研究の目的 本研究では、日本の公立中学校においてSWPBS第1層支援を高い実行度(implementation fidelity)で実施できるのか、またSWPBSの実行度が高まるとともに生徒の問題行動が減少するのか検証することを目的とした。研究計画 AB1B2B3デザインを用いた。場面 公立中学校1校において実施した。参加者 対象校の全ての生徒と教職員が本研究に参加した。介入 生徒の適切な行動に対する教員の言語称賛を増やす取り組みを学年規模で実施した後、同様の取り組みを学校規模へと拡大した。その後、SWPBSの実行度尺度である日本語版Tiered Fidelity Inventory (TFI)に基づいて対象校のSWPBS実行度を定期的に評価し、得点の低い項目に関するSWPBSの推進計画を立案、実行していった。また、校区の小学校・地域とも連携し、地域規模でPBSの取り組みの浸透を図った。行動の指標 全校の1日当たりの問題行動指導件数を生徒100名当たりの件数に直し、これを問題行動発生率とした。結果 介入後はTFIの得点が向上するとともに、学校規模で問題行動の著しい減少が見られた。また対象校が行っていた既存の生徒・保護者アンケートの結果も改善した。結論 実行度の高いSWPBS第1層支援が日本の公立中学校においても実施でき、さらにSWPBS実施後に生徒の問題行動が全校規模で減少することが確認できた。今後は第2・3層支援の導入・システム化が課題であると考えられる。
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