聴能言語学研究
Online ISSN : 1884-7056
Print ISSN : 0912-8204
ISSN-L : 0912-8204
13 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 横張 琴子
    1996 年 13 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    失語症のグループ訓練は,心理的改善や社会性の向上,コミュニケーションの活発化に寄与する補助的訓練として,個人訓練終了後に実施されることが多く,個人訓練に代りうるものではないといわれてきた.筆者らは,障害のタイプと重症度を同質にしたグループを編成し,言語機能改善をもめざしたグループ訓練を,可能な限り発病初期から実施してきた.(1)仲間作りや社会性の向上をめざした談話,(2)刺激-反応タイプや,(3)ゲーム形態の言語訓練,(4)リズム体操と斉唱,(5)書道,絵画の実技指導を含むさまざまな趣味育成,(6)患者,家族の生活活性化,(7)個別のテキストを用いた家庭学習指導,(8)ステップ別カードによる日記指導などを取り入れた多面的指導を継続した結果,QOLの向上とともに,狭義の言語機能改善も得られた.グループ訓練は失語症治療において,有効性の高い手段と考える.
  • 斉藤 佐和子
    1996 年 13 巻 1 号 p. 12-19
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    ダウン症児の言語障害の特徴として表出の遅れと構音障害があげられる.筆者は精神発達の遅れが中度であるにもかかわらず,7歳近くになってもほとんど言語表出のないダウン症児を5年にわたり指導した.口型図や文字を利用した指導の結果,短い音節の語から表出を獲得し,最高5文節文まで可能となったが,構音障害が重篤で発話が不明瞭であった.構音障害の特徴として有声音と無声音の対立がはっきりせず,口唇音以外の破裂音が摩擦音より獲得が遅れ,破裂音が歪むことが多いなどがみられた.障害の原因として発語器官や聴覚認知,音声表出のための運動企画や構音運動習得の障害では説明しきれず,音韻体系の獲得の困難が根底にあり,正しい音のイメージをもち,そのイメージと照合しつつ音の表出をすることに問題があると考えられた.その結果,指導は視覚刺激を利用し,構音指導の順序は健常児の構音発達にこだわらず,症例の構音の特徴にあわせることが必要と思われた.
  • 長野 智子, 長谷川 啓子
    1996 年 13 巻 1 号 p. 20-30
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    失語症者に対するより強力な家族の支援を得るために,失語症者7名の家族を対象に家族教室を実施した.家族教室で話題になった問題点に対し,STが具体的な助言を与え,家族の対応の変化を促した.家族教室の前後に失語症者の日常生活を問うアンケートを実施した.家族教室における発言とアンケートの記述から,失語症者と家族の関わり合い方を検討した.その結果,(1)助言を与えた6ケース中4ケースに何らかの改善がみられた,(2)家族が失語症者をよく受け入れている場合,失語症者は不満を訴えていないが,家族が失語症者を受け入れていない場合,失語症者は不満を訴えていた.(1)(2)から,家族の態度が失語症者の状態に大きく関与していることがわかった.さらに,失語症に起因するコミュニケーション障害が,家族の支援を得るうえで重要な阻害要因となることが示唆された.
  • 聴能言語学研究編集委員会
    1996 年 13 巻 1 号 p. 32
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
  • 寺澤 美輪子, 加藤 正子, 岡崎 恵子
    1996 年 13 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    自験例3例のBeckwith-Widemann症候群の中で,口蓋裂と反回神経麻痺を伴った1例の言語症状と言語指導について検討した.本症例は口蓋裂による鼻咽腔閉鎖機能不全と反回神経麻痺による構音障害と音声障害の両方を持ち,音声言語によるコミュニケーションに問題があった.最初に鼻咽腔閉鎖機能不全に対する処置を考えたが,本症例には反回神経麻痺が呼吸へ与える影響を考慮する必要があったので,咽頭弁形成術ではなく,鼻咽腔閉鎖機能改善と着脱が可能であるパラタルリフトを装着させて経過観察を行った.パラタルリフトと構音訓練によってスピーチの明瞭度は改善傾向を示したが,呼気鼻漏出による子音の歪みは消失せず,良好な鼻咽腔閉鎖機能を得ることをさらに検討していくことが課題として残った.本症例に対しては今後も長期的な言語指導を継続していく考えである.
  • 河合 桐子, 北野 市子
    1996 年 13 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    顔面奇形を主症状とするTreacher-Collins症候群児の言語,特に構音発達に関する長期経過観察例の報告はあまりみられない.われわれは,本症候群の1女児に対して,生後から7年間にわたる経過観察・構音指導を行った.本症例の構音障害は,両唇音を含む全子音が奥舌化するものであった.構音指導により,舌,口唇といった構音器官の運動を促進することはできたが,正常な構音が日常汎化するまでには,かなりの時間を要した.こうした構音障害が生じる理由として,本症候群に特徴的にみられる小顎症とそれに関連する舌および口唇の形態・位置異常が考えられた.
  • 竹本 喜一
    1996 年 13 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    Prader-Willi症候群(PWS)児に対する言語訓練経過をまとめ,構音の変化・特徴について検討をした.本症例では,新生児-乳児期に筋緊張の低下症状により,構音器官の運動の稚拙からくる発語の遅れや不明瞭な構音が生じた.そこで,不明瞭な構音の改善として構音器官への直接的なアプローチを含む構音訓練と言語理解面の向上を図る言語訓練を施行した.その結果,訓練20ヵ月後,不明瞭な構音に,(1)奥舌音の前舌化傾向の減少,(2)破裂音全体の明瞭化,(3)鼻音化母音の消失などの変化が現れた.また,理解面でも,概念形成の確立,理解語彙量が増加した.
  • 住田 恵子, 峪 道代
    1996 年 13 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    食道気管瘻を伴う先天性食道閉鎖症により,経管栄養が長期間に及んだ症例に対し,言語および摂食指導を行った.言語発達は良好で,構音には言語発達上にみられやすい音の誤りを一過性に認めたのみで,特異な構音障害は認められなかった.一方,経口摂取が積極的に開始されたのは6歳以降であり,摂食時の口腔機能の改善がみられにくいのみならず,社会性や母子関係にも問題は多く認められた.
  • 中沢 真実
    1996 年 13 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 1996/04/25
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    気管切開後,スピーチバルブを使用し2歳10ヵ月に初めて発声可能となった4歳男児の言語発達経過を報告した.本症例の特徴は次のとおりである.(1)言語理解に比べ言語表出の遅れが顕著だったが,約1年6ヵ月の指導後表出も3語連鎖レベルに達した.(2)声門破裂音が出現した.(3)生活年齢に比べ各子音の初発年齢に遅れがみられ,完成年齢も遅れる傾向が認められた.(4)歯茎音・摩擦音の獲得に困難を呈した.
feedback
Top