聴能言語学研究
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6 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 進藤 美津子
    1989 年6 巻1 号 p. 1-11
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    脳損傷の結果として生じる音楽的能力の障害である失音楽症は,失語症の臨床研究を通じて,古くから多くの神経心理学者に関心をもたれてきた.と同時に,音楽能力のさまざまな面を評価するいくつかの総合的なテストが開発されてきている.しかし,それらの検査課題は,専門的な音楽教育を受けてこなかった一般の患者には難しい複雑なものが多く,遂行困難であったり,結果に信頼性のないものもみられた.
    著者らが行った,アンケートとSeashoreテストによる失語症および聴覚失認患者の調査研究から,聴覚失認患者を除き,失語症患者は音楽の“聴く”,“歌う”,“楽器演奏”のいずれかの能力は充分に保たれており,言語障害がありながらも音楽を楽しむ機能は残存していることがわかった.したがって,言語訓練の中で失語症患者に音楽をどのように活用していくかが,私ども言語治療士の今後の課題であると思われる.
  • 後藤 慶子
    1989 年6 巻1 号 p. 12-19
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    日本語の格助詞は文の文法関係を表示する役割を持っている.助詞獲得に関する先行研究では,格助詞「が」「を」の使用と理解の開始時期にはずれがみられる.本研究では,表出課題(助詞の使用)と理解課題(助詞の正誤判断)の比較実験を,3歳から5歳の健常児103名に横断的に実施し,他動詞文における「が」「を」の習得過程を検討した.
    格助詞の使用には,「が」>「を」,可逆課題>非可逆課題の傾向があり,「が」は4歳での行為主表示のための使用を経て,5歳で主語表示という大人の文法に従った使用に至ることがわかった.
    文の正誤判断は,3歳から4歳で反応可能となった.文法適格文は4歳で90%以上の正答率となったが,不適格文は5歳でも40%程度の正答率で,否定判断は難しかった.判断の手掛りには,自立語の順序・助詞の順序と表示機能が4歳台から相乗的に用いられており,格助詞の文法機能が優位な手掛りとなるのは5歳以降であった.
    表出課題と理解課題を比べると,格助詞の使用は正誤判断成立に先行して始まっていた.格助詞の自発的使用によって幼児の文法意識が高められ,文中の格助詞の理解が促されることが考察された.
  • 斉藤 佐和子
    1989 年6 巻1 号 p. 20-27
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    筆者は先行研究(1988)で,正常児を生後8ヵ月から15ヵ月まで縦断的に追い,初期言語発達とUzgiris-Hunt尺度による認知発達との関連をみた.本研究では,ダウン症児2名について同様の検査を行ない,彼らの言語発達と認知発達の特徴をとらえ,正常被験児の結果と比較した.その結果,ダウン症児の始語はMAに比して遅れた.その一方で始語の3ヵ月前に疑似始語がみられた.1名の被験児では初期の語彙の増加は順調だったが,情動機能を示す語が多く,もう1名の被験児は,始語の後,語彙がほとんど増加しなかった.Uzgiris-Hunt尺度の下位尺度のうち動作模倣と音声模倣で2名とも遅れがみられ,言語発達の遅かった被験児では特に音声模倣の発達が遅かった.始語は,すべての下位尺度が正常児の始語期通過段階に達したと同時期に獲得された.以上の結果から,言語指導に必要な内容として以下のことが考えられた.(1)音声の体制化を促すため構音の経験を増やすこと.(2)サイン言語を象徴機能を段階的に育てるものとして体系的に利用すること.(3)概念化の能力をのばすため,分類,見本あわせ,符号化を行なうこと.
  • 2症例での検討
    長谷川 啓子, 河村 満
    1989 年6 巻1 号 p. 28-34
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    頭頂葉性純粋失書2症例の書字障害の特徴を詳細に検討し,書字障害の発現機序について考察した.症例は66歳,右利き男性および50歳,右利き男性.いずれも左頭頂葉の限局性梗塞病変例である.書字障害の検討は(1)漢字と仮名の正答率の変化を,漢字では同一単語,仮名では清音の同一文字を用いて経時的に検討した.(2)漢字と仮名の一文字書き取りにおける誤反応を,誤りの性質によって分類し,検討した.その結果,(1)漢字・仮名のいずれにも障害がみられ,経時的には同様に改善した.(2)誤反応は,漢字では存在字近似反応,仮名では置換が多く認められた.存在字近似反応と置換には,漢字・仮名のいずれにおいても正答字と形態が類似した誤りが多くみられた.これらの結果から,頭頂葉性純粋失書には,聴覚心像と視覚心像および聴覚心像と運動覚心像との連合の障害が存在すること,また,同時に運動覚心像から書字動作の実現の過程での障害がある可能性が示唆された.
  • 武石 源, 武石 静香, 浅野 桂子
    1989 年6 巻1 号 p. 35-41
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    失語症者の喚語能力およびその障害の構造的特徴を明らかにするための検討として,失語症者(Broca失語・Wernicke失語・失名詞失語)および健常者に意味カテゴリー語想起課題を実施し,次のような結果を得た.
    (1)平均正想起語数では,失語全群・失語各群は健常群より有意に少なく,失語各群間には差がなかった.(2)正想起語総数に対する想起語の種類数の比率(語種類比)は,失語群間および健常群・失語各群間のいずれにも差がなかった.(3)全想起語と発話された最初の3語のそれぞれの高出現語は,失語各群・健常群のいずれでも共通するものが多かった.(4)全想起語の高出現語は,失語各群間で一定共通しており,それらは健常群の高出現語とも類似していた.
    以上の結果は,意味カテゴリーの内的構造性は失語症者では比較的共通していること,それはまた,健常者の意味カテゴリーの内的構造性にも概ね類似していること,を示唆しているものと考えられた.
  • 1989 年6 巻1 号 p. 48
    発行日: 1989年
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
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