肩関節
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38 巻, 2 号
肩関節_38_2
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筋腱疾患
  • 村松 孝一, 渡邊 裕規, 蜂谷 裕道
    2014 年 38 巻 2 号 p. 572-574
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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     重層固定法(DR法)とスーチャーブリッジ法(BR法)で修復された腱板の血流状態を比較するため,17肩(DR法10肩,BR法7肩)を対象とし,術後3,12,24,48週で造影MRIを撮像した.造影剤静注前後のT1強調像で,腱板修復部の腱実質内と腱骨連結部の二カ所に関心領域を置き造影効果を定量化した(CEV).さらに,健常人10肩を撮像してCEVを算出し,これとの比(CEI)をもって両群の比較を行った.
     腱実質内のCEIは各時期で両群に差はなかった.腱骨連結部のCEIはBR法では3週から12週にかけて有意な上昇を示し,術後24週ではDR法に比して有意に高値であった.
     BR法の臨床成績は一般に良好であり,圧着面積,圧着力においてDR法より優れているとされるが,一方でBR法のような強固な固定は腱血流を阻害する可能性も指摘されている.今回の結果は,BR法が腱血流を阻害することを示唆するものではなかった.
  • 宮本 崇, 中川 照彦, 佐藤 哲也, 鈴木 志郎
    2014 年 38 巻 2 号 p. 575-578
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下腱板修復術後にしばしば見られる上腕骨大結節骨吸収に関して,単層もしくは重層固定法とsuture bridge法を比較,検討した.
     対象は2010年から2011年までに鏡視下腱板修復術を施行した76例76肩とし,単層固定法もしくは重層固定法を用いて腱板修復を行ったもの(SR+DR群)が30例,suture bridge法にて修復を行ったもの(SB群)が46例であった.術後の単純X線写真にて大結節骨吸収の有無を検討した.
     大結節骨吸収はSR+DR群で4例,SB群で22例に認め,SB群で有意に多かった.術後JOAスコアは骨吸収のある群で有意に点数が低かった.
     術後大結節骨吸収のある群は術後成績が不良であり,予後予測因子としても有用であると思われる.
     Suture bridge法による鏡視下腱板修復術は術後の大結節骨吸収例が多く,大結節骨吸収を認めるものは術後成績がやや不良であった.
  • 永田 義彦, 根木 宏, 岩崎 洋一, 生田 祥也, 越智 光夫, 望月 由
    2014 年 38 巻 2 号 p. 579-583
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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     腱板断裂に対する鏡視下transosseous with bone trough法では,大結節に海綿骨が露出するまで骨溝を作成し腱板を縫合する.腱骨付着部の治癒と強度が再獲得されたか否かの評価には,骨溝の骨硬化の間接的な評価が有効と考えられる.本研究では,腱板修復後の骨溝骨硬化をCTを用いて経時的に評価した.本術式を行い,術後6カ月以上経過した29肩を対象とした.手術時平均年齢は,68.1歳であった.臨床成績はJOA scoreを用い,MRIで修復腱板の評価を行った.骨溝骨硬化は,術後4週,8週,12週,6ヶ月でCTを行い,骨頭軟骨下骨と比較しgrade分類した(0:骨硬化なし,1: 軟骨下骨未満,2: 軟骨下骨と同等,3: 軟骨下骨以上).JOA scoreは術前平均64.5点から,術後6カ月で平均85.1点に有意に改善し,再断裂は5肩に認めた.非再断裂群では,術後6ヶ月では,全例がgrade 2以上の変化を示したが,再断裂群ではgrade1にとどまり統計学的有意差を認めた.骨溝骨硬化の評価は術後療法にも応用可能と考えられた.
  • 菊川 和彦, 加納 俊哉, 奥平 信義
    2014 年 38 巻 2 号 p. 584-586
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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     近年,腱板断裂の手術数は激増し,両肩手術例も増加しているが,その特徴や成績を論じた報告はほとんどない.そこで,過去10年間に両肩の鏡視下腱板修復術を施行し,術後2年以上観察しえた49例を調査した.男34例,女15例,手術時平均年齢は初回側64.5 歳,反対側66.9 歳であった.術前主訴は44例(89.7%),断裂の大きさは39例(79.6%)で両肩が一致した.断裂の大きさが一致しない10例中7例は外傷性断裂であった.断裂の大きさが一致した39例の術後1年時JOAスコアは初回側91.2点,反対側87.2点で有意差はなかったが,患者の満足度は同等12例,初回側>反対側25例,初回側<反対側12例で初回側が高かった.再断裂は初回側6例,反対側10例で反対側が不良であった.反対側の成績が劣った要因に手術時年齢が高い,罹病期間が長い,手術に対する慣れから後療法が慎重でなかったなどが考えられた.反対側の手術ではより慎重に対応して臨むべきと考える.
  • 福田 昇司, 筒井 貴彦
    2014 年 38 巻 2 号 p. 587-590
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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    (目的)Y- shaped view における棘上筋断面積は腱板断端の引き込みの影響を受ける.腱板修復により断端を外側へ引き出した際に断面積に生じる変化について検討した.
    (方法)鏡視下腱板修復術を施行した75肩を対象とした.術前および自動運動開始前の術後6 ∼ 8週のMRI斜位矢状断像における棘上筋断面積をY- shaped view から2スライス(スライス幅5mm)内側まで計測した.
    (結果)Y- shaped viewでの棘上筋断面積は術前と比較し,術後に有意な増加を認めたが,Y- shaped viewより2スライス内側では有意な差はなかった.
    (考察)Y- shaped viewでの棘上筋断面積の増加は腱板修復による棘上筋の外方化が原因と考えられた.
    (結論)棘上筋断面積を術前後で比較する場合にはY- shaped viewよりも少なくとも2スライス内側の画像を用いることが望ましい.
  • 名倉 一成, 国分 毅, 乾 淳幸, 美舩 泰, 原田 義文, 無藤 智之, 高瀬 史明
    2014 年 38 巻 2 号 p. 591-594
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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     腱板修復術後の治療成績の向上には,再断裂率の低下が重要である.そこで低出力超音波パルス(以下LIPUS)照射により腱骨移行部の修復を促進し,早期に力学的な強度を回復できると考え,LIPUS照射によるヒト腱板断裂組織由来細胞の腱分化への影響をin vitroで検討した.断裂腱板組織より分離したヒト腱板断裂組織由来細胞を平面培養し,2群に分けて培養を行った.その後,Scleraxis(SCX),Type I collagen,Type III collagenの発現についてreal-time PCRによる解析を行った.SCX,Type I collagen,Type III collagenの発現は培養5日目においてLIPUS照射群で増強を認めた.LIPUS照射はヒト腱板断裂組織由来細胞に作用し,腱分化能を増強させると考えられ,腱板修復術後にLIPUS照射により腱骨移行部の力学的な回復が促進されると考えられた
  • 佐々木 裕, 落合 信靖, 山崎 博範, 山口 毅, 木島 丈博, 橋本 瑛子, 見目 智紀
    2014 年 38 巻 2 号 p. 595-598
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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     広範囲腱板断裂に伴う腱板脂肪変性の原因として,肩甲上神経麻痺の関与について不明な点が多い.今回我々は腱板に侵襲を加えずに肩甲上神経麻痺モデルを作成し,広範囲腱板断裂および肩甲上神経麻痺による腱板脂肪変性について組織学的検討を行った.9週齢雄SDラット36匹を用いて腱板断裂群,肩甲上神経麻痺群,合併群,Sham群の4つのモデルを作成した.肩甲上神経麻痺群は肩甲上神経に8-0ナイロンで結紮を加え作成した.術後2週,4週,8週で棘上筋を採取し,脂肪染色を行い棘上筋全体に占める脂肪含有率を計測した.脂肪含有率は合併群で最も高く,肩甲上神経麻痺群と合併群では血管新生や著明な筋萎縮を認めた.断裂群,肩甲上神経麻痺群および合併群ではそれぞれ異なった脂肪変性の進行を認めた,広範囲断裂後の棘上筋脂肪変性に関して,肩甲切痕における肩甲上神経麻痺の関与は少ない可能性がある.
  • 国分 毅, 美舩 泰, 乾 淳幸, 無藤 智之, 原田 義文, 高瀬 史明, 名倉 一成
    2014 年 38 巻 2 号 p. 599-602
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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     鏡視下腱板修復術(ARCR)後の腱板再断裂が外転筋力や棘上筋萎縮に影響を与えるか検討した.腱板断裂52例を対象とし,術後再断裂群14例と修復群38例に分けて臨床成績判定にはJOA scoreを用いた.外転筋力は健患比で,棘上筋萎縮は棘上筋窩に占める棘上筋筋腹萎縮部の割合として評価した.術後のJOA scoreは両群とも回復したが断裂群の方が有意に低値であった.外転筋力健患比は両群とも改善していたが再断裂群での改善は不良であった.棘上筋萎縮率は再断裂群では術後上昇し,修復群では低下していた.再断裂群では棘上筋の筋萎縮は進行し外転筋力も低い結果となったが,修復群では棘上筋の筋萎縮と外転筋力は経時的にも改善しており,再断裂を生じさせない術式選択が重要と思われた.ARCRにおいて,腱板再断裂は外転筋力を低下させ棘上筋萎縮を進行させることを念頭におき加療する必要がある.
  • 名越 充, 廣岡 孝彦, 石濱 琢央, 檜谷 興, 橋詰 博行
    2014 年 38 巻 2 号 p. 603-606
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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    はじめに】前上方腱板損傷における棘上筋腱(SSP),肩甲下筋腱(SSC)損傷の分布,臨床症状を調査し,特にSSC損傷の特徴と治療の重要性について検討した.
    対象と方法】対象は鏡視下修復術を行った90例90肩(男49例,女41例,平均年齢61.2歳)であった.鏡視所見から単独,複合損傷の分布を調査し,術前後の理学所見(自動前方挙上120°未満,Belly press test,Bear hug test,JOAスコアを調査した.術後観察期間は平均2.3年であった.
    結果】複合損傷は52肩(57.8%),SSC単独損傷は12肩であった.挙上障害はSSC単独損傷の67%の症例に認めた.Belly press test,Bear hug test陽性はSSP単独損傷においても約30%の症例に認めた.臨床成績はJOA平均54.5点が術後94.5点に改善した.
    結語】複合損傷の頻度が高く,その存在を意識して診断する必要がある.複合,単独損傷に関わらずSSC損傷の適切な修復が必要である.
  • 福島 秀晃, 三浦 雄一郎, 森原 徹
    2014 年 38 巻 2 号 p. 607-612
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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     腱板断裂保存症例のリハビリテーションを確立する為に無症候性の腱板広範囲断裂保存症例(以下,症例)の肩関節運動機能を客観的に評価 • 検討した.
     対象は健常群と症例群(10例11肩)とし,肩関節屈曲時の肩甲骨上方回旋角度を測定した.また,2症例(症例a,b)に関して肩甲帯動態と表面動作筋電図による筋活動パターン分析を実施した.
     症例aは肩甲骨の外転と内転運動が健常群より顕著であった.三角筋の筋活動は高く,前鋸筋の筋活動は屈曲動作中に増減した.症例bは鎖骨の挙上,後退,下制運動が健常群より顕著であった.三角筋の筋活動は高く,僧帽筋上部 • 下部線維の筋活動は屈曲初期より高く,僧帽筋上部線維は屈曲動作中に筋活動が増減した.
     症例では肩甲骨関節窩の向きを微調整することで肩甲上腕関節の安定性を担っていると考えた.症例へのリハビリテーションには胸鎖関節 • 肩鎖関節および僧帽筋,前鋸筋の代償機能を理解する必要がある.
  • 松尾 洋昭, 古川 敬三, 梶山 史郎, 尾崎 誠
    2014 年 38 巻 2 号 p. 613-616
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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     MRI上の結節間溝内水腫(BG水腫)と鏡視下での肩甲下筋腱(SSc)断裂の存在との関係を調査した.2008年9月より2013年3月までに鏡視下腱板修復術を行った162肩を対象とした.男性106例,女性54例,手術時平均年齢は63.9歳,患側は右が110例,左が52例であった.術前MRIでのBG水腫およびSSc断裂所見の有無と,術中鏡視所見にてfoot printより剥離し修復を要すSSc断裂の関係を調査した.今回の症例162例中,MRI上水腫ありは82例,なしは80例であった.鏡視下にSSc断裂に対して縫合を行った症例は54例であった.BG水腫の有無のSSc断裂に対する感度は87.0%,特異度は67.6%であり,陰性予測値は91.2%であった.MRIでのBG水腫陽性のSSc断裂に対する感度および特異度は高くはないが,陰性予測値は91.2%と高い結果であった.術前MRIにおいてBG水腫が認められない場合,SSc断裂の可能性は少ないと考えられる.BG水腫の有無はSSc断裂の予測に有用な指標の一つである.
  • 橋内 智尚, 櫻井 悟良, 井上 和也, 酒本 佳洋, 橋内 麻衣子
    2014 年 38 巻 2 号 p. 617-619
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
    目的】本研究の目的は,正常な肩甲下筋腱腱骨付着部関節面側上縁の血流量を肩関節鏡視下手術中に計測し,未だ明らかにされていない肩甲下筋腱断裂の要因解明の一助とすることである.
    対象と方法】11例12肩を対象とした.平均年齢は22.3歳(範囲:16から34歳)で,男性6例,女性5例であり,右7肩,左5肩であった.レーザードップラー血流計を用いて肩甲下筋腱腱骨付着部関節面側上縁の血流量を測定した.測定肢位は下垂位内旋位,中間位,外旋位とした.
    結果】血流量は内旋位が4.00ml/min/100g(範囲:2.85から4.85),中間位が4.44ml/min/100g(範囲:3.45から5.35),外旋位が3.23ml/min/100g(範囲:2.30から3.85)であり,内旋位と外旋位,中間位と外旋位との間で統計学的有意差が得られた(P<0.01).血流量とヘモグロビン量との相関は認めなかった.
    考察】血流量は外旋位で最も低い値を示していた.肩関節外旋位は肩甲下筋腱腱骨付着部関節面側上縁の障害に繋がる可能性が示唆された.
    結語】肩関節外旋位の血流量は,内旋位と中間位より少なかった.
  • 伊坪 敏郎, 畑 幸彦, 石垣 範雄, 中村 恒一, 松葉 友幸, 植村 一貴, 加藤 博之, 村上 成道, 小林 博一
    2014 年 38 巻 2 号 p. 620-624
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は肩甲下筋腱断裂例における術後成績に影響する因子を明らかにすることである.直視下手術後1年以上を経過した肩甲下筋腱断裂例40例(複数腱断裂を含む)を対象とした.術前MR画像上での計測結果(肩甲下筋腱筋腹の厚みと脂肪変性の程度,断裂サイズ)と術前後の臨床成績(肩関節可動域,徒手筋力,lift off test,UCLAスコア)との間で相関係数を算出した.肩甲下筋筋腹の厚みと術後1年のLift off testとの間,脂肪変性の程度と術後1年のLift off testとの間にそれぞれ有意な中等度から高度の相関を認めた.今回の結果から,術前の肩甲下筋の筋萎縮や脂肪変性の程度が術後肩関節機能に影響することが分かった.具体的には,肩甲下筋腱を含む腱板断裂例における術後成績を悪化させる因子は,術前MR画像において「肩甲下筋の厚みが10mm以下」と「肩甲下筋筋腹の脂肪変性が50%以上」であることが示された.
  • 中溝 寛之
    2014 年 38 巻 2 号 p. 625-627
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     肩甲下筋腱(SSC)を含む肩腱板断裂(前上方断裂)の治療成績を検討した.鏡視下修復術を施行し術後1年以上経過を観察し得た前上方断裂46例47肩を対象とした(男29肩,女18肩,平均年齢64.9歳,平均観察期間22.1ヵ月).修復に際し上腕二頭筋長頭腱(LHB)の脱臼整復が困難であった5肩に腱切離を追加した.検討項目はSSCの断裂形態,LHBの性状,術前後のJOAスコア,術後1年時MRIによる腱板修復状態などである.永澤分類によるSSCの断裂はtype2:20肩,type3:23肩,type4:4肩であった.LHBの断裂を9肩に,脱臼を10肩に認めた.JOAスコアは術前61.8点から術後90.4点に改善した.LHBの温存(33肩),非温存(14肩)における差は認めなかった.術後MRIでは7肩(14.9%)に再断裂を認めたが,そのうち4肩ではSSCの連続性が保たれていた.SSCを含む肩腱板断裂の鏡視下修復術の臨床成績はおおむね良好であり,脱臼したLHBは切離しても成績に差を認めなかった.
  • 上原 大志, 西中 直也, 松久 孝行, 永井 英, 鈴木 一秀, 筒井 廣明
    2014 年 38 巻 2 号 p. 628-631
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     上腕二頭筋長頭腱(LHB)を温存し,肩甲下筋腱(SSC)を修復した鏡視下腱板修復術の術後成績を検討した.対象は18肩(手術時平均年齢:66.4歳,術後平均経過観察期間:16.3ヵ月)で,SSC断裂サイズはIde分類でgrade Iが9肩,IIが7肩,IIIが2肩であった.SSC単独断裂は3肩で,その他は棘上筋腱(SSP) • 棘下筋腱(ISP)断裂を伴っていた.LHBは全例不安定性と炎症 • 損傷を有していた.SSCの修復はアンカーを用い,SSP • ISPも同時に修復した.平均JOAスコアは術前53.5点が術後89.1点に改善した.Sugaya分類によるSSCの術後MRI評価はtype Iが14肩,IIが3肩,IIIが1肩と再断裂はなかったが,SSP • ISPの再断裂は2肩に認められた.術後LHBの圧痛,Speedテストの陽性を1例に認めた.SSC修復の際,LHBに炎症や軽度の断裂所見があっても修復によってLHBの安定性が得られれば温存は可能である
  • 黒河内 和俊, 高橋 成夫, 與田 正樹, 山本 隆一郎
    2014 年 38 巻 2 号 p. 632-636
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     肩甲下筋腱(以下SSC)断裂における層間剥離の存在は詳しく述べられていない.今回,鏡視下修復術を行った全層性のSSC断裂39例について,層間剥離の頻度,関節鏡所見,術後1年以上での臨床成績を調べた.39症例中,層間剥離を認めた症例は10例であった.SSC断裂断端の引き込みの程度(井手分類)がminimal14例で層間剥離はなし,moderate15例で層間剥離は3例,severe10 例で層間剥離は7例に認められ,層間剥離の出現は断端の引き込み程度と相関した.Comma sign(Burkhartら)は層間剥離全例に認められ,いずれも滑液包側に連続していた.Severeの7例全例で,関節包側断端が滑液包側断端より引き込みが強かった.上腕二頭筋長頭腱(以下LHB)の脱臼または1/2以上の断裂が層間剥離全例に認められた.belly press test,関節可動域,JOA score,およびMRIによる腱板修復状態(菅谷分類)は,術後に層間剥離が認められた症例と認められなかった症例で差を認めず,SSC修復の術後成績は,層間剥離の有無によらず良好であった.
  • 梶山 史郎, 古川 敬三, 松尾 洋昭, 尾﨑 誠
    2014 年 38 巻 2 号 p. 637-640
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下腱板修復症例における3D-CTによる結節間溝(BG)形態と上腕二頭筋長頭腱 (LHB) 鏡視所見との関連を検討した.対象は25例25肩.男性17例,女性8例で手術時平均年齢は63.5(44-74)歳であった.BG形態を野中らの方法に準じ5群に分類した.また,鏡視にてLHB病変の評価とhourglass test(HGT)を行い,それぞれを比較検討した.BG形態はType1:3例,Type2:4例,Type3:9例,Type4:8例,Type5:1例であった.Type2の4例中2例,Type3の9例中5例でLHB病変を認めた.一方Type4では8例中7例でそれを認め,完全断裂例はすべてType4であった.HGT(-)14例中4例でLHB病変を認めたのに対し,HGT(+)8例ではすべてLHB病変が認められた.BG形態や術中HGTの所見をふまえ,LHB病変への対処を選択する必要がある.
変性疾患
  • 合六 孝広
    2014 年 38 巻 2 号 p. 641-644
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     どのような肩石灰性腱炎が,乱刺法により石灰が縮小するかを検討した.乱刺法を行い石灰が消失するまで,または3ヶ月以上経過観察可能であった29肩を対象とした.石灰が消失,縮小したA群は22肩,透視下乱刺法を7肩,エコー下乱刺法を15肩に行った.石灰が縮小しなかったB群は7肩,透視下乱刺法を1肩,エコー下乱刺法を6肩に行った.両群間において,性別,年齢,罹病期間,穿刺前のVAS,自動挙上角度,石灰の大きさ,エコー像について比較した.罹病期間はA群で短かった.VASは,A群で高かった.自動挙上角度はA群で小さかった.性別,年齢,石灰の大きさ,エコー像は有意差がなかった.ただし後方音響陰影を伴わない石灰は,A群に多い傾向は見られた.罹病期間の短い,または痛みが強く自動挙上が制限される症例では,乱刺法が有効であった.石灰の大きさとは関係なく吸収される可能性があるので,一度は試みてもいい手技である.
炎症疾患
  • 神戸 克明, 千葉 純司, 安井 謙二, 加藤 義治
    2014 年 38 巻 2 号 p. 645-649
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     関節リウマチ(RA)に対して肩関節鏡視下滑膜切除術の長期術後成績と鏡視下授動術の追加について臨床成績を検討したので報告する.関節鏡視下滑膜切除術を施行した48例,そのうち関節鏡視下滑膜切除術のみで鏡視下授動術を追加しなかった群(以下CR(capsular release)(-)群)22例,関節鏡視下滑膜切除術に鏡視下授動術を追加した群(以下CR(+)群)26例の術前および術後平均3.17年のJOAスコアを調べ,多変量解析にて術後屈曲角度に関連する因子を解析した.全体のJOAスコアは術前36.79 ± 7.66から術後83.6 ± 13.04に改善し,CR(+)群にて術後有意な改善を認めた.多変量解析では罹患期間とステロイド使用量が術後屈曲角度に有意に負の関係を示した.RAにおける肩関節滑膜切除術の術後成績は罹患期間10年以下のRAによい適応であり,鏡視下授動術の追加により関節破壊が進行していても十分な効果を獲得可能であった.
  • 大泉 尚美, 末永 直樹, 吉岡 千佳, 山根 慎太郎, 谷口 昇
    2014 年 38 巻 2 号 p. 650-653
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     関節リウマチ(以下,RA)に対して人工肩関節置換術を行った症例において,術後の肩関節自動可動域(以下,ROM)とADL機能の関係をShoulder 36 Version 1.3(Sh36)を用いて調査した.対象は18例22肩で,男性3例,女性15例,手術時平均年齢60.6歳であった.調査時の術後経過期間は平均67.1ヵ月(12-142ヵ月)であった.術後屈曲 • 下垂位外旋ROMと相関を認めたSh36の12項目について,「困難なくできる」4点,「やや困難だができる」3点と回答した症例のそれぞれ最低限のROMを調査した.「困難なくできる」には,屈曲150°かつ外旋40°以上,屈曲100° ∼ 110°程度,屈曲85°程度で可能な動作に分かれた.「やや困難だができる」には屈曲150°かつ外旋45°以上,屈曲80° ∼ 90°程度,屈曲50°かつ外旋25°以上で可能な動作に分かれた.屈曲が不良であっても外旋が良好であれば可能であったり,反対に外旋が不良であっても屈曲が良好であれば可能となるADL動作があった.肩関節の術後評価として個々のROMだけではなく相互に補完した評価の可能なADL評価も重要であると考えられた.
  • 塩崎 浩之, 藤井 俊英, 越川 静和
    2014 年 38 巻 2 号 p. 654-657
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     化膿性肩関節炎は比較的まれである.我々は,15例(男性8例 • 女性7例,平均年齢65.3歳)の臨床像と鏡視下手術成績を検討した.患者はcompromised hostが多く,7例では肩への注射により発症した疑いがあった.8例では単純X線写真で上腕骨頭の下方亜脱臼を呈していた.治療は,炎症の局在により肩甲上腕関節 ∼ 肩甲下滑液包,および肩峰下滑液包の鏡視下滑膜切除と大量の洗浄を行い,ペンローズまたは吸引ドレーンを留置し,抗生剤を投与した.15例中13例は1回の手術で感染が鎮静化したが,2例で鏡視下手術を追加し鎮静化した.CRP陰性化に要した期間は平均25.3日であった.術後4年3か月で感染の再燃を1例に認めた.術後1年以上の経過観察が可能であった11例のJOAスコアは,90点以上が8例,50 ∼ 60点が3例であった.成績不良例は,術前から腱板広範囲断裂や関節破壊のある例であった.早期診断と早期の鏡視下手術が重要と考えられた.
その他
  • 津田 悦史, 川口 雅久, 尼子 雅敏
    2014 年 38 巻 2 号 p. 658-661
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     活動性の高い男性自衛官の上方肩関節唇損傷(以下SLAP lesion)11例11肩に対する鏡視下手術の術後成績について検討した.
     理学所見及び肩関節造影MRIからSLAP lesionと診断し,3カ月以上の理学療法で改善しなかった症例を手術適応とした.機能評価はJSS Shoulder Sport Score(SSS), JOA score, UCLA scale, DASH score, Shoulder 36(v1.3)を用い術前後で比較した.
     JSS-SSS, JOA score, UCLA scale, DASH disability及びShoulder 36の疼痛,可動域,筋力,日常生活動作では術後有意に改善したが,DASH sport, work及びShoulder 36の健康感,スポーツでは有意差がなかった.
     自衛官のSLAP損傷に対する鏡視下手術の術後1年の治療成績は概ね良好であったが,スポーツ能力の回復が不十分であった.
  • 中井 大輔, 間瀬 泰克
    2014 年 38 巻 2 号 p. 662-665
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     前上方不安定症が主因と思われる投球障害肩に対して,弛緩した上関節上腕靱帯(SGHL)や中関節上腕靱帯(MGHL)の緊張化を図る目的で,その付着部位である関節唇(SLAP)を関節窩にスーチャーアンカーを用いて修復する鏡視下前上方安定化手術を施行した(SGHL/MGHL tensioningと定義した).
     術後12ヵ月以上が経過した12肩を対象とした.完全復帰は5肩,不完全復帰7肩であった.SLAP損傷を認めた7肩は認めなかった5肩に比べて有意に臨床成績が良好であった.SLAP損傷がなくSGHL/MGHLの弛緩 • 非薄化のみの場合は,それらの質的低下によりtensioning では安定化作用が不十分である可能性があった.
     SGHL/MGHLの tensioning による前上方安定化手術は投球復帰を可能にし,その付着部であるSLAP損傷を認めた場合の臨床成績は特に良好であった.
  • 森原 徹, 祐成 毅, 木田 圭重, 古川 龍平, 堀井 基行, 小田 良, 藤原 浩芳, 久保 俊一, 松井 知之
    2014 年 38 巻 2 号 p. 666-670
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     投球障害肩の代表的な疾患である肩関節内インピンジメント症候群に対する治療では,保存療法が第一選択になることが多い.その病態には,肩関節以外での機能異常を考慮する必要がある.今回われわれは,姿勢異常に起因する体幹 • 下肢の機能と肩関節機能の関連を評価するスクリーニングテストを考案した.本研究では,Hyper External Rotation Test(HERT)を工夫したスクリーニングテストを紹介し,テストを用いた有効性について検討した.対象は投球時に肩痛を認めHERTが陽性であった男子野球選手29例29肩とした.保存療法で対応し得た選手は29例中25例,86.2%であった.初診時から投球を許可した日数は平均25.9 ± 13.2日,復帰までのリハ回数は平均5.3 ± 1.2回,終了日数は平均62.5 ± 23.5日であった.競技復帰率は100%であった.手術療法を選択した症例は4例で13.8%であった.術後全例競技復帰した.理学療法士との連携のもと,スクリーニングテストを用いて保存療法か手術療法かについて速やかな判断を行い,早期競技復帰が可能であった.
  • 上田 祐輔, 菅谷 啓之, 高橋 憲正, 河合 伸昭, 渡海 守人, 松木 圭介, 大西 和友, 星加 昭太
    2014 年 38 巻 2 号 p. 671-674
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
    目的:近年の画像診断の進歩に伴い,いわゆる凍結肩にも腱板断裂が多く合併するという報告が散見されるようになった.一方で,凍結肩の定義自体が曖昧であることも事実である.本研究の目的は,凍結肩の定義を厳格に行った上で,その腱板所見を中心とした画像所見を明らかにすることである.
    対象と方法:明らかな外傷歴のない35歳以上で肩痛と関節可動域制限を主訴として受診した351肩を対象とした.これらのうち,他動的ROMが,前方挙上100°以下,下垂位外旋10°以下,結帯動作L5以下のglobalかつ高度に制限があった81肩を凍結肩群,凍結肩の定義に入らない270肩を非凍結肩群と定義して腱板の画像評価を行なった.
    結果:非凍結肩群では正常腱板129肩(48%),腱板完全断裂84肩(31%),腱板不全断裂57肩(21%)であったのに対し,凍結肩群では,正常腱板75肩(93%),腱板不全断裂6肩(7%)で完全断裂は認められなかった.
    結論:凍結肩をglobalで高度な拘縮として厳密に定義すれば,凍結肩には腱板完全断裂はない.
治療法
  • 熊野 貴史
    2014 年 38 巻 2 号 p. 675-678
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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    (目的)鏡視下肩腱板断裂修復術(以下,ARCR)で使用される灌流液の適正量について検討することである.
    (方法)対象は当院でARCRを施行した98例100肩である.手術は灌流液にアルスロマチック3Lバッグを使用して行った.灌流液使用量と手術時間,使用したアンカー数,術前後における血清クレアチニン値および血清電解質値の変化および合併症について検討を行った.
    (結果)手術時間と灌流液量の間には強い相関関係を認め,手術時間とアンカー数およびアンカー数と灌流液量との間にも相関関係を認めた.また,術前後の血清クレアチニン値および血清電解質に統計学的有意差は認めず,術後合併症を生じた症例は認めなかった.
    (考察)自験例ARCR100例の検討を行い,平均手術時間は117分でアルスロマチックの平均使用量は7.6本であり,重大な合併症は認めなかった.
  • 山口 毅, 落合 信靖, 山崎 博範, 佐々木 裕, 木島 丈博, 見目 智紀
    2014 年 38 巻 2 号 p. 679-682
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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     腱板断裂の保存治療として注射療法が行われているが,ステロイドとヒアルロン酸どちらが有効かは一定の見解が得られていない.本研究の目的は,ラット腱板断裂モデルにおける肩関節を支配する後根神経節(DRG)の感覚神経支配を評価し,注射後の疼痛抑制効果を検討することである.ラット肩腱板断裂モデルを作成し,術後21日目に逆行性神経トレーサーであるFluorogoldを肩関節内に注入し,術後26日目に生理食塩水,ヒアルロン酸,ステロイドを肩関節内注入した.術後28日目にC3 ∼ C7 高位のDRGを摘出し,疼痛を伝達する小型神経細胞マーカーであるCGRP抗体を用いて免疫組織学検討を行った.腱板断裂モデルにおけるCGRP陽性細胞の割合は有意に割合が高く,また生食群と比較し,ヒアルロン酸群,ステロイド群ではCGRP陽性細胞の割合が有意に低かった.ヒアルロン酸,ステロイド共に疼痛抑制効果があることが示唆された.
症例報告
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