症例は66歳男性,6か月の経過で徐々に摂食量が低下し,四肢の関節拘縮が進行した。経口摂取も困難となったため前医でIVH管理となった。食欲低下と四肢関節拘縮精査目的で当科紹介入院となり,来院時見当識障害,四肢筋力低下,両肩関節,肘関節の伸展制限,両膝関節の屈曲拘縮,起立性低血圧を認め,寝返りも困難であった。入院後関節拘縮,廃用進行予防のためリハビリテーションを開始した。入院2カ月後にショック状態となり,血液検査上炎症反応高値,低ナトリウム血症,低血糖を認め,重症感染症に伴う急性副腎不全が考えられ,内分泌検査の結果,ACTH単独欠損症と診断した。ステロイド補充療法を行い,全身状態の改善と共に四肢関節拘縮も改善傾向を認めた。その後リハビリテーションを再開し,リハビリテーション病院ヘ転院後,杖歩行にて自宅退院となった。本疾患ではステロイド治療により可逆性に関節拘縮が改善するため,発症から長期間経過した場合でもステロイド補充療法と並行して,積極的にリハビリテーションを行うことを考慮すべきである。