熱帯農業研究
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3 巻, 1 号
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原著論文
  • 鬼頭 誠, アヌグロホ ファジリ, 山下 登志雄, 小橋川 範一
    2010 年 3 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/11/13
    ジャーナル フリー
    亜熱帯域におけるシカクマメの栽培に関する研究はほとんどない現状にある。本報では,耕作未利用地での土壌被覆能や雑草防除を目的にしたカバークロップとしての食用作物のシカクマメの利用可能性を調査するとともに,若莢収量や子実収量から食用作物として,さらに,若莢収穫後に茎葉を収穫した場合の緑肥としての可能性を調査した.
    シカクマメは初期生育が遅く,株間の土壌被覆率は播種12週間後でも約0.6m2 m-2程度であったが,播種16週間後から播種32週間後まではほぼ完全に土壌を被覆し,沖縄での台風シーズンの土壌浸食防止機能や雑草防除機能は高いと考えられた.
    シカクマメの若莢は播種28週間後から播種34週間後まで収穫可能であり,総収量は新鮮重で1.46 kg m-2であった.また,シカクマメの地上部が枯死する2月における子実収量も約0.18 kg m-2と高く,食用作物としても十分な収穫が可能であった.
    若莢収穫終了時における地上部の窒素,リンおよびカリウム吸収量は,それぞれ約20.0,2.7および6.3g m-2であり,緑肥として十分な効果があると思われた.
    以上より,シカクマメをカバークロップとして栽培した場合,未利用地からの土壌浸食の防止,土壌肥沃度の維持・向上を果たすだけでなく,本来の食用作物としての収穫も可能であり,シカクマメは高い可能性を秘めた今後さらに詳細な調査をする価値のある植物であることが明らかになった.
  • 陳 淑婉, 志和地 弘信, 真田 篤史, 豊原 秀和
    2010 年 3 巻 1 号 p. 6-12
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/11/13
    ジャーナル フリー
    ダイジョとナガイモのそれぞれ1品種を供試して,ムカゴの成長に及ぼす日長の影響を検討した.ダイジョとナガイモにおけるムカゴの形成は日長の影響を受けなかった.しかし,ダイジョとナガイモではムカゴの形成の開始時期が異なり,ダイジョのムカゴ形成はナガイモよりもかなり遅いことが明らかになった.そして,それぞれの種において,ムカゴの肥大成長は塊茎の肥大成長がある程度進んでから開始された.ムカゴの肥大成長はダイジョでは長日条件下で抑制されたが,ナガイモでは影響を受けなかった.すなわち,ムカゴの肥大成長に対する感光性程度はイモの感光性程度と同様,ナガイモでは小さく,ダイジョでは大きかった.
    沖縄県宮古島で栽培されたダイジョから種イモに利用可能な大きなムカゴが得られた.大きなムカゴを得るには,早期に植え付けて,延びた蔓を地面に接地させることが肝要である.
  • 加藤 太
    2010 年 3 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/11/13
    ジャーナル フリー
    タンザニア中南部に位置するキロンベロ谷は,面積約11600km2の内陸氾濫原である.人々はここで湿地という特性を生かしながら稲作を盛んにおこない,キロンベロ谷をタンザニア有数のコメ産地としている.キロンベロ谷の生態を地形と植生から分類すると,氾濫原,扇状地,フラッドサバンナおよび山地の4つに大別できる.そして,扇状地はその水環境から,さらに扇状地の外縁部,支流洪水域,湧水地,季節湿地,季節河川,表流水が流れる草原に区分できる.こうした多様な環境条件のもと,人々はそれぞれの区分において異なる農法で稲作を営んでいる.氾濫原では,水深が深く,長期間の洪水が発生するため,深水稲の形質を持つ品種が栽培されている.一方,扇状地上には川幅の狭い小さな支流が流れている.雨期になるとこの支流が増水することによって,ごく短期間の面状洪水が起こることから,こうした洪水を最も効果的に利用できるような作期が選択されている.フラッドサバンナでは洪水が起こらないため,畔を造成し表流水を水田に溜めることで,稲作が可能となっている.また,山地では陸稲栽培もおこなわれている.
    以上のようにキロンベロ谷では一概に在来農法といっても様々な地形植生区分でおこなわれており,その内実は多様である.そして,一見粗放に見える農法の一つ一つには生態,特に土地の水文条件を熟知した稲作農耕民の在来の知識が関わっていることがわかった.
  • 小田 正人, 中村 乾, Praphasri CHONGPRADITNUM
    2010 年 3 巻 1 号 p. 22-30
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/11/13
    ジャーナル フリー
    東北タイで行われている牛糞マルチの資材としての性能を検討した.供試牛糞はコンケン県の5戸の農家から平均的な電気伝導度(EC)のものを選定した.牛糞の成分は有機物(OM),全窒素,全リン,全カリウム各々338,12.1,3.20,44.3 mg g-1であった.風乾牛糞5.0 gに蒸留水50 mLを加え1時間振とうした時の肥料成分の溶出量は,NO3-N,NH4-N,PO4-P ,K各々0.226,0.078,0.320,17.0 mg g-1であった.1回灌水量,灌水間隔,灌水回数を組み合わせた溶出試験で,リンは灌水量に比例,硝酸態窒素とカリウムは灌水間隔と灌水量により溶出量が異なった.カリウムに比べて他の肥料成分は少なく,ECはカリウムに比例した.圃場にプラスチック製バケツ(直径0.16 m,高さ0.20m,3.8 L)を2重に埋設し,風乾土2000 gを詰め,マルチの厚み(0~40 mm)と灌水量(200および300 mL)を組み合わせた処理を行い,内バケツの重量を測定して蒸発量を求めた.蒸発ポテンシャルに対する実蒸発率yとマルチの厚みx(cm)には,y=0.20x-0.5(R2=0.99)の関係が見られた.農家の慣行では直径約20 cmの窪みに両手一杯(約400 mL)の牛糞を施用し,柄杓1杯(約500 mL)の灌水を行うが,以上の結果から,濃度障害回避には,灌水量を1600 mLに増やすことが望ましく,その場合,蒸発抑制効果により灌水した水分は約1ヶ月間保持される計算となる.定植直後の作物は蒸散量も小さいので,牛糞マルチは水分保持に十分有効であると言える.ただし,短期間の養分供給能においてカリウムの肥効は期待できるが窒素,リンの肥効は期待できない.
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