行動分析学研究
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一般論文
  • 岸村 厚志, 飛田 伊都子, 米延 策雄, 伊藤 正人
    2023 年 37 巻 2 号 p. 166-181
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル フリー

    研究の目的 スライディングボードを用いて患者をベッドと車椅子間で移乗介助する技術を習得するための教育プログラムの有効性を検討することを目的とした。研究計画 教育プログラムを行う介入群とベースラインを継続する対照群の群間比較を行う実験デザインを採用し、さらに介入群に対してベースライン、介入1、介入2、フォローアップを設けるABCAデザインを用いて個体内比較を行った。場面 専門学校の演習室で行った。参加者 作業療法学を学ぶ学生36名が参加した。介入 ベースラインは適切な移乗介助方法を示すビデオ教材①の視聴、介入1は移乗介助の習得率のフィードバックと習得率上昇時の言語的賞賛、介入2は難易度の高い行動系列を詳細に示したビデオ教材②の視聴、フォローアップはベースラインと同様とした。行動の指標 移乗介助技術の習得率を従属変数とした。結果 移乗介助技術の習得率は、対照群に比べて介入群が高率を示した。結論 移乗介助技術習得において、習得率のスコアフィードバックや言語的賞賛、さらに難易度の高い行動系列を詳細に示したビデオ教材を用いた教育プログラムが有効であることが示された。

  • 島宗 理
    2023 年 37 巻 2 号 p. 182-196
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル フリー

    研究の目的 顔写真の表情を表す英語タクトを訓練することで英語から日本語、英語から英語へのイントラバーバルが直接訓練することなく派生するかどうか検証した。研究計画 英語タクト訓練には見本合わせ課題を用い、訓練前後のテスト得点を参加者内で比較した。場面 参加者は自宅からオンライン実験に参加した。参加者 予備調査には母語が英語である成人5名と母語が日本語である大学生7名、本実験には母語が日本語である大学生21名が参加した。独立変数の操作 顔写真を見本刺激、英単語を比較刺激とする見本合わせ課題で正反応に「○」、誤反応に「×」を提示し、正反応となる英単語も併せて提示した。対象とした刺激クラスは“穏やかな”、“楽しい”、“激怒している”の3つで、刺激クラスごとに見本刺激となる顔写真を5枚、比較刺激となる同義語の英単語を2語ずつ用意した。行動の指標 事前・事後テストにおける正反応数、見本合わせ訓練における正反応率を用いた。結果 大多数の参加者において、見本合わせ課題による英語タクト訓練後、英語から日本語、英語から英語へのイントラバーバルの派生が確認できた。結論 表情を表す英単語のような抽象的で、日本語の単語と一対一対応していない関係反応においても、英語タクト訓練によって英日、英英イントラバーバルが派生すること、これを活用することで語彙学習プログラムを効率化できることが示唆された。

実践報告
  • 河村 優詞
    2023 年 37 巻 2 号 p. 197-204
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル フリー

    研究の目的 ジャンケンをする際に、出した手を相手と同じ手に変更する「ジャンケンエコラリア」を防ぎつつ、複数のジャンケンの手を一定の行動変動性をもって出すことができるよう指導することを目的とした。研究計画 プレチェック、ベースライン、介入、フォローアップの順に実施した。場面 特別支援学級の教室で机を挟んで対面し、個別に実施した。参加児 重度知的障害を伴い、自閉症スペクトラムの診断を受けている6年生男児1名であった。独立変数の操作 Lag 1による強化、「チョキ出して」のような口頭でのプロンプト提示、およびジャンケンエコラリアを指導者が手で押さえて防ぐプロンプトの実施であった。行動の指標 直前1試行、および直前2試行で出した手と異なる手を出した試行の割合を算出した。結果 同じ手を出し続けることなく、かつ反復的な反応とならず、一定の変動性をもって手を出すジャンケンが形成された。また、ジャンケンエコラリアが生じなくなった。結論 ジャンケンの形成に成功し、かつ参加児への指導経験を有する教師は社会的妥当性をおおむね高く評価する傾向があった。ただし、手続きの難度が高いことが原因で教育現場での実施が困難であるケースも存在するだろう。

  • 谷川 雄一, 庭山 和貴
    2023 年 37 巻 2 号 p. 205-215
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル フリー

    研究の目的 本研究では、日本の公立中学校においてSWPBS第1層支援を高い実行度(implementation fidelity)で実施できるのか、またSWPBSの実行度が高まるとともに生徒の問題行動が減少するのか検証することを目的とした。研究計画 AB1B2B3デザインを用いた。場面 公立中学校1校において実施した。参加者 対象校の全ての生徒と教職員が本研究に参加した。介入 生徒の適切な行動に対する教員の言語称賛を増やす取り組みを学年規模で実施した後、同様の取り組みを学校規模へと拡大した。その後、SWPBSの実行度尺度である日本語版Tiered Fidelity Inventory (TFI)に基づいて対象校のSWPBS実行度を定期的に評価し、得点の低い項目に関するSWPBSの推進計画を立案、実行していった。また、校区の小学校・地域とも連携し、地域規模でPBSの取り組みの浸透を図った。行動の指標 全校の1日当たりの問題行動指導件数を生徒100名当たりの件数に直し、これを問題行動発生率とした。結果 介入後はTFIの得点が向上するとともに、学校規模で問題行動の著しい減少が見られた。また対象校が行っていた既存の生徒・保護者アンケートの結果も改善した。結論 実行度の高いSWPBS第1層支援が日本の公立中学校においても実施でき、さらにSWPBS実施後に生徒の問題行動が全校規模で減少することが確認できた。今後は第2・3層支援の導入・システム化が課題であると考えられる。

解説
  • 眞邉 一近
    2023 年 37 巻 2 号 p. 216-234
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル フリー

    行動分析学の基礎分野である実験的行動分析学は、環境要因と行動との関数関係を分析するために、三項随伴性を実験的に操作し、行動の測定を行う。実験室場面で三項随伴性をより統制された状態で実現することが、実験的行動分析学の基本であり、その研究ツールは、三項に対応した弁別体-操作体(オペランダム)-強化子提示装置から構成されるオペラント実験箱(通称スキナーボックス)である。スキナーボックスの制御は、機械的なメカニズムによる反応の検出と自動強化から始まり、電子化、そしてコンピュータ制御へと進化してきた。また、自動的な計測・検知を可能にする新たなテクノロジーを導入しながら、様々な反応トポグラフィーの検討ができるように進化し続けている。これまで、高価なシステムを必要としていた実験が、テクノロジーの発展に伴って安価なシステムで実現できるようになり、より詳細に動物の活動を検出することが出来るようになっている。さらに、テクノロジーの進歩によって検討できる命題もより深化してきた。これらの技術革新は、スキナーの最初の実験箱で始められた行動科学をさらに進展させている。本論文では、スキナーボックスの制御の自動化の歴史と、スキナーの「ハト計画」や「ORCON計画」で開発された装置と、戦後の装置の発展とのつながりや、リアルタイム画像処理やリアルタイム音声認識技術の導入事例を示しながら、スキナーボックスの進化について解説する。最後に、3Dプリンターを用いた装置作成技術の進歩についても紹介する。

  • 中島 定彦
    2023 年 37 巻 2 号 p. 235-247
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル フリー

    行動分析学や学習心理学の教科書でレスポンデント条件づけやオペラント条件づけの基礎について解説される際は、ヒト・サル・イヌ・ネコ・ラット・ハトなどの脊椎動物の実験がしばしば紹介される。しかし、脊椎動物だけでなく、無脊椎動物でも条件づけは生じる。節足動物・環形動物・軟体動物・扁形動物では、条件づけが容易に確認できる。棘皮動物でも、少なくともヒトデは条件づけ可能だと思われる。単細胞生物や海綿動物、刺胞動物では条件づけを確実に示す報告はない。条件づけという学習能力は古生代の始まりであるカンブリア紀に生じ、それがカンブリア爆発の契機の一つとする学説があるが、先カンブリア時代エディアカラ紀に生息していた動物も条件づけによる学習が可能だったのではないだろうか。また、さまざまな動物種にみられる条件づけ能力は、進化の過程で独立に獲得されたのかもしれないが、筆者は共通の祖先種から今日まで引き継がれたものだと考えたい。この場合、条件づけ能力は約6億年(正確には5億5500万年)から受け継がれたものだということになる。

  • 大河内 浩人
    2023 年 37 巻 2 号 p. 248-261
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル フリー

    筆者が長年にわたって大学生を相手に行ってきた実験で遭遇した問題をいかに解決したかを紹介した。取り上げた問題は、(a)多元(multiple)固定比率(FR)低反応率分化強化(DRL)スケジュールの成分間で反応率が分化しない、(b)見本合わせ訓練で正しい比較刺激が選ばれない、(c)多元FR FR DRL DRLスケジュールで条件性弁別が成立しない、(d)オペラント水準がゼロではなく、しかし高すぎもしない反応が得られない、というものであった。これらの問題は、(a)スケジュール成分の長さを強化数で定め、成分間間隔を設ける、(b)強制試行を導入する、(c)スケジュールに制限時間を設け、毎試行スケジュールがランダムに変わるようにする、(d)強化の効果を検討する実験で、無強化ベースラインセッションでの出現頻度がゼロではなく、しかし高くもない2反応系列を標的反応に選ぶ、ことで解決した。

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