日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
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第35回日本臨床免疫学会総会抄録集
選択された号の論文の156件中101~150を表示しています
一般演題
  • 副島 誠, 杉浦 智子, 加藤 隆志, 川口 鎮司, 馬場 さゆみ, 菅野 朗子, 市田 久恵, 鎌谷 直之, 原 まさ子
    セッションID: 55
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    【背景・目的】 Fasciitis-paniculitis syndrome (FPS) は悪性腫瘍や外傷後の二次的変化,または好酸球性筋膜炎(EF)の亜型とも考えられているがまだ不明な点が多い。我々の経験した4症例の特発性FPSにつき,臨床的特徴と血清学的指標について検討した。 【方法】 対象: FPS 4症例,EF 4症例。対照として筋炎 72例,他の膠原病 141例,正常人 10例で血清サイトカイン,ケモカインをELISA法にて測定した。 【結果】FPS,EF群間には性別,年齢,罹病期間,血清CK値,ALD値は差がなかった。FPS群では筋膜への単球の浸潤に加え,脂肪織,筋組織への細胞浸潤が全例に認められ,腹水,末梢神経障害を3例(75%)に認めた。 EF群は中等量のステロイド薬が有効であるのに比べ,FPS群の3例は無効でエンドキサンが有効であった。血清Macrophage migration inhibitory factor(MIF)は筋炎(35.7±5.2 ng/ml),筋膜炎で正常人,他の膠原病に比べ高値であったが(p<0.0001),FPS群(23.2±8.8 ng/ml),EF群(5.0±5.9 ng/ml)間で有意差はなかった(P = 0.39)。 【考察】 FPSはEFと臨床的,病理的に異なる病態を呈した。また,血清MIFが高値であったことから,今後,筋・筋膜疾患における役割について検討する予定である。
  • 酒井 梓, 菅原 由美子, 黒石 智誠, 笹野 高嗣, 菅原 俊二
    セッションID: 56
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    【目的】シェーグレン症候群(SS)は、口腔および目の乾燥を主症状とする自己免疫疾患であり、その病態は唾液腺や涙腺など外分泌腺へのリンパ球浸潤により腺細胞が破壊されることによるが、その詳細はいまだ不明な点が多い。炎症性サイトカインであるIL-18とIL-17は多くの炎症性疾患や自己免疫疾患への関与が示唆されており、IL-17を産生するCD4T細胞は新たなヘルパーT細胞サブセット(Th17)として位置づけが確立された。本研究では、SS病態発現におけるIL-18とIL-17の関与について検討した。 【材料と方法】健常者、SS患者、慢性GVHD患者よりインフォームドコンセントを得た後、小唾液腺と耳下腺唾液を採取した。ヒト唾液腺細胞株としてAZA3およびHSYを用いた。 【結果】免疫組織化学染色により、SS患者の小唾液腺にはIL-18は主として腺房と導管上皮細胞に、IL-17は浸潤リンパ球に発現していた。このような発現は健常者と慢性GVHD患者の小唾液腺には検出されなかった。SS患者小唾液腺に発現するIL-18は24 kDaの前駆体と18 kDaの活性型であった。SS患者小唾液腺に浸潤するリンパ球は主としてCD4T細胞であるがCD8T細胞も浸潤しており、ともにIL-17が発現していた。唾液腺細胞はIL-18前駆体を発現しておりイオノマイシン処理により細胞外にIL-18を分泌した。さらに唾液腺細胞はIL-18R とIL-17Rを細胞膜上に発現し、IL-18とIL-17の共刺激により相乗的にIL-6産生を促進した。 【考察】以上の結果は、SS病態発現にはTh17と唾液腺上皮細胞が発現するIL-18が重要な役割をしていることを示唆する。現在、さらに詳細を検討している
  • 林  宏明, 前田 恵, 村上 周子, 西村 泰光, 草加 勝康, 大槻 剛巳
    セッションID: 57
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    珪肺症の合併症として自己免疫疾患の頻度が高いことは成書にも記されている。CD4+25+FoxP3+制御性T細胞(Treg)が,自己寛容維持に重要な役割を有することが知られてきた。CD4+25+ Treg の特異的発現機能遺伝子であるFoxP3 の発現が,健常人では,CD4+25+分画で高発現,CD4+25-分画で極めて低発現なのに比し,珪肺症例ではCD4+25+分画でも,CD4+25-分画と同程度に低発現なことを以前に報告した。活性化T細胞では発現しているが,CD4+25+Treg細胞では発現していないPD-1遺伝子の発現を,珪肺症例と健常人の末梢血単核球をCD4+25+分画とCD4+25-分画において検討した。結果,健常人ではどちらの分画でも非常に低発現であったが,珪肺症例では,CD4+25-分画でも健常人より高度に,CD4+25+分画では更に高度な発現が認められた。また、CD4+FoxP3+分画のFasの発現は健常人においてもCD4+FoxP3-分画に比し高発現の度合いが高かった。これらの結果より,珪肺症例のCD4+25+分画には珪酸曝露に伴う慢性活性化T細胞が侵入し,および珪肺症例の制御性T細胞では,Fas発現が高く容易にアポトーシスに至る可能性が示唆された。その結果FoxP3+ Tregを置換,CD4+25+分画の機能の減衰をもたらして自己寛容の破綻を招いている可能性が高いと考えられた。
  • 吉本 桂子, 瀬戸山 由美子, 鈴木 勝也, 津坂 憲政, 安倍 達, 竹内 勤
    セッションID: 59
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    目的:BAFFは主に単球、マクロファージ、樹状細胞、T細胞などに発現しており、細胞の生存や分化増殖に影響を与えることから自己免疫疾患の病態との関連性が注目されている。われわれは健常人およびシェーグレン症候群患者(SS)末梢単球とヒト単球細胞株THP-1を用いてBAFF産生制御機構の解明を試みた。方法:SS患者(4例)および健常人(4例)末梢単球とヒト単球細胞株THP-1をヒトrIFN-γ存在下で刺激培養し、細胞におけるBAFF発現をRT-PCR法を用いて検討した。一方、培養上清中のBAFF、IL-6、TNF-α、IP-10濃度をELISA法により測定した。結果・考察:ヒト末梢単球をrIFN-γ存在下で培養した場合、BAFF発現誘導が認められた。特にSS末梢単球からのBAFF産生誘導は健常人と比較して有意に高値であった。一方THP-1におけるrIFN-γによるBAFF産生誘導は、ヒト末梢単球と同様に認められ、同時にIL-6、TNF-α、IP-10の著しい産生促進が確認された。このTHP-1刺激培養系に抗IL-6抗体、抗TNF-α抗体を加えた場合、BAFF産生抑制効果が認められた。これらの結果から、単球の刺激培養において誘導されたサイトカインがBAFF産生に影響を与えていることが示唆された。また、THP-1は単球のBAFF産生機構のin vitroモデルとして有用であると考えられる。
  • 安藤 誠一郎, 天野 浩文, 天野 恵理, 箕輪 健太郎, 仲野 総一郎, 森本 真司, 山路 健, 戸叶 嘉明, 高崎 芳成
    セッションID: 60
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    【目的】近年マウス及びヒトにおいて末梢血単球でCD11b+(CD14+)CX3CR1-CD62LHighとCD11b+(CD14+)CX3CR1+CD62Llowの異なる機能を有する2つの単球サブセットが存在することが明らかにされ、我々は全身性エリテマトーデス(SLE)の疾患モデルであるBXSBマウス及びヒトSLE患者において、CD14+CX3CR1+CD62Llow単球サブセットがCD14+CX3CR1-CD62LHighサブセットと比較して有意に増加していることを報告してきた。今回、活動期SLE患者の症例数を増やし解析するとともに、各種リウマチ性疾患患者におけるこれらの単球サブセットの比率を調べ、更に治療によるサブセットの変化を調べることを目的とした。【方法】活動期SLE患者20例及び関節リウマチ患者10例、皮膚筋炎患者2例、混合性結合組織病2例の末梢血について細胞染色しフローサイトメトリーで解析した。【結果】活動期SLE患者では健常者と比較してCD14+CX3CR1+CD62Llow単球サブセットの有意な増加を認めた。関節リウマチ患者においても同様の結果が得られ、特に治療後にこれらのサブセットの変化が認められた。【結論】近年、形質細胞様樹状細胞のみならず、骨髄単球由来樹状細胞が自己免疫疾患の発症に重要であることが示唆されている。SLE及びその他のリウマチ性疾患において、末梢血の単球サブセットの変化を認め、治療によりこれら単球サブセットの変化が認められたことから、SLEのみならず自己免疫疾患の病態形成においてCD14+CX3CR1-CD62LHighとCD14+CX3CR1+CD62Llowの異なる単球サブセットの関与が示唆された。
  • 名切  裕, 箕輪 健太郎, 仲野 総一郎, 鈴木 淳, 満尾 晶子, 安藤 誠一郎, 天野 浩文, 森本 真司, 戸叶 嘉明, 高崎 芳成
    セッションID: 63
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    (目的)リウマチ性多発筋痛症(以下PMR)は、高齢者に多く、急激な近位筋痛やこわばりで発症する原因不明の症候群である。少量のステロイドに反応し、比較的予後良好とされているが、臨床経過を長期間追った報告は意外に少ない。今回、我々はPMR患者26例の臨床経過について検討した。 (対象と方法)当科に1997年から2006年までの10年間に入院して、PMRと診断を受け、現在でも外来通院して加療を受けているPMR患者26例を対象とし、発症時のデータおよび臨床症状や治療方法の経過を検討した。 (結果)対象としたPMR患者26例は、男性9例女性17例であり、発症年齢は平均67.7±10.4歳だった。全例とも近位筋痛症状を呈して発症したが、診断基準の一部である他症状として、朝のこわばり5例(19%)発熱14例(54%)体重減少は7例(27%)であった。血液データ上、発症時の血沈は91.1±27.2mm/h、CRP値は10.1±10.5mg/dlと高度炎症所見を呈した。治療開始PSL量は平均17.5±7.2mgだった。以後PSL中止できた症例は4例で、うち寛解して無治療のままなのが2例、再発したのが2例であった。また、何らかの症状再発でPSL増量された症例が13例(50%)もいた。 (結論)当科におけるPMR患者26例も、ステロイド治療が開始されると近位筋痛症状や炎症所見は直ぐに改善した。しかし以後経過を追っていくと、ステロイド治療減量を急速に進めていく一方再発した症例も少なくはなかった。高齢者で他の疾患が併発している症例も多く、ステロイド治療の注意深い減量が必要であると考えられた。
  • 田中 敏郎, 平野 亨, 河合 麻理, 比嘉 慎二, 有光 潤介, 中西 香織, 桑原 裕祐, 大河原 知治, 萩原 圭祐, 嶋 良仁, 緒 ...
    セッションID: 64
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    疫学研究により、近年の食生活の変化が、すなわち食品に含まれるアレルギー炎症惹起物質の過剰摂取もしくは抗アレルギー作用を有する機能性栄養素の摂取不足が、アレルギー疾患の有病率を高めている重要な環境要因である可能性が指摘されている。フラボノイドを多量に含む食品の摂取試験を出発点として、以下の事を明らかとした。フラボノイドは、好塩基球においてIL-4や IL-13産生とCD40リガンドの発現を抑制する活性を有する。ルテオリン、アピゲニンとフィセチンに強い活性(IC50 = 2-5microM)が認められ、また日常摂取の多いケルセチンにも中等度の抑制活性(IC50 = 15-18 microM)が観察された。数十種類のフラボノイド及びその誘導体の活性の検討により、抑制活性に必要な分子構造が明らかとなり、その作用機序として、転写因子NFATとAP-1の活性化を抑制することが示された。フラボノイドを動物モデルマウスに投与することで、アレルギー疾患の発症を予防し、治療効果も観察されている。また、フラボノイドの高摂取群では喘息の発症率が低かった疫学研究の報告もなされており、適切なフラボノイドの摂取がアレルギー疾患に対する予防や補完代替療法となる可能性が期待される。現在、食品衛生法にて認可されているフラボノイドのアレルギー疾患に対する臨床研究と、合成した高吸収性、高活性のフラボノイドの動物実験での試験が進行中にある。
  • 粟屋 昭
    セッションID: 67
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    1960年代初期に日本においてほぼ同時期に発見されたスギ花粉症と川崎病とは、実は同じtriggerである花粉に対する、病態の違う疾患PID群であることが多くの状況証拠から理解されるようになった。(1)82年、95年等過去最大のスギやヒノキの花粉飛散の年および翌年等後年に、川崎病発症数は激増し、2000年以降全国合計だけでなく東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、福岡県等で右肩上がりが顕著である。(2)夏冬ウイルス感染症の様に患者発生報告の無い月は無く、発生最少月でも全国で500人程おり通年発生であるが、91~02年の自治医大ご恵与の神奈川県患者dataの発症patternと、国立相模原病院ご恵与の花粉飛散dataのpatternとの月別、週別比較により、花粉飛散に連動した年間3つの川崎病発症peak高原状態が存在することが明らかになった。(3)先駆け花粉飛散に鋭敏な花粉症患者同様に、川崎病患者は先駆け花粉飛散に反応して、12月、1月に発症数が多いことが理解された。(4)川崎病患者は「他アレルギー疾患患者、パーキンソン病患者、中途失聴・難聴者と共通の、皮膚状態がおとなしく、ほくろの殆どない人ほくろ生成系の弱い人が大多数である」という知見が当てはまり乳幼児期そして長じて花粉症等アレルギー疾患罹患率が高い。(5)インフルエンザあるいはヘルパンギーナ流行で川崎病発症数の一旦減少フェーズがある。
  • 平野 亨, 萩原 圭佑, 田中 敏郎, 吉崎 和幸, 川瀬 一郎
    セッションID: 68
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    孤発性中枢性血管炎に対するステロイド治療例。上肢片麻痺、痙攀、発熱にて発症し、CT、MRI、SPECTにて側頭葉に血流豊富な径6cm大の占拠性病変を認めた。明らかな全身性疾患や悪性腫瘍は否定的であり、診断確定のため生検を施行された。単核球侵潤、ラングハンス細胞様の巨細胞の出現を認め、孤発性中枢性血管炎(Primary angitis of CNS: PACNS)と診断、ステロイド大量投与を開始した。炎症所見の消退と脳占拠性病変の著明な縮小を認めた。血中CRP値も著明に改善したが、血中の炎症性サイトカインや血管新生因子にも同様の傾向が見られた。その一方で一部のケモカインには高値を持続するものも存在した。臨床経過と血中サイトカイン、ケモカインの変動について報告する。
  • 岡藤 郁夫, 西小森 隆太, 金澤 伸雄, 神戸 直智, 斎藤 潤, 藤澤 章弘, 谷崎 英昭, 平家 俊男, 宮地 良樹, 中畑 龍俊
    セッションID: 69
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    ブラウ症候群(BS)は、4歳以下で発症し、発疹・関節炎ブドウ膜炎を三主徴とする常染色体優勢遺伝形式をとる全身性肉芽腫性疾患である。若年性サルコイドーシス(EOS)は、BSの孤発例であり、ともに自然免疫を制御するNOD-LRRファミリー分子の一つであるCARD15/NOD2の機能獲得型変異によって発症する同一の疾患である。 CARD15/NOD2を伴ったBS/EOSの臨床像と遺伝子型の関係をより詳細に検討する目的で、本邦において我々が集積した20例(EOS14例、BS3家系6例)について検討した。遺伝子型はR334W(9例), R334Q(3例), D382E(1例), E383G(2例:新規の変異), C495Y(1例), H496L(1例), M513T(1例), T605P(1例), N670K(1例)であり、いずれもCARD15/NOD2機能獲得型変異の特徴であるリガンド非依存性にNF-kappaB活性化を認めた。三主徴全て揃っているのは17例であり、ブドウ膜炎がない症例(1例)、関節炎がない症例(1例)、関節炎のみの症例(1例)があった。発熱を認めた症例は12例だった。発症年齢は従来は通常4歳以下とされていたが、8歳発症の症例があった。病型・遺伝子型の相関については、リガンド非依存性NF-kappaB活性化の程度が著しい遺伝子型ほど、症状の一つである発熱発症時期が早くなる傾向が認められた。
  • 大西 佐知子, 釜田 康行, 長嶋 孝夫, 上村 健, 簔田 清次
    セッションID: 70
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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     1994年Hibiらにより、血球貪食症候群の病勢を反映するマーカーとして尿中β2ミクログロブリンが有用であることが報告された。この時、尿中β2ミクログロブリンと血清IFNγが相関すると報告されている。β2ミクログロブリンはHLA class_I_のL鎖を構成しており、横田らによると、HLA class_I_発現の調節はIFNγとTNFαにより行われ、血球貪食症候群の時はこのIFNγとTNFαが過剰に産生されているといわれている。  本学会では、尿中β2ミクログロブリン(32,820~212,440 μg/g・Cr)が血球貪食症候群の早期診断および治療効果判定に有用であった4例(確診例3例、疑い例1例)を報告する。この4例の血中IFNγとTNFα濃度が病勢と相関していたのは1例のみで、他の3例はサイトカインの明らかな上昇は認めなかった。  尿中NAGと解離する尿中β2ミクログロブリン上昇は、腎障害とは考えにくく、血球貪食症候群などサイトカインストームの存在を示唆する。4例全てで尿中β2ミクログロブリンは病初期より上昇し早期診断に有用であった。また病勢を鋭敏に反応するため治療効果判定の指標としても有用であった。血球貪食症候群の経過と尿中β2ミクログロブリン濃度は明らかに相関し、IFNγ、TNFα以外のサイトカインの関与も示唆された。
  • 板澤 寿子, 金兼 弘和, 足立 雄一, 宮脇 利男, 斉藤 潤, 西小森 隆太, 中畑 龍俊
    セッションID: 71
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    【はじめに】近年、自己炎症症候群という疾患概念が知られ、それぞれの疾患の責任遺伝子が同定されてきている。この疾患群の一つである家族性寒冷自己炎症症候群(familial autoinflammatory syndrome:以後FCASと略す)は、共通する症状から若年性特発性関節炎との鑑別を要することがある。今回、日本で初めてと思われるFCASの症例を経験したので報告する。【症例】14歳の女児。主訴は皮疹、発熱、関節痛。生後4ヶ月頃から顔や手足に蕁麻疹様の皮疹を繰り返し、寒冷刺激により増悪するため寒冷蕁麻疹と診断されていた。13歳時に右股関節痛のため歩行困難となり、血液検査でCRPと赤沈の上昇を認めた。その後も2~3日間持続する関節痛を認めたためNSAID内服を開始したが、発熱も認めるようになり、若年性特発性関節炎が疑われ、当科紹介。リウマチ因子や抗核抗体は陰性であった。皮疹は全身に大小不同の淡紅色紅斑を認め、数時間~一日単位で増悪・消退を繰り返し、寒冷刺激にて皮疹は増悪したが、アイスキューブテストは陰性であった。FCASに特徴的な所見である眼球結膜充血を皮疹増悪時に認めた。父と父方祖母にも同様の症状を認めた。本人と家族の同意のもとにCIAS1遺伝子解析を行った結果、R260Wのミスセンス変異を認め、FCASと診断した。【考察】FCASは特徴的な症状とその家族歴に注意すべきであり、最終的には遺伝子解析が有用と考える。
  • 小関 由美, 北浜 真理子, 櫻井 正, 鎌谷 直之, 寺井 千尋
    セッションID: 72
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    【目的】血清アミロイドA(SAA)は関節リウマチなどの慢性炎症性疾患に続発する反応性AAアミロイドーシスで組織に沈着するアミロイドAの前駆物質である。SAAとCRPは共に炎症刺激により上昇し、強い正の相関を示す。SAA/CRP比は同一個人では比較的一定であるが、ステロイド使用でSAA/CRP比が上昇すると報告されており、その報告のステロイドは約PSL10mg/日以下で少量である。今回は中等量以上のステロイド投与時のSAAとCRPの変動を検討した。
    【対象・方法】試験前にCRP0.3mg/dl以上あり、ステロイド未使用かPSL10mg/日以下でPSL20mg/日以上投与された症例を対象とした。中等量以上のステロイド投与前後でSAA、CRP、脂質マーカーを測定、その動態を検討した。
    【結果】投与前のSAA/CRP比には個人差があるが、投与後は全例で上昇した(前6.7±5.9、7日後43.8±57.9、4週後65.1±35.8)。投与後CRPは全例で低下し、4週後には全例で正常化したにも拘らず、SAAは大半で高値が持続した。2-7ヶ月後の観察ではステロイド減量にも関わらずSAA/CRP比がさらに高値を示す傾向がみられた。
    【結語】中等量以上のステロイド投与でSAA/CRP比は少量投与時よりさらに拡大した。ステロイド投与中の炎症の把握にはSAA測定が有用である。
  • 壽 順久, 室田 浩之, 片山 一朗
    セッションID: 73
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    皮膚科診療において難治性皮膚潰瘍は著しくADLに支障を伴う疾患のひとつに挙げられる。皮膚潰瘍が治癒に向かう過程は大きく炎症期・増殖期・リモデリング期に分けることができるが、難治化の原因の一部は炎症期の遷延によるとも考えられている。炎症期には多種多様な細胞が潰瘍局所に遊走してきており、中でもマクロファージはIL-6など炎症性サイトカインのソースとして中心的役割を担うとして知られている。このような難治性皮膚潰瘍に対する治療介入においてプロスタグランジンE1(PGE1)製剤は良好な成績を収めており、近年、drug delivery systemにより潰瘍部に集積し、局所でマクロファージに取り込まれるとされるLipoPGE1製剤も難治性潰瘍治療の主要なツールとして考えられている。 今回我々は、LipoPGE1による治療効果が炎症期の短縮によってもたらされるのではないかと想像し、様々な難治性皮膚潰瘍に対するLipoPGE1治療介入の前後で血清CRPおよび炎症性サイトカインの濃度を測定した。非LipoPGE1介入群に比し、介入群ではCRPおよびIL-6が著明に減少する傾向が見られた。このことからLipoPGE1は循環改善作用のみならず、早期に炎症期を収束させる事でも創傷治癒に貢献すると推察された。
  • 公文 義雄, 有井 薫, 池田 幸雄, 末廣  正, 橋本 浩三, 杉浦 哲朗
    セッションID: 74
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    【背景と目的】関節リウマチ(RA)の平均寿命は一般のそれに較べ10年以上短く、冠動脈疾患など動脈硬化性疾患も有意に多いとされている。我々は急性期蛋白の一つであるSerum Amyloid A(SAA)に注目し、RA患者の血清リポ蛋白像とHDL機能の検討と、血管平滑筋細胞(HASMC)のSAA産生能及びSAAのHASMCに及ぼす影響について検討した。【対象と方法】対象は通院治療中のRA患者で、血中SAA、リポ蛋白、パラオキソナーゼ(PON)活性、レシチンコレルテロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)活性等を測定し、HDL機能を評価した。また、HASMCを用いて、SAAの産生能とSAAのHASMC遊走に及ぼす影響を検討した。【結果】健常人に較べてRA患者の血中SAAは高値で、HDLコレステロール(HDL-C)は低値、PON活性やLCAT活性も低値であった。HASMCはSAAを産生し、SAAはHASMCの遊走を濃度依存性に誘導した。【考察】近年、動脈硬化発症予防におけるHDLの重要性が報告されている。RA患者ではHDL-Cが低値で、抗酸化能やコレステロール逆転送能は低下していた。一方、HASMCはSAAを産生し、産生されたSAAはHASMCを遊走させる。これらのことより、RAでは動脈の内腔側及び血管壁側の両面から動脈硬化の発症や進展が惹起されると考えられる。
  • 谷内江 昭宏, 柴田 文恵, 和田 泰三, 東馬 智子, 横山 忠史, 笠原 善仁, 小泉 晶一
    セッションID: 75
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    発熱、炎症反応、凝固機能異常、血管内皮傷害などを認めた場合、その背景にどのような病態があるのか鑑別するのに苦慮することが少なくない。病因の診断を適切に行い、早期に治療的介入をするためには、簡便で的確な病態解析を行うことが望まれる。本研究では、HLH 7例、sJIA/成人Still 10例/内HLH合併例4例、川崎病10例、骨髄幹細胞移植後血管傷害6例、PN 4例を対象として、血清中サイトカインを定量、それぞれの病態における特徴をradar chartを作成して解析した。HLH例ではIL-6、neopterinの高値とIL-18値の上昇が特徴的であった。sJIA/StillはHLH合併の有無に関わらずIL-18値が著明な高値を示したが、neopterin値は軽度上昇にとどまった。安定期ではIL-6は検出感度以下であったが、HLH合併例ではIL-6値が著しく上昇した。川崎病ではIL-6が高値を示したが、neopterinは軽度上昇を認めたのみであった。幹細胞移植後の血管傷害ではneopterinが高値を示したが、IL-6は低値、IL-18も軽度上昇を示したのみである。PNではIL-6、IL-18の低値と逆にneopterinおよびsTNF-Rが著しい高値となる傾向を示した。Radar chartプロフィールは個々の疾患に特有のパターンを示し、それぞれの高サイトカイン血症の背景には産生細胞の差異を含めた異なる炎症病態があることを反映していると考えられた。サイトカインプロフィールの経時的変化を解析することは、一見複雑な炎症性疾患の病態理解に極めて有用であることが示された。
  • 西川 哲平, 萩原 圭祐, 吉崎 和幸
    セッションID: 76
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    CRPは、最も頻用される炎症マーカーであり、心血管イベントの予測因子としても注目されている。CRPの転写活性は、IL-6刺激により主に誘導され、IL-1により増強されるが、その発現調節機構は不明である。我々は、生体内発現を想定しIL-6とIL-1(IL-6+1)刺激によるCRPの転写調節機序を明らかにすることを目的とした。 肝癌由来のHep3B細胞を用い、pGL3-CRPを使ったプロモーターアッセイ、リアルタイム定量的RT-PCRの系により、IL-6+1刺激によるCRP発現の経時変化を検討した。刺激後3時間では、従来の報告とは異なり、IL-1がIL-6のCRP誘導作用を阻害することを確認した。この現象は、NFκB p65によるSTAT3の阻害によることが示唆された。次に、刺激後12-24時間でのIL-1によるCRP発現増強作用の転写調節機序の解析を行った。IL-1シグナルの他の下流であるMAPK(JNK, p38)の関与を、それぞれの阻害薬を用いて検討したところ、刺激後12時間でのIL-6+1刺激によるCRP発現が抑制された。しかし、CRPプロモーター上にはJNKやp38シグナルの下流の転写因子AP-1の結合領域は存在しない。共発現系、EMSA、IP-Western blot等の実験系を用いて、AP-1のCRP発現への関与とその機序も明らかにしたので報告する。
  • 栗林 景晶, 瀧本 理修, 井山  諭, 荒木 直子, 田中 真樹, 加藤 淳二, 新津 洋司郎
    セッションID: 77
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    好中球およびマクロファージにより産生される活性酸素(O2-)は、Innate immunity(自然免疫)における炎症反応の一構成要素である。今回我々は、活性酸素がautocrineの機序でマクロファージ自身の遊走能を促進すること、そのシグナルとしてProtein kinase C(PKC)ζ/RhoGDI-1リン酸化/RhoGTPases活性化経路を見出したので報告する。 (方法)ヒトマクロファージは健常人末梢血のCD14(+)、CD17(-)、CD19(-)、CD45RA(-)、CD56(-)、IgE(-)分画を用いた。細胞株はマウスマクロファージ様細胞株J774.1を用いた。細胞運動能は金コロイド法およびボイデンチャンバー法にて測定した。活性酸素産生能はチトクロームC法にて測定した。PKCzetaの抑制にはミリスチル化ペプチド(myr-PKCζp)、RhoGTPaseの抑制にはC3酵素を用いた。細胞内活性酸素の消去にはN-acetylcystein(NAC)を、NADPH oxidaseの抑制にはdiphenylene iodonium(DPI)を用いた。 (結果)J774.1細胞の運動はSODおよびNACにより抑制され,HPX/XOD(ROS)により促進された.さらにchemotactic peptideであるfMLPによって促進された.J774.1細胞の運動もSOD, NACにより抑制された.このROSによる運動促進シグナルはPKCζ/RhoGDI/RhoGTPasesシグナルにより伝導されていた.ヒト末血マクロファージの運動についても同様な所見が得られた. (考察)マクロファージが炎症局所で運動するのは,自らが産生するROSがPKCζ/RhoGDI/RhoGTPasesシグナルを伝達することによると考えられた.従って, PKCζを分子標的とした阻害剤は慢性関節リウマチなどの炎症性疾患の治療に有用であると考えられる.
  • 相葉 佳洋, 松山 睦美, 小森 敦正, 植村 隆, 右田 清志, 八橋 弘, 石橋 大海, 近藤 久義, 菊池 三穂子, 安波 道郎, 中 ...
    セッションID: 78
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    <背景・目的>原発性胆汁性肝硬変(PBC)の進行には、抗gp210抗体陽性の肝不全型進行群と抗セントロメア抗体陽性の非肝不全型進行群があることを昨年の本学会で報告した。今回、日本人PBCの発症および進行に関する免疫遺伝学的背景を明らかにするために、HLA-DRおよびサイトカイン遺伝子の多型解析をおこなった。<対象・方法>国立病院機構肝疾患共同研究グループに登録されているPBC150症例(観察期間:2-289ヶ月:中央値 59)における血清中の抗gp210抗体、抗セントロメア抗体をELISA法により測定した。HLA-DRB1とTNF-α、TGF-β、 IFN-γ、IL-10、IL-6サイトカインの遺伝子多型をそれぞれPCR-RFLP法とPCR sequence primer typing法により解析した。<結果>HLA-DRB1*0803はPBC発症と抗セントロメア抗体陽性の危険因子であった。HLA-DRB1*0405は、抗gp210抗体陽性の危険因子であり、HLA-DRB1*0405キャリアーの中で進行症例は全て抗gp210抗体陽性であった。また、IFN-γ intron +874(T/T + T/A)は、A/Aと比較して抗gp210抗体陽性の危険因子であった。<結語>PBCの発症や進行に、HLAやサイトカインを含めた多くの遺伝子多型が関与していることが示唆された。
  • 遠藤 平仁, 橋本 篤, 広畑 俊成, 北里 英郎
    セッションID: 79
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    15-リポキシゲナーゼ(15LOX)は炎症抑制、組織修復などに関与するkey enzymeである。近年、強皮症の間質性肺炎(IP)や関節リウマチ(RA)の病変形成との関連で注目されている。臨床的および実験的に15LOXを過剰発現させた場合の効果について検討した〔方法〕臨床的解析;RA関節滑膜などの病変部位における15-LOXの発現を免疫染色、RT-PCR法やIn Situ hybridization法にて検出した。またRA関節液のLXA4,15epi-LXA4濃度をELISA法にて測定。実験的解析:15-LOX遺伝子導入レトロウイルスベクターを作成、持続的15-LOX過剰発現細胞を作成しマウスモデルに移植しブレオマイシン誘導間質性肺炎モデルや関節炎モデルの変化を測定〔結果〕RA関節滑膜にはOAより15-LOXmRNA 発現が多く検出され関節液にもLXA4が検出。マウス間質性肺炎モデルに15LOX遺伝子導入細胞を静注移植。BALF中のLXA4、15-HETEは増加し炎症細胞数は顕著に抑制。病理組織変化も顕著に改善。関節内に15LOX遺伝子導入C57細胞を移植し関節炎誘導させると関節炎重症度は低下〔結論〕15-LOXはLXA4産生誘導を介して間質性肺炎や関節炎の病変形成を抑制する作用を有し遺伝子導細胞移植は病変形成を抑制し新たな治療標的になる可能性が示唆された
  • 植田 光晴, 孟 薇, 大林 光念, 堀端 洋子, 安東 由喜雄
    セッションID: 80
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    【目的】 関節リウマチなどに併発するAAアミロイドーシスの発症機構は不明な点が多く確立された治療法もない。本研究ではT細胞とアミロイド沈着機構の関連に注目し、実験的AAアミロイドーシス惹起マウスに対しT細胞の活性化を抑制する免疫抑制剤であるFK506を用いアミロイド沈着抑制効果をはじめとする病態変化を解析した。 【方法】2種類の方法(急性アミロイド惹起と慢性アミロイド惹起)でマウスにAAアミロイドーシスを惹起しFK506を連日投与した。組織学的にアミロイド沈着量の変化を検討した。同時に血清中のSAA、IL-1β、IL-6、TNF-α濃度の変化をELISA法で測定した。また、肝臓でのSAAのmRNAレベルをリアルタイムRT-PCR法で検討した。更に、SCIDマウスとヌードマウスのアミロイド形成性を検討した。 【結果】FK506は用量依存性を持ってアミロイドーシス抑制効果を示した。FK506投与でアミロイド前駆蛋白質であるSAAの血清濃度とそのmRNAレベル、SAAの産生を刺激するIL-1β、IL-6は抑制されなかった。また、SCIDマウスとヌードマウスはAAアミロイドーシス惹起に対して抵抗性を示した。 【結語】 AAアミロイドーシス形成機構にT細胞の動態が関与していると考えられる。T細胞の活性化抑制をターゲットとする治療戦略はAAアミロイドーシスの新たな治療法となる可能性がある。
  • 仲野  総一郎, 山路 千春, 金井 美紀, 山中 健次郎
    セッションID: 81
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    Ku抗体はp70/p80 heterodimerを抗原とし、PM+SScのオーバーラップ症例の20~30%に発現するといわれている。アメリカではオーバーラップ症候群よりもSLEで発現が多くみられるともいわれている。今回我々は、SLE・PMオーバーラップでKu抗体陽性の症例が、ヘルペス髄膜炎からVAHSを併発した非常に珍しい臨床経過を経験したため写真・画像をふまえて報告する。
  • 箕輪  健太郎, 名切 裕, 安藤  誠一郎, 仲野 総一郎, 天野 浩文, 森本 真司, 戸叶 嘉明, 高崎 芳成
    セッションID: 82
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    目的;膠原病患者におけるPCPについて、臨床像、危険因子、予後及び予防投与基準の有用性についての検討を行う。方法;過去10年間で、当科入院中に喀痰PCR陽性PCPを併発した膠原病患者20例を統計解析した。結果;血液data上、リンパ球数、IgG値及びアルブミン値はほぼ全例でいずれかが低下しており、発症の危険因子として重要であると考えられた。間質性肺炎合併例が9例と多く認められた。β-Dグルカン、LDH、KL-6は高値を示した例が多く、診断に有用であると考えられた。予防投与基準の発表後、PCP発症頻度は著明に低下認めたが、若年例やRA患者において、予防投与基準の非該当者が多く見受けられた。PCPの治療としてステロイドパルスを施行されている例は10例あり、生存例、死亡例は半数ずつであった。考察;各種膠原病における治療の変化に際し、予防投与基準も症例を重ねて適時検証していく必要があると思われた。PCPのステロイドパルスによる加療の有効性についても今後、各疾患ごとに検証していく必要性があると思われた。
  • 片桐 彰, 安藤 俊孝, 今 高之, 山田 雅人, 飯田 昇, 高崎 芳成
    セッションID: 83
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]サイトメガロウイルス(CMV)感染症は、免疫抑制状態で再活性化する日和見感染症であり、免疫抑制治療を要する膠原病患者において重要な合併症である。今回我々は、当科におけるCMV抗原血症陽性患者を検討し、積極的検索の必要性について考察した。[方法]対象は平成16年1月から19年4月までに入院した168例中、CMV抗原血症陽性となった14例。CMV抗原血症の検出はC7-HRP法を用いた。[結果]原疾患及び治療によるリンパ球数低下や、IgGの低下を認める症例が多かった。発熱やリンパ節腫脹、異型リンパ球の出現等は多くの症例で認められなかった。肝機能異常は軽微であったり、筋炎の合併や多臓器不全のため入院時より異常を認めていた症例が多かった。10万を切らない程度の徐々に低下する血小板減少を認める症例が多く、CMV抗原血症を想定する指標となりえた。[考察]CMV感染症に特徴とされる症状や検査所見の多くは、CMV抗原血症を想定しうる材料になりにくい可能性がある。軽度の血小板減少はCMV抗原血症を想定しうるが、鑑別すべき病態・疾患も多く、特異的とは言い難い。文献的には高容量のステロイド投与例のCMV抗原血症合併頻度は非常に高く、病態によらず積極的な検索が原疾患の悪化や致死的病態へ移行させないために必要と考えられる。[結語]当院膠原病患者におけるCMV抗原血症患者を検討した。免疫抑制治療中は積極的なCMVの検索が必要である。
  • 高田 英俊, 野村 明彦, 石村 匡崇, 井原 健二, 大賀 正一, 原 寿郎
    セッションID: 84
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
     NEMO遺伝子異常により、X染色体連鎖性外胚葉形成不全免疫不全症候群および色素失調症がおこる。今回、ベーチェット病と診断された2名の患者(女児およびその母)にNEMO遺伝子異常を確認したので報告する。患児の兄は外胚葉形成不全症と診断を受け加療されたが9歳時に消化管出血にて死亡。母は小学生の頃から肛門部潰瘍を認め中学生時にベーチェット病と診断され、現在ステロイド剤による治療を受けている。患児は平成18年8月から肛門部に潰瘍が出現。難治であるため19年3月22日当科に入院。大腸内視鏡検査にて回盲部周辺に潰瘍を多数認めベーチェット病と診断した。母および患児皮膚に脱色素性の病変が認められた。兄、妹、母のNEMO遺伝子解析の結果、Exon10に相当する箇所にAspがValへのアミノ酸置換を伴う遺伝子変異を認めた。これまでにも色素失調症にベーチェット病が合併した症例の報告があり、NEMO遺伝子がベーチェット病の発症に関与しているものと考えられた。
  • 石村 匡崇, 高田 英俊, 大賀 正一, 原 寿郎
    セッションID: 85
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    重症複合免疫不全症 (SCID) のうち、T-B-NK+SCIDはRAG-1/2やArtemis等の遺伝的障害により発症し、後者は放射性感受性を伴う。Artemis分子と共にDNA二本鎖切断の修復機構に関わるNBSやDNA Ligase IV (LIG4) の異常により、小頭症、免疫不全及び発育障害がおこり、それぞれNijmegen症候群、LIG4症候群として知られてきたが、これらの疾患ではSCIDを伴うことがある。今回我々は小頭症・鳥様顔貌・発育障害に造血不全を伴いNBS1遺伝子やLIG4遺伝子に異常を認めなかった新規SCIDの男児を経験したので報告する。症例は8生月男児。在胎31週967gにて出生。RDS、PDA、停留精巣、白血球減少、貧血、肺高血圧症、慢性肺疾患等があり、日齢100まで前医で入院加療を受けていた。ロタウイルス腸炎の後、汎血球減少を指摘され紹介入院した。血清IgG値50 mg/dl以下、リンパ球芽球化反応 (PHA) 112 S.I.(%)(254-388) 等から重症複合免疫不全症と診断し、体重増加/全身状態の安定化を待って、1歳3カ月時にRISTによる臍帯血移植を行い良好な経過を得ている。
  • 石黒 精, 真々田 容子, 那須野 聖人, 幸田 恭子, 鈴木 徹臣, 村田 敬寛
    セッションID: 86
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
     無ガンマグロブリン血症の治療には感染症のコントロールに加えて,合併する悪性腫瘍,自己免疫疾患,アレルギー性疾患への注意や精神的ケアも大切である。長期間観察した6例について報告する。 症例はすべて男性。(1)(2)はXLAの兄弟。(1) 1977年出生,85年CVIDと診断,その後訂正。IgG 300 mg/dl,アレルギー性鼻炎。(2) 83年出生,IgG 500 mg/dl,IgE 250 IU/ml,感染は少ない。アレルギー性鼻炎,本態性高血圧。躁鬱病で長期休校。(3) 81年出生,84年XLAと診断。IgG 108 mg/dl, 06年 lymphocytic hypophysitisによると推定される中枢性尿崩症。腫瘍の有無を経過観察中。(4) 81年出生,93年初めて免疫不全を指摘,XLA否定。IgG 400 mg/dl, B cell 0.3%, 好中球500/μl。気管支拡張症,難聴。(5)(6)はXLAの兄弟,父がHBキャリアー,父と姉がアルコール依存症。(5) 72年出生,IgG 100 mg/dl,無臭症,円錐角膜,気管支拡張症,うつ状態,95年交通事故で死亡。(6) 74年出生,IgG 68 mg/dl, 77年γグロブリンによりアナフィラキシーショック,82年 フェノバルビタールによりtoxic epidermal necrolysis。肺炎反復,96年無気肺,気胸,多発性巨大ブラ,右肺全摘。83年 B型慢性肝炎,96年に肝癌,急速に進行して97年に死亡。
  • 西尾 信一郎, 高木 賢治, 楠 芳恵, 松本 菜穂子, 金子 開知, 山本 竜大, 秋元 貴美子, 吉野 匠, 徳山 美香, 川合 眞一
    セッションID: 87
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    【緒言】B細胞欠損による無γグロブリン血症に染色体異常を伴った1例を経験した。このような免疫不全症が成人期に診断されることは極めて稀であり文献的考察を加え報告する。【症例】34歳女性。小児期感染症の遷延、重症化なし。左膝関節痛と発熱に対して他院にて抗菌薬を投与。関節炎は軽快したが、CRP上昇と発熱が持続するため紹介入院となった。低身長、やせ、鳩胸、特異顔貌、高口蓋、口唇口蓋裂、開口障害あり。左肺呼吸音減弱。CRP 15.7mg/dL、WBC 11000/µL (Neu 83.4%、Lym 9.9%)、Hb 8.8g/dL、PLT 41.2万/µL、CD19+ 0.1%以下、CD4/CD8比0.68。IgG、A、M、E、D全て測定感度以下。骨髄CD10+ 1%、add(8)(q24) 17/20。胸部CTにて心嚢液・胸水の貯留あり、胸腺腫なし。膿性胸水でブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌を検出。【経過】膿胸と診断し、γグロブリン、抗菌薬、胸水ドレナージにて軽快した。以後、γグロブリン補充療法にて経過良好。【考察】本例は先天異常が強く示唆され、さらにB細胞欠損を伴う無γグロブリン血症が成人期に確認された極めて稀な例であり、Chromosome instability syndromeと考えられた。遺伝子検索等、今後詳細な検討を予定している。
  • 和田 泰三, 東馬 智子, 横山 忠史, 笠原 善仁, 小泉 晶一, 谷内江 昭宏, 安井 昌博, 井上 雅美, 河 敬世
    セッションID: 88
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    γc鎖の異常に起因するX連鎖重症複合免疫不全症(X-SCID)は、TおよびNK細胞の発生が障害されるため、T-B+NK- SCIDの表現型となる。今回我々は、自己TおよびNK細胞が出現しOmenn症候群様の症状を呈した非典型的X-SCIDの1例を経験したので報告する。症例は5ヶ月男児。生後2ヶ月より微熱・咳嗽を繰り返し、難治性下痢による低蛋白血症のため入院となった。全身のアトピー性皮膚炎様皮疹、リンパ節腫脹、肝脾腫、白血球増多、IgG低値、IgE高値を認めたが、RAG遺伝子に異常なく、T細胞受容体レパトアはV(D)J再構成に障害があるパターンではなかった。またマイクロサテライト解析により母体血混入の可能性は否定された。異父の兄が間質性肺炎にて死亡しており、γc鎖を解析したところ発現が低下していた。遺伝子解析にてイントロン1に変異129(+5)g>aを認め、母親は保因者であった。患児では28bpのイントロン配列が挿入される異常mRNAとなるが、ごく一部には正常mRNAも作られていることが判明し、このためTおよびNK細胞の発生は障害されなかったが、その機能は不十分で免疫不全症を発症したと考えられた。実際、患児T細胞のIL-2に対する反応は低下していた。また皮膚にはCD8+ T細胞がクローン性に増殖しており皮疹との関連性が示唆された。以上より、X-SCIDの臨床スペクトラムは幅広く、Omenn症候群様の症状をとり得ることが示された。
  • 豊田 宣彦, 岩山 祐司, 鶴間 哲弘, 大村 東生, 鳥越 俊彦, 平田 公一, 佐藤 昇志
    セッションID: 92
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    「目的」近年、各種の癌にてHLA class I発現の低下と予後との相関性が報告されている。今回我々は、乳癌組織におけるHLA class I発現低下と臨床的背景、予後との関連性について検討した。 「方法」1997年~2000年において施行された乳癌162症例の手術摘出標本に対して、ホルマリン固定標本の免疫染色に適したpan-HLA class I抗体EMR8.5を用いて免疫染色し、HLA class I発現を陽性、低下、陰性の3段階に分類し、臨床病理学的検討を行った。 「結果」全症例中で発現低下と陰性症例合わせると約80%に達した。全症例を対象とした場合、臨床的背景や患者予後との間に統計学的に有意な相関性は認められなかったが、臨床病期が上がるにつれ陰性率は高くなる傾向があった。また、stage IIIに限って再発率を比較すると、HLAの発現低下および陰性症例で有意に再発率が高くなることが判明した。 「結語」乳癌においても、他の癌種と同様にHLA class Iの発現低下は予後不良とあると考えられた。
  • 佐々木 茂, 石田 禎夫, 篠村 恭久, 今井 浩三
    セッションID: 93
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    内科および外科治療の著しい進歩によって、肝細胞がんに対する局所制御能は格段の進歩を示し、単発かつ腫瘍径の小さい早期の肝細胞がんで肝予備能力が高く維持されている場合、予後も非常に改善されてきている。しかしながら、進行した肝細胞がんにおいては、十分な予後の改善が得られていないのが現状である。この進行肝細胞がんの予後の改善が十分でない理由として、多中心性発がん、肝内転移、門脈浸潤といった肝細胞がんの特徴があげられる。このような多中心性発がん、肝内転移、門脈浸潤を生じている場合、多くはすでに肝予備能力の著しい低下が認められ、このような場合、がんに対する治療が困難な症例もよく経験される。治療の選択および成否について、肝予備能力が大きな比重を占めていることも周知の事実である。
    このような背景から、肝細胞がんの治療を行うには、肝予備能力にさらに影響を与えず、肝予備能力の低下を生じさせるがん浸潤に対するその抑制などを含めた強力な抗がん効果を発揮する理想的な薬剤の開発が急がれる。
    われわれのこれまでの研究から、サイトカインXにより肝がん細胞において、抗原Bが過剰発現されることをすでに見出している。この抗原Bは非がん肝細胞にはほとんど発現されていないこと、また、この抗原Bを介した刺激は細胞増殖および細胞浸潤、さらに血管新生に関与していることも報告されている。このような点から、われわれはこの抗原Bに対する抗体を作成した。肝がん細胞にサイトカインXを投与し、抗原Bを過剰発現させ、抗B抗体を投与したところ、著明な抗がん効果が認められた。
    進行肝細胞がんに対する抗体治療の試みを述べたい。
  • 岩堀 幸太, 世良田 聡, 藤本 穣, 黒田 俊一, 大崎 匡, 川瀬 一郎, 仲 哲治
    セッションID: 94
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    SOCS(the suppressors of cytokine signaling)はJAK/STAT系のシグナル伝達を制御し、癌細胞における細胞増殖抑制効果があることが報告されている。そこで我々は肝細胞特異的な分子送達が可能なバイオナノカプセルを用いて肝細胞癌特異的にSOCS分子を導入し、癌治療モデルを作成することを試みたので報告する。
  • 安井 寛, 石田 禎夫, 五十嵐 麻衣, 太田 明伸, 浅野 竜太郎, 熊谷 泉, 佐々木 茂, 篠村 恭久, 今井 浩三
    セッションID: 95
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    我々は現在腫瘍が発現する4種類の抗原に対してモノクローナル抗体を用いた治療法の開発に取り組んでいる。この中の抗原のひとつ抗原A(現在特許申請前の研究であり、具体的な抗原名は控えさせていただいた)は、膵癌・胃癌・大腸癌などの腺癌において強く発現されていることが知られている。はじめに、抗原Aに対するマウス抗体の可変領域の遺伝子配列をクローニングした。次に、CD3と抗原Aに結合することが可能なbispecific diabody を作製する目的で、可変領域の遺伝子配列をbispecific diabody 発現ベクターに組み込んだ。ベクター作製後、発現細胞に遺伝子導入し、抗体を精製した。Bispecific diabody の抗原Aを発現している細胞とCD3発現細胞に対する結合を確認した。抗原Aを発現している種々のヒト癌細胞株を用いて、bispecific diabodyのin vitro における抗腫瘍活性を確認した。抗原Aを発現しているヒト胃がん細胞株を SCID マウスに移植し、T-LAK と bispecific diabody を併用した治療実験を行った。bispecific diabody 20μg / body とT-LAK 細胞を併用投与した群で、コントロール群やT-LAK細胞単独投与群と比べて有意に腫瘍細胞の増殖を抑制することができた。
  • 町田 卓郎, 佐藤 勉, 高橋 祥, 荒木 直子, 村瀬 和幸, 井山 諭, 佐藤 康史, 小船 雅義, 瀧本 理修, 松永 卓也, 加藤 ...
    セッションID: 97
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    [背景]細胞死はアポトーシスとネクローシスに大別され、前者の分子機構は明らかにされつつある。後者に、活性酸素(ROS)やカテプシンなどのライソソーム酵素、receptor-interacting protein (RIP)が関与する可能性は報告されているものの、その詳細は不明である。また、ATPの欠乏がアポトーシスをネクローシスにスイッチする現象は知られているが、そのメカニズムも不明のままである。今回我々は、ミトコンドリア遺伝子欠損細胞を用いて、これらの問題点を解析した。[方法]ヒトT細胞性リンパ腫株Jurkat(rho+)をethidium bromide存在下で長期培養し、ミトコンドリア遺伝子欠損の亜株rho0を得た。これらをagonistic anti-Fas antibodyで刺激し、propidium iodide染色の後、フローサイトメーターおよび蛍光顕微鏡観察で細胞死を判定した。[結果]rho+には典型的なアポトーシスが誘導されたが、rho0の細胞死はネクローシスであった。rho0では、急速なATP欠乏、カスパーゼ3や9の不十分な活性化、多量の ROS産生、ライソソーム酵素の放出が観察され、ROSの消去はライソソーム酵素の放出を、ライソソーム酵素の阻害はネクローシスを抑制した。一方、ATPを細胞外から補充したところ、カスパーゼ3や9が活性化され、rho0にはアポトーシスが誘導された。その際、ROSの産生量やライソソーム酵素の放出には変化を認めなかったが、細胞質へ放出されたカテプシンの活性は抑制されていた。しかし、カスパーゼ3阻害剤を併用するとカテプシン活性は回復し、アポトーシスは再びネクローシスにスイッチした。他方、siRNAでRIPの発現を阻害しても、rho0のネクローシスはわずかに抑制されるのみであった。[考察]これらの結果から、アポトーシスシグナルはATP依存性にカスパーゼ3を活性化し、この活性によってネクローシスシグナルの最終実行者であるカテプシンの活性を抑制しているものと推測された。
  • 末広 寛, 今井 浩三, 日野田 裕治
    セッションID: 98
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】昨年の本学会での報告に引き続き、大腸癌におけるFrizzled-7(FZD7)の治療標的分子としての可能性を検討した。 【方法】 HCT116にmock、FZD1、FZD7を導入して1)Wntシグナル経路の標的遺伝子の発現、2)FZD7 siRNA導入によるインターフェロン誘導反応、3)FZD7 siRNA導入による増殖抑制効果を検討した。また4)大腸癌細胞株におけるCD44の発現を検討した。 【結果】1)FZD7はmockに対してmyc、CyclinD1、CD44、VEGF、Id2は2倍、Survivinは1.4倍、junは3.3倍 の増加を認めた。FZD1はmockに対してmycは1.3倍、junは2.8倍 の増加を認めた。2)HCT116にFZD7 siRNAを導入してもOSA1は誘導されておらず、インターフェロン誘導反応は起きていないことが確認された。3)FZD7 siRNAを変異β-catenin を有するHCT116に導入すると、培養6日後ではコントロールに対して80%の増殖抑制効果を認めた。4)FZD7 mRNAを発現する6種類の大腸癌細胞株全てでCD44 mRNAの発現を認めたが、フローサイトメトリーでは6株中5株で発現を認めた。 【結論】FZD7は治療標的分子として有用であることが示唆された。抗CD44モノクローナルを用いたsiRNAのデリバリーについて現在基礎的検討を進めている。
  • 金 雅子, 高橋 剛, 世良田 聡, 松川 裕子, 相馬 大人, 岩堀 幸太, 榎本 隆之, 木村 正, 仲 哲治
    セッションID: 99
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    背景:明細胞腺癌は上皮性卵巣悪性腫瘍の中でも予後不良で、かつ日本ではその頻度が全体の10%余りと欧米に比して高い割合を占める。今回、病理学的臨床的に際立った特徴を持つ明細胞腺癌において、他の組織型と比べて発現の異なるタンパクを同定し、さらに薬剤耐性との関連についても調べる。 方法:プロテオミクスの手法を用いてタンパクレベルの発現を解析した。2種類の組織型の細胞株、OVISE(明細胞腺癌)とOVSAHO(漿液性腺癌)から抽出したタンパクを2 Dimensional Fluorescence Difference Gel Electrophoresis (2D-DIGE)によって1枚のゲルに2次元電気泳動し、それぞれで発現するタンパクを蛍光色素で染め分けた。明細胞腺癌で特異的に発現しているタンパクを選び質量分析機で解析した。各細胞株から同定したタンパクのmRNAを抽出、定量的PCRによってRNAレベルの発現を比較した。さらに手術標本を用いて免疫染色を行った。続いて、同定したタンパクのcDNAやRNAiを各細胞株に導入し、細胞増殖の変化や薬剤抵抗性について調べる。 結果:2D-DIGEおよび質量分析の結果、明細胞腺癌に特異的に発現するタンパクとしてAnnexin IVを同定した。各細胞株でAnnexin IVの定量的PCRを行ったところ、明細胞腺癌で約25倍高い発現を確認した。免疫染色では明細胞腺癌の標本において陽性を示し、他の組織型では陰性であった。現在、遺伝子導入の手法によりAnnexin IVの発現を増強・減弱させ、細胞増殖や薬剤抵抗性との関連について検討中である。 結論:Annexin IVは上皮性卵巣悪性腫瘍の中で明細胞腺癌に特異的に発現することより、今後新たな疾患マーカーや予後マーカー、また分子標的治療のターゲットとなる可能性が示唆された。
  • 藤川 敬太, 川本 真規子, 川尻 真也, 岩本 直樹, 荒牧 俊幸, 一瀬 邦弘, 蒲池 誠, 玉井 慎美, 中村 英樹, 折口 智樹, ...
    セッションID: 100
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    [背景]後天性血友病は、後天的に凝固因子に対する抗体が産生され、出血傾向を呈する疾患である。今回、抗リン脂質抗体症候群(APS)を合併した難治性の後天性血友病を経験したので報告する。[症例]38歳女性。2006年7月より四肢および殿部に皮下出血が繰り返し出現していた。APTTの著明延長、抗カルジオリピン抗体陽性よりAPSを疑われ当科紹介。抗CLβ2GPI抗体 11.4U/ml、肺換気血流シンチでのミスマッチを認めAPSと診断。凝固系の精査を行ったところ、第_VIII_因子活性 1%、第_VIII_因子インヒビター活性 1450BU/ml、特異的第_VIII_因子結合抗体 0.199mg/dlであったため、APSに合併した後天性血友病と診断しプレドニゾロン(PSL)およびシクロフォスファミド(CPA)の治療を開始した。しかし、APTTは改善せず皮下出血を繰り返していたため、リツキシマブ(RTX)の投与(500mg4回)を行った。その後、PSLとシクロスポリン(CyA)を併用し経過を観察しているが、第_VIII_因子インヒビター活性は1450BU/mlから41BU/mlまで低下し、APTTは徐々に改善傾向にある。[結語]難治性の後天性血友病に対して、PSL・免疫抑制剤(CPA・AZP・CyA)およびRTXの併用療法は有効であった。難治性後天性血友病に関して文献的考察を含めて報告する。
  • 柏村 眞
    セッションID: 101
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
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    抗MRA抗体IgE出現後もMRA長時間投与により継続可能となり、良好な経過を辿っている症例を報告する。症例45歳女性 3年前全身倦怠感。2年前から微熱、1年以上前から頸部・鼠径部・腋窩リンパ節腫脹に気付く。腹腔内リンパ節腫脹もあり。平成15年4月11日リンパ節生検。Castleman病(plasma-cell type)でありmulticentric Castleman病と診断。7月26日よりPrednine 50mg投与、漸減、16年1月23日から15mgで維持。 17年4月1日以降、肝機能障害(Cholestasis)が出現、遅れて肝細胞障害も出現。8月11日アクテムラ(抗IL-6R抗体)の治療を開始。2週間後、第2回アクテムラ投与(MRA 5.6, IgE 15.3)。アクテムラ投与中に全身蕁麻疹、悪寒出現。強ミノとソルコ-テフで軽快。2週間後、第3回アクテムラ投与(MRA<1.00, IgE 5.45)。CRP 5.0と上昇。25mg/hの時には異常なし。50mg/hにして30mL入った時に全身蕁麻疹と悪寒出現。強ミノとソルコ-テフするも痒みが持続しソルコーテフ200mgを追加投与にて軽快。1週間後、第4回アクテムラ投与(MRA24, IgE 5.96)。前回infusion reaction like symptoms出現したため、リツキサンに準じてポララミン・ブルフェンを前投与した。アクテムラは10ml/h 15分間投与後、25ml/hとした。副作用なし。以後もIgE抗体は陽性であったが副作用なし。アクテムラ投与後、肝機能が著明に改善、自覚症状・社会活動も発症前戻っている。
  • 保仙 直毅, 杉山 治夫
    セッションID: 102
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    化学療法の進歩にも関わらず、化学療法のみでは治癒に至らしめることができない急性骨髄性白血病患者は多数存在する。それは、抗癌剤が白血病幹細胞に対して十分に有効でないためと考えられる。白血病幹細胞を標的とした治療を開発するための第一歩として白血病幹細胞と正常幹細胞を識別、分離できるようにすることが重要であるが、現在のところ、白血病幹細胞と正常幹細胞はともにCD34+CD38-分画に濃縮されると報告されており、それらの識別は困難である。そこで、本研究では、急性骨髄性白血病患者検体のCD34+CD38-細胞に発現していて、正常骨髄造血幹細胞分画である CD34+CD38-細胞に発現していない細胞表面マーカーを同定することにより、両者を識別可能にすることを目的とした。我々は本研究において、signal sequence trap法を応用することにより、CD96 mRNAが白血病CD34+CD38-細胞において高発現しているのに対して、正常CD34+CD38-細胞での発現は極めて低いことを明らかにした。引き続いて行ったFACS解析では、29例中19例の急性骨髄性白血病において、CD96はCD34+CD38-細胞の多数(74.0 ± 25.3%)に発現しているのに対して、正常 Lin-CD90+CD34+CD38-造血幹細胞ではわずか(4.9 ± 1.6%)の 細胞に弱い発現が見られるのみであった。さらに、急性骨髄性白血病CD96+細胞が機能的な白血病幹細胞を濃縮しているか否かを明らかにするため、FACS-sortしたCD96+あるいはCD96-細胞を Rag2-/- γc -/- 新生児マウスに移植し、マウスin-vivoで白血病細胞が再構築されるか検討した。その結果、5例中4例においてCD96陽性白血病細胞のみがマウスへの生着を示した。これらの結果は、CD96が急性骨髄性幹細胞特異的な細胞表面抗原であることを示している。さらに、今後、CD96が正常幹細胞にはなく白血病幹細胞上には存在する理想的な治療標的となる可能性を示している。
  • 釜田 康行, 岩本 雅弘, 吉尾 卓, 岡崎 仁昭, 簑田 清次
    セッションID: 106
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    膠原病に伴う重症レイノー現象、指尖潰瘍に対するPDE-5阻害薬の有効性を検討すると共に、シルデナフィルとバルデナフィルの有効性の比較を行った。 急性効果確認試験:17例に対して、シルデナィル50mgまたはバルデナフィル10mgを単回投与し、投与前および投与後15分毎に2時間、手背指尖部の温度をサーモグラフィーを用いて経時的に測定した。その結果、シルデナフィル投与群では0.12~5.76度、平均1.67度、バルデナフィル投与群では0.54~4.74度、平均2.84度の温度上昇が見られた。 長期効果確認試験:急性効果確認試験を行った7例に対して、シルデナフィル50mgまたはバルデナフィル10mgを同一の季節に3ヶ月間、1日1回連日投与し、投与前と投与3ヵ月後に有効性を評価した。その結果、シルデナフィル投与群では0.57~3.07度、平均1.89度、バルデナフィル投与群では0.72~3.44度、平均2.49度の温度上昇を認めた。また、7例中5例に難治性指尖潰瘍を認めていたが、5例中4例で明らかな改善を認めた。 PDE-5阻害薬は短時間で指尖部温度が上昇することが確認された。また、継続して内服することにより、指尖部温度が上昇すると共に高率に指尖潰瘍を改善し得ることが確認された。そのため、PDE-5阻害薬は膠原病に合併したレイノー現象に対して極めて有効性の高い薬剤である可能性が示唆された。
  • 前田 和久, 緒方 篤, 園田 美奈, 寺部 文隆, 沖田 考平, 岩橋 博美, 船橋 徹, 下村 伊一郎
    セッションID: 110
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    症例61歳男性。2000年(54歳)頃から左膝が徐々に腫脹し、2002年左股関節、左膝関節内視鏡下滑切除施行、リウマチ性関節炎と診断。10月からプレドニン10mg/day開始されたが、2003年夏ごろから口渇認め、その際尿糖(4+)、HbAlc11.4%、昼食前血糖326mg/dlを指摘。ステロイド誘発性の糖尿病と診断され、速攻型インスリン(8,8,7)と糖尿病食(1600kcal)にて血糖コントロールが安定し外来通院中であった。2005年免疫内科外来にて抗TNFα抗体投与を受けたころより、急激なインスリン抵抗性の改善を認められ、最終的にはインスリン使用が必要でなくなった。また本症例では抗TNFα療法直後より、血清アディポネクチンの著明な上昇が認められた。 肥満に伴うインスリン抵抗性の主因としてTNFα分泌増加が原因となることがマウス等の実験で明らかである。またTNFαに対してアディポネクチンは拮抗的に作用していると考えられ本症例のインスリン抵抗性改善にも寄与していると考えられる。現在までの我々の研究データと合わせて本症例について考察したいと考える。
  • 南波 崇, 渡邉 幹夫, 和田 恵, 赤水 尚史, 岩谷 良則
    セッションID: 111
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】橋本病 (HD)とバセドウ病 (GD) において、その重症度や難治性は患者間で大きな差がある。我々は末梢血中のIgG3産生細胞数およびIgG3クラススイッチ因子であるIL-10濃度が難治性GDで増加していることを報告した。IL-10はTh1サイトカインを抑制する一方、B細胞の抗体産生を誘導すると考えられている。そこでIL-10の産生量と関連しているIL-10遺伝子の-592A/C多型とHD重症度及びGD難治性との関連を調べた。
    【方法】甲状腺マイクロゾーム抗体陽性者をHDと診断し、甲状腺機能低下症を発症して、甲状腺ホルモン剤補充療法を要する群を重症群(39例)、未治療でも甲状腺機能正常である群を軽症群 (36例)とした。また、甲状腺中毒症の病歴をもち、抗甲状腺剤により寛解導入できたGD群を寛解群 (25例)、できなかった群を難治群 (49例)とした。さらに健常人 (59例)を解析した。
    【結果】-592A/C多型のうち、IL-10産生能が高いCC遺伝子型の頻度はHD重症群 (18.0%)で、HD軽症群 (2.8%)より有意に高頻度であった (p=0.037)。また、HD重症群 (41.0%) でC alleleの頻度はHD軽症群 (22.2%)よりも高頻度であった (p = 0.010)。GDの難治性と-592A/C多型の関連はみられなかった。-592A/C多型と甲状腺自己抗体(TRAb、McAb、TgAb)の抗体価との関連もみられなかった。
    【結論】IL-10遺伝子-592A/C多型がCC遺伝子型のHDは重症化しやすいと考えられた。
  • 渡邉 幹夫, 岡本 典子, 松塚 文夫, 宮内 昭, 岩谷 良則
    セッションID: 112
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】特異的な免疫応答の惹起には、抗原提示細胞によるMHCクラスII分子を介した抗原ペプチドの提示とCD80/86分子を介した副刺激が必要であり、CD80/86分子非存在下では特異的ヘルパーTリンパ球にアナジーを誘導することが知られている。自己免疫性甲状腺疾患(AITD)で、甲状腺上皮細胞にMHCクラスIIが発現していることについては合意が得られているが、CD80/86の発現の有無に関しては未だ一定の見解は得られていないため、検討を行った。
    【方法】バセドウ病(GD)甲状腺組織13例、橋本病(HD)甲状腺組織4例、正常甲状腺組織3例より、外科手術で得られた甲状腺組織の凍結切片を作製し、副刺激分子に特異的な一次抗体として、抗CD80(B7-1)(P1.H5.A1.A1;Ancell)、抗CD86(B7-2)(BU63;Ancell)のマウス抗ヒト抗体を用い、ABC法で免疫組織化学染色を行った。
    【結果】GD及びHDの甲状腺組織では、甲状腺上皮細胞にはCD80/CD86は発現しておらず、浸潤単核球の一部とリンパ濾胞の一部にCD80/86の発現を認めた。
    【考察】AITDの甲状腺上皮細胞にはCD80/86分子は発現しておらず、これらの分子は浸潤単核球(樹状細胞、リンパ球)とリンパ濾胞に発現していた。従って、AITDにおける甲状腺上皮細胞のMHCクラスII分子の発現は、甲状腺自己免疫を惹起するのではなく、活性化した甲状腺特異的ヘルパーTリンパ球のアナジーを誘導する可能性が示唆された。また甲状腺に対する免疫応答は甲状腺内のCD80/86陽性浸潤単核球によって惹起されている可能性が示唆された。
  • 大谷 賢一郎, 上地 隆史, 早川 美緒, 赤松 弘朗, 西島 正剛, 美川 達郎, 柳生 恭子, 紙森 隆雄, 加地 政秀, 藤原 寛, ...
    セッションID: 113
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    MCDは全身のリンパ節腫脹を来たす原因不明の疾患で、IL-6がその病態形成に関わっている。ステロイドや免疫抑制剤が治療に用いられるが十分な治療効果を得ることは困難である。近年抗IL-6受容体抗体(トシリズマブ)が市販され、臨床応用されており、本薬剤投与により改善の見られた症例を経験したので報告する。 24歳男性、検診での胸部レントゲン異常を主訴に平成16年6月30日当院を受診した。胸部CTにて両側肺野にびまん性の小粒状影を認め、腋窩、縦隔リンパ節腫大からMCDを疑い、リンパ節生検および胸腔鏡下肺生検より診断した。徐々に肺や陰影の増強が見られ、全身倦怠感、発熱もあったことから、平成17年1月12日よりプレドニゾロン 40mg/bodyにて治療を開始し、漸減を行った。症状の改善は得られたが、WBC 8100/μl, CRP 8.4 mg/dlと炎症反応は完全には低下せず画像の改善もなかったことから、7月21日よりトシリズマブの投与を開始した。全身倦怠感はわずかとなり、陰影は残存するものの改善しており、炎症反応は陰性化した。上気道炎がたびたび見られるが、重篤な副作用もなく経過は良好である。
  • 松井 隆, 乾 直輝, 須田 隆文, 千田 金吾
    セッションID: 114
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    【背景】抗血管内皮細胞抗体(AECA)は,SLEなどの膠原病や血管炎を来す疾患で検出され,臓器病変や活動性によって検出率が変化しうることが報告されている。AECAが内皮細胞の表面上の抗原に結合し,サイトカインの分泌や接着因子を発現し,血管炎を引き起こすメカニズムが考えられている。
    【目的】特発性間質性肺炎(IIP)症例と膠原病性間質性肺炎(CVD-IP)症例でAECAを測定し,基礎疾患,病理組織所見,既存検査値,および治療反応性との関連を検討する。
    【方法】外科的肺生検にて病理診断が確定したIIP 12例(UIP 6, NSIP 6)とCVD-IP 12例(SLE・SSc・PM/DM・RA各3)を対象とした。AECA値は,ヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞を用いてcellular ELISA法で測定した。結果はRosenbaumの方法を用いてELISA ratio (ER)として算出し,健常人のmean+3SD以上を陽性とした。
    【結果】IIP症例ではAECAは4例(33%),CVD-IPでは6例(50%)が陽性であった。組織型ではIIPにおいて,UIPは全例が陰性だったのに対して,NSIPは6例中4例が陽性だった。CVD-IPでは組織型による陽性率の違いはなかった。またAECAと既存検査値や治療反応性との相関はなかった。
    【結論】AECAの検討から,IIPにおいてIPF/UIPとIIP-NSIPは病態が異なり,IIP-NSIPとCVD-IPの類似性が示唆された。
  • 奥谷 大介, MINGYAO LIU
    セッションID: 115
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    Background: Adult lung injury (ALI) is one of the most serious complications associated with major surgical procedures. In support of these patients, mechanical ventilation (MV) is often indispensable. However, MV can worsen preexisting lung injury. Tissue factor (TF) which is an initiator of the extrinsic pathway, a major player in blood coagulation is known to be up-regulated in inflammatory conditions while normally undetectable. The aim of this study was to determine TF expression in multiple lung injury models involving MV and its relationship with the severity of lung injury. Methods: Rats received hemorrhagic or endotoxic shock followed by resuscitation, or sham operation. They were randomized to either high (12 ml/kg) or low (6 ml/kg) volume ventilation of 4 hours. Blood gas and lung elastance were measured during MV. Lung injury was assessed by wet/dry lung ratio and histological examination. RNA samples were examined with real-time RT-PCR.Results: After 4 hours of MV, animals with hemorrhagic or endotoxic shock in high volume ventilation groups showed significantly lower PaO2 levels, increased elastance and lung wet/dry ratios, compared with animals in low volume ventilation groups. Significant correlations were observed between TF expression and the severity of lung injury. Conclusions: A local expression of TF induced by multiple injurious conditions suggests that it may serve as a potential biomarker responding to the severity of lung injury.
  • 奥谷 大介, MINGYAO LIU
    セッションID: 116
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    Background: Acute lung injury (ALI) is one of the most severe clinical situations associated with major surgical procedures. Although prolonging-time of mechanical ventilation (MV) is required for these patients, MV itself can worsen preexisting lung injury. Moreover, Hemorrhagic shock (HS) and endotoxiemia (LPS) can be fatal to patients who are on MV. In the present study, we explored the hypothesis that ALI secondary to different stimuli could be distinguished based on the pattern of gene expression.Methods: Rats received hemorrhagic or endotoxic shock followed by resuscitation, or sham operation. They were randomized to either high (12 ml/kg) or low (6 ml/kg) volume ventilation of 4 hours. Blood gas and lung elastance were measured during MV. Lung injury was assessed by wet/dry lung ratio and histological examination. RNA samples were examined with Affymetrix rat microarray chips and real-time RT-PCR. Results: After 4 hours of MV, animals with HS or LPS in high volume ventilation groups showed significantly lower PaO2 levels, increased elastance and lung wet/dry ratios, compared with animals in low volume ventilation groups. However, no differences were found between HS and LPS groups. In contrast, Microarray analysis revealed different gene profiles between HS and LPS groups. Two groups of genes were selected and further confirmed by real-time RT-PCR. Conclusion: The underlying molecular mechanisms are very different. Therefore, genes identified by the bioinformatics approach could provide potential biomarkers to differentiate ALI due to a variety of etiologies.
  • 古市 賢吾, 和田 隆志, 遠山 直志, 奥村 利矢, 北川 清樹, 岩田 恭宜, 坂井 宣彦, 金子 周一
    セッションID: 117
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】腎虚血再還流後には好中球とともにマクロファージの浸潤が認められる.本検討では,マクロファージに発現するケモカインレセプターであるCCR1,CCR2,CX3CR1の腎虚血再還流障害に果たす役割について検討した.【対象と方法】CCR1,CCR2およびCX3CR1欠損マウス(CCR1k/o,CCR2k/o,CX3CR1k/o),および対照マウスの左腎動脈を結紮した.再還流後腎組織を得て経時的な病理組織変化の検討を行った.また,CCR2阻害物質であるpropagerumanium,7NDおよびCX3CR1中和抗体を用いて,その治療可能性について検討した.【結果】CCR2k/oにおいて再還流24,48時間後の間質F4/80陽性マクロファージ数が減少するとともに4,24,48時間後の尿細管壊死の程度が対照に比して低下した.また,propagerumanium,7NDによる治療でも,CCR2k/oと同様の結果が得られた.一方,CX3CR1k/oでは早期の尿細管壊死には差がなかったが,虚血再還流後7日目のF4/80マクロファージ数が減少し,7,14日目における間質の線維化が軽減した.また,CX3CR1中和抗体による治療でも線維化抑制効果が得られた.さらに,CCR1k/oでは,4,7日目のF4/80陽性マクロファージ数が減少したが,虚血再還流後の尿細管壊死あるいは間質の線維化には差を認めなかった. 【結論】 CCR1,CCR2およびCX3CR1は,異なる時相でマクロファージを遊走し,特異的な病理変化の形成に関与している事が示された.
  • 北市 伸義, 竹本 裕子, 南場 研一, 大野 重昭
    セッションID: 118
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    【緒言】抗ヒトTNFα単クローン抗体製剤であるインフリキシマブはベーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎、関節リウマチ、クローン病に対して高い有効性を示す新しい生物学的製剤である。今回我々は若年性特発性関節炎(JIA)患者にみられた難治性ぶどう膜炎に対し、インフリキシマブ治療を試みた。 【症例】13歳女性。1歳時にJIAを発症。8歳から両眼に前房炎症が出現し、12歳から網膜新生血管を伴うぶどう膜炎を発症。ステロイドパルス療法で炎症は改善するが減量により再発を繰り返すため平成18年3月当科初診。平成18年7月からPSL30mg/日に増量するとともにインフリキシマブ3mg/kg投与を開始した。網膜新生血管は急速に消退し、5回投与時点でPSLは5mg/日まで減量した。しかし、PSL5mg隔日投与時に前房炎症の増悪と硝子体出血が再発、蛍光眼底造影検査で新生血管と同部からの著明な蛍光漏出がみられた。インフリキシマブを4mg/kgまで増量したところ、前房炎症は著明に改善し、新生血管も消退した。投与前後での採血検査の結果、抗インフリキシマブ抗体は常にみられなかったものの、レミケード血中濃度がレミケード投与前に著明に低下していた。 【考察】網膜新生血管を伴う汎ぶどう膜炎に対し、インフリキシマブは著明な炎症抑制効果を示した。しかし、病勢によって投与量の増量や、投与間隔の短縮が必要であると考えられた。
  • 大黒 伸行, 法貴 哲, 西信 良嗣, 田野 保雄, 田中 敏郎, 吉崎 和幸
    セッションID: 119
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    会議録・要旨集 フリー
    (目的)2007年1月、抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体であるインフリキシマブの、難治性ベーチェット病ぶどう膜炎に対する適応が承認された。そこで、既存の治療に抵抗する本疾患に対してインフリキシマブ治療を開始したので、その初期効果について報告する。 (対象と方法)対象は既存の治療では眼炎症発作を抑制できないベーチェット病ぶどう膜炎患者5例である。平均年齢は33.2歳(28-37歳)で全例男性であった。インフリキシマブ治療開始後期間の平均は2.8ヶ月(1-4ヶ月)。インフリキシマブ投与開始前後における眼炎症発作および眼外症状の変化、副作用について検討した。 (結果)治療開始前3ヶ月の眼炎症発作回数は平均2.2回(1-3回)で、全て視機能に重篤な影響を及ぼす大発作であった。一方、治療開始から現在までの眼発作は1例でごく軽度の小発作を1度生じたのみであった。眼外症状についても、口腔内アフタ、皮膚症状、関節炎など全般に軽快しており、悪化例はなかった。副作用については、投与時の血圧上昇が1例で認められたほかは特に認められなかった。 (考察と結論)インフリキシマブ治療導入後の短期成績は良好であった。ベーチェット病ぶどう膜炎活動期で既存の治療に反応しない症例では、早期にインフリキシマブ治療を開始すべきと考えられた。
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