聖マリアンナ医科大学雑誌
Online ISSN : 2189-0285
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44 巻, 4 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著
  • 松岡 摩耶, 門野 岳史, 松浦 佳奈, 北澤 智子, 川上 民裕, 相馬 良直
    2017 年 44 巻 4 号 p. 203-211
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル フリー

    2005年1月から2015年12月までの11年間に聖マリアンナ医科大学皮膚科で病理組織学的に基底細胞癌(basal cell carcinoma: BCC)と診断した214例,223病変について統計的検討をした。男性100例,女性114例で男女差はみられなかった。部位別では,顔面が143例(64.1%)と最多で特に顔面の中心部に集中してみられていた。病理組織学的分類の検討では,nodular typeが最多であった。腫瘍径の検討をしたところ,20 mm以内が全体の187例で70%を占めた。また,男性の方が腫瘍径は有意に大きかった。症状を自覚してから初診までの期間を検討したところ,女性において腫瘍径が小さい段階で,短期間のうちに受診する傾向がみられた。手術治療が原則であるため,小型の段階での受診率が増加するように啓蒙する必要があると考える。

  • 松岡 摩耶, 門野 岳史, 松浦 佳奈, 北澤 智子, 川上 民裕, 相馬 良直
    2017 年 44 巻 4 号 p. 213-220
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル フリー

    2005年1月から2015年12月までの11年間に当科で病理組織学的に皮膚悪性腫瘍と診断した680例について統計的検討を行った。男性348例,女性332例で男女差はみられなかった。疾患別では,基底細胞癌214例,Bowen病129例,有棘細胞癌98例,日光角化症91例,悪性黒色腫87例,乳房外Paget病40例であった。過去に報告された他施設における統計と比較検討したところ他の地域がん拠点病院と類似する疾患分布であった。悪性黒色腫は集学的な治療が必要となるため,各施設の症例数に差がみられた。今後,免疫チェックポイント阻害薬の出現により,治療施設の一層の集約化が行われると考える。

  • 浅利 翔平, 長田 賢一, 渡邉 高志, 芳賀 俊明, 古茶 大樹
    2017 年 44 巻 4 号 p. 221-229
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル フリー

    P糖蛋白質 (P-gp) は脳,肝臓や腎臓などに存在する膜蛋白質であり薬物輸送に大きな役割を担っている。選択的セロトニン再取り込み阻害薬であるエスシタロプラムはP-gpの基質でありP-gpを介して脳内から血漿中へ輸送される。またジゴキシンもP-gpの基質であることが知られており,P-gpの薬物輸送機能を評価する際に広く用いられている。
    これまでの研究では短期間での生体への抗うつ薬投与によるP-gpにおける影響について報告はあるが抗うつ薬の長期投与によるP-gpの機能への影響を検討した報告はなく,本研究ではエスシタロプラムの長期投与によるP-gpへの影響について検討した。
    C57BL/6マウスに10 mg/kg/dayのエスシタロプラムを6週間に渡って経口での長期投与を行い,解剖2時間前に2 mg/kg のジゴキシン単回腹腔内投与を行いジゴキシンの脳内濃度及び血漿中濃度を測定した。またルシフェラーゼ発光反応によりATPaseに対する活性化作用を測定することでエスシタロプラムのP-gp活性への影響について検討した。エスシタロプラムとベラパミルの併用ではP-gp活性は相加作用であるのに対して,エスシタロプラムとジゴキシンの併用することでP-gp活性は相乗的増加を認めた。エスシタロプラムのP-gp活性において相乗的に作用する薬物の報告は国内外において初めてである。
    エスシタロプラムの6週間投与によりジゴキシンの脳内濃度が対照群と比較して0.7125 ng/mlから1.158 ng/mlまで統計学的に有意な上昇 (P=0.035) を認めた。これはエスシタロプラムの経口での長期投与によりマウス脳でのP-gpによるジゴキシンの脳からの排泄が抑制されジゴキシンの脳内濃度が上昇したと考えられる。本研究はエスシタロプラムとジゴキシンの薬物相互作用によりジゴキシンの脳内濃度の上昇を確認した初めての報告である。

症例報告
  • 岸 龍一, 野田 顕義, 嶋田 仁, 湊 栄治, 嶋田 久, 大坪 毅人
    2017 年 44 巻 4 号 p. 231-239
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル フリー

    症例は,80歳代の男性。左総腸骨動脈の閉塞性動脈硬化症に対して島田総合病院心臓外科で精査中,CT検査で胃内に腫瘤性病変を認めたため当科紹介。触診上,明らかな腫瘤は触知せず。精査の結果,胃前庭部大彎側の進行胃癌,胃角部大彎側の胃粘膜下腫瘍と診断。2病変とも切離範囲内であったため,開腹幽門側胃切除術,D2郭清,Billroth-I法を施行。術後病理学的検査結果より,胃癌(pT3N0M0,fStage IIA),胃原発GIST (Fletcher分類:低リスク) と診断された。胃癌と消化管間質腫瘍の合併頻度は稀であり,本邦では30症例の症例報告があるに過ぎない。今回,CT検査で指摘された胃癌と胃原発GISTが併存した1例を経験したため,文献的考察を含めて報告する。

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