研究の目的 実験1では、5項目の原系列刺激と新奇刺激を1刺激ずつ置換させる訓練により、原系列刺激の有する順序機能が新奇刺激に転移するか否かを検討した。実験2では、順序機能の転移を促進する要因を検討した。参加者 大学生30名。手続き 実験1では、まず参加者(N=10)に5項目の原系列刺激に対する順序反応を訓練した。その後、原系列の5項目のうちの1項目を新奇な刺激に置き換えた5種類の置換系列における順序反応を訓練し、置換した5種類の刺激に対する順序反応がテストされた(第1課題)。その結果、順序機能転移の徴候は認められたが、完全な転移を示した参加者はいなかった。そこで実験2では、実験1と同じ訓練ならびにテスト(第2課題)を異なる刺激を用いて実施した課題反復条件(実験1と同じ参加者)と、課題反復条件の手続きから第1課題のテストのみを除外した訓練反復条件(N=10)、第1課題を実施せず第2課題の置換訓練に先行して全ての新奇刺激を同時に提示する置換刺激先行提示条件(N=10)の3つの条件を設け、順序機能の転移を促進する要因を検討した。行動の指標 5項目および2項目のテスト系列の正系列生成率を指標とした。結果 正系列生成率は課題反復条件、置換刺激先行提示条件、訓練反復条件の順で高く、特に課題反復条件ではほぼ完壁な転移が認められた。結論 新奇刺激に対する順序反応を求める操作が順序機能の転移を促進することが示された。
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