行動分析学研究
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32 巻, 2 号
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論文
  • 富田 悠香, 菅佐原 洋
    2018 年 32 巻 2 号 p. 110-126
    発行日: 2018/02/15
    公開日: 2019/02/15
    ジャーナル フリー

    研究の目的 自閉症スペクトラム障害児に対する、4コマ漫画を使用した感情語表出への支援の有効性を検討することを目的とした。研究計画 非同期型の参加者間多層ベースラインデザインを用いた。場面 指導はA大学の一室で行った。参加者 自閉症スペクトラム障害児4名が参加した。実験Ⅰに2名、実験Ⅱに2名が参加した。介入 介入は、感情語リストと感情語数の口頭でのフィードバックを使用した介入条件1と、感情語リストとグラフによるフィードバックを行った介入条件2の2つの介入を行った。行動の指標 4コマ漫画1ストーリーにおける感情語数を従属変数とした。結果 介入直後のプローブ評価(実験Ⅰ)、および1ヶ月後のフォローアップ評価、般化評価(実験Ⅱ)において、ベースライン評価に比べて感情語の増加が見られた。結論 自閉症スペクトラム障害児に対する感情語表出行動の支援において、4コマ漫画を使用した支援は有効である可能性が示唆された。

実践報告
  • 宮木 秀雄
    2018 年 32 巻 2 号 p. 127-137
    発行日: 2018/02/15
    公開日: 2019/02/15
    ジャーナル フリー

    研究の目的 本研究は、通常学級における朝の会および授業開始時の問題行動に対する相互依存型集団随伴性を用いた介入の効果を検討することを目的とした。研究計画 場面間マルチベースラインデザインとチェンジング・コンディション・デザインを組み合わせて用いた。場面 公立小学校通常学級での朝の会、3時間目、5時間目の各開始時に介入を行った。参加児 公立小学校2年の児童21名であった。介入 トークンエコノミー法を利用した相互依存型集団随伴性による介入を行った。併せて、学級担任による言語的プロンプトと視覚的プロンプトの提示も行った。行動の指標 開始時刻に①教室に戻ってきていない児童数、②自分の席に座っていない児童数、③関係のない物を机の上に出しているまたは手に持っている児童数をそれぞれ学級担任が目視で数え、記録した。結果 介入により、朝の会、3時間目、5時間目の各場面において、教室に戻ってきていない児童、自分の席に座っていない児童、関係のない物を机の上に出しているまたは手に持っている児童の各人数の減少が見られた。結論 通常学級における朝の会および授業開始時の問題行動に対する相互依存型集団随伴性を用いた介入の効果が示された。また、児童と学級担任に対する質問紙調査の結果、介入の社会的妥当性も示された。

  • 岩本 佳世, 野呂 文行
    2018 年 32 巻 2 号 p. 138-152
    発行日: 2018/02/15
    公開日: 2019/02/15
    ジャーナル フリー

    研究の目的 通常学級全体への支援と個別支援との組合せによって、発達障害・知的障害児童を含む学級全児童の学習準備行動に効果が示されるかどうかを検討した。研究計画 3学級で実施した学級間多層ベースラインデザイン。場面 通常学級の漢字テスト場面で実施した。参加者 小学5年生3学級の全児童102名(発達障害・知的障害児童7名を含む)が参加した。独立変数 学習準備行動に対する相互依存型集団随伴性を中核とした介入パッケージ(相互依存型集団随伴性に基づく報酬提示、トゥートリング、自己記録、折れ線グラフフィードバック)。書字困難の見られた発達障害・知的障害児童に対し、相互依存型集団随伴性に基づく介入を導入する前に、個別支援を実施した。集団随伴性に基づく介入で効果が見られない発達障害児童には個人随伴性を組合せた。行動指標 漢字テストが始まるまでに学習準備行動を遂行した児童の割合を従属変数とした。結果 介入条件の導入により、3学級ともに学習準備行動を遂行した児童の割合が増加した。結論 通常学級全体への支援と個別支援との組合せにより、発達障害・知的障害児童を含む学級全児童の学習準備行動は促進された。

解説
  • 丹野 貴行
    2018 年 32 巻 2 号 p. 153-167
    発行日: 2018/02/15
    公開日: 2019/02/15
    ジャーナル フリー

    コピーイストモデルは、強化率を等しくした変動比率スケジュールと変動時隔スケジュールの間の反応率の差(VR-VI反応率差)と、選択行動場面でのマッチング法則の両者を、“反応系列への分化強化”という見方により説明する。本解説論文では、コピーイストモデルの詳細なメカニズム、モデルのシミュレーションがもたらす予測、そしてその概念的示唆を、行動分析学におけるモデル研究の一事例として紹介する。分化強化という単純なモデル(単純性)が、VR-VI反応率差やマッチング法則のデータにいかに適合するか(正確性と一般性)を示す。このモデルの成功は、オペラント条件づけにおける微視的な時間枠と、反応形成の視点から強化を捉えるという2つの概念的示唆をもたらす。Skinner (1950) は『学習理論は必要か?』と題する論文を発表しているものの、こうしたモデル研究を決して否定してはいない。本稿では、コピーイストモデルのようなモデル研究は、行動分析学の発展に資するものであると結論する。

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