小学4年生から高校3年生 (10-18歳) の男子児童・生徒172名を対象にCybex IIを用いて, まず, 等速性筋力と等速性筋持久力の年齢的推移を明らかにした。次に, 横断的にみて加齢による発達の著しかった11歳から15歳の年齢層を対象に, 大腿筋群の筋力と筋持久力の向上が期待できると考えられる等速性トレーニングを8週間 (3日/週) 負荷し, 等速性筋力と等速性筋持久力の2つの側面から効果の年齢差を検討した。
なお, トレーニング内容は, 180°/sの速度条件で, 1日3セット (1セット: 30回連続試行, セット間の休息は1分間) とした。
1) 筋力に対するトレーニング効果は, 膝関節伸展・屈曲筋群のいずれにおいても, 13歳児で最も大きいことが認められた。また, 伸展力では11・12歳児よりも14・15歳児で, 屈曲力では14・15歳児よりも12歳児で効果の大きい傾向がみられた。
2) トレーニング効果は, いずれの年齢においても, 膝関節屈曲力の方が伸展力よりも大きかった。
3) 筋力のトレーニングによる増大には, 11歳から15歳の年齢層では筋肥大の要因よりも神経系の要因が大きく関与していると考えられた。
また, 加齢とともに筋肥大の要因の関与する割合の増加する傾向がみられた。
4) 終末値で評価した膝関節伸展筋群の筋持久力に対するトレーニング効果は, 11歳児ではみられないが, 12歳以上の年齢で認められ, 特に13歳児で顕著であった。
5) 筋持久力のトレーニングによる向上には, 筋放電量の変化から中枢神経系の興奮水準の高まりとその持続能力の改善の関与が推察された。
6) 筋力, 筋持久力ともにトレーニング効果の大きい年齢は, 加齢による発達 (成熟) の顕著な時期と一致することが認められた。
7) 等速性トレーニングを負荷し, 筋力と筋持久力の2つの側面から効果の年齢差を相対評価すると, 12歳児では, 筋力よりも筋持久力の方に有意な効果の得られる傾向が認められた。
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