール系で表面殺菌後、平板培地に静置し、菌を分離した。培地としては、1/2濃度に希釈したPDA培地、および1.8%人工海水・0.15_%_MA培地に静置した。後者は、メヒルギ枝枯病菌などPDAでの生育のよくない菌類の分離を意図して用いたものである。伸長した菌叢を形態により類別し、樹種名の頭文字によりRs, Lr, Am, Saに番号を加えたものを菌株記号とした。分離率の高かった菌株を用いて、接種試験を行った。2003年5月に西表島美原(マヤプシキ)および船浦(他の樹種)にて、健全な宿主個体を選定し、その若枝の節間に、PDAによる培養菌叢を付傷接種(10反復)した。対照区として培地のみを接種した。病原性を示した菌株の同定など検討を進めた。 その結果、オヒルギを除く4樹種全てに病害と思われるシュートの枯死症状を見いだした。いずれの樹種の症状も、各調査地において多くの個体上に観察された。枝組織からの菌分離試験により、ヤエヤマヒルギについては1種類の菌Rs-1が高率で分離された。ヒルギモドキ、ヒルギダマシ、マヤプシキでは、それぞれ菌叢の形態の異なる数種類の菌が、比較的高率で分離された。そこで、これら4樹種について、それぞれ1,6,7,6種類の菌株を用いて接種試験を行ったところ、各樹種で病原性の疑われる菌株の存在が示された。一部の供試菌株では自然病徴が再現された。病原性が示唆された菌株の一部は培地上で分生子を形成し、そのうち、ヤエヤマヒルギに病原性の菌株はPhomopsisに、ヒルギモドキに病原性の菌株はPestalotiopsisに所属するものと思われた。病原性が示唆された菌株については、培地上での性質や、接種試験などの検討をさらに進めた。
  • 河辺 祐嗣, 小野里 光
    セッションID: P4021
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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  • 各種針葉樹雄花における菌類相の比較
    窪野 高徳, 市原  優
    セッションID: P4022
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    黒点枝枯病菌(Stromatinia cryptomeriae)はスギ,ヒノキ及びコノテガシワの各雄花を侵入部位としていることから,本菌の特異な感染戦略が指摘された。そこで,スギ,ヒノキ及びコノテガシワの雄花から菌類を分離し,各樹種における雄花生息性菌類を明らかにするとともに,本菌がどの様な菌類と競合しているかを検討した。その結果,3樹種の雄花に生息する菌類には季節を通して大きな変化はなく,Pestalotiopsis sp. ,Epicoccum sp.及びCladosporium sp.が普遍的に雄花に生息する菌類であることが判明した。また,黒点枝枯病菌は,Pestalotiopsis sp.,Epicoccum sp.及びCladosporium sp.と共存し,特に,花粉飛散中及び終了後の雄花内において,旺盛に増殖することが推察された。
  • 木本 真衣, 矢田 豊, 伊藤 進一郎
    セッションID: P4023
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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育種
  • 能勢 美峰
    セッションID: P4024
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    カラマツ(ニホンカラマツ;Larix kaempferi)は中部山岳地帯を中心に分布ており、その天然分布地域から約300km離れた宮城県蔵王山系馬ノ神岳にはカラマツ(以下、ザオウカラマツとする)が12個体存在している。ザオウカラマツは外部形態的にはグイマツに類似しており、他の地域のニホンカラマツとは遺伝的に異なっている。現在、ザオウカラマツの個体数の減少が報告されており、遺伝資源保存が求められている。本研究ではニホンカラマツとザオウカラマツの識別を確実に行うため、試料197個体(ザオウカラマツ15、ニホンカラマツ182)を用いてSCARマーカーの開発を試みた。RAPD分析で得られた13組のプライマー対のうち3組がザオウカラマツに特異的なSCARマーカーであったが、それらはどれも完全なものではなかった。しかし3個全てのSCARマーカーを使用することで判別が可能になることがわかった。これにより遺伝的に貴重なザオウカラマツの遺伝資源の現地保存を行う際に、ニホンカラマツの汚染個体の混入を防ぐことができると考えられる。
  • 草野 僚一, 家入 龍二, 森口 喜成, 松本 麻子, 高橋 友和, 谷 尚樹, 津村 義彦
    セッションID: P4025
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
    会議録・要旨集 フリー
  • 矢本 智之, 松本 麻子, 津村 義彦
    セッションID: P4026
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに
    日本三大美林のひとつである青森県のヒバ(Thujopsis dolabrata Sieb. et Zucc.)は、強度・耐腐朽性・耐蟻性等に優れ、材価もスギより高いことから、本県林業において重要な樹種であり、ここ数年人工造林が増加している。それに伴いヒバの種苗の需要も増加しているが、現在ヒバ種子は、伐採木から球果採取を行うことによって確保されているという状況にある。さらに、ヒバには球果の着生に豊凶年があるため、毎年必要な種子量を確保することが困難である。これらの問題解決に向けて、当試験場では、採種園の造成や優良個体の選抜に関する研究を行っているが、採種園造成においては構成クローンの管理がたいへん重要になる。そこで、比較的簡易で確実な方法を用いてクローン識別を行うことを目的として、DNAマーカーの利用を検討した。近年、林木において様々なDNAマーカーの開発が進められており、マーカーの種類によっては、開発種以外の近縁種でも利用可能である。針葉樹では、スギのEST(Expressed Sequence Tag)情報から設計されたSTS(Sequence Tagged Site)プライマー(Iwata et al. 2001)をヒノキに適用したところ、約3割のプライマーが適用可能であると報告されている(松本ら, 2002)。本研究では、ヒノキの近縁種であるヒバにスギSTSプライマーを適用し、CAPSマーカーの開発とクローン識別の可能性について検討したので報告する。
    材料と方法
    STSプライマーのスクリーニングには、林木育種センター東北育種場内の育種素材保存園に植栽されているヒバ精英樹'青森1号'および'今別15号'、森林総合研究所樹木園に植栽されているヒバ1個体、対照としてヒノキ精英樹1個体の計4個体を用いた。採取したヒバの新葉から、改変CTAB法およびDNeasy Plant Mini Kit(Quiagen)を用いてDNAを抽出した。
    PCR反応条件はアニーリング温度を50℃、55℃、60℃の3段階設定し、MgCl2 2.0mMで熱変性94℃/1分、アニーリング1分、伸長反応72℃/1分30秒、40サイクルとした。続いて、ヒバでシングルフラグメントが増幅されたSTSプライマーを用い、16種のヒバ採種園の構成クローンをパネルとしてCAPSマーカーの開発を行った。14種類の制限酵素(表1)でPCR産物を処理し、2%アガロースで電気泳動して多型パターンを検出した(CAPS)。
    結果と考察
    STSプライマー589組のスクリーニングを行った結果、アニーリング温度50℃では12組、55℃では52組、60℃では45組、合計109組のプライマー(18.2%)においてシングルフラグメントの増幅が確認された。ヒノキではスギのSTSプライマーのうちの約3割が直接利用できるという報告があることから、ヒノキと比較してヒバでは適用可能なプライマー組数が少ない結果となった。しかしながら、アニーリング温度を微調整したり、さらに高い温度を設定することによって、利用可能なプライマー数を増やすことが可能である。マーカー開発としては、これまでのところ19組のプライマーで制限酵素処理が終了しており、5組合せ(CC0682:Rsa_I_, CC0682:Hha_I_, CC0790:Hae_II_, CC2716:Alu_I_, CC2920:Hha_I_)で多型が検出された。まだ途中ではあるが、ヒノキでは28種類の制限酵素を用いているのに対し(松本ら, 2002)、本研究ではその半数の酵素種でマーカーが開発できたことになる。このことからも、スギSTSプライマーのヒバへの適用は有効であると考えられる。今後も引き続きマーカーの開発を行うと共に、それらのマーカーを利用してクローン識別をする予定である。
    引用文献
    Iwata H, Ujino-Ihara T, Yoshimura K, Nagasaka K, Mukai Y, Tsumura Y (2001) Cleaved amplified polymorphic sequence markers in sugi, Cryptomeria japonica D. Don, and their location on a linkage map. Theor Appl Genet 103:881-895
    松本麻子・中尾有里・戸丸信弘・近藤禎二・岡村政則・津村義彦・長坂壽俊 (2002) AFLP,CAPSおよびSSRマーカーによるヒノキ連鎖地図. 113回日林学術講:642.
  • 黄 発新, 白石 進, アントニウス ウィドヤトモコ, 張 変香
    セッションID: P4027
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    現在、アカシア属樹種は東南アジアを中心として植林が盛んに行われており、主に紙の原料として使われている。樹種では特にA. manguimとA. auriculiformisの種間雑種(ハイブリッド&middot;アカシア)は自然交雑種であり、成長および木材特性が極めて優れていることから、雑種集団から優良個体の選抜など育種的試みも行われている。しかし、自然林分からこのような自然交雑個体を選び出すことは必ずしも容易ではない。今回の研究では、A. manguimとA. auriculiformisに種特異的に出現するRAPDフラグメントのスクリーニングとそのSCARマーカー化を行った。144 RAPD+spプライマーを用い、一次、二次、三次スクリーニングを行った。その結果、種特異的なフラグメントがA. manguim で35本、A. auriculiformisで 29本得られた。特異的フラグメントの内、A. manguim 30本、A. auriculiformis 26本の塩基配列を調べて、それぞれ21個のSCARプライマー対を設計した。A. manguim に特異的SCARマーカー9個、A. auriculiformisに特異的SCARマーカー8個を開発した。今後、本研究で開発したA. manguimとA. auriculiformisに種特異的SCARマーカーを有効に活用することにより、アカシア雑種個体を容易かつ確実に選抜できることから、本マーカーはハイブリッド&middot;アカシアのクローン林業の発展に貢献するものと思われる。
  • 山田 浩雄, 生方 正俊
    セッションID: P4029
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    スダジイとコジイおよびその中間タイプの形態的な違いが,どの程度,遺伝的な違いを反映しているかを調べるため,6つのマイクロサテライトマーカー(SSR)を用いた解析を行った。UPGMA法による各タイプ間のFstによるクラスター分析の結果,コジイタイプとスダジイタイプは,高い確率で異なるクラスターに分けられ,スダジイとコジイの形態的な違いは,遺伝的な違いを反映していることが示唆された。
  • 伊部 貴行, 生方 正俊, 河原 輝彦
    セッションID: P4030
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
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    1. はじめに ミズナラ(Quercus mongolica var. grosseserrata)は、南限は九州の高隈山から、北限は千島の南部まで、温帯・冷温帯に広く分布する、日本を代表する落葉広葉樹の一つである。植物にとって繁殖特性は、集団の遺伝構造や地理的な変異を決定する最も重要な要因の一つである。植物の繁殖の過程には花粉の生産、移動、受粉、受精、種子の生産・移動まで様々な段階がある。本研究ではこの中で特に花粉の移動に着目し、ミズナラ天然林での交配実態をマイクロサテライト(SSR)マーカーを用いて、明らかにすることを目的とした。2. 調査地と調査方法 調査地は日光国立公園内、西ノ湖湖畔のミズナラを主体とした天然林内とした。この天然林内に設置されたシカ防護柵内に250m×150mの調査区を設定した。調査区内のほぼ中央に位置する林冠木(No.8)を中心にして20m×20mのサブプロットを設定した。シカ柵は4年前より設置されており、ミズナラの稚樹も回復傾向にある。 調査区内の林冠木集団35個体とサブプロット内の中央部の8m×12mからランダムに選んだ稚樹集団122個体から健全な成葉を採取し、全DNAを抽出した。ヨーロッパのコナラ属樹種で開発され(Kampfer et al.1998)、ミズナラで有効性が確認された(星ら、2003)5種類のSSRプライマーを用いてDNAを増幅し、シークエンサー(ABI社製PRISM3100Genetic Analyzer)と付属のソフト(genotyper)を用いて遺伝子型を決定した。この遺伝子型から、解析ソフトServus 2.0 (Marshall et al.、1998)を用いて集団ごとに解析を行った。また、プロット内の稚樹は、サンプル採取時に樹高を測定し、芽鱗痕の数から樹齢を推定した。 3. 結果 5遺伝子座で両集団それぞれ64個および68個の対立遺伝子が推定された。なお、ssrQrZAG87遺伝子座でNo.8個体はホモ接合と推定された。しかし、稚樹集団のヌル遺伝子の推定頻度がこの遺伝子座のみで著しく高かったため、No.8個体はヌル遺伝子とのヘテロ接合として花粉親の推定を行った。すべての稚樹のうち、No.8個体が親候補から除外された稚樹は、14.7%だった。残りの85.3%は、No.8が親候補となったので、No.8を雌性親と仮定し、花粉親の特定を行った。調査区内に花粉親候補が存在した稚樹は、17.3%にとどまり、8割以上の稚樹の花粉親候補は、調査区内に存在しなかった。 当年生稚樹の平均樹高は13.3cmであり、測定した稚樹には当年生から2年生まで、樹齢に3年間の開きがあった。樹齢が上がるにつれ平均樹高は増加し個体数は減少した。 稚樹の樹齢別に、両親とも調査区内に存在するグループ(A)、片親のみが存在するグループ(B)および両親とも存在しないグループ(C)に分け、個体数と平均樹高を求めた。各グループの個体数は、A、B、Cそれぞれ19、95、8個体であり、ほとんどが調査区内に片親のみが存在するグループだった。グループ間の樹齢ごとの樹高に有意な差は検出されなかった。また、最も樹齢が高い2年生の稚樹は、7個体と少なかったもののすべて調査区内に片親のみが存在するグループだった。4. 考察 No.8個体樹冠下の8m×12mに存在する稚樹のうち14.7%が、この個体由来の次世代でないと推定された。ミズナラの堅果は、カケスや齧歯類などにより散布されることが知られている(宮木・菊沢、1986)。これら稚樹は、調査区内外から運ばれ、No.8個体樹冠下で発芽したものと考えられる。 調査区内で両親個体が存在する稚樹と片親のみが存在する稚樹の平均樹高には、有意差がなかったが、最も樹齢が高い2年生稚樹は、すべて片親のみが存在するグループだった。両親が存在する稚樹は、両親の個体間距離が短く、片親のみが存在する稚樹は、個体間距離が長いと考えた。個体間距離が短い個体同士は、長いそれに比べると近縁となる確率が高いと考えられる。今回は2年生稚樹が7個体と少なかったが、すべて遠距離個体間交配由来と推定された。樹齢が上がるにつれ、近距離個体間交配由来の稚樹が選択的に消失する可能性も考えられる。 ミズナラにおける多様性の維持機構を明らかにするためには、年次間の交配実態の変動や稚樹のより長期にわたる追跡調査を行い、稚樹の適応度と交配実態との関係を解明する必要がある。
  • 在原 登志男, 齋藤 直彦
    セッションID: P4031
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめに<BR> 福島県のヒノキ林では,枯れ枝の巻き込みまたは枝打ち残枝(死節となる)等を中心として樹脂流出を伴うまたは伴わない樹幹の陥没,さらには樹幹の一部または全体がふくれた樹幹変形木がかなりの割合で発生している。<BR> そこで,海抜高および肥大成長に伴うヒノキの樹幹陥没等変形木の発生状況を調査した。<BR>2.調査方法<BR> 調査は,海抜高が100mから660mに位置する中・浜通りのヒノキ28林分で行った。調査林のうち,高さ0_から_2mにおける枝打ち林は18林分,残り10林分は未枝打ち林であった。林分の林齢は7年_から_75年生,平均胸高直径は5cm_から_43cmで,林分の傾斜は0度_から_50度であった。2002年5月から2003年8月にかけて各林分とも50本の個体を対象として,樹幹下部(0_から_2mの樹幹部)の変形状況を以下の4つに区分した。ほぼ健全木:全く陥没の発生がなくほぼ正円筒形のもの,またはわずかな陥没がある状態で,変形のさほど目立たないもの。一部ふくれ木:陥没の深みが大きく溝状となり,隣接する樹幹の一部がふくれているもの。徳利病木:樹幹下部が全体的にふくれて徳利病の病徴を呈するもの。漏脂病木:樹脂流出を伴って,またはかって伴ったと推定される激しい陥没を生じ,樹幹が不規則に変形して漏脂病の病徴を呈するもの。<BR>3.結果と考察 <BR> 調査した28林分における平均胸高直径とほぼ健全木,一部ふくれ木,徳利病木および漏脂病木の出現割合をを検討した。その結果,ほぼ健全木は肥大成長に伴って出現割合が減少した(R=0.68,P<0.01)。一方,一部ふくれ木は出現割合が増加した(R=0.47,P<0.05)。また,漏脂病木も同様に増加した(R=0.60,P<0.01)。なお,小野町の1林分は,出現割合が62%と極端に高かった。当林は畑作跡地に植栽されたもので,12年生時の平均胸高直径が15cmほどと成長が良好であるため,漏脂病が多発したものと推定される。しかし,徳利病木は肥大成長に伴う出現割合の増減は認めがたく(R=0.32,P>0.05),特定の林分で高い傾向が伺えた。本病は,黒色土壌や膨軟な土壌という特定の立地条件で多発するといわれている 。<BR> 次に,調査24林分(徳利病および漏脂病の発生がなかった4林分を除く)における海抜高と漏脂病木の出現割合を検討した。その結果,漏脂病木は海抜高の上昇に伴い出現割合が増加した(R=0.43,P<0.05)。漏脂病の発生は高海抜地で多発する傾向が既に認められている。<BR> ところで,今回の調査にあたっては,低海抜地での徳利病の発生が漏脂病よりも高い傾向を感じた。そこで,徳利病または漏脂病いずれかの発生がみられた24林分において(漏脂病木の出現割合)_-_(徳利病木の出現割合)を算出し,海抜高ごとに両者の発生状況を検討した。その結果,海抜高がおおむね400m未満の林分(n=12)での両者の発生は,ほとんど差がない(ゼロの値)か,または徳利病が多かった(マイナスの値)。これに対して,400m以上の林分(n=12)では,明らかに漏脂病の出現割合が増加し(プラスの値),海抜高の区分間に差がみられた(P<0.05,t検定)。<BR> 以上の結果から,本県におけるヒノキ林は肥大成長に伴いほぼ健全木が減少し,枯れ枝の巻き込みまたは枝打ち残枝に起因する一部ふくれや漏脂病という樹幹変形木が増加していると考えられた。また,高海抜の林分では,漏脂病の多発する傾向が再確認された。一方,徳利病は特定の立地条件を有する林分で多発するものと推定されるが,特に低海抜の林分においては,漏脂病にも増して発生していると考えられた。<BR>
  • 山田 利博, 大和 万里子, 林 芳武, 中西 友子
    セッションID: P4032
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
    会議録・要旨集 フリー
    水ストレスが、暗色枝枯病菌を接種したスギ苗木の材内病変部の進展に及ぼす影響を中性子ラジオグラフィ法で調べた。2年生スギ実生苗木を鉢植えにし、土壌(バーミキュライト_-_パーライト)水分を調整し、病原菌(強病原力菌株MA7、弱病原力菌株MA21)を有傷接種した。土壌含水率は湿潤区は300%(W/W)、乾燥区は150 %とした。接種1および7日後に苗木に熱中性子線を照射し、イメージングプレートを使用してラジオグラフィ像を得た。接種時の苗木の水ポテンシャルは、乾燥区は平均-1.47MPa、湿潤区は平均-0.71MPaと両者で大幅に異なった。病変部は乾燥区では時間の経過と共に広がる傾向を示したが、湿潤区ではMA7接種を含めほとんど拡大しなかった。接種の1日後では乾燥区と湿潤区との間で病変部の大きさに差異がなかったが、7日後になると顕著な差異が認められ、水ストレス下で病変部の拡大が大きくなることが示された。MA7接種湿潤区よりMA21接種乾燥区の方が病変部が大きく、菌の病原力の違いよりも水ストレスの方が病変部の拡大に及ぼす影響が大きいと考えられた。接種1日後では乾燥区と湿潤区とで菌接種、傷対照の場合とも病変部の大きさに差異がみられなかったことから、水ストレス下で病変部(乾燥帯)が大きくなるのは、接種孔から空気が侵入する物理的な力よりも、菌と宿主との相互作用のためであると考えられた。
  • 栗延 晋
    セッションID: P4033
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/17
    会議録・要旨集 フリー
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