高い透水性の石灰岩が分布する熱帯・亜熱帯島嶼地域では,肥料由来の窒素が容易に地下に溶脱し,地下水の硝酸態窒素汚染を引き起こす.地下水を生活用水や農業用水として利用している沖縄県においては,サトウキビ肥培管理による施肥窒素の溶脱が地下への主な窒素負荷源である.特に,生育初期に多量に施用される施肥のほとんどは,サトウキビに吸収されない.サトウキビ肥培管理による窒素溶脱を削減するためには,サトウキビの窒素吸収および生育特性に適した肥培管理法を開発することが重要である.基肥および追肥窒素の減肥がサトウキビ生育および硝酸態窒素溶脱に与える影響を明らかにし,収量を維持し窒素溶脱量を削減する肥培管理技術を開発することを目的として,栽培試験および硝酸態窒素溶脱量観測をライシメーター圃場で行った.サトウキビの栽培初期における作物生育は窒素減肥の影響はなく,硝酸態窒素溶脱は同時期に主に発生したことから,現行の施肥基準において栽培初期の施肥窒素は過剰であることが示唆された.また,基肥窒素を現行の施肥基準量の半量に削減しても,基肥窒素の全量と同程度の原料茎重が維持された.以上の結果から,地下水への窒素負荷量を削減し収量を維持するためには,基肥窒素の施用量を削減することによって,生育初期の窒素溶脱量を削減することが有効である.
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