熱帯農業研究
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16 巻, 1 号
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研究報文
  • 東 弘菜, 西 修平, 一谷 勝之, 吉田 理一郎, 志水 勝好
    2023 年 16 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー

    アジアの亜熱帯から温帯の海岸に自生すると考えられるボタンボウフウの中で,鹿児島県南さつま市ではコダチボタンボウフウを用いて地域おこしを行っているが,現地農家から苗が不足しているという問題が挙げられ,その原因がコダチボタンボウフウの発芽率が著しく低いためであることが明らかとなった.そのため,本研究では発芽率の向上を目的とし,環境条件が発芽に及ぼす影響を調べた.直径9 cmのシャーレにコダチボタンボウフウの種子を100粒静置し,10 mLの蒸留水を加え恒温(20,25,および 30℃)および12時間毎の変温(10/25℃, 20/25℃, 20/30℃, および 25/30℃)での発芽試験を行った.光条件は24時間暗期および12時間毎の暗期と明期とした.加えて剥皮処理として外種皮(外殻)を剥離した処理区を各温度条件で設けた.発芽率はアークサイン変換を行った上で統計処理を行った.その結果,恒温条件(20,25および30℃)のコダチボタンボウフウの発芽率への影響を調べたところ,25℃で剥皮処理を施した区の発芽率が最も高く,約40%を推移し,20℃はやや低く推移した.また,30℃では発芽が見られなかった.変温条件では,10/25℃,20/30℃および25/30℃では発芽は見られなかったが, 20/25℃の対照区で約10%の発芽が見られた.一方,剥皮処理区の発芽率が, 40%以上と極めて高くなった.本研究の結果,コダチボタンボウフウの発芽率を向上させるためには変温条件で催芽させること,剥皮処理を施した上で, 20/25℃で発芽を促すことが有効と考えられた.

  • 内野 浩二, 久木田 等, 熊本 修
    2023 年 16 巻 1 号 p. 6-13
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,タンカン‘垂水1号’若齢樹における冬季の落葉,樹の生育,果実の収量および品質に及ぼす台木の影響を調査した.台木には,キャリゾシトレンジ(キャリゾと略す),サツマキコク(サツマと略す),スイングルシトロメロ(スイングルと略す)およびカラタチを用いた.冬季の落葉は,キャリゾ台,サツマ台およびスイングル台ではカラタチ台よりも少なかった.春枝長および春葉の葉面積は,キャリゾ台,サツマ台およびスイングル台ではカラタチ台よりも大きい傾向であった.樹齢8年生時には,カラタチ台に比べて,サツマ台およびスイングル台では,樹冠容積が大きく,収量が高い傾向が認められた.カラタチ台に比べて,キャリゾ台,サツマ台およびスイングル台では,平均果実重は大きく,L級・2L級果実割合は高かった.糖度はカラタチ台に比べて,キャリゾ台,サツマ台およびスイングル台では低い傾向であったが,2017年にはキャリゾ台およびスイングル台では11°を超えた.以上のように,キャリゾ台,サツマ台およびスイングル台では,冬季の落葉が改善された.また,それらの台木では,樹の生育,収量がカラタチ台よりも優れる傾向が認められるなど,若齢樹における各台木の特性が明らかとなった.

  • 出花 幸之介, 友寄 昌志, 吉永 博之
    2023 年 16 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー

    干ばつや台風など制御困難な気象災害が常在する南西諸島において,サトウキビの可製糖量とその構成要素に対する気象要因,作型および品種の影響を解析し,栽培体系における糖生産量を改善するための諸要因を究明した.沖縄県久米島において品種Ni21,Ni22,RK97-14を春と夏に植え付け,それぞれ株出し1回目までの8年間について解析した.干ばつや台風により可製糖量とその構成要素は大きく変動していたが,作型や品種の効果も判然としていた.構成要素の安定性を見ると可製糖率は最も安定し,原料茎数はやや安定していた.しかし生育旺盛期の干ばつにより一茎重が変動し,原料茎重と可製糖量が低下した. ゆえに,土壌の保水力の向上や生育旺盛期のかん水などによる一茎重の増加で,可製糖量が安定増加する可能性がある.年当たり可製糖量は春株体系,夏株体系,夏体系の順で有意に多かった.ただし栽培体系は,経営規模や労働力などによって柔軟に選択すべきである.また,夏株体系において株出しの安定増収を図るため,一茎重が重くて株出し能力が高い高糖性品種を選択し,施肥法を改良することが重要である.新品種RK97-14は3つの栽培体系とも可製糖量が多い傾向があったが,夏植えの早植えでは倒伏し易いので,やや遅い夏植えに適している.

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