日本口腔インプラント学会誌
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最新号
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総説
  • 小久保 裕司, 大久保 力廣
    原稿種別: 総説
    2024 年 37 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/05/05
    ジャーナル フリー

    従来,歯科治療はアナログ技術を中心に進められ発展してきた.しかし近年,世の中のデジタルテクノロジーの進歩に並走し,歯科のあらゆる分野でデジタル化が急速に普及してきた.たとえば,電子カルテ,予約管理ソフト,オンライン資格確認の導入により患者サービスが向上しただけではなく,デジタルエックス線や歯科用コーンビームCTなどの検査機器により診断が三次元的に可能となった.さらに,口腔内スキャナー(Intraoral Scanner:IOS)やCAD/CAM(Computer Aided Design/Computer Aided Manufacturing)システムの普及により,デジタルワークフローが導入され旧来の歯科治療そのものが大きく変革しようとしている.デジタル化をインプラント臨床に導入することにより,①安定した質の高い治療,②治療コスト・時間の削減,③安心・安全・信頼のインプラト治療,④患者とのコミュニケーション,インフォームドコンセントに有効,⑤術前から術後のデータ管理が容易,など多くの利点があるが,十分にデジタル機器の利点・欠点を理解し,使用前に,正しい操作方法のトレーニングを行うことが重要である.

特集 デジタルテクノロジーが変革するインプラント治療
  • 梅原 一浩, 近藤 尚知
    原稿種別: 特集 デジタルテクノロジーが変革するインプラント治療
    2024 年 37 巻 1 号 p. 14
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/05/05
    ジャーナル フリー
  • 木津 康博
    原稿種別: 特集 デジタルテクノロジーが変革するインプラント治療
    2024 年 37 巻 1 号 p. 15-25
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/05/05
    ジャーナル フリー

    歯科インプラント治療では,その治療過程にデジタルテクノロジーを応用することが近年さらに注目されている.特に,補綴装置を想定したシミュレーションに基づきインプラント埋入までをガイドするガイデッドサージェリーは,併発症を回避した安全な手術が実現できるだけでなく,補綴装置を考慮した理想的な埋入位置を獲得できる.このデジタルテクノロジーを応用した補綴主導型インプラント治療であるガイデッドサージェリーは,インプラント治療に必須の術式となっている.

    ガイデッドサージェリーは静的ガイド法と動的ガイド法がある.サージカルテンプレートを用いて正確なインプラント埋入を実現する静的ガイド法は,さまざまな症例に応用され良好な治療結果を獲得してきた.しかし,サージカルテンプレートを口腔内に装着して行う手術のため,抜歯窩や最後方臼歯部のインプラント埋入などでは正確な埋入が困難な場合もあった.一方,最近登場した3Dナビゲーションシステムを用いた動的ガイド法は,3D情報がリアルタイムにガイドするフリーハンド手術が可能となるため,静的ガイド法では困難であった症例においても正確なインプラント手術を可能とした.

    本稿では,インプラント治療に必須の術式となったガイデッドサージェリーの現状と有用性について報告する.さらに,静的ガイド法と動的ガイド法の特長と留意点について,臨床症例を通して解説する.

  • 米澤 大地
    原稿種別: 特集 デジタルテクノロジーが変革するインプラント治療
    2024 年 37 巻 1 号 p. 26-38
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/05/05
    ジャーナル フリー

    口腔インプラント治療の分野におけるデジタルテクノロジーの応用の一環として,デジタル顎運動測定器を使用した顎運動診断が進展している.下顎切歯部の動きを解析することで顎口腔機能の評価が容易になった.加えてデジタル技術により,顎関節相当部における顆頭の動きも詳細に解析することが可能になった.特にD型と言われる犬歯関係において,作業側顆頭が後方に動くとされる状態を解析できることは有用だと考える.

    また,デジタル顎運動解析データの補綴装置製作への応用も可能となった.これによりバーチャル咬合器を設定し,顎運動時に臼歯部が干渉しない咬合を提供することができる.しかし,デジタルとアナログ間のコミュニケーション時には,上顎の正確なマウントが求められるという問題が存在する.また,側方運動の計測データは顆路か,それとも顆路様の歯の誘導路かという違いが整理されていない課題も存在する.歯の誘導路を計測する場合は,プロビジョナルレストレーションで生理的な咬合を付与したものを最終補綴装置に移行する手段としての顎運動測定が必要となり,歯の誘導路を除外した顎関節固有の顎運動データを用いて最終補綴装置に適用する手法は,別のアプローチとなる.

原著(基礎研究)
  • 津川 順一, 佐藤 文明, 角田 宗弘, 熱田 亙, 安倍 稔隆, 北山 徹, 笹谷 和伸, 田中 譲治
    原稿種別: 原著(基礎研究)
    2024 年 37 巻 1 号 p. 39-47
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/05/05
    ジャーナル フリー

    目的:本研究は,異なる骨質または異なるインプラント窩でのインプラント埋入トルク(IT値)とインプラント安定度指数(ISQ値)の相関を明確にすることを目的とした.

    方法:種々の骨質を想定した各模擬骨ブロックに,同一のインプラント窩を形成した場合と同一の模擬骨ブロックに異なるインプラント窩を形成した場合の両実験群で,IT値とISQ値の測定を行った.

    結果:種々の骨質を想定した各模擬骨ブロックに同一のインプラント窩を形成した実験群では,IT値とISQ値の相関係数は0.67となり,正の相関を示した.また,35 Ncm以下のIT値に限定した場合の相関係数は0.81で正の強い相関を示し,45 Ncm以上のIT値に限定した場合の相関係数は0.58で正の相関を示した.同一の模擬骨ブロックに異なるインプラント窩を形成した実験群のなかで,D2~3およびD2群のIT値とISQ値の相関係数はそれぞれ0.67および0.03となり,前者は正の相関を示し,後者は相関を示さなかった.また,35 Ncm以下のIT値に限定した場合の相関係数は0.71で正の強い相関を示し,45 Ncm以上のIT値に限定した場合の相関係数は-0.26で負の相関を示した.

    結論:種々の骨質での同一のインプラント窩の場合は高いIT値にすることでより高い初期固定が得られるが,骨密度が高い骨質で45 Ncm以上のIT値となるインプラント窩の場合は,過度のIT値,つまり過度のアダプテーションテクニックを用いた場合は初期固定が低下することが示唆された.

症例報告
  • 中野 遼太郎, 潮 美沙子, 高村 仁嘉, 安岡 はるか, 林 祥太, 小田 由香里, 平野 友基, 小笠原 龍一, 法月 良江, 古谷 義 ...
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 37 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/05/05
    ジャーナル フリー

    現在,インプラントと天然歯の共存が増加し,インプラント治療後に残存歯を抜歯し,追加でインプラント治療を行う症例が存在するが,他院で埋入されたインプラントに対する評価項目が示されていない.本文献では,追加インプラント治療を行い,長期にわたる経過観察を行った症例を報告し,他院埋入インプラントに対する評価項目を提示する.

    2002年に他院で施術されたインプラント治療は可撤性床義歯だったが,患者は固定性補綴装置を希望し,当科に来院した.既存の15部,25部のインプラントに近接する部位を含めた新たな欠損補綴の必要性が生じていた.上顎右側では16部にインプラントを埋入し,15部のインプラントと上部構造で連結し,近心カンチレバーの上部構造を作製した.上顎左側では23部,24部にインプラントを埋入し,25部のインプラントと連結した上部構造を作製した.

    本症例では,他院埋入インプラントを治療計画に含めるための評価項目を提示した:①インプラント体,②インプラント周囲組織,③口腔衛生の状態,④材料の問題,⑤インプラント埋入位置,⑥外科的リスク,⑦審美的リスク,⑧患者への説明.

    また,慎重な治療計画にもかかわらず,治療後,インプラントの追加埋入(21部)という状況に遭遇したが,その後の合併症は認められず,長期経過観察の結果としてこの治療が適切であったことが示された.

  • 吉村 麻里奈, 長 太一, 長 清美, 堀 聖尚, 三冨 純一, 山田 健太郎, 長谷川 健, 瓦井 徹, 山口 一史, 竹田 智郎, 松沢 ...
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 37 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/05/05
    ジャーナル フリー

    近年,インプラント周囲骨吸収に関する細菌感染以外のさまざまな要因について注目されている.そのなかでオーバーロードも重要な要因の一つとして挙げられる.しかし,インプラント周囲骨の吸収原因がオーバーロードか感染かを鑑別するのは困難である.今回我々は,咬合治療することでインプラント周囲の骨吸収が改善した症例を経験したので報告する.

    患者は49歳,女性.37の歯肉腫脹を主訴に当科を受診した.開咬および37の歯根破折,47部インプラント周囲の骨吸収を認めた.37の抜歯後2か月で36部にインプラント埋入術を行い,暫間補綴装置によるアンテリアガイダンスを付与し前歯部の咬合離開の改善を行った.その後,最終上部構造を装着した.47部の骨吸収の改善を認めた.術後9年が経過した現在,良好な経過をたどっている.

  • 小嶋 一輝, 木下 一彦, 鶴迫 伸一, 勝山 英明
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 37 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/05/05
    ジャーナル フリー

    近年,日本は超高齢社会を迎え,認知症などを原因とする要介護者は増加傾向にある.口腔インプラント治療が普及し,長期予後が認められるなかで,要介護者の口腔インプラントの維持・管理が問題となっている.今回我々は,認知症患者に生じた,インプラント周囲炎を契機とした薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)を経験したので報告する.

    患者は87歳,女性.既往歴にアルツハイマー型認知症,胸腰椎圧迫骨折,骨粗鬆症があった.右側頬部の腫脹,右側顎下部の疼痛のため当科を受診した.右側頬部に腫脹,顎下部に口腔外瘻孔,排膿を認めた.下顎右側インプラント周囲歯肉に発赤,腫脹,排膿を認めた.CT画像でインプラント体周囲に腐骨分離像,骨硬化像を認めた.インプラント周囲炎,MRONJステージ3と診断し,局所麻酔下にインプラント体除去術と腐骨除去術を行った.術後に再発なく,経過良好である.

    今後,口腔インプラント治療歴のある認知症患者および骨粗鬆症患者は増加していくため,インプラント周囲炎およびMRONJの発症予防と発症後の適切な対応が重要となる.

  • 山森 徹雄, 池田 敏和, 佐久間 大季, 松本 知生, 内山 梨夏, 飯島 康基, 佐々木 槙一, 小松 晶子, 橋原 楓, 嶋田 伊吹, ...
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 37 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/05/05
    ジャーナル フリー

    連結固定は,支持能力が低下した歯の外傷性要因を除去し機能維持を図るために実施される.しかし,残存歯と歯の欠損部との配置によっては連結固定が困難となる.今回,下顎左右側第一大臼歯が欠損し,下顎左右側第二大臼歯に外傷性要因による動揺を認めた45歳の女性に対して,十分なインフォームドコンセントに基づき36部,46部に埋入したインプラントと37,47をプロビジョナルレストレーションを介してそれぞれ暫間固定して動揺を改善した.その後単独の補綴装置を装着して良好な経過を得た.暫間固定する天然歯とインプラントの配置に関しては,明確な基準が示されていないため慎重な対応が求められると考えられた.

調査・統計・資料
  • 土井 一矢, 宗永 ちひろ, 小畠 玲子, 大上 博史, 川越 麻衣子, 津賀 一弘
    原稿種別: 調査・統計・資料
    2024 年 37 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/05/05
    ジャーナル フリー

    セルフケアならびにプロフェッショナルケアによる定期的な口腔衛生管理は,歯周病やインプラント周囲炎の予防にとって重要である.口腔衛生管理を良好とするためには,プラーク付着部位を術者ならびに患者がわかりやすく認識できることが必要となる.そこで,口腔内スキャナ(以下IOS)を用いた口腔衛生評価についての予備的検討を行った.

    インプラントメインテナンス患者(8名)に対して,プラーク染色を行った後,IOSにより口腔内歯列を記録した.プラーク付着の評価はO'Leary's Plaque Control Record(以下PCR)により行い,口腔内から直視下にてPCRを測定(以下直視-PCR)し,その後, IOSより記録したデジタル画像にてPCRを測定した(以下IOS-PCR).さらに,患者に対してIOSによるデジタル画像をモニターに表示して,プラーク付着部の説明など口腔衛生指導を行った.PCR値(直視-PCRおよびIOS-PCR)について比較検討を行い,また患者へのアンケートを実施した.

    IOS-PCR値は直視-PCR値に対して高値を示した.アンケート結果ではIOSを用いることで,モニター上でプラーク付着部を確認でき口腔衛生状態がわかりやすい,などの結果を得た.

    口腔衛生状態の評価のために,プラーク付着部をIOSにより記録し評価することは,可視化して認識できることなど術者ならびに患者にとって有用であることが示唆された.

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