地震工学論文集
Online ISSN : 1884-846X
ISSN-L : 1880-4624
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  • 那須 誠, 金野 寿哉
    2007 年 29 巻 p. 1-9
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    1995年兵庫県南部地震では地盤変位などによる杭基礎構造物の被害が数多く報告された. しかし, それらの報告においては, 地震波の影響や構造物自体の構造の問題に着目したものがほとんどであり, 地盤構造に着目したものはあまり見られない. そこで本研究では, 地盤構造が杭基礎構造物の損傷に影響を与えている一要因と考え, 杭基礎構造物の損傷部位と地盤構造の相互関係を文献調査とラーメン高架橋を解析モデルとした2次元FEM地震応答解析を行って検討した. その結果, 砂・礫層等が主体の良好な地盤に, 腐植土層をはじめとする軟弱粘性土層を薄く挟む地盤構造上に立地するものでは橋脚柱が, 厚い軟弱粘性土層の埋立地盤上に立地するものでは杭頭部や地層境界部の杭が損傷する可能性が高いことが推察された.
  • 村田 晶, 今井 哲治, 北浦 勝, 宮島 昌克
    2007 年 29 巻 p. 10-19
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    一般に地震動の破壊力を示す指標として, 計測震度等が用いられている。しかし, これらの指標は地震動により構造物が何回揺らされ, 疲労がどのくらい蓄積されたかという地震動の繰り返しによる影響を十分に考慮していない。特に2004年新潟県中越地震では本震後の余震によって木造構造物の破壊が拡大した。そこで, 本研究では建築年代別構成を考慮した疲労応答スペクトル強度指標 (FSI) を適用し, 被害との関係について考察するとともに, 森本・富樫断層が震源となる地震動による金沢市の木造構造物被害予測を行い, 震源パラメータの違いによる被害程度を考察する。その結果, 建築年代別構成を考慮した疲労応答スペクトル指標の有効性を示すことができた。
  • 沼田 淳紀, 上明戸 昇, 三輪 滋, 池田 隆明
    2007 年 29 巻 p. 20-29
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    2007年3月25日9時42分頃に発生した能登半島地震 (気象庁マグニチュード 6.9) では, 震央近くを中心に震度6強の大きな地震の揺れを観測した. 住家は, 主に震央に近い能登半島西側, 穴水町, 七尾市を中心に, 全壊 638棟, 半壊 1,563棟の大きな被害に至った. 一方, 液状化も能登半島各地で発生したが, 主には半島西側で多数の液状化が確認された. 能登半島では, 1993年能登半島沖地震においても珠洲市で液状化が発生しており, 今回の地震では一部で再液状化も確認された. 本論文では, 2007年能登半島地震における液状化について, 液状化発生地点の特徴, 液状化による被害, 再液状化, 液状化により発生した噴砂の粒度組成, 幾つかの地点で実施した液状化判定結果について, 地震直後における知見を述べる.
  • 鈴木 憲一, 岩楯 敞広, 吉嶺 充俊, 小田 義也
    2007 年 29 巻 p. 30-39
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    本研究では2006年5月に起きたインドネシア・ジャワ島中部地震の被災地において, 常時微動観測を実施し, 地震被害との相関を評価した. 表層地盤の地震応答特性を広い範囲で明らかにし, 地震被害の規模と全体的に良い相関が見られた. 一部の不相関は地盤特性のみでは説明できないことから, 震源特性や伝播特性の影響が大きく影響していると考えられる. 地滑り現場では滑り土塊の堆積量を.. 1/4波長則を用いて大まかに把握することができた. さらに, 歴史的構造物 (ヒンドゥー教小寺院) , ダムの構造物の地震応答特性を評価し, 地震時に共振現象より大きな地震力が作用する可能性が高いことがわかった.
  • 三輪 滋, アイダン オメル, 児玉 裕之, 遠藤 一郎, 清野 純史, 鈴木 智治, 濱田 政則
    2007 年 29 巻 p. 40-49
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    巨大津波によりインドネシアなどに未曾有の大災害を引き起こした 2004年12月26日のスマトラ沖地震の 3ヵ月後の 2005年3月28日に, 先の地震の震源域のやや南にあたるインドネシア・ Nias (ニアス) 島の北方でマグニチュード8.7の巨大地震が発生し, 震源に近いニアス島を中心に, 今度は大きな地震動やそれに伴う液状化などの地盤災害により多くの構造物が大きな被害を受けた. これらの地震被害に対して, 地震被害調査にとどまらず, 復旧復興の提言や防災教育など復旧復興支援活動が継続的に実施されている. ここでは, 地震直後の被害調査と, 復旧復興支援活動の中で実施した地盤調査から得られた, 地盤や構造物の被害状況, 特に液状化による被害について, 地盤地震工学的な視点から述べる.
  • Tsuneo OHSUMI, Koji Baba
    2007 年 29 巻 p. 50-59
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    An earthquake with a magnitude of 6.3 has occurred on May 27, 2006 and caused 5, 700 casualties. Investigation on damage for the Prambanan temple, housing and infrastructure was carried out in and around Yogyakarta, in central JAVA from June 5 to 8, 2006 The Prambanan complex sustained heavy damage, even this complex is located 40 km far north east of the epicenter. It is considered that the seismic wave was amplified due to the directivity effect and attacked Prambanan complex. Extensive damaged areas are distributed in the west side of the Imogiri fault. Serious damaged areas are limited in Bantul and in Klaten Regency. Damaged areas begin in Klaten Regency between Solo and Yogyakarta. In Bantul Regency, there were more than 4, 000 casualties. The infrastructure suffered comparatively light damages, however, housing sustained heavy damages and totally collapsed in Bantul Regency. In this report, reasons why the infrastructure sustained light damage while housing suffered heavily and as well as why damage areas are distributed unevenly are discussed.
  • 橋本 隆雄, 宮島 昌克
    2007 年 29 巻 p. 60-69
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    2003年三陸南地震では石巻, 築館, 気仙沼, 仙台等の市町村の宅地が大規模な被害を受けた。この直後に県内の被災者からの要望により, 消防団員が目視で 5月 28日, 29日の両日に渡り気仙沼市及び気仙沼土木事務所管内の各地区, 世帯の被害状況を調査し, その結果を文書にて整理したものが県に寄せられた。地震発生1ヶ月後に, 26名の被災宅地危険度判定士 (以下, 宅地判定士という) によって 129件の調査が2003年6月25日, 26日に行われた。この論文では, 地震発生後に消防団員の調査結果を宅地判定士の帳票で再評価し直したものと, 宅地判定士活動結果の比較・分析を行い, 宅地擁壁, 宅地地盤, 宅地のり面・自然斜面等の被害状況の違いから, 宅地判定士の初動体制の遅れの影響について検討し, 今後のあり方について提言する。
  • 橋本 隆雄, 宮島 昌克
    2007 年 29 巻 p. 70-77
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    被災宅地危険度判定士制度は1995年兵庫県南部地震を機に発足し, 2000年10月の鳥取県西部地震から2005年3月福岡県西部地震に至るまで宅地判定士が被害状況を迅速かつ的確に把握し, 危険度判定を実施することによって, 二次災害を防止し, 住民の安全の確保を図ることに貢献している。一方, 2004年新潟県中越地震の教訓では, 空石積擁壁が多く, 建物が擁壁から離れていて影響が少ないもの, 擁壁高さが高いものとの差等を考慮する必要が生じてきた。そこで, この地震で実際に被災判定活動を行った都道府県・都市再生機構等の担当者にアンケート調査を行った。本論文では, この結果の分析を踏まえた改善提案を行い, 今後の適切な判定に役立てることを目的としている。
  • 近藤 伸也, 目黒 公郎, 蛭間 芳樹
    2007 年 29 巻 p. 78-87
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    組織として理想的な防災対策を実現するには, 過去の災害対応を正確に記録し, これを分析 /評価し, 問題点を洗い出すとともに解決策を検討する環境整備が必要である. しかし, 現状では組織としての防災力を分析/評価できる環境が整備されていない. そこで本研究では, 新潟県中越地震時における新潟県庁の災害対応業務記録を5つの視点 (組織構造, 業務分析, 業務量評価, 情報マネージメント, 相互連関) から分析し, 組織としての防災上の問題点を洗い出しを試みた. また, 実際に対応にあたった県庁職員に対して, ヒアリング調査を行うことで業務記録の信頼性を確認するとともに, 分析結果に基づいた議論から, 組織の防災力向上に貢献できる教訓を抽出し, 防災対策を立案できる環境を整備した.
  • 田村 敬一, 永田 茂, 高原 秀夫, 若林 亮
    2007 年 29 巻 p. 88-97
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    本論文は, これまでの個別の自然災害に対するリスク評価手法に関する成果を活用することにより, マルチハザードに関する実用的なリスク評価手法の提案を行うものであり, 本研究では, 現状利用可能なデータを用いて, 特に, 地震, 洪水等の異なる自然災害によるリスクを, 例えば, 建物被害額といった共通の尺度で表し, 複数の自然災害の影響を実務的に評価することに重点を置いた. また, 提案手法に基づき, 実存の地域を対象とした地震, 洪水及び高潮のマルチハザードに関するリスク評価の試算結果を示した.
  • 坂井 公俊, 室野 剛隆, 佐藤 勉, 澤田 純男
    2007 年 29 巻 p. 98-103
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    現行の道路や鉄道の設計の際に一般的に用いられている安全性照査地震は, 主に兵庫県南部地震の記録をもとに策定されている. しかし兵庫県南部地震の強震域は地震基盤深度が非常に深く, そこで得られた記録は地盤の増幅の影響を強く含んでいる. そのため地震基盤が浅い地域においてもこのような設計地震動を適用することは合理的でないことが想定される. そこで本研究では地震基盤深度を大まかに 2つに分類し, それぞれの基盤深度における内陸活断層型地震の応答スペクトルの比較を行った. その結果, 比較的地震基盤が浅い地域では, 深い地域と比較すると, 構造物の一般的な周期帯である 0.5~1.0秒において, 3割程度応答スペクトルレベルが小さくなる可能性が示唆された. 山間部等地盤の良好な地域では, このスペクトルを用いて安全性照査を行うことにより, 現在よりも合理的な構造物の設計が可能となる.
  • 山田 雅行, 先名 重樹, 藤原 広行
    2007 年 29 巻 p. 104-113
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    レシピに基づいて強震動予測を行う場合, 予測結果が震源パラメータのバラツキによってどの程度のバラツキを有するのかを評価する手法について検討を行った. 「バラツキ」を考慮するパラメータとして, アスペリティの位置と破壊開始点, アスペリティの強度 (平均すべり量の比) , アスペリティの強度 (応力降下量) , 破壊伝播速度を考慮した. 特定サイト, 空間分布ともにアスペリティの強度 (応力降下量) によるバラツキが大きな値となることがわかったが, 逆断層, 横ずれ断層の結果において大きな差異は見られなかった.
  • 野津 厚
    2007 年 29 巻 p. 114-122
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    既往の研究において著者らは断層モデルを用いた強震動評価における多重非線形効果の重要性を指摘し, その影響を加味して簡便に強震動評価を行うための手法として, 「非線形パラメタ」を用いて経験的グリーン関数を補正する方法を提案してきた. 本研究では, この方法を既存の有効応力解析手法と組み合わせることにより, 表層地盤の非線形性の影響をより適切に反映できる手法とすることを試みた. 1995年兵庫県南部地震によるポートアイランドの鉛直アレー観測記録および 1993年釧路沖地震による釧路港の鉛直アレー観測記録を対象として提案法による強震動シミュレーションを実施し, 提案法の適用性を確認した.
  • 原田 隆典, 王 宏沢, 斉藤 将司
    2007 年 29 巻 p. 123-131
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    本論文では, 常時微動H/Vスペクトル比と近傍の地震動観測記録のみを用いて地震動を推定する方法の定式化を示し, 2地点間距離が3~6kmと短い宮崎県内のK-NET観測点とFDMA (消防庁) 観測点の地震動記録と常時微動観測記録を用いて地震動推定法の推定精度を検証した. その結果, 宮崎県内の8観測点のうち, 延岡, 北川の2つの観測点を除くと, 周期0.06秒から2秒の範囲での推定地震動スペクトル振幅は, 実地震動スペクトル振幅の0.4~4倍の範囲であることを示した. 地盤の卓越周期近傍では, 誤差は約半分になり0.5~2倍の範囲であることを示した. 推定精度の悪い2つの観測点においては, 地震動の上下動成分の違いの影響が大きいことを示した.
  • M. R. GHAYAMGHAMIAN, A. R. NOJAVAN
    2007 年 29 巻 p. 132-138
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/07/30
    ジャーナル フリー
    The Iranian design code has been recently revised after the 2003 of Bam earthquake and currently proposes two standard shapes for the design response spectra. These propositions, however, were not constrained using actual strong motion data. In the present study, the high quality data from five recent earthquakes in Iran from 2002 until 2005 were used to evaluate the proposed design response spectra. A database of 696 strong motion records from 242 stations were employed. Using these records, the sites were classified and the response spectra together with their means were calculated for each site catagory. The mean response spectra used to review the shape of the proposed design response spectra. In particular, the plateau-PGA ratio level and the period interval where this plateau is constant.
  • 本田 利器, 宮本 崇
    2007 年 29 巻 p. 139-145
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    設計地震動の表現にはフーリエ表現が広く用いられるが, これは, 地震動の周波数特性の時間的変化 (時間周波数特性) を表現するのには適しておらず, 例えば非線形応答解析への適用を考えると使いにくさがある. 本研究では, 近年, 波形合成に使われるようになってきているウェーブレット変換を利用し, 入力地震動の使いやすい波形の表現を提案し, その有効性を検証する.
  • 本田 利器, 岡元 良輔, 澤田 純男
    2007 年 29 巻 p. 146-152
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    本論文では, 不確定性を与えた構造物に地震動を入力させた時の非線形応答値を, 情報理論で用いられる相互情報量や Kullback. Leibler距離によって取り扱うことで, 構造物に与える影響に基づいた地震動の類似性評価法の提案を行う. 本研究の提案手法を用いることによって, 地震動の類似性評価において, 不確定性を持った複数の非線形応答指標を合理的に取り扱うことが可能になる. そして数値解析によって, 提案した両手法の有用性の検証を行った.
  • 石井 やよい, 後藤 浩之, 澤田 純男
    2007 年 29 巻 p. 153-160
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    新潟県中越地震では, 気象庁の川口観測点において震度7が観測され, K-NETの小千谷観測点においても震度7に相当する地震動が観測された. 気象庁川口と K-NET小千谷の2点で観測された水平動粒子軌跡が異なる方向に震動していることから, 本研究ではこの震動方向の違いの成因について震源過程に着目して考察する. 震源過程の推定においては観測点の地盤モデルを余震を用いて設定した上で, 強震記録を用いた震源インバージョンを実施する. 推定された震源過程には小千谷の地震動に寄与する滑りの大きな領域と, 断層の浅い部分に位置して川口の地震動にのみ寄与する領域とが存在することが定量的に確認された.
  • 大中 太郎, 翠川 三郎, 阿部 進
    2007 年 29 巻 p. 161-167
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    地域の地震防災を進めていく上で重要な基礎資料となる高密度震度分布図を作成するために、2006年7月23日に千葉県北西部で発生した地震 (M6.0) を対象として、横浜市鶴見区において多数のアンケート震度調査票を配布し、3000点強の地点でアンケート震度を算出した。アンケート震度と観測された計測震度を比較し、その妥当性を検討した上で、各地点での震度データの空間補間を行い、高密度震度分布図を作成した。その結果、震度分布は非常に複雑であることを明らかにした。さらに、複雑な震度分布の要因を検討するために、震度分布と地形・地盤の関係について考察した。
  • 福島 康宏, 末冨 岩雄, 磯山 龍二
    2007 年 29 巻 p. 168-177
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    平成 19年 (2007年) 能登半島地震において, 防災科研の K-NET, KiK-net観測網や気象庁などの震度観測網において, 強震波形が得られている. 本検討では, 地形分類に基づく地盤増幅度を考慮した観測値の空間補間により, 1kmメッシュ単位の地震動分布推定を行った. また, 震源域における, 比較的地点間距離の小さい2観測点での地震動を比較し, サイト特性の相違やその原因について考察を行った.
  • 三神 厚, 齊藤 剛彦, 澤田 勉, 繁田 淳吾, 中野 晋
    2007 年 29 巻 p. 178-186
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    本論文は, 1944年東南海地震の震源近傍で2004年9月に発生した長周期成分の卓越した地震によって, 四国地域のK-NET観測点やKiK-net観測点で得られた地震動を用いて, 地震動の距離減衰特性や地盤のサイト増幅特性を検討したものである. 既往の距離減衰式と紀伊半島南東沖地震の観測値を比較した結果, 最大変位に比べ, 最大加速度や最大速度で観測値が距離減衰式を下回る程度が顕著であることがわかった. 増幅については, 既往の経験式と相対的な位置関係を比較すると, 紀伊半島南東沖地震では他の地震に比べ, サイト増幅を過小評価する傾向にあることがわかった. これらの結果は, 周期の長い地震動では, 既往の距離減衰式やサイト増幅評価式を使った場合に比べ, 地震動強度が小さくなる可能性を示している.
  • 川西 智浩, 室野 剛隆, 佐藤 勉, 畠中 仁
    2007 年 29 巻 p. 187-196
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    現行の鉄道設計標準における耐震設計上の地盤種別は, 地盤の初期剛性に基づいて算定される地盤の固有周期により区分されている. 入力地震波のレベルが大きくなると, 地盤が非線形化して剛性が低下するが, 地盤の非線形性は粘性土や砂質土などの土質区分によって異なるため, 土質区分の影響を考慮して地盤種別を分類する方が合理的であると考えられる. そこで本研究では, 多くの実地盤に対して逐次非線形動的解析を実施するとともに, 土質区分毎の非線形性の違いを考慮した地盤の「等価周期」の算定方法について検討を行い, 等価周期を用いて地盤種別を分類した場合の精度について検証を行った.
  • 長尾 毅, 山田 雅行, 野津 厚, 諸星 一信, 小林 哲人, 安中 正
    2007 年 29 巻 p. 197-205
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    港湾エリアが広く, サイト増幅特性が複数得られている東京港において, 微動H/Vを用いて, 設計用地震動作成に用いるサイト増幅特性のグルーピングを試みた. 港湾構造物に影響が大きいとされる1Hz付近 (0.3~2.0Hz) に着目すると, 微動H/Vのピーク周波数はインピーダンス比の大きい層に強く影響を受ける伝達関数のピーク周波数とよく一致することがわかった. したがって, 微動H/Vのピーク周波数に着目して, 簡便にサイト増幅特性のグルーピングを行うことが可能なことを示した.
  • 野口 竜也, 西原 正典, 西田 良平
    2007 年 29 巻 p. 206-213
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    鳥取県内の50観測点で得られた 1464地震 (延べ 4833個) の計測震度データの分析を行った. 各観測点において, 距離減衰式による推定震度と観測による震度の差の平均を求め, 地盤増幅による増幅効果の指標とした. この指標と地盤特性を比較し関係を調べた. 地盤の深さ 30mまでの平均 S波速度 (AVS30) とは良い相関がみられ, AVSが小さいほど揺れやすい地点である関係がみられた. より深い地盤構造を反映している重力異常との比較では, 特に相関がみられなかった. また, 従来から境港市の近接 2地点で震度差が生じる地点においては, AVS30がほぼ同じあるにも関わらず, 今回の分析による増幅効果の指標においても同様な差異がみられた.
  • 西川 隼人, 宮島 昌克
    2007 年 29 巻 p. 214-219
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    本論文では北陸地方のK-NET, KiK-net観測点を対象にサイト特性を求め, 標高や地形分類などの地盤条件との対応を調べた. まず, 得られた各観測点のサイト特性と標高の相関を調べたところ, 対象とする振動数が低いほど両者の相関が高い傾向が見られた. 観測点を地形分類ごとに分類し, サイト特性の平均値を求めたところ, 丘陵に分類された観測点では1~3Hzで増幅が大きく, また, 後背湿地と三角州・海岸低地の平均的サイト特性では4Hzよりも低振動数で増幅度が大きかった. 最後に地形分類ごとのサイト特性の変動係数を求めたところ, 山地や丘陵, 後背湿地では全体的に変動係数が小さい傾向にあり, 砂礫質台地や谷底低地では振動数によっては変動係数が大きかった.
  • 足立 正夫, 野口 竜也, 西田 良平, 元木 健太郎, 瀬尾 和大
    2007 年 29 巻 p. 220-228
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    本研究では, 常時微動観測に基づいて, 島根県出雲平野の地盤構造を推定し既存の地形・地質・ボーリングデータなどの情報と比較, 検討を行った. 出雲平野全域に500m間隔のメッシュの交点上もしくはその付近において, 3成分常時微動観測を行った. これらの記録からH/Vスペクトルを求め, ピーク周期のコンターマップを作成した. また, 平野内の4地点において半径3-30mアレイ観測を行いSPAC法により第三紀層までのS波速度構造を明らかにした. H/Vスペクトルのピーク周期とアレイ観測より求めたS波速度を用い, 1/4波長則から第四紀層の厚さを推定し, その整合性について検討を行った.
  • 森 勇人, 澤田 純男, 吉田 望
    2007 年 29 巻 p. 229-236
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    強震時における水平動と上下動の相互作用の影響を調べるため, 飽和・不飽和地盤モデルについて3次元有効応力応答解析を行った. その結果, 相互作用の影響は均質地盤モデルではほとんど現れていなかった. しかし, 不飽和地盤モデルでは, 上下動の影響により有効平均主応力が変化し, 上下動成分がダイレタンシーの効果を介して水平動成分に現れていることが分かった. また, 兵庫県南部地震時のポートアイランド鉛直アレイ記録を用いて動的シミュレーションを行った結果, この相互作用の影響が観測記録に現れていることが確認された.
  • 山崎 浩之, 金田 一広, 永野 賢次
    2007 年 29 巻 p. 237-244
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    海溝型地震の特徴は地震動の継続時間が長いことが挙げられる. 本研究はケーソン式岸壁の振動台実験を行い, 裏埋め土 (ゆるい地盤と密な地盤) の液状化およびケーソンの変位に着目して継続時間の影響について検討した. 規則波 (正弦波) を用いて載荷回数を変えて継続時間の影響を調べ, さらに従来のものよりも長い不規則波 (シナリオ波) についても検討した. ゆるい地盤は比較的小さな入力加速度では継続時間の影響が見られ, 裏埋め土が液状化した後しばらく高い間隙水圧を保つ. 密な地盤はゆるい地盤に比べて継続時間の影響は少なく, 裏埋め土は液状化した後すぐに間隙水圧の消散が見られる. シナリオ波については密度によってケーソンの変位が異なり, シナリオ波を規則波で換算する場合は密度も考慮する必要があることを示した.
  • 吉田 雅穂, 塔尾 勝, 宮島 昌克, 北浦 勝
    2007 年 29 巻 p. 245-250
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    平成16年新潟県中越地震では埋戻し土の液状化による下水道マンホールの突出被害が1,400箇所以上も発生した. 過剰間隙水圧の早期消散を目的とした液状化対策工法として, 透水性の高い砕石等を地盤内に設置する工法が提案されているが, 本研究では, 廃タイヤを破砕したタイヤチップや廃コンクリートより抽出した再生砕石を砕石の代替材料として活用し, また, これらリサイクル材料を土のう袋に詰め込んで作製した土のう型ドレーン材をマンホールの周囲に設置し, 液状化時の浮上を軽減する工法を提案した. 模型振動実験を行った結果, 本工法によるマンホール浮上軽減効果を確認するとともに, 高い透水性能を有するタイヤチップの有効性を明らかにした.
  • 笠間 清伸, 善 功企, 陳 光斉
    2007 年 29 巻 p. 251-257
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    本論文では, 確率統計論に基づき液状化対策として固化処理された砂地盤の液状化ポテンシャルの評価法を提案した. 提案した確率統計手法は, 固化処理地盤の一軸圧縮強度の空間的ばらつき, 強度試験に含まれる偶発誤差と推定誤差, 一軸圧縮強度から液状化強度を推定するさいに生じる系統誤差および地盤のせん断波速度のばらつきに起因した地震応答特性の不確定性などを考慮している. 液状化ポテンシャルの評価のために, 地盤要素の液状化安全率FLならびに液状化指数PLを用い, 地盤の一軸圧縮強度の平均値および変動係数が液状化ポテンシャルに与える影響を考察した. 最後に, 実際に施工された固化処理砂地盤に本提案手法を適用し, 固化処理による液状化対策の有効性の評価を試みた.
  • 重岡 知之, 善 功企, 陳 光斉, 笠間 清伸
    2007 年 29 巻 p. 258-264
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    液状化対策として固化処理された改良地盤では, 対象地盤の土質の不均質性や, 固化材の混合の不均一性などの原因により, 液状化強度の空間的なばらつきが生じることが報告されており, その地震時沈下挙動は未解明な点が多い. 本文では, 強度のばらつきを表現した模型地盤を用いて振動台実験を行い, 地震時沈下挙動を明らかにしたうえで, 地盤改良効果について考察した. さらに, 鉛直ひずみの深度分布に着目した, 地震時沈下量の簡易予測式を提案し, 一次元でなく二次元方向で改良パターンを考慮すれば, 精度が高くなることを明らかにした. 本式は今後の研究により, 固化処理地盤の品質評価手法の発展等に寄与できると考えられる.
  • 高橋 章浩, 杉田 秀樹, 石原 雅規, 谷本 俊輔
    2007 年 29 巻 p. 265-270
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    河川堤防の耐震対策に格子状改良工法を適用する場合, その耐震性能照査において, 固化体の内部安定の照査が必要となる. 本研究では, 想定される格子状改良された砂の変形モードの内, 遠心模型実験で観察された格子壁の鉛直せん断に着目した, 格子状改良された砂のせん断試験を実施し, その結果, 格子内の未改良部のせん断抵抗が非常に小さくても, これが存在することにより, せん断方向に平行な格子壁の面外方向への変形が抑制され, 結果として格子改良砂全体のせん断抵抗が大きくなること, 本研究の実験条件の範囲内では, 格子内に未改良砂がある場合のせん断応力-せん断ひずみ関係は, 概ね改良率と一軸圧縮強度の2つのパラメータで正規化が可能なことを明らかにした.
  • 荒牧 憲隆, 岡林 巧, 兵動 正幸
    2007 年 29 巻 p. 271-278
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    脆弱な粒子から構成されるしらす等の埋立て地盤の力学特性を明らかにするために, 礫分含有量の異なるしらすを用いて, 一次元圧縮特性を調べると共に, 密度, 拘束圧に着目したしらすの非排水繰返しせん断特性について実験的に検討した. さらに, 締固め作用が非排水繰返しせん断特性に及ぼす影響についても検討し, 従来の方法で規定される相対密度での液状化強度特性との比較検討を行った. その結果, 緩詰めしらすの繰返しせん断強度比は, 粒度, 拘束圧にさほど依存しないことが分かった. また, 密詰めしらすおよび締固めたしらすの繰返しせん断強度比は, 拘束圧の増加に対し減少することが示された. さらに, しらすの繰返しせん断強度比に及ぼす締固めによる改良効果は, 粒度, 拘束圧に依存することが認められた.
  • 齊藤 将司, 原田 隆典, 森 源次, 王 宏沢, 山下 典彦
    2007 年 29 巻 p. 279-286
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    地表面に鉛直方向の調和振動荷重を作用させたときに地表面の2地点間で観測される位相速度の振動数依存性と地盤の卓越振動数の情報から表層地盤構造と地盤物性値を推定する方法を示す. この方法の実データによる検証の前段階として, 半無限弾性地盤上にのる1層と3層の水平成層地盤の2つのケースを想定した数値実験により本推定法の検証を示す. これらの数値実験データに基づく本推定法の検証を通して, いずれのケースにおいても地盤の卓越振動数がほぼ等しい地盤構造と地盤物性値の初期地盤を用い, かつ位相速度の振動数依存性を合わせる方法によって, 仮定した地盤構造と地盤物性値を探索できることを確認した.
  • 辻原 治, 澤田 勉
    2007 年 29 巻 p. 287-294
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    神戸市を中心に大きな被害をもたらした1995年の兵庫県南部地震以来, 我が国では多くの地震計が設置されるようになった. 防災科学技術研究所のKiK-netにおいては, 全国の約700箇所の地点で, 地表および地中の地盤震動の同時観測が実施されており, その記録は地盤の動特性の同定などに用いられている. 本研究では, 地盤の動特性のうち特に減衰に着目し, これを同定するための新たなアプローチを提案するとともに, その課題について議論する.
  • 秦 吉弥, 一井 康二, 李 黎明, 土田 孝, 加納 誠二
    2007 年 29 巻 p. 295-304
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    わが国の盛土は, しばしば傾斜基盤等の不整形な原地盤上に構築されることがあり, そのような盛土の地震被害も報告されている. しかしながら傾斜基盤上の盛土の地震応答特性については, これまであまり明らかになっていない. そこで本研究では, 傾斜基盤上の盛土に関する動的遠心模型実験を実施し, 傾斜の勾配が盛土の地震応答特性に及ぼす影響について検討を行った. その結果, 傾斜基盤上の盛土では, 水平一方向加振の場合においても上下方向に比較的大きな加速度応答を示すなど, 非常に複雑な地震応答特性を有していることがわかった. また盛土の耐震性能照査手法としてのNewmark法の適用性について, 盛土の応答特性を踏まえて検討した.
  • 秦 吉弥, 一井 康二, 土田 孝, 李 黎明, 加納 誠二
    2007 年 29 巻 p. 305-313
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    傾斜基盤を有する盛土は, 既往の地震でしばしば被害を被っており, 強震時において水平応答だけでなく上下応答が生じやすいことが報告されている. しかしながら上下動が傾斜基盤上の盛土の耐震性能に及ぼす影響については, これまであまり明らかになっていない. そこで本研究では, 有限要素法を用いた傾斜基盤上の盛土の地震応答解析を行い, 上下動が盛土の地震応答特性に及ぼす影響について検討を行った. その結果, 上下動は残留変位量に対して安全側にも危険側にも作用する可能性があり, 入力地震動の位相特性に依存していることを示した. さらに水平動と上下動が同じような位相特性を有している場合, 残留変位量が増大する可能性があることも示した.
  • 秦 吉弥, 加納 誠二, 多賀 正記, 一井 康二, 土田 孝, 山下 典彦
    2007 年 29 巻 p. 314-323
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    2004年新潟県中越地震では, 水平加速度と同等, あるいはそれ以上の鉛直加速度が観測されており, 傾斜基盤上に築造された高速道路盛土の被災が報告されている. しかし, こういった傾斜基盤上の盛土の振動性状, 特に上下動が盛土の破壊に及ぼす影響に関する検討はあまり行われていない. そこで本稿では, 傾斜基盤上に築造された盛土の形状を考慮した簡便な盛土の固有振動数算定式を水平方向ならびに上下方向それぞれについて提案した. そして本提案式の妥当性を検証するため, 振動台模型実験結果およびFEM解析結果との比較検討を行った.
  • 秋吉 将史, 小野 祐輔, 酒井 久和, 西田 真悟
    2007 年 29 巻 p. 324-330
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    今日まで地震時の液状化被害が数多く報告されており, 被害の再現や液状化対策を狙ったシミュレーションが行われている. このとき, 解析手法として有限要素法や有限差分法などが広く用いられているが, これらのメッシュに依存した解析手法は, 地盤が破壊するという結果は得られても, 破壊の仕方や破壊後の挙動といった大変形問題を取り入れ, SPH法を用いて有効応用力解析を行い, せん断試験の再現シミュレーションを行った.
  • 忽那 惇, 善 功企, 陳 光斉, 笠間 清伸
    2007 年 29 巻 p. 331-335
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    本研究では, 液状化強度のばらつきをランダム場理論で表現し, 数値極限解析を用いたモンテカルロ・シミュレーションを行うことで, 液状化の局所性を考慮した地震時における液状化地盤の支持力解析を行った. その結果を用いて, 液状化部の割合が支持力係数および破壊モードに与える影響について, 確率統計的に考察した. 得られた結論をまとめると以下のようになる. 1) 局所的な液状化を考慮した地盤において, 水平震度および液状化部の割合が増加すると, 地盤の支持力は大きく減少する. 2) 地震時および液状化時の地盤の支持力係数は, 対数正規分布で近似できる. 3) 液状化の局所化のパターンは, 液状化時の地盤の支持力および破壊モードに大きな影響を与える.
  • 高橋 千明, 蔡 飛, 鵜飼 恵三
    2007 年 29 巻 p. 336-345
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    液状化地盤における土構造物の耐震設計では, 近年, 動的有効応力解析の残留沈下量による精査が行われるようになってきた. しかしながら, 変形性能評価が解析コードの選定や液状化パラメータの設定に大きく依存することから, 解析結果の信頼性に対して不安定要素が残されているのが現状である. 本研究では, 1971年2月9日のSan Fernando 地震において被災した2つのダムを対象に, 浸透流解析, 築堤・湛水解析および動的有効応力弾塑性解析を行い, 観測記録との比較・検討を実施した上で残留変形が生じるメカニズムを解析的に明らかにした. 本研究で実施した手法により崩壊が生じたLower San Fernandoダムと崩壊に至らなかったUpper San Fernandoダムの被災状況を良く再現できることを示した.
  • 佐藤 純一, Seda SENDIR, 本多 剛, 東畑 郁生
    2007 年 29 巻 p. 346-353
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    日本の地盤工学の技術水準は高く, とりわけ耐震設計の分野では多くの研究が盛んに行われ, 性能照査型設計法の確立が進められている. そして, これらの優れた性能照査型設計法を海外に輸出しようとする計画がある. 本論文では, アースダムを対象とした性能照査型設計法の確立を目指して, アースダムの被害形態の特定を目的とした中型振動台実験を実施し, さらに地震時のアースダムの被害を予測する手法として間隙水を考慮した個別要素法による数値解析を行った. そして, 過去のアースダムの被害事例や専門家からの意見, 中型振動台模型実験及び数値解析の結果から, 地震時にアースダムで起こりうる被害形態を特定し, 被害程度を表す指標を提案した.
  • 冨澤 幸一, 三浦 清一, 渡辺 忠朋, 李 黎明
    2007 年 29 巻 p. 354-362
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    軟弱地盤や液状化地盤に施工する杭周辺に主として深層混合処理工法による複合地盤を形成し, 杭の水平抵抗の増加を図る複合地盤杭工法を研究し実用化した. 本工法では杭頭部に原地盤と強度差をもつ人工地盤を造成することから, 杭の耐震性能について2次元動的非線形有限要素解析により検討した. その結果, 杭周辺の複合地盤により, 地震時に杭変位や杭体のひずみが抑制され杭の耐震性が向上することが明らかになった. また, 複合地盤杭の改良範囲を特性長1/βを指標として設定することで, レベル1, レベル2地震動において実用上耐震性に問題ないことが確認された.
  • 藤原 寅士良, 渡邊 康夫, 津吉 毅, 石橋 忠良
    2007 年 29 巻 p. 363-370
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    2004年10月23日に発生した新潟県中越地震において, 上越新幹線の第三和南津高架橋の端部列柱がせん断破壊に至った. 当該高架橋下の環境は, 散水消雪設備用機械の設備室として利用されており, 機械荷重を支持地盤へ伝達する鋼管杭を有する建物基礎が設置されていた.
    本論では, 地震による被害を報告するとともに2次元有限要素解析結果と被害状況を比較し, 当該高架橋の端部列柱をせん断破壊に至らしめた原因が建物基礎や埋め戻し土が柱中間部を拘束した点であることを検証した. また, 建物基礎や埋め戻し土が高架橋の破壊形態に与える影響について解析により得られた知見を報告する.
  • 阿部 慶太, 神田 政幸, 小島 隆之, 太田 剛弘
    2007 年 29 巻 p. 371-380
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    性能照査型設計法では, 部材の損傷レベルを考慮して構造物の耐震設計を行うため, 載荷試験等により部材の耐力および変形性能を適切に評価する必要がある. しかしながら, RC杭等の地中部材については, 耐力および変形性能に与える杭周辺地盤の影響に着目して検討された事例が少ない. そこで本研究では, 群杭のように回転拘束され, 杭頭に損傷が集中するRC杭頭部を模擬した試験体を製作し, 気中および密な乾燥砂中で載荷試験を実施した. その結果, 変形性能に与える杭頭部周辺の地盤の影響は小さいものの水平耐力に与える影響は大きく, 水平耐力および水平地盤抵抗に着目して現設計法での問題点を検討した. また, RC杭頭部の帯鉄筋を密にした構造は, 杭頭部での変形性能の向上に貢献することを確認した.
  • 岡田 太賀雄, 運上 茂樹
    2007 年 29 巻 p. 381-388
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    橋梁の動的解析においては, 基礎に地盤バネと減衰定数を与えることで, 地盤の非線形性や逸散減衰の効果等の地盤と基礎の動的相互作用を考慮した解析モデルが用いられる場合が多い. しかし, 基礎の減衰定数については十分に解明されていないことから, ひずみレベルによらず一律の地盤バネ剛性を与えていたり, 基礎形式や地盤条件によって異なると考えられる減衰定数についても一律に与えられる場合が多く, より合理的な設定法が必要とされている. 本研究では, 直接基礎・ケーソン基礎・杭基礎について, 薄層要素法を用いた3次元FEMモデルと基礎-地盤を集約バネに置換したSRモデルを用いて比較解析を行い, 各基礎形式におけるSRモデルに用いる減衰定数について考察を行った結果について報告する.
  • 樋口 俊一, 鈴木 信久
    2007 年 29 巻 p. 389-395
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    本研究は, 断層変位の影響を受ける埋設管の挙動を, 地盤の強度や剛性が実物とほぼ同等となる遠心模型実験により検討したものである.
    逆断層による断層変位により埋設管が強制変位を受ける場合の影響については, 実験的な研究事例がいくつか報告されているが1) , そのような場合の地盤と埋設管の相互作用については十分に解明されていない. そこで埋設管模型を模型地盤中に埋設して引上げる実験を実施し, その地盤反力特性を検討した.
    実験の結果, (a) 管径が大きいほど最大引上げ荷重値は大きいが, 最大荷重を示す変位δと埋設深度Hpの比 (δ/ Hp) が小さくなること, (b) 埋設深度が大きいほど最大引上げ荷重値は大きく, δ/Hpも大きいこと, (c) 地盤反力係数は管径が小さいほど大きくなること, (d) 地盤反力係数には極大値があること, 等の特徴が明らかとなった. また, 断層変位により埋設管が地盤に対して相対的に鉛直上方に変位する場合の最大地盤拘束力は高圧ガス導管液状化耐震設計指針の算定式で推定できることがわかった.
  • 小濱 英司, 菅野 高弘, 宮田 正史, 野口 孝俊
    2007 年 29 巻 p. 396-405
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    近年における構造物の耐震設計では, 任意の地点について想定した震源断層や深部堆積地盤の影響等を考慮した設計入力地震動が用いられつつあり, これまであまり考慮されてこなかった周波数特性や継続時間を有する地震動についても, 構造物の挙動を検討する必要性が生じてきている. 本研究では重力式岸壁を対象とし, 長周期・長継続時間地震動の与える影響について検討することとし, 重力場および遠心力場において従来より設計に用いられている地震動と新たに想定した地震動による模型振動実験を行った. 各ケースにおける加速度の周波数特性やその非定常性を分析し, また, Newmarkの剛体滑動モデルを用い, ケーソン残留変位との関係を考察した.
  • 野阪 克義, 安達 篤志, 伊藤 満
    2007 年 29 巻 p. 406-411
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    落橋防止システムは桁の下部構造からの完全な逸脱に対するフェイルセーフ機能を持つものと規定されており, 様々な条件の下でその安全性を検討する必要があると考えられる. 本研究は, ケーブル形式の落橋防止構造を対象として, 桁が横にずれ動き, 斜め方向に引張力が作用する条件の下で落橋防止装置ブラケット付近がどのような挙動を示すかを実験的に検討したものである. 実験結果より, 落橋防止装置取付け部および付近のウェブに生じる応力は単純に引張力を受ける場合と変わらず小さいが, 斜め引張力によりケーブルが桁および垂直補剛材に接触, 残留変形を生じることが確認された. 死荷重の影響を考慮すると, 地震後のせん断耐荷力に対する安全性への検討が必要であることがわかった.
  • 清野 純史, 三輪 滋, 古川 愛子
    2007 年 29 巻 p. 412-419
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    地震時の墓石の転倒現象については, 実験と解析の両面から多くの研究が行われているが, 耐震補強された墓石の地震時挙動や補強効果について検証を行った研究は見当たらない. 本研究では, 墓石の代表的な耐震補強工法の効果を検証することを目的として, 墓石の実寸大模型を用いた振動台実験を実施した. 現在多く採用されている耐震補強工法の中から, 連結工法と免震工法に着目した. 連結工法の中からダボ工法と長ボルト工法, 免震工法の中から免震金具工法, 免震ゴム工法, エアーダンパー工法を採用した. デジタルカメラで撮影された画像と墓石試験体の加速度記録から, 各補強工法の効果と問題点について検討・考察を行った. 連結工法である長ボルト工法と免震工法である免震金具工法の効果が確認できた.
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