熱帯農業研究
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14 巻, 1 号
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原著論文
  • 近藤 友大, 古賀 翔硫
    2021 年 14 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/09
    ジャーナル フリー

    宮崎県椎葉村の焼畑では無機養分の少ない土壌でツルアズキとアズキ(以下焼畑アズキ)が栽培されてきた.これら2品種には貧栄養でも栽培可能な特長がある可能性がある.そこで,これら2品種の貧栄養土壌でのNおよびP吸収能を明らかにする目的で,火入れ22か月後の土壌を鉢に充填し,無施肥,NまたはPを施肥という3処理区を設定し,栽培試験をおこなった.比較対象として近代品種の‘タンバダイナゴン’(以下大納言)も栽培した.いずれの品種も,葉数はN・P施肥により増加し,P施肥によって葉の老化が遅延した.いずれの品種も,開花数には施肥の影響はなく,収穫種子重はP施肥によって増加し,Nの影響はなかった.開花数と収穫種子重はツルアズキがアズキ2品種よりも多かった.3品種ともN施肥で葉内N含量が増加し,P施肥で葉内P含量が増加した.葉内N含量に品種間差はなく,葉内P含量はツルアズキ,焼畑アズキで高かった.無施肥のツルアズキ,焼畑アズキの葉内P含量は,Pを施肥した大納言より高かった.栽培後土壌の可給態P含量はトルオーグ法では品種間差がなく,ブレイ2法ではツルアズキで低かった.トルオーグ法はCaと結合したPを,ブレイ2法ではそれに加えAlやFeと結合したPの一部も評価する.したがってツルアズキはAlやFeと結合したPの吸収能が優れることが示唆された.焼畑アズキの栽培後土壌の可給態P含量は大納言と差がなかった.以上から,椎葉村で栽培されてきたツルアズキと焼畑アズキはリン欠乏条件下においてP吸収能が優れていること,とくにツルアズキはAlやFeと結合した可給態Pを吸収する能力に優れることが示唆された.

  • 内野 浩二, 久木田 等, 熊本 修
    2021 年 14 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/09
    ジャーナル フリー

    本研究では,鹿児島県垂水市において,ビワ‘なつたより’の果実品質を‘長崎早生’および‘茂木’と比較した.‘なつたより’では‘長崎早生’および‘茂木’と比べて,果実重は大きく,果肉硬度は低かった.2014年には収穫始期(5月12日),盛期(5月19日)および終期(5月26日)の3回に分けて果実を収穫し,果皮色a*値と果実品質との関係を調査した.いずれの果実収穫日においても,果皮色a*値が大きくなるにしたがい,果実重は大きくなる傾向がみられた.収穫始期および盛期には,果皮色a*値が大きくなるにしたがい,果肉硬度は低下する傾向であった.収穫終期には,果皮色a*値8~14の果実の果肉硬度には有意差はみられなった.また,果皮色a*値が大きくなるにしたがい,糖度は高くなり,滴定酸度は低下した.果皮色a*値と果実品質との関係から,‘なつたより’では果皮色a*値8が収穫適期であると判断された.

  • 浅見 祐弥, 烏谷 亜紗子, 賴 宏亮, 井上 章二
    2021 年 14 巻 1 号 p. 14-18
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/09
    ジャーナル フリー

    窒素施肥濃度の違いがBupleurum kaoi Liu. (B. kaoi) の生育および成分含量に与える影響を明らかにすることを目的とした.供試したB. kaoiは,生薬として根が用いられる台湾固有種である.本研究は硝酸安の濃度を変えたホーグランド溶液を0,2,4,10,16,22 mMの6段階に設定し,週に1度施肥を行った.また乾物生産特性および根の成分含量を明らかにした.成分分析は,サイコサポニン(SS) a,b1,b2,cおよびdの 5種類の定量分析を行った.B. kaoiの生育及び乾物生産特性の結果は,草丈,葉数およびSPADで10 mM以上のとき,増加傾向にあった.さらに地上部および地下部の乾物重も同様に10 mM以上で有意に高い値を示した.10 mM 以上の処理区において,生育および乾物生産の有意差はなかった.主成分であるSSa および SSd においては 16 mM 以上で有意に増加した.また SSb1,SSb2,SSc においては10 mM 以上で有意に成分含量が高いことを示し,10 mM以上で総サイコサポニンが有意に増加した.以上の結果から,窒素施肥濃度10 mM以上で根の乾物重および成分含量は飽和点に達し,最適窒素施肥濃度の指標となる可能性が示唆された.

  • 志水 恒介, 巽 賢太郎, 宇都宮 直樹, 神崎 真哉, 伊藤 仁久, 重岡 成
    2021 年 14 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/09
    ジャーナル フリー

    近年,日本のマンゴー栽培は様々な地域に広まっているが,栽培品種が‘アーウィン’1品種に偏っているため品種構成の多様化が望まれている.近畿大学で育種した‘愛紅’は,‘アーウィン’と比べ,大果で果肉繊維が少ないのが特徴であり,収穫期は2週間〜1ヶ月程度遅い中晩生品種であるが,隔年結果性が強い.そのため‘愛紅’を連年にわたって安定生産するには,着花・結実特性を明らかにした上で,‘愛紅’に適した栽培管理法を確立することが求められる.本研究では,‘愛紅’について前年の結実の有無や剪定後の新梢伸長回数が花穂発生率に及ぼす影響を隔年結果性が弱い‘アーウィン’と比較調査するとともに,冬季のMiFT遺伝子の発現解析を行った.その結果,品種間および前年結実の有無による影響が認められ,‘愛紅’は‘アーウィン’と比べ花穂発生率が低い特性を持つこと,また,前年度における結実の有無が花穂発生率に強く影響することが示された.さらに両品種とも剪定後の新梢伸長回数は結実枝より不結実枝で多く,不結実枝では‘愛紅’の伸長回数が‘アーウィン’と比べ多いことが示された.また‘アーウィン’では伸長回数に関わらず高い花穂発生率を示したのに対し,‘愛紅’では伸長回数の多い枝で高くなる傾向がみられた.着果負担の多寡によるMiFT発現量への影響はほとんどみられず,また,‘愛紅’におけるMiFT発現量は‘アーウィン’と比較して低く,このことが‘愛紅’の花穂発生率が低くなる要因である可能性が示唆された.‘愛紅’では,結果母枝として剪定後に3回以上伸長した枝を確保することが生産の安定化に重要であることから,生産と遊休を明確に区別する隔年交互結実栽培法の有効性が示唆された.

短報
シンポジウム
2021年度日本熱帯農業学会学会賞学術賞特別講演要旨
2021年度日本熱帯農業学会学会賞奨励賞特別講演要旨
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