可逆文の理解障害の治療として,文中の名詞句の格関係を明確に把握させることを目的に,ブローカ失語1例に対して構文訓練を行った.動詞1つにつき,お母さん/男の子,お父さん/女の子の間に動作主と対象という可逆関係を作った動作絵カード4枚を用い,1枚の絵に能動文と受動文,その基礎語順文および変換語順文の4種を対応させて作った刺激文16の聴覚理解と復唱を検査した.結果は,変換語順文が困難で反応は浮動し,誤反応には,助詞の解読と把持の両要因が関与していた.そこで,把持の負担を少なくするために,課題文を2つの2文節文に分けて聴かせてもとの文を合成させる訓練と,課題文を聴かせて2つの2文節文に分解させる訓練を導入し,理解を調べた.その結果,変換語順文の成績が改善し,同じ文型の他の動詞にも効果は般化した.また,失語症構文検査の成績も向上した.短い文形式を使用したことにより,格関係の解読が促進されたと考えられる.
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