マンゴー‘リペンス’の炭疽病に対する無機元素処理の発病低減効果を調査するため,他品目で効果が確認されているギ酸カルシウムを供試し,炭疽病の発生,果実品質ならびに果皮に及ぼす影響を検討した.圃場試験の結果,いずれの年もギ酸カルシウム散布区の炭疽病発生率は,無処理区より有意に低い値となった.果実品質には試験区による差がなく,ギ酸カルシウム散布による品質への影響はなかった.感受性検定では,炭疽病菌の菌糸伸長および胞子発芽に対する抑制効果は確認されなかったが,有傷接種試験では,ギ酸カルシウム散布区で病斑の拡大が有意に抑制された.このことから,ギ酸カルシウム散布による効果は,炭疽病菌への直接的な生育阻害等に起因するのではなく,植物体に対して作用を及ぼした可能性が高いと考えられた.ギ酸カルシウム散布区の果皮のカルシウム含量は292.1mg/100g,ヘキサメタリン酸可溶性ペクチン含量は3.83g/100gで無処理区と比較して有意に高く,果皮AISに対するペクチナーゼ反応は有意に低く推移した.また,追熟期間における果実硬度は,ギ酸カルシウム散布区で有意に高く推移した.以上のことから,‘リペンス’に対してギ酸カルシウムを散布すると,細胞内に存在するペクチン酸等と結合した不溶性ペクチンが生成され,ペクチン分解酵素による分解反応が抑制されるとともに,果実硬度が維持されることで,炭疽病菌の侵入を抑制する要因となった可能性が高いと考えられた.
抄録全体を表示