言語の意味的な側面に障害をもつ重度の失語症2症例に対し,描画訓練を通じて言語活動を促進することを試みた.
症例1は,この訓練により,日常生活行為の諸場面を時間的順序に従って描画できるようになった.これに伴い日常会話の理解や表出が改善した.行為-場面-物-語の間の連辞的差異関係を表象することができるようになったのだと考えられた.
症例2は,この訓練により,日常生活行為の諸空間を描画できるようになった.これに伴い定型的な日常会話の理解が改善し,断片的な言語表出も見られるようになった.行為-空間-語の間の隣接的差異関係を表象することができるようになったのだと考えられた.
描画訓練は,意味的側面に障害を持つ重度の失語症患者の差異化活動を活性化し,それぞれの可能レベルに応じて言語活動を促進すると考えられる.
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