【背景】がんゲノム情報管理センター(C-CAT: Center for Cancer Genomics and Advanced Therapeutics)では,がんゲノムプロファイリング(CGP: Comprehensive Genomic Profiling)検査が保険適用となった2019年6月以降,患者さんの個別同意のもと,臨床情報とゲノム情報が集約され,ゲノム解析結果におけるがんゲノム知識データベース(CKDB: Cancer Knowledge DataBase)を用いた遺伝子変異の解釈・臨床的意義付け,また遺伝子変異に基づいた分子標的治療,臨床試験などの情報提供が行われている.【方法】C-CAT利活用検索ポータルを用いて,2019年6月1日~2022年4月4日の期間にCGP検査を受けた0~15歳の患者データより,臨床情報および遺伝子変異情報を収集した.【結果】合計687人(中枢神経腫瘍288人,非中枢神経腫瘍399人)の患者からのデータが収集可能であり,うち少なくとも1つ以上の生殖細胞あるいは体細胞における病的変異(エビデンスレベルF以上)を有する患者は467(68%)人であった.病的変異を認めた遺伝子は,頻度の高い順に,塩基置換,塩基欠失・挿入(TP53, BRAF, H3F3A, PIK3CA, CTNNB1, and NF1),増幅(MYCN, MYC, ERBB2, CDK4, and PDGFRA),遺伝子全・部分欠失(CDKN2A, CDKN2B, SMARCB1, ATRX, RB1, and PTEN)であった.また,68人(10%)の患者がドライバーとなるEWSR1,BRAF,ALK,CIC,NTRK1,NTRK3,FGFR3などの融合遺伝子を有していた.腫瘍遺伝子変異量(TMB: Tumor Mutation Burden)が10 mutations/megabase以上であった患者は5人であった.【結語】これらは,小児固形腫瘍におけるheterogeneityの高いゲノム異常を表した結果となっており,今後,一人一人の患者の診療に応用できるよう,CGP検査での同定とともに,そのエビデンスを蓄積していくことが重要である.
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